ホンダは、「東京オートサロン2025」において2025年秋発売予定の2ドアクーペ、新型「プレリュード」プロトタイプのカスタムモデルを展示した。2023年の「モビリティショー」でワールドプレミアされた「プレリュードコンセプト」をベースに、エアロパーツなどで架装したモデルとなっている。
25年ぶりに復活を果たす、ホンダ「プレリュード」。新型モデルは、新技術「Honda S+Shift」の搭載に注目だ
「東京オートサロン2025」のホンダブースを眺めると、モータースポーツやそのシーンを想像させるようなレイアウトとなっている。創業初期にF1で活躍した「RA271」なども展示されており、気持ちをいっそう高ぶらせてくれる。そんな中、今回初披露された「シビックタイプR レーシングブラックパッケージ」とともに新型「プレリュード」のプロトタイプも、前回とは異なる黒のボディカラーで登場した。
右手前が新型「プレリュード」で、左奥が「シビックタイプR レーシングブラックパッケージ」
本田技研工業 統合地域本部 日本統括部の高倉記行統括部長は、「モータースポーツやスポーツモデルはホンダの象徴」と位置付ける。「ホンダは、多くのお客様と意のままに操る喜びを共有したいという思いから、モータースポーツ活動と併せてスポーツモデルの開発を続けて来ました」と述べる。それは、創業当初からF1に参戦するなどで培ってきた「意のままに操る喜び」に対する情熱となって表れており、「コア技術がガソリンからハイブリッド、電気自動車に変わったとしても、ホンダの中に脈々と受け継がれてきた、意のままの走りに対する挑戦は決して途絶えることはありません」と述べる。
そして、その1台が新型「プレリュード」なのだ。高倉氏によると、「電動化の時代においても、操る喜びを、高揚感を感じられるスペシャリティハイブリッドスポーツ」と新型「プレリュード」を紹介。そして、「ハイブリッドシステムがもたらす圧倒的な燃費のよさと、大出力モーターによる上質で爽快な走りに加え、五感に訴えかける新システムとして、『Honda S+Shift』を初搭載。エンジン回転数に応じた迫力あるサウンドともに、ドライバーの高揚感をかき立て、鋭いシフトフィーリングを実現。クルマとの一体感を増幅するホンダハイブリッドシステムならではの新しい制御です」と言う。
その印象は、「まるで、有段ギアを変速したかのようなドライブフィールを実現し、エンジンと大出力モーターの協調がもたらすリニアな変速レスポンスによって、ドライバーの操作にダイレクトに呼応し操る喜びを提供します」とアピールした。なお、「Honda S+Shift」は次世代のe:HEVを搭載する全機種に順次展開する予定とのことだった。
そして、「(新型「プレリュード」は)カーボンニュートラルの時代においても、また自動運転技術が普及していく過程においても、操る喜びを提供し続け、継承していくモデルです」とコメントした。
そもそも、「プレリュード」はなぜ復活するのだろうか。本田技研工業 統合地域本部 日本統括部 国内四輪営業部 商品企画課主任の川嶋健太さんは、「スポーツや操る喜びは、ホンダでも追求しているところです。それを、新しい技術で表現しました。そうすることで、かつての『プレリュード』のお客様が持っていたときめく感じを表現したいと、世に出すことになったのです」と話す。
「東京オートサロン2025」に展示された新型「プレリュード」プロトタイプ
新型「プレリュード」のコンセプトは、「アンリミテッドグライド。グライダーをイメージし、グライダーの操る楽しみや気持ちのよいドライブを表現しており、昔でいうスペシャリティーカーや、デートモデルのようなところもイメージしています」と川嶋さん。そして、「長い間、そのようなクルマがホンダにはなかったので、25年ぶりに改めて『プレリュード』を復活させたのです」とのことだ。
また、川嶋さんは「スポーツモデルでは『シビック タイプR』がありますが、ガチガチのスポーツですので、少しガソリン臭い(笑)。それに対して、新たな電動化の時代としてハイブリッドのスポーツを表現したいのです」とコメントする。つまり、内燃機関の究極が「シビック タイプR」であり、ハイブリッドの究極が(現在では)新型「プレリュード」と言えそうだ。そうすると、BEVでもそのようなクルマを開発しているとみてよいだろう。
さて、操る喜びを新型「プレリュード」で表現する際に、大きなキーとなるのが「HONDA S+Shift」だ。宮本さんは、「HONDA S+Shift」の動作について「ハイブリッドではありますが、有段のようなシフト感や変速時のようなシフトショックなどが感じられ、減速時にはブリッピングもします」とのこと。
「e:HEV」搭載モデルにおいて、リニアなレスポンスと有段ギアのようなダイレクトな変速フィーリングを実現するという新技術「HONDA S+Shift」
ちなみに、「HONDA S+Shift」のネーミングは「S600」や「S2000」、「NSX TYPE S」など、ホンダの操る喜びの根源となるスポーツスピリットを表すモデルや技術に対して冠する“S”に加えて、“Synchronize”、“Special”、“Sensational”など同機能がもたらす新たな価値を“+(プラス)”し、ヒトとクルマを新たな世界に“Shift(シフト)”させていくという思いが込められている。
「HONDA S+Shift」は、「シビックe:HEV」などに搭載されている「リニアシフトコントロール」の進化版だ。これまでは、加速時にシフトフィーリングを音とともに表現していたが、今回はさらに減速側にも対応している。本田技研工業 統合地域本部 日本統括部 国内四輪営業部 宣伝・広報課主任の宮本慶浩さんによると、「ハイブリッドの場合、ブレーキを踏むと回生のためにエンジンは止まります。しかし、『HONDA S+Shift』はブレーキ踏むと、エンジンが実際の内燃機関でシフトダウンしたかのようにエンジンの回転数が上がるのです。すると、そこで発電が始まりますので、電力をクイックで強力なパワーとして使えるのです。つまり、立ち上がりのレスポンス、機敏さがこれまでのハイブリッド以上によくなるわけです」と説明する。まさに、ハイブリッドの新たな楽しみともいえる機能だ。
最後に、新型「プレリュード」のターゲットはどのような人を想定しているのか。川嶋さんは、「以前、『プレリュード』に乗っていたジェネレーションXの世代がメインターゲットになります。さらに、その子ども世代のジェネレーションZのお客様も引きつけていきたいですね。ブースでも、ジェネレーションX世代の方が『プレリュード』が復活するんだ、懐かしいといった言葉も聞かれました。そして、そのお子様世代が一緒に乗って、こんなクルマがあるのだと気づいていただく。そういう若い世代にもつなげていきたいのです」と語っていた。
新型「プレリュード」のサイドイメージ
2ドアクーペという、今となっては絶滅危惧種ともいえるボディタイプを纏って復活する新型「プレリュード」。「シビック タイプR」の足回りなども活用することで、走りにおいても手を抜いていないようだ。燃費も、走りも妥協したくないという方におすすめの1台になりそうである。
「東京オートサロン2025」で、新型「プレリュード」プロトタイプとともに初公開されたのが、「シビック タイプR」へ新たに設定された「シビック タイプR レーシングブラックパッケージ」だ
「シビック タイプR レーシングブラックパッケージ」は、「シビック タイプR」をベースとして、ダッシュボードに上質なブラックスエード表皮を採用し、インテリア全体をブラックでコーディネートすることで光の反射ノイズが抑えられた、特別なインテリアパッケージモデルになる。発売日は2025年1月23日で、税込価格は5,998,300円
(写真:島村栄二)