かつてアメリカ車専門誌の編集部に所属し、フルサイズのピックアップトラックに乗る日々を過ごした自動車ライター、マリオ高野です。
今回、走りをチェックしたのは「キャデラック・CT5 スポーツ」。2003年に、比較的小型でスポーティーなキャデラックとして登場した「CTS」の後継モデルにあたり、メルセデスの「Eクラス」など「Eセグメント」と呼ばれるカテゴリーに分類されるセダンです。
アメリカの最高級ブランド、キャデラックといえども、エンジンの小排気量化は進み、日本ではかなり大柄なボディに排気量2Lの高効率ターボエンジンを搭載しています。乗ってみると走りは実に小気味よく、実際の寸法よりもコンパクトに感じるほど軽快でした。
大柄なボディを持つ、かつてのアメリカのセダンにありがちだった、コーナーで船のように大きく揺れる動きはなく、どんな場面でも日欧のスポーツセダン的に引き締まった走行フィールが得られます。
しかしそのいっぽう、ボディ剛性感の出し方が特徴的。いかにも大量の鉄を使っていそうな豊かな物量感は往年のアメリカ車を思わせ、このクルマが日欧の高級車ではないことが伝わってきます。
2Lターボエンジンにはアメリカ車らしい物量感はなく、ややありふれた感覚ながら、車体から得られるアメリカンな味わいが存外に濃厚で、かつ昔のキャデラックにはなかったカジュアルさも加味され、最新キャデラックの個性がうまく演出されていると感じました。
デザイン性を重視したわりに視界がよいので取り回しもしやすく、左ハンドルでも、同クラスの欧州製セダンより扱いやすいところがあります。「スポーツ」グレードはAWDで、運転モードを切り替えると前後の駆動配分が大胆に変更され、走りのテイストも激変するなど、運転マニアが楽しめる要素もありました。
絶対的には決して安いクルマではありませんが、車格や装備などの内容や個性の強さからすると、競合車よりもお買い得感が猛烈に高く、もっともっと注目する価値のあるクルマだと広くオススメしたいと思います。
<スペック>
全長:4925mm
全幅:1895mm
全高:1445mm
ホイールベース:2935mm
車両重量:1760kg
搭載エンジン:2.0ℓ直列4気筒ターボ
最高出力:240馬力/5000回転
最大トルク:350Nm/1500〜4000回転
ミッション:10速AT
駆動方式:4WD
車両本体価格:639万円
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。