寒い日が続く平成最後の冬、みなさまはいかがお過ごしでしょうか。
地方での移動手段といえば自家用車が定番ですが、筆者が住む長野県佐久市の中心市街地はJR佐久平駅を中核にさまざまな施設や家屋が集中しており、徒歩だけでも日常生活を過ごしやすい小都市のようなエリアです。1年中パソコンに向かっている筆者は慢性的な運動不足なので、地元でも外出時はなるべく歩くように心がけています。
この季節、徒歩での移動中につらいと感じるのが、屋外でのスマホ操作です。手袋を外した直後はまだしも、しばらくスマホを操作していると手がかじかんでしまい、文字入力もおぼつかなくなってきます。
地元に限らず、毎月実施している速度調査などで上京したときも、冷たいビル風に素手をさらしながらスマホを操作するのは、かなりつらく感じます。都市部にお住まいの方でも、同じ悩みを抱える人は多いのではないでしょうか。
スマホのタッチ操作に対応する手袋も試したことはあるのですが、時には北海道を下回る最低気温さえ記録する信州の冬の寒さを前に、ニット素材などでできた薄手の手袋は防寒性が不足。かといって厚手の手袋では細かな操作が難しく、なかなかこれといった手袋に出会えずにいました。
普段の外出時に使っている防寒用の手袋。これくらいの防寒性はほしいところなのですが……
周辺の人はどうしているのかと思い何人かに質問してみましたが、「移動には車を使うからそれほど困らない」とのお返事ばかり。たしかに、歩行者を見かけるのは朝夕の通勤通学時くらいで、平日昼間の歩道はほぼ貸し切り状態。地元では、私の悩みは少数派のようです。
そんな悩みを抱く冬のある日に見つけたのが、サンコーの「USB指までヒーター手袋2」。指ぬきタイプのニット手袋にヒーターを内蔵し、電気の力で手を温める製品だというではありませんか。
これなら冬の信州でもスマホが操作しやすくなるかもしれないと思い、早速購入してみました!
「指先が空いているのに温かい!」というキャッチコピーに心惹かれた「USB指までヒーター手袋2」
手袋としての「USB指までヒーター手袋2」は、男女兼用のフリーサイズ。カラーバリエーションはありません。模様やマークなども一切なく、どこにでも売っていそうなニットの指ぬき手袋といった風情です。
本製品のキモであるヒーターは、手袋内部の温度を約38℃、約40℃、約45℃の3段階に調整可能とされています。
パッケージの裏面に記載されている製品仕様によると、温度は38℃、40℃、45℃の3段階で調整できるようです
内容物はヒーターを内蔵した手袋が1組と、スイッチ付きのUSBケーブルが2本。なお、ニット手袋には左右の区別がない製品もありますが、「USB指までヒーター手袋2」は右手用と左手用が明確に分かれています(詳しくは後述)。ケーブルは2本とも同じものなので、左右の区別はありません。
パッケージを手にしたときは「説明書が入っていない」と一瞬戸惑ったものの、封を開けたところに使い方の説明が記されていました。
内容物は手袋本体が1組にケーブルが2本と簡潔です
パッケージの内側に使い方とサポート案内が印字されていました
早速装着してみようと「USB指までヒーター手袋2」の手袋本体を手にしたものの、前述のように外見は無地のニット手袋そのもの。左右どちらの手にはめるべきなのか、そもそも左右に違いはあるのかが、ちょっと見ただけではわかりません。
試しにはめてみたところ、指の根本から手の甲にかけて、なにやらゴワゴワとした感触が。裏返してみると、使い捨てカイロで見る白い不織布のような素材が、内側の片面に縫い付けてありました。
パッケージのイラストや製品紹介のページを見ると、手の甲に当たる部分にヒーターが内蔵されているようなので、これがその部分なのでしょう。
左手用の手袋本体を裏返したところ。使い捨てカイロやマスクに使われているような不織布に覆われたヒーターが縫い付けられています
はめてみれば不織布が肌に触れるので左右の違いがわかるものの、はめる前に見分ける方法はないものかと考えてみました。
1つは、手袋の中を覗いてみる方法。指が通る部分をちょっと広げれば白い不織布が見えるので、そちらが手の甲になるようにはめればOKです。
もう1つは、ケーブルをつなぐコネクターの根元をチェックする方法。コネクターのコードは手首の少し上、小指側から顔を出しているのですが、よく見ると手の甲のほうに少しだけ位置がずれています。慣れるまではわかりづらいポイントですが、筆者はここで左右を見分けています。
コネクターの根元部分を比較。上の手袋(右手用)ではコードが伸びてくる開口部が見えていますが、下の手袋(左手用)では開口部が裏側になっていて見えません
実際に外で使ってみる前に、まずは室内で試用してみました。
「USB指までヒーター手袋2」では、電力を供給してくれるPCやモバイルバッテリーが必要となります。片手につき1本のケーブルを使うため、両手では合計2つのUSBポートがなければなりません。USBの規格は2.0です。
筆者はUSBポートを2つ備えたcheeroのモバイルバッテリー「cheero Power Plus 3」にケーブルをつないでみました。
手袋本体につないだケーブル2本を、モバイルバッテリーに接続してみました
給電状態でケーブルのスイッチを押すと、ランプが赤色に点灯しました。さらにスイッチを押していくと、緑色、赤と緑の同時点灯、再び赤色……といったように、「赤」「緑」「赤と緑」の順にループします。
ランプの色はヒーターの温度を示していて、赤は「強(約45℃)」、緑は「中(約40℃)」、赤と緑の同時点灯は「弱(約38℃)」に相当します。「弱」のランプは「赤っぽいオレンジ色」といった感じで、赤のみが点灯する強と見分けにくいのですが、「緑の次が弱」と覚えておけば、温度設定を間違えることはないでしょう。
左から「強(赤)」「中(緑)」「弱(赤と緑)」にセットしたところ。「強」と「弱」は肉眼でも見分けづらいです
両手に「USB指までヒーター手袋2」をはめて給電を開始してみると、ほんの2、3秒で、指の付け根を中心とした範囲に温かさが広がります。最初は「強」に設定していましたが、室内では「弱」まで下げても十分な温かさです。
装着した状態でPCのキーボードやマウスを操作してみました。手袋をした状態で操作すること自体がほとんど初めてなので、指先の力の入れ具合やマウスを動かすときの感覚などに戸惑いましたが、しばらく続けているうちに慣れてきました。
冷えた手先を「はーっ」と息で温めながら仕事をすることもありますが、そんなときに「USB指までヒーター手袋2」を装着すれば、冬場のPC操作も快適になりそうです。
スイッチを入れればすぐにヒーターが温まります
参考として、USBテスターで出力をチェックしてみました。cheero Power Plus 3のUSBポートは「5V/1A」と「5V/2.4A」の2つのポートを備えていますが、どちらのポートに接続しても、電流の値は0.36A前後の範囲に収まっていました。
USBテスターで出力をチェックしているところ。おおむね5.2V/0.36Aで動作していました
室内でのテストを終え、いよいよ屋外で使ってみるのですが、それには準備が必要です。
というのも、「USB指までヒーター手袋2」のケーブルは、1本の長さが2mほど。モバイルバッテリーを外のポケットに収納して使おうとすると、上着の外側に長いケーブルが2本垂れ下がってしまうのです。
そこで、モバイルバッテリーを上着の内ポケットに収納して、ケーブルは両袖の中を通して手首まで延ばすことにしました。ケーブルの先端をつまみながら腕と一緒に袖を通してもいいですし、あらかじめケーブルだけを通しておいてもいいでしょう。
手袋本体のコネクターにつなぐ先端部分が上着の袖口から出るように、ケーブルを袖に通します
上着を着たら、ケーブルの先端を手袋側のコネクターに接続します。ここで注意が必要なのは、先に手袋を装着してしまうと、片手でケーブルとコネクターをつながなければならなくなること。片手だけでは作業しづらいので、手袋をはめる前にケーブルをつないでおくのがおすすめです。
最後に、上着の内側からケーブルを少し引いてたるみを取れば、外出前のセッティングは完了です。
片手では挿し込みづらいので、手袋をはめる前にケーブルとコネクターをつないでおくのがいいでしょう
ちなみに「USB指までヒーター手袋2」では、温度設定のスイッチがケーブルの中央よりもUSB端子側に付いているので、上着の中にケーブルとバッテリーを仕込んだ場合、スイッチを押して温度を切り替えるには上着の前をはだけなければなりません。
頻繁に操作するスイッチではありませんが、手袋本体のほうに付いているか、あるいはケーブルの先端側に備わっていれば、もっと操作しやすそうだと感じました。
上着の中からケーブルを通すと、温度を切り替えるために上着をはだける必要があります
モバイルバッテリーから給電を開始し、ケーブルのスイッチを押して手袋を温かくしたところで、いよいよ外出です。ちなみに屋外での試用を行った1月23日11時頃の長野県佐久市は、空模様こそ晴れていたものの、アメダスの記録によると気温は1.3℃。風は弱めでしたが、建物などの陰に入ると肌にチクチクとした冷たさを感じるような体感温度でした。
普段は冒頭に写真を掲載した厚めの手袋をしているのですが、思い切って最初から「USB指までヒーター手袋2」だけを装着。果たして筆者は凍えずにスマホを操作できるのでしょうか?
試用当日のJR佐久平駅前にて撮影。前日も昼過ぎから晴れていましたが、2日前に降った雪が歩道のあちこちに残っていました
最初の2、3分は外に出たばかりということもあって心も身体も余裕があったのですが、しばらく歩いていると指先に冷たさを感じはじめました。温度設定を「中」から「強」に切り替えてみましたが、やはり冷たさは残ります。
それも当然で、いくら手の甲を温めているとはいえ、むき出しの指先は常に冷気にさらされています。そこで、歩いている間はゆるく拳を握ることで指先をできるだけ冷気にさらさないようにしつつ、ときどき指を動かして血行を促してみたところ、じわじわと温かさを感じるようになりました。
軽く握った指先をもぞもぞと動かしているうちに、指先がじんわりと温まってきました
ただ、スマホを操作しようと手を開けば、再び冷たさが指先を包みます。素手でいるよりは温かいものの、快適とまではいかず、早々にスマホをポケットに仕舞い込みました。
様子が変わってきたのは、外に出て15分ほどが経ち、歩くことで身体が温まってきた頃です。運動による発熱で体温が底上げされたためか、指先でもさきほどまでの冷たさはほとんど感じません。
スマホを取り出して写真を撮ったりSNSのタイムラインを眺めたりしてみましたが、指の動きはかなりスムーズです。スマホを取り出したまま歩いても手先に寒さを感じず、予想以上に快適だと感じました。
歩いて体温が上がる頃には、スマホを持ちっぱなしでも寒くなくなっていました!
「USB指までヒーター手袋2」は、「携帯カイロを手の甲に当て続けている」ような、じんわりとした温かみが特徴の防寒グッズです。本製品だけで冷え切った手をポカポカに温めるほどの能力はありませんが、凍えないように下支えする力は備わっています。
屋外で使う場合、外で動く時間が長い人に適しているでしょう。ちょっとした外出では身体が温まらないので本製品の効果も限定的ですが、歩いた時間が10〜20分を超えて体温が上がってくると、むき出しの指先もあまり冷たさを感じません。一定時間以上歩くのであれば、寒空のもとでもスマホを快適に扱えると感じました。
たとえば、冬の休日に「ポケモンGO」のポケストップを集中して巡るポケモントレーナーや、撮影が趣味で寒い日でもシャッターチャンスを求めて歩き回るような人など、冬の屋外で手元の操作が多い人にはぴったりではないでしょうか。
もちろん、本製品は屋内でも活用できます。PCのUSBポートに本製品をつなげば、冷え性の人でも手先を温めながらマウスやキーボードを操作できます。
ただし、注意したいのは「低温やけど」です。国民生活センターが発行する「国民生活」の2015年11月号によれば、体温より高い物体に皮膚の同じ場所が長時間触れ続けると、低温やけどを負うとされています。低温やけどに至るまでの時間は温度によって異なり、50℃では2〜3分、46℃では30分〜1時間、44℃では3〜4時間かかるようです。
「USB指までヒーター手袋2」では、温度設定を「強」に設定した場合、内部の温度は約45℃になるとされており、数時間装着し続けることで低温やけどに至る可能性がゼロではありません。ヒーターが不要な場面では給電を止めたり、本製品をはずしたりしておけば、無駄な電力消費を抑えることにもつながります。
本製品に限らず、低温やけどは使い捨てカイロやこたつでも起こり得ます。やけどを負わないように気を付けつつ、寒い冬を快適に過ごしましょう!
信州佐久からモバイル情報を発信するフリーライターであり2児の父。気になった格安SIMは自分で契約せずにはいられません。上京した日のお昼ごはんは8割くらいカレーです。