バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂

ヤマハ「E-Vino」より安くて走行距離が長い電動バイク。GOCCIA「GEV600」はお買い得!

ガソリンの給油が必要なく、排気ガスも出さない電動バイクは、今注目の移動手段のひとつだが、日本国内ではまだまだ選択肢が限られる。そんな中、新たに登場したGOCCIA(ゴッチア)「GEV600」を紹介しよう。

要所を押さえた、電動バイクに適したシンプルな設計

定格出力600Wのモーターを搭載した「GEV600」は、原付一種(エンジン車では50ccクラスに相当)に分類される。モーターはリアホイールに組み込まれたタイプで、最高出力1,300Wを発揮。馬力でいうと1.76PSに相当し、スペック上の最高速度は50km/hとされている。ルックスは、過去に「ラッタッタ」という愛称で親しまれたホンダ「ロードパル」のような細身でシンプルなデザインだが、車重が軽いほうがバッテリー消費も抑えられるので、GEV600の設計は電動バイクとして理にかなっていると言えるだろう。

GEV600を見て思い浮かんだのが、「ラッタッタ」こと、ホンダ「ロードパル」(1976年発売)。気軽に乗れる軽量な車体で、バイクになじみのなかった人たちにもユーザー層を広げた

GEV600を見て思い浮かんだのが、「ラッタッタ」こと、ホンダ「ロードパル」(1976年発売)。気軽に乗れる軽量な車体で、バイクになじみのなかった人たちにもユーザー層を広げた

今回紹介するGEV600のサイズは1,720(全長)×690(全幅)×1,030(全高)mmで、車重は56kg。価格は162,800円(税込)

今回紹介するGEV600のサイズは1,720(全長)×690(全幅)×1,030(全高)mmで、車重は56kg。価格は162,800円(税込)

前後とも14インチのホイールで、2.25幅のタイヤを装着

前後とも14インチのホイールで、2.25幅のタイヤを装着

モーターはリアホイールの車軸と一体となったタイプ。リアブレーキはドラム式だ

モーターはリアホイールの車軸と一体となったタイプ。リアブレーキはドラム式だ

シート下に48V/20Ahのバッテリーを搭載。満充電での走行可能な距離は70kmとなっている(30km/h定地走行、乗員50kg、バッテリー新品、気温15℃、無風の条件下でのテスト)

シート下に48V/20Ahのバッテリーを搭載。満充電での走行可能な距離は70kmとなっている(30km/h定地走行、乗員50kg、バッテリー新品、気温15℃、無風の条件下でのテスト)

充電はバッテリーを車体に積んだままでも、取り外した状態でも可能。バッテリー残量ゼロの状態から満充電まで6〜8時間かかる。なお、バッテリー単体の重量は7.4kgあるので、取っ手が付いているとはいえ、ズッシリくる重さだ

充電はバッテリーを車体に積んだままでも、取り外した状態でも可能。バッテリー残量ゼロの状態から満充電まで6〜8時間かかる。なお、バッテリー単体の重量は7.4kgあるので、取っ手が付いているとはいえ、ズッシリくる重さだ

バッテリー残量は、ハンドル中央に装備されたディスプレイでチェック可能。このほか、速度や走行距離なども確認できる

バッテリー残量は、ハンドル中央に装備されたディスプレイでチェック可能。このほか、速度や走行距離なども確認できる

GEV600のメーカー希望小売価格は162,800円(税込)と、電動バイクとしてはリーズナブルだが、実車を見るとコストダウンによる安っぽさは感じない。デザイン上のポイントとなっている丸型のLEDライト、走行中に足を置くステップ部などの質感は高く、足回りなどのパーツも信頼性は高そうだ。

車体のイメージ作りにもひと役買っている丸型のLEDライトは、輸入元のプロトからの提案で採用されたという

車体のイメージ作りにもひと役買っている丸型のLEDライトは、輸入元のプロトからの提案で採用されたという

フロントサスペンションは最小限のストロークだが、剛性はしっかりしていて頼りなさは感じない

フロントサスペンションは最小限のストロークだが、剛性はしっかりしていて頼りなさは感じない

リアサスペンションは2本式で、プログレッシブタイプのスプリングが装着されている

リアサスペンションは2本式で、プログレッシブタイプのスプリングが装着されている

フロントフォークの根本部分にはハンドルロックも装備

フロントフォークの根本部分にはハンドルロックも装備

フロントのディスクブレーキは片押しのキャリパーだが、車重に対して十分な制動力を発揮する

フロントのディスクブレーキは片押しのキャリパーだが、車重に対して十分な制動力を発揮する

電源ボタンの下にあるUSBソケット(1A)でスマートフォンなどを充電できる

電源ボタンの下にあるUSBソケット(1A)でスマートフォンなどを充電できる

2足タイプのセンタースタンドを採用。サイドスタンドは装備されていない

2足タイプのセンタースタンドを採用。サイドスタンドは装備されていない

シートの後ろにキャリアが装備。キャリアに装着できるボックス「JOURNEY 汎用トップケース TC30 汎用ベース付き」(価格は12,100円/税込)もオプションで用意されている

シートの後ろにキャリアが装備。キャリアに装着できるボックス「JOURNEY 汎用トップケース TC30 汎用ベース付き」(価格は12,100円/税込)もオプションで用意されている

走行時に足を載せるステップの間にあるスペースに装着できる、「ミドルバスケット」(価格は4,180円/税込)もオプションで用意されている

走行時に足を載せるステップの間にあるスペースに装着できる、「ミドルバスケット」(価格は4,180円/税込)もオプションで用意されている

試乗で作り込みのよさを実感!

車体を見た分には価格のわりにチープさを感じない仕上がりだが、走行性能がコストダウンのために犠牲にされていないかどうかは、実際に走ってみないとわからない。GEV600で街中を走行してみた。

身長175cmの筆者がまたがってみると、両足のかかとがしっかり接地した。ヒザが軽く曲がるくらいなので、足付き性はかなりいい

身長175cmの筆者がまたがってみると、両足のかかとがしっかり接地した。ヒザが軽く曲がるくらいなので、足付き性はかなりいい

シンプルな造形のハンドルだが、乗車姿勢は無理がなく、握りやすいポジションだ

シンプルな造形のハンドルだが、乗車姿勢は無理がなく、握りやすいポジションだ

走行するには、スマートキーでロックを解除し、電源ボタンを押して起動する。走行モードが「P」のままでは走行できないので、右ハンドルにある「MODE」ボタンを押して「P」モードを解除。ディスプレイに「READY」の文字が表示されていれば走行可能だ。

電動バイクはエンジン音がしないため、起動していることに気づきにくい。起動したあとに右手のアクセルを回すだけで走り出すのは危険なので、安全性を考慮し、このような操作方法となっている

電動バイクはエンジン音がしないため、起動していることに気づきにくい。起動したあとに右手のアクセルを回すだけで走り出すのは危険なので、安全性を考慮し、このような操作方法となっている

アクセルを回して走り出すと、すぐにGEV600がしっかり作り込まれていることを実感できた。安価な電動バイクの中には、アクセルがオンとオフの2段階しかなく、少し開けただけで急にパワーが立ち上がるものも少なくないが、GEV600のアクセルは、開度によってパワーの出方をかなり細かく調整できる。これは、モーターのパワーを制御するコントローラーをきちんと作り込んでいる証拠。単なる安いだけのモデルではないことが感じられた。

モーターらしい低速域の力強さも感じられる

モーターらしい低速域の力強さも感じられる

現行の50ccエンジン車の最高出力は4.5PSくらいなので、最大出力1,300W(1.76PS)のGEV600は、数値だけを比べると非力に感じるかもしれない。しかし、実際に走行すると、少なくとも出だしの加速については数値ほどの非力さを感じることはなかった。電動バイクのモーターは回転し始めたタイミングから最大トルクを発揮できるため、出だしの加速は得意とするところだからだ。さらに、交通の流れに乗る段階までの加速感もスムーズ。ただ、そこから先の速度の伸びはあまり期待しないほうがいい。とはいえ、原付一種の法定最高速度は30km/hなので、それほど気になる部分ではないだろう。

コーナリングのフィーリングも、タイヤの設置感がしっかり伝わってきて好感が持てる。もちろん、コーナリングを楽しむようなマシンではないが、街乗りバイクとして考えても交差点を気持ちよく曲がれるのは大切だ。フレームの剛性感についても追求するバイクではないが、不安感なく自然に曲がれるので、バイクに乗り慣れた人でも不満を感じることはないだろう。

車体もしっかりしているのでコーナリングも気持ちいい

車体もしっかりしているのでコーナリングも気持ちいい

試乗を終えて

現時点で、日本国内で購入できる原付一種の電動バイクでは、ヤマハ「E-Vino」(メーカー希望小売価格259,600円/税込)が有名だが、GEV600はカタログ上の走行距離がE-Vinoより41kmも長く、価格は96,800円も安い。今回試乗した限りでは、GEV600のモーター制御や車体の作りに不安を感じる部分もなかったので、かなりお買い得だと言えるだろう。

ただ、GEV600は輸入車なので、購入後のトラブル対処などに不安を覚える方もいるかもしれない。だが、バイクブランドとしてなじみの出てきたベネリの輸入元でもあるプロトが輸入を担っており、日本全国に1万店舗以上の契約店がある。アフターフォローについても安心してよさそうだ。

GEV600には、ディープブルー×アイボリー、メタルグレー×ピンク、ブラック×グレー、ホワイト×ホワイト、レッド×ホワイト、ライトブルー×グレーの6色がラインアップされている

GEV600には、ディープブルー×アイボリー、メタルグレー×ピンク、ブラック×グレー、ホワイト×ホワイト、レッド×ホワイト、ライトブルー×グレーの6色がラインアップされている

ちなみに、エンジン付きのバイクにも乗る筆者からすると、原付一種の電動バイクの購入を検討する際のライバルになるのは、電動アシスト自転車(e-Bike)だと思っている。その視点で見ても、GEV600は推せるマシンだ。輸入元のプロトはベネリ製e-Bikeも販売しており、メーカー希望小売価格162,800円(税込)というGEV600の価格はe-Bikeに対抗できるようにと設定されたものだという。GEV600に乗るには免許が必要(普通自動車免許でもOK)で、ヘルメット着用も義務化されており、e-Bikeよりも気軽に乗れるとは言えない。しかし、アクセルをひねるだけで走行できるラクさは、e-Bikeでは得られない。加えて、電動バイクには、単なる移動手段だけでない、便利さと楽しさがある。こうしたことから、e-BikeとGEV600を天秤にかけて選ぶのは、おおいにアリだと思う。

●メインカット、走行シーン撮影:松川忍

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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