レビュー

「CVTの逆襲」は本当か!? スバル「レヴォーグ STI Sport R」を山道で乗ってみた

MT(マニュアルトランスミッション)好きの自動車ライター、マリオ高野です。

今回は、ワタシのようなMT派のドライバーにとっても驚くほど変速が楽しいATを搭載する、スバルの新型「レヴォーグ STI Sport R」を紹介します!

STI Sport専用フロントグリル、STI Sportフロントバンパー(スカート部:メッキ加飾付)を装備。従来の1.8L STI Sportとの相違点はありません

STI Sport専用フロントグリル、STI Sportフロントバンパー(スカート部:メッキ加飾付)を装備。従来の1.8L STI Sportとの相違点はありません

225/45R18タイヤ&18インチアルミホイール(ブラック塗装+切削光輝)を装着。タイヤは従来の1.8L  STI Sportと同じヨコハマの「ブルーアースGT(レヴォーグ専用品)」となります

225/45R18タイヤ&18インチアルミホイール(ブラック塗装+切削光輝)を装着。タイヤは従来の1.8L STI Sportと同じヨコハマの「ブルーアースGT(レヴォーグ専用品)」となります

STIロゴ入り大型マフラーカッター(デュアル)を装着しますが、これも従来の1.8L STI Sportと同じにて、外観上の識別ポイントはありません。2.4L車であることがわかるエンブレムぐらいあってもよかったのでは……?

STIロゴ入り大型マフラーカッター(デュアル)を装着しますが、これも従来の1.8L STI Sportと同じにて、外観上の識別ポイントはありません。2.4L車であることがわかるエンブレムぐらいあってもよかったのでは……?

CVTを進化させ続けるスバル

レヴォーグ「STI Sport R」は、発売から2年目となる現行型レヴォーグ(アプライドB型)に設定された新しいグレードで、スバル車国内初導入の2.4L直噴ターボエンジンを搭載。同時に、これまで「リニアトロニック」と呼ばれていたCVTのATミッションを刷新して、その名も新たに「SPT=Subaru Performance Transmission(スバルパフォーマンストランスミッション)」とした点に注目です。

そもそもCVT「Continuously Variable Transmission(コンティニュアスリー・バリアブル・トランスミッション)」は、無段階で変速するオートマチックトランスミッションで、本来は変速ショクのないスムーズな走りを最大の特徴としています。動力ロスや部品点数が少ないため、コンパクトで高効率なミッションとして実用車に広く採用されてきました。

1985年に世界で初めてCVTを大量生産車(ジャスティ)に採用するなど、CVTのパイオニア的存在でもあるスバルは、2009年発売の5代目レガシィから「リニアトロニック」と名付けたCVTを普通乗用車に採用し、これを主力ATとしています。ベルト駆動式のCVTでは難しいとされる400Nm級の大トルクにも対応させ、2014年発売の初代レヴォーグ/WRX S4では「スポーツリニアトロニック」としてスポーツ走行への対応力を高めるなど、独自の進化を果たしてきた歴史があります。

CVTはスバルが得意とする常時四輪駆動システムとの相性がよく、泥濘(でいねい)路や雪上、サーキットまで幅広い路面状況に対応しやすいなど、多段ギア式ATに対する多くの利点があげられます。最大トルクの発生回転域など、エンジンがもっとも強い力を発揮できる回転域を常にキープしながら、ギア比だけ無段階に変えられるのも大きな利点。エンジンの最高効率のところを生かしやすく、変速が滑らかであるという基本的な優位性は、今もゆるぎありません。

本革巻ステアリングホイール(レッドステッチ、高触感革、ピアノブラック調加飾パネル)、本革巻シフトレバー(ピアノブラック調+ダークキャストメタリック加飾)を装備。メーター内にブースト計が表示されるのが唯一の2.4L車の特徴です

本革巻ステアリングホイール(レッドステッチ、高触感革、ピアノブラック調加飾パネル)、本革巻シフトレバー(ピアノブラック調+ダークキャストメタリック加飾)を装備。メーター内にブースト計が表示されるのが唯一の2.4L車の特徴です

しかしそのいっぽうで、“エンジンの回転数と加速が完全に一致しない”という、特有の感覚を伴います。実用上は何の問題もないのですが、これを違和感として感じてしまうドライバーは昔から多く、一部のクルマ好きや運転好きの層から「CVTはスポーツモデルに不向き」と指摘されることが続いていました。

この指摘に応えるべく、スバルはかつての軽自動車「ヴィヴィオ」のスポーツグレードのCVTから、変速時のステップ感を意図的に加える工夫を凝らしています(1997年)。スバルは、四半世紀をかけてCVTの変速フィールの向上に向き合ってきた唯一のメーカーでもあるのです。

“変速のキレ”にこだわった新開発のCVT

初代レヴォーグ/WRX S4に搭載された高出力エンジン向けCVT、スポーツリニアトロニックでは変速フィールに対する不満の声はかなり解消したと言えます。しかし、それでもなおCVT特有の感覚を嫌う人は少なからず存在し続けており、走りのよさを自社ブランドのウリとするスバルとしては看過できないものがありました。

そこでスバルは「CVTの逆襲」とのスローガンを掲げ、新型レヴォーグ「STI Sport R」(および新型「WRX S4」)に変速フィールを大幅に改善したCVT「SPT(スバルパフォーマンストランスミッション)」を搭載。CVTに対するネガティブなイメージを完全に払拭するための執念を見せたのです。

「SPT」では、フィーリング面の改善として“変速のキレ感”をよくすることに強くこだわりました。エンジンとトランスミッションの協調制御を構築し、レシオカバレッジの拡大、変速速度向上にともなう油圧系部品の耐力向上などを主に実施していますが、プーリーや金属チェーンベルトなど、ミッションのコアな部分も刷新しています。

1.8Lターボと比較して、アクセルをさほど踏み足さずに十分な加速性能が得られる2.4Lターボ。加速感が高回転域まで途切れなく伸び続けるのが特徴的です

1.8Lターボと比較して、アクセルをさほど踏み足さずに十分な加速性能が得られる2.4Lターボ。加速感が高回転域まで途切れなく伸び続けるのが特徴的です

意図的に変速ショックを作り出す

一番のポイントは、油圧の制御を刷新してエンジンとミッションの協調制御を新たに構築したことでした。シフトアップ時の変速ショックを抑えるため、わずかに行うエンジンのトルクダウンを緻密化し、高速化。エンジンの点火時期を遅らせるリタードや気筒カットまで行って、トルクダウン制御を精密化したことが奏功していると言います。
 
ただし、シフトアップ時に完全なショックレスだと、結局スムーズすぎて変速感に物足りなさが出てしまいます。「ドライブモードセレクト」と呼ばれる運転モード切り替え機構を「スポーツプラス」にすると、意図的にわずかなショックを残すなどして、絶妙なところを狙いました。

ミッションのフィーリングをよくするため、ミッションだけではなく、今まであまり踏み込めていなかったエンジン側の制御でも変速フィールの向上をはかったことも大きな特徴です。これまでのトルクダウンはスロットルの空気量のみで行っていたのを、SPTでは点火時期や燃料噴射でもトルクをコントロールすることで応答性が劇的に向上しました。ミッションの変速フィール向上のためのエンジン側の取り組みが、結果として過給圧を維持した状態でのトルクダウンを実現。加速応答性の向上にもつながったなど、エンジン側のメリットもあったのです。

減衰力電子制御をはじめ、サスペンションの使用は1.8L車と変わらず。タイヤも含め、1.8L車の時点で性能的な余裕が大きかったと言えます

減衰力電子制御をはじめ、サスペンションの使用は1.8L車と変わらず。タイヤも含め、1.8L車の時点で性能的な余裕が大きかったと言えます

知らずに乗ればCVTだと気付かない…

乗ってみると、その効果はすさまじいばかり。仮に、知らずに乗ったとすればCVTだと気がつかないレベルで変速が小気味よく、キレ味のよさとエンジンとのダイレクト感はMT(マニュアルトランスミッション)やDCT(デュアルクラッチ式のAT)に遜色がないと断言できるレベルに仕上がっていました。

新型レヴォーグ「STI Sport R」(および新型WRX S4)は、旧型と比較して、最高出力と最大トルクの数値が数%下がったことを残念がる声もあります。実際に新旧モデルを比較すると、全開加速時のパンチ力だけをみれば、旧型のほうがより過激な炸裂感をともなっていたのは間違いありません。

しかし、アクセルの反応のよさや、極太なトルクが立ち上がるタイミングの速さ(タイムラグの少なさ)、変速時のキレ味など、全体的な「加速の質」では新型のほうが明確に上だと断言しましょう。

かつての6気筒エンジンに代わるフラッグシップエンジンとして動力性能と環境性能を両立。振動と騒音の低減と出力向上を両立するため、吸気システムを最適化。緻密な過給圧制御により、旧2.0L比で低速レスポンスを大幅に向上しています

かつての6気筒エンジンに代わるフラッグシップエンジンとして動力性能と環境性能を両立。振動と騒音の低減と出力向上を両立するため、吸気システムを最適化。緻密な過給圧制御により、旧2.0L比で低速レスポンスを大幅に向上しています

さらに、SPTはドライバーの意図を汲み取るアダプティブ制御の高精度化も強くこだわりました。Dレンジに入れたままでの変速制御がすごく賢くなり、ゆるやかな峠道からミニサーキットまで、特にシフトダウンのタイミングと低めのギアを維持しようとする制御が実に絶妙です。

シフトダウン時の変速速度は旧型比で50%も向上し、スバルのCVTとしては初めて自動ブリッピング制御も加わりました。ドライブモードセレクトを「スポーツプラス」にすると、強目の減速時にパン!パン!と瞬時に3段ぐらいギアが自動でダウンする感覚は、まさにデュアルクラッチ式ATのようなフィーリングで、感動的でさえあります。短時間で大容量が流れる油圧経路としたことで、パドル操作の反応も速くなっていました。

SPTによる変速フィールの切れ味のよさは、パドルシフトでの手動変速時にも実感。ソフトウェアと油圧量の変更で反応速度が向上。パドル操作から変速するまでの応答性が高まっています

SPTによる変速フィールの切れ味のよさは、パドルシフトでの手動変速時にも実感。ソフトウェアと油圧量の変更で反応速度が向上。パドル操作から変速するまでの応答性が高まっています

駆動配分は後輪寄り

さらには、ミッションにつながるセンターデフに、駆動配分がやや後輪寄りとなる「VTD-AWD」が採用された点にも注目です。本格的なスポーツ走行にはリヤ側への駆動配分の多さと前後の締結力の強さが重要とするスバルは、1990年代から高出力AT車にはVTD-AWDを採用し続けてきました。

最新世代ではスポーツモード選択時に前後の駆動締結力を弱めることで回頭性が高められ、コーナリング進入時の鼻先の入りやすさが向上。1.8Lターボよりも重い2.4Lターボエンジンを積むことで、若干フロントヘビーさが増しているはずですが、VTD-AWDならではの回頭性がそれを補っていると言えるでしょう。

燃費は1.8Lターボ車とほぼ互角。ただしガソリンはハイオク指定になります。実燃費の目安は、街乗りで10〜12km/L、高速道路での定速巡行で14〜15km/Lといったところ

燃費は1.8Lターボ車とほぼ互角。ただしガソリンはハイオク指定になります。実燃費の目安は、街乗りで10〜12km/L、高速道路での定速巡行で14〜15km/Lといったところ

新型レヴォーグ「STI Sport R」(2.4Lターボエンジン)は、従来からあるレヴォーグ「STI Sport」(1.8Lターボ)と外観や内装、サスペンションやタイヤの仕様はまったく同じでありながら、常に高トルクを発揮する2.4Lターボエンジンと変速フィールが抜群のSPT、そして後輪寄りの駆動配分&前後拘束力切り替え式VTD-AWDによって、山道を走るとまったくの別物に感じられるのでありました。

この試乗の模様は、動画でもご覧いただけます。

マリオ高野

マリオ高野

1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。

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レヴォーグの製品画像
スバル
4.25
(レビュー498人・クチコミ61724件)
新車価格:310〜477万円 (中古車:59〜529万円
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