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実質“値下げ”でジープ「ラングラー」の新型が登場! エントリーグレードも復活

2024年5月10日、ステランティスジャパンはジープの本格オフローダー「ラングラー」の商品改良モデルを発売した。注目は、エントリーグレードの「アンリミテッド スポーツ」を復活させたことだ。そこから見えるのは、日本における輸入SUV市場の首位奪還にある。

今回の「ラングラー」商品改良においては、伝統の「7スロットグリル」など内外装の変更や、購入しやすいエントリーグレードの追加などが行われている

今回の「ラングラー」商品改良においては、伝統の「7スロットグリル」など内外装の変更や、購入しやすいエントリーグレードの追加などが行われている

■ジープ「ラングラー」のグレードラインアップと価格
Unlimited Sport(アンリミテッドスポーツ):7,990,000円
Unlimited Sahara(アンリミテッドサハラ):8,390,000円
Unlimited Rubicon(アンリミテッドルビコン):8,890,000円

販売台数トップの座を再び狙う

日本国内における輸入車の販売台数は、2025年以降は約30万台で推移すると予測されており、うちSUVがおよそ5割を占めるとされる。また、「ラングラー」は輸入車のミッドサイズセグメントにおいて2020〜21年の2年間は販売台数でトップだったのだが、2022年は2位、2023年には3位と少々後退してしまった。今後、輸入車の市場規模は減ることはないであろうという予測もあり、同セグメントで改めて1位に返り咲きたいというのが、今回の商品改良における大きな目的のひとつだ。

具体的には、まずは「ラングラー」の購入ユーザー層の拡大を狙っていくという。「日本国内でSUVを購入する年齢層と比べると、『ラングラー』のユーザーは約10歳近く若いのです」と話すのは、ステランティスジャパンでジープのブランドマネージャーを務める新海宏樹さん。

ジープ 新型「ラングラー」発表会にて、ジープ ブランドマネージャーの新海宏樹さん

ジープ 新型「ラングラー」発表会にて、ジープ ブランドマネージャーの新海宏樹さん

「免許を保有している18〜27歳の購入検討車調査において、輸入SUVの候補としては『ラングラー』がナンバーワンに選出されています。若年層のクルマ離れと言われる中、若者が『ラングラー』の持つ世界観やジープブランドが提唱するクルマとライフスタイルを支持しているのです」と説明する。さらに、「『ラングラー』の販売を軸にした成長には、若年層へのアプローチを強化することが不可欠になります」とコメント。

そこで、ジープがターゲットとしてきた「30〜40代後半までの層は引き続きターゲットとしながらも、20〜60代へと幅広い年齢層へターゲットを拡大します。特に、Z世代にターゲットを広げることで、他社SUVの購入年齢層との差別化を図ります」と今後の販売戦略について語る。

伝統の「7スロットグリル」を改良

今回の商品改良では、内外装に手が加えられている。エクステリアは、ジープブランドのDNAとも言える「7スロットグリル」の意匠に変更が施された。グリルの高さを若干短くすることでより凝縮されたデザインになり、そのグリルの周囲にはブラックのテクスチャーがあしらわれている。

「7スロットグリル」は、グレードによって若干異なっている。「アンリミテッドスポーツ」(上)と「アンリミテッドルビコン」(下)は、ブラックを基調として、グリルをニュートラルグレーメタリックで囲むように仕上げられている

「7スロットグリル」は、グレードによって若干異なっている。「アンリミテッドスポーツ」(上)と「アンリミテッドルビコン」(下)は、ブラックを基調として、グリルをニュートラルグレーメタリックで囲むように仕上げられている

「アンリミテッドサハラ」は、ブラック基調のグリルの周囲にプラチナシルバーがあしらわれることで、プレミアムな印象に

「アンリミテッドサハラ」は、ブラック基調のグリルの周囲にプラチナシルバーがあしらわれることで、プレミアムな印象に

また、ホイールも全グレードで一新された。ホイールのセンターキャップには、1941年に誕生した「ウィリス」のシルエットが刻印されているのが特徴的だ。

新意匠が採用された「ラングラー」(画像は「アンリミテッドスポーツ」)のホイール

新意匠が採用された「ラングラー」(画像は「アンリミテッドスポーツ」)のホイール

ラングラー初の「電動パワーシート」を採用

インテリアは、黒を基調とした水平デザインが採用されており、シルバー加飾などは少なめだ。また、インパネ中央には「12.3インチタッチスクリーン」が全グレードに標準装備されている。

「アンリミテッド スポーツ」のインテリア

「アンリミテッド スポーツ」のインテリア

「先代モデルよりも、5倍高速化されたプロセッサーを搭載しており、処理能力を改善しています。また、ナビゲーションはアイシン製を採用し、Apple『CarPlay』はワイヤレス対応になりました」と、ステランティスジャパンでジープのプロダクトマネージャーを担当している渡邊由紀さんは説明する。

新採用された「12.3インチタッチスクリーン」は、Apple「CarPlay」やGoogle「Android Auto」に対応している

新採用された「12.3インチタッチスクリーン」は、Apple「CarPlay」やGoogle「Android Auto」に対応している

また、「ラングラー」初となる電動パワーシート「12ウェイパワーアジャスタブルシート」をフロントシートに採用。同時に、スポーツバー(ロールバーのような役目を果たす)にはサイドカーテンエアバッグも搭載された。

「12ウェイパワーアジャスタブルシート」は、「アンリミテッドサハラ」と「アンリミテッドルビコン」に標準装備されている

「12ウェイパワーアジャスタブルシート」は、「アンリミテッドサハラ」と「アンリミテッドルビコン」に標準装備されている

フロントガラスは、公認ゴリラガラスを全グレード標準設定に変更。「スマートフォンにも採用されるような強化ガラスで、オフロード走行時のちょっとした飛び石などにも耐えられるもの。市場で買うと約20万円相当の価値があります」と渡邊さん。

また、市場の声を受け、アンテナもこのガラスにビルトインされた。これまではマストタイプのアンテナがフェンダーに装着されていたが、「オフロード走行時に、アンテナが小枝に引っ掛かるという意見があった」ことから変更された。

アンテナは、フロントウィンドウへと統合されている(全グレード)

アンテナは、フロントウィンドウへと統合されている(全グレード)

そして、これまでアンテナがあった場所には、社内の非常に厳しい5つのカテゴリーの試験に合格したものにしか与えられない「Trail Rated」のバッジが装着されている。

従来のマストアンテナの位置に装着されている「Trail Rated」バッジ

従来のマストアンテナの位置に装着されている「Trail Rated」バッジ

また、「アンリミテッドルビコン」では、牽引能力や積載重量による駆動系の負荷軽減を目的として、セミフロートタイプのリアアクスルからフルフロートタイプに変更された。

セミフロートタイプは、駆動トルクの伝達に加えて車両重量や積載物の重量すべてをアクスルシャフトが受け止める仕様なので、負荷が非常に大きくなる。そこで、今回は大型トラックなどにも搭載されるようなフルフロートアクスルに変更された。車重と積載荷重は、アクスルシャフトそのものではなくアクスルチューブにかかるので、アクスルシャフトは駆動トルクの伝達のみとなって負荷が軽減するのだ。

実質値下げの価格に注目

■ジープ「ラングラー」のグレードラインアップと価格
Unlimited Sport(アンリミテッドスポーツ):7,990,000円
Unlimited Sahara(アンリミテッドサハラ):8,390,000円
Unlimited Rubicon(アンリミテッドルビコン):8,890,000円

今回は、800万円を切る799万円というエントリーグレードの「アンリミテッドスポーツ」が復活したことが大きい。そのほかの価格は、中間グレードの「アンリミテッドサハラ」が839万円、そして最上級グレードの「アンリミテッドルビコン」が889万円だ。

エントリーグレード「アンリミテッドスポーツ」のフロント、リアエクステリア

エントリーグレード「アンリミテッドスポーツ」のフロント、リアエクステリア

渡邊さんによると、値付けは「企業努力の結果によるもの」であるという。「アンリミテッドスポーツ」は、エントリーグレードながらナビゲーションシステムやゴリラガラス、カーテンエアバッグのほか、ブラインドスポットモニターなど安全運転支援システムも装備。

「アンリミテッドサハラ」は、先代モデルと比較して31万円の値下げとしたうえで、「パワーシートなど、多くの新装備を搭載しています。市場の価値に換算すると40万円ぐらいなので、先代モデルからは実質70万円ぐらい買い得感がある仕様になります」と言う。

さらに、「アンリミテッドルビコン」も16万円ほどの値下げと同時に、「約55万円の価値がある装備(ダナ製フルフロート・リアアクスルなど)を搭載して、実質70万円ぐらい値下げされた設定になります」と説明する。

ここ1〜2年、ステランティスジャパンの各ブランドは値上げに次ぐ値上げを繰り返していたが、今回の「ラングラー」の価格を考えると、ここへきて改めて戦略を見直そうという動きに見える。特に「ラングラー」は、日本国内市場でセグメントトップを奪還したいという思いがあることも後押ししているのだろう。さらに、装備が充実していることも見逃せない。落とした装備は「地デジくらいです」と渡邊さんはコメントしている。今回、買い得になった「ラングラー」は要注目のクルマと言えそうだ。

内田俊一
Writer
内田俊一
1966年生まれ。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も行いあらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。
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桜庭智之(編集部)
Editor
桜庭智之(編集部)
自動車専門メディアで編集者として10年間勤務した後「価格.comマガジン」へ。これまで、国産を中心とした数百の新型車に試乗しており、自動車のほかカーナビやドラレコ、タイヤなどのカー用品関連も担当する。
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