イベントレポート

世界が狙いを定める「上海モーターショー 2015」レポート

今や世界一の自動車マーケットとして大きな注目を集めている中国。その中国は上海において、「上海モーターショー 2015」が開催された。本特集では、現地取材を行ったモータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏が、ショーの様子や街の様子などを詳しくレポートする。

今回で16回目を迎えた上海モーターショーは、上海市街の西部、国家会展中心で開催された

今回で16回目を迎えた上海モーターショーは、上海市街の西部、国家会展中心で開催された

ある意味、世界でもっとも政治の影響を受けるモーターショー

2015年4月20日、上海モーターショーは開幕した。中国では、北京と上海が交互にモーターショーを開催する。昨年が北京であれば、今年は上海といった具合だ。そして、今年の上海モーターショーでは、前回(2013年)と異なる点が多々あった。まずは会場の変更だ。前回の会場は、街の東南に位置する上海新国際博覧中心であったが、今回は、街の西に新たに作られた国家会展中心となったのだ。前回の会場も世界トップクラスの広さであったが、新会場はさらに大きくなった。建築面積147万平米の中に40万平米の展示スペースを擁する。東京ビッグサイトが建築面積14万平米/展示場面積8万平米であることを考えれば、いかに上海の規模が破格であるかがわかると思う。

その巨大な展示場で上海モーターショーは開催されるのだが、今年は例年になく取材がしやすかった。いわゆるプレスデイに「子どもの来場が禁止」になったのだ。そのおかげで、毎年、取材を難しくさせていた家族連れが消えた。また、「女性コンパニオンの禁止」も今年から。もちろん、インフォメーションでパンフレットを配る女性や、クルマを説明する女性はいるのだが、露出度の高いドレス姿のショーガールはいなくなった。そのせいか、女性コンパニオンを狙うアマチュアカメラマンの姿も見かけなくなった。さらに、建物の巨大さにあわせて通路も広々としているため、クルマの撮影は以前とは比べものにならないほどやりやすくなった。しかし、2日間あるプレスデイのうち、初日の午前中に主要メーカーの記者発表を行ってしまうというスケジュールは例年通り。同じ時間に開場のあちこちで並行して記者会見が行われるため、一人ですべての会見を見て回ることができないという、中国のモーターショーならではの困った部分はそのままであった。

会場となった国家会展中心は、建築面積147万平米、展示場面積40万平米の超巨大スペースだ

会場となった国家会展中心は、建築面積147万平米、展示場面積40万平米の超巨大スペースだ

各ブースを隔てる通路は広く、プレスデイにはゆったりと撮影ができた

各ブースを隔てる通路は広く、プレスデイにはゆったりと撮影ができた

露出度の高い女性コンパニオンは今年から禁止となった

露出度の高い女性コンパニオンは今年から禁止となった

女性コンパニオンを狙うアマチュアカメラマンの姿もほとんど見かけなかった

女性コンパニオンを狙うアマチュアカメラマンの姿もほとんど見かけなかった

また、中国は街のあちこちで治安維持のための「公安」が目を光らせている。昨年の北京のものものしさと比べれば上海の雰囲気は緩いが、モーターショー会場にも、そうした公安の姿が数多く見られた。展示ブースをグルリと囲むよう3〜5mおきに黒ずくめの公安が立つ風景も中国ならではだ。

ちなみに、中国の自動車業界では、中国人幹部の逮捕が続いている。一汽や東風といった大手メーカーの幹部が、汚職などで追放されているのだ。欧米や日本メーカーとも合弁する大手メーカーでの逮捕劇に、日系自動車メーカーの人間は「社内の中国人スタッフも動揺している」と話していた。

会場の変更から、来場者やコンパニオンの規制など、いわゆる政治の影響が強いのが中国のモーターショーの特徴とも言えるだろう。民主主義国家ではないという点が、こういう部分にも表れているのだ。

展示ブースには黒ずくめの公安の姿が目立った

展示ブースには黒ずくめの公安の姿が目立った

世界中のメーカーが参戦する世界最大のマーケット

続いて、中国の自動車マーケットのアウトラインを紹介しよう。経済の失速感が喧伝される中国だが、それでも自動車の販売/生産は右肩上がりを続ける。2014年の自動車販売は前年比6.9%増の約2350万台、生産は前年比7.3%増の約2370万台。年間500万台規模の日本どころか、世界2位のアメリカ1650万台を大きく引き離すほど、中国マーケットは巨大なのだ。そこに参戦するのは、地元中国のメーカーだけでなく、欧米や日本のメーカーなど、文字通り世界中のメーカーが名を連ねる。国別ブランドのシェアは、約40%が中国、約20%が欧州、約15%が日本、同じく約15%がアメリカ、残り10%が韓国といったところ。

また、欧米や日本のメーカーが現地で自動車を生産する場合、現地メーカーとパートナーを組まなければならない。そのため、中国では、純粋な民族系の中国車、中国メーカーと海外メーカーの合弁による海外ブランドの中国生産車、さらには、輸入された海外ブランド車がそろう。もちろん販売の中心は、現地生産車であり、そのうち90%ほどが上海汽車や東風(ドンファン)汽車、一汽(ファースト)など、10ほどのグループが上位を占めている。ちなみに、中国ではひとつの現地会社が、複数の海外メーカーと手を組むのが普通だ。そして、海外メーカー側もふたつの現地メーカーと手を組むケースが多い。どんなパートナーが存在するかといえば、上海汽車であればGMとVW。東風汽車はPSAグループと日産/ルノー、ホンダ、キア。一汽はVWにGM、トヨタ、マツダ。長安(チャンガン)汽車はフォード、マツダ、イスズ、PSAである。そのため中国のモーターショーで、現地メーカーのブースには、その現地メーカーが生産するVWとGM、トヨタなどのクルマが並ぶという光景を見ることができるのだ。

中国の道路では、中国車、欧米車、日本車など、さまざまなブランドのクルマを見ることができる

中国の道路では、中国車、欧米車、日本車など、さまざまなブランドのクルマを見ることができる

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