日系ブランドで、中国での筆頭格となるのが日産だ。今回のショーでは、セダンの「ラニア」と「ムラーノ ハイブリッド」を出品した。ラニアは、2013年の「フレンド・ミー」、翌2014年の「ラニアコンセプト」を経て、進化した量産モデルである。1980〜90年代生まれの中国の若者層を狙って、中国人スタッフが中心になってデザインされたモデルだ。また、「ムラーノ ハイブリッド」は北米モデルに採用されるスーパーチャージャー付き2.5リッター+1モーター+2クラッチ+リチウムイオン電池のハイブリッドシステムを搭載したモデル。ともに、量産型として年内に発売が開始されるという。
日産のラニアは今回のベストニューモデル賞に輝いた
ムラーノ ハイブリッドは年内に発売が開始される予定だという
ホンダは大型のSUV「コンセプトD」を世界初公開した。このモデルが量産型になれば、ホンダの中国によるSUVラインナップは、コンパクトの「ヴェゼル」、ミドルサイズの「CR-V」、大型の「コンセプトD」という具合に、大中小のサイズがそろうことになる。
ホンダは大型SUV、コンセプト Dを発表し、ラインアップの充実をアピール
トヨタは「カローラ ハイブリッド」と「レビン ハイブリッド」を投入。中国で販売される「カローラ」は、日本とは異なるモデルであり、「レビン」はその派生モデルだ。トヨタは「プリウス」など、通常のハイブリッドで中国市場攻略を考えているようだ。
トヨタはカローラ ハイブリッドを展示
日本にもファンの多かったレビンもハイブリッドとなってお披露目された
スズキは、ジュネーブショーで公開した2台のコンセプトカー「iK-2」と「iM-4」を出展。ハッチバック「iK-2」の中国投入を予告した。SUVである「iM-4」は現時点では投入を検討中だという。
スズキはiK-2を出展。ハッチバックモデルの投入を予告した
iM-4はかなり個性的なデザインだが、現時点で発売は未定
中国の地元資本で独自路線を歩むブランドには、グレート・ウォール(Great Wall)やジーリー(Geely)、チェリー(Chery)、BYDなどがある。こうしたブランドも、日欧米と同じように、中国のトレンドであるSUVの新型車を中心に出品している。とはいえ、セダンの販売数も高いため、ブースの中は、SUVとセダンが並ぶという風景になっていた。
おもしろかったのは、プラグインハイブリッドやEVといった、日本で言う次世代エネルギー車の展示。中国では、以前からプラグインハイブリッドとEV(電気自動車)を「新エネルギー車」と呼んで、補助金を交付するなど、その普及に努めていた。ハイブリッドではなく、プラグインハイブリッドという点がポイントだ。そこには、ハイブリッド技術で先行する日本車とは、違う技術を磨こうという狙いが見てとれる。そのため、以前から、モーターショーでは中国ブランドでも数多くのプラグインハイブリッド車やEVが出品されていたのだ。
とはいえ、こうしたクルマは技術的なハードルが高い。そのためか、多くの出品車はボンネットを開けることが禁じられており、実際のメカニズムを見ることができなかった。それが、今回のショーでは、メカニズムを披露する出品車が増えていたのだ。特にEVに関しては、販売を開始したモデルもあるという。また、発売直前の2人乗りのマイクロEVも存在する。それだけ中国の技術も進んできたのだろう。とはいえ、それはEV限定の話。プラグインハイブリッドに関しては、まだまだ中国オリジナルで量産まで持っていくのは難しいように見えた。
中国ブランドはプラグインハイブリッド車やEVをこぞって出展した
その技術力を誇示するようにボンネットの中身も披露
2人乗りのマイクロEVも展示されていた
今回の上海モーターショーを振り返ると、欧米ブランドはプラグインハイブリッドなどのコンセプトモデルで先進性を強くアピール。日系ブランドは、新型量産モデルを数多く投入。中国ブランドは、SUVとEVに注力という格好であった。
ちなみに、日系ブランドのプレスカンファレンスなどでは、しきりに「昨年度の販売は好調であった」との報告があった。ただし、その内容は2012年の反日騒動で落ち込んでいた部分をようやく取り戻したというところ。この調子でシェアを伸ばすためにも、新型モデルの投入が相次いだのだろう。とはいえ、ドイツ系ブランドの人気は根強い。中国市場の販売競争は、なかなかに厳しいものがあるようだ。