レビュー

海外で大ヒット! 「HELLDIVERS 2」は独特な面白さが中毒性高めのTPS

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2024年に海外で空前の大ヒットを遂げたTPSゲームが「HELLDIVERS 2」だ。本作はほかのプレイヤーと協力してミッションクリアを目指すPvEのTPSで、PS5とPC向けに配信された。本記事では「HELLDIVERS 2」の魅力を掘り下げ、本作が大ヒットを遂げた理由に迫ろう。

「HELLDIVERS 2」とは? 

「HELLDIVERS 2」はスウェーデンのゲーム開発スタジオ、Arrowhead Game Studiosによって制作されたシューティングアクションゲームだ。舞台は遥か先の未来、宇宙に進出した人類は「管理民主主義」という理想のもと、ほかの惑星を侵略し植民地化していた。植民地化した惑星では、原住生物の激しい抵抗を鎮圧するため、人類はヘルダイバーズという特殊部隊を投入。その地に”平和”をもたらしている。本作はそんなヘルダイバーズの一員となって反抗してくるおびただしい数のロボットやムシたちと戦う協力型TPSだ。

チームは基本4人で構成され、宇宙空間から広大な地表に打ち出された後に、敵の殲滅や要所の制圧、市民の安全確保などさまざまなミッションを遂行。最後に離脱ポイントに到達し、戦場から帰還するのが一連の流れだ。ちなみに、ミッションは途中参加もできる。「管理民主主義」という”正義”を理不尽と思えるまでに振りかざし、敵を無慈悲に殺りくしていくゲームプレイが特徴だ。

豪快なゲームプレイに隠されたリアル志向のゲーム性

本作はほかのプレイヤーと協力して次々と敵を倒していく爽快感が表面的には醍醐味とされているが、ただ考えなしに敵を倒していけばよいというゲームではない。1つひとつのゲーム要素は現実的な制限がかけられており、基本的にはリアル志向のTPSとなっている。

たとえば、武器のリロードはマガジン残弾数の喪失システムが採用されている。一般的なFPSやTPSでは、リロード時にマガジンに残っていた弾がなくなることはなく、消費した弾数のみが所持残弾数からリロードされる。しかし、本作は、リロードを行うともともとマガジンに残っていた弾はなくなってしまい、所持できるマガジン数も多くないため、ギリギリまでマガジン内の弾を撃ってからリロードしなければないけない。

リロードした瞬間にマガジン内に残っていた弾は喪失してしまう

リロードした瞬間にマガジン内に残っていた弾は喪失してしまう

ほかにも、銃を撃つ際の反動がかなり強く、うまく制御しないと弾が真っ直ぐ飛ばない。敵の的自体が大きいので、弾が全然当たらないといったことはないのだが、遠くの敵を狙う際は通常のシューティングゲーム以上に弾が当たりにくい。つまり、本作は誰でも考えなしに銃を撃って気持ちよく敵を倒すというゲーム性だけではなく、思考や戦略性が重要視される部分が多いのだ。

銃のブレは大きく、遠くの敵にはうまく当たらないこともしばしば

銃のブレは大きく、遠くの敵にはうまく当たらないこともしばしば

そんなリアル志向のゲーム性の中で最も代表的な要素が、フレンドリーファイヤだ。ご存じない人のために説明しておくと、フレンドリーファイヤとは「自分の攻撃が味方に当たる。味方の攻撃が自分に当たる」システムのことである。これは開発陣からも語られていることだが、本作におけるフレンドリーファイヤは非常に重要、かつゲームの根幹を形成する要素として位置づけられている。

言うまでもないことだが、通常フレンドリーファイヤは避けられる要素だ。不本意に味方を殺してしまったら味方に恨まれることになりかねないし、わざとではない分、申し訳なさとやるせなさがプレイヤーを襲うきっかけになるからだ。

しかし、「現実であれば味方の弾でも人は死ぬはずだし、それがゲーム内で表現されないことは不自然。世界観にリアルな説得力を持たせるためには必要不可欠な要素だ」と開発陣は語る。そして本作ではこのフレンドリーファイヤが実装されたことで、より新鮮かつ戦略的なゲーム性が生み出されている。

フレンドリーファイヤが実装された本作の基本は、味方と射線を絶対に被せないことである

フレンドリーファイヤが実装された本作の基本は、味方と射線を絶対に被せないことである

味方にも弾が当たることによって、本作では通常のシューティングゲームのように味方に被せて撃つことは許されない。通常のゲームであれば味方に被弾しても弾が浪費されるだけだが、本作の場合はディスアドバンテージになる。

そのため、目についた敵をガムシャラに攻撃するのではなく、付近に味方がいる場合は味方に当たらないように別の射線を通す、位置取りをするという戦略が肝になる。

このフレンドリーファイヤの要素を考えるうえで、もうひとつ重要なのが本作に用意された「戦略支援」という要素だ。これは、宇宙空間にいる艦隊への支援要請で、強力な武器を呼ぶもの、補給物資を呼ぶもの、チームの欠員を補充するものなどさまざまな支援が用意されている。

画面左上に見えているのが戦略支援を呼ぶためのコマンド。表示されている矢印を素早く正確に入力しなければならない

画面左上に見えているのが戦略支援を呼ぶためのコマンド。表示されている矢印を素早く正確に入力しなければならない

地表へ爆撃などを行う「攻撃型戦略支援」なるものが存在するのだが、この爆撃でも味方は死んでしまう。ムシ、ロボット双方の敵が大量に発生するので、銃だけでは捌ききれないことが多い。こういった状況下では「攻撃型戦略支援」に頼らざるをえないのだが、よく考えて撃たないと味方も巻き込んでしまう。だからこそ、味方が巻き込まれる位置にいないか確認したり、味方が「攻撃型戦略支援」を撃ちやすいように自分だけ敵に近づいたりしないなど、陣形を意識する必要が出てくる。

画面奥に見える爆発が味方による「攻撃型戦略支援」。敵を一掃できるが、巻き込まれれば即死する

画面奥に見える爆発が味方による「攻撃型戦略支援」。敵を一掃できるが、巻き込まれれば即死する

敵を自動攻撃するサブウェポンや、空中にホバリングして射線を通せるようになるジェット機など、さまざまな装備が解禁されていくが、強力な武器は敵をより効率よく殲滅いっぽうで、味方を巻き込む可能性も高いため扱いに細心の注意を払わなければいけない。これは一般的なFPS、TPSでは体験できない部分だ。

また、味方は死んでしまっても、すぐに復活する(回数制限あり)ことが可能。このシステムによって、味方は殺されてもほとんどフラストレーションが溜まらない。死亡が冗談で済む範疇に留まっているのも、本作でフレンドリーファイヤが許されている大きな理由と言える。

死んでも新たなヘルダイバーズのひとりとしてすぐさま地表に再出撃できる

死んでも新たなヘルダイバーズのひとりとしてすぐさま地表に再出撃できる

「戦略支援」にはもうひとつ大事な役割がある。それはゲーム内におけるほどよい緊張感の演出だ。指定された矢印を正確に、かつ素早く入力するのは意外と難しい。目の前に敵が大量に迫る場面で、細かな入力を瞬時に行わなければいけないため、ミスるとそれだけで死因になりかねないのだ。

「戦略支援」のコマンド入力を練習するためのミニゲームが用意されている

「戦略支援」のコマンド入力を練習するためのミニゲームが用意されている

一般的なシューティングゲームにはないリスクや戦法を考慮しなければならないからこそ、独自の魅力を持つ。深掘りすればするほど本作の秀逸なゲームデザインに気づくだろう。

ゲーム性と世界観のシンクロから発生する中毒性

本作のゲーム性が斬新であることを解説してきたが、より重要なのはこういったゲーム性が本作の世界観と見事にシンクロし、ゲーム全体にはっきりとした説得力を持たせている点だ。

本作の世界では「管理民主主義」という思想自体が妄信的に絶対善とされ、この思想のために死ぬことは最大の名誉とされている。そのため、人の命がゴミ同然のように扱われているのだ。ヘルダイバーが死ぬ際は、腕や脚が吹き飛び、肉片が飛び散る。かなり悲惨な最期だ。

ただし、補充されて新たに操作するキャラクターは、先ほど死んだキャラクターとはまったくの別人になる。誰も死んだヘルダイバーのことなど気にもとめていない。多くのムシ、あるいはロボットを虐殺、破壊するが、人間の命の重さもムシやロボットと変わらないのだ。

敵の攻撃どころか、味方の不注意によっても死んでしまうヘルダイバーは、まさにこの「管理民主主義」の駒であり、立役者だ。この世界観自体が、人ひとりの命に価値はないと定義するからこそ、自身の死を冗談で流せる。ムシの大群に突っ込んでいって「民主主義万歳!」と叫んで木端微塵に吹き飛ぶ、そんなバカゲー的な遊び方が許されるのではないかと、プレイしながら感じた。

「管理民主主義」が行き着いた世界は、民主主義が行き着く先の未来のひとつなのかもと想像すると、現実とのつながりも感じられ、リアル志向の強いゲーム性1つひとつに説得力が生じてくるのだと思う。

総評

「HELLDIVERS 2」はクセまみれの世界観をベースに、敵を次々と殲滅していく豪快さ、リアル志向のゲーム性、緊張感を持たせる要素、ゴア表現など、あらゆる要素が絶妙に相互作用することで、非常に面白い協力型TPSの傑作だ。

ストレス解消や気ままにフレンドとゲームを遊びたい人にはもってこいの作品。気になる人は、ぜひ今からでも遊んでみてほしい。

ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)
Writer
ぐう実況(ゲーム紹介系YouTuber)
YouTubeを中心に活動するゲーマー。PSやPCのソフトを中心にゲーム紹介をする機会が多く、同分野を専門に活動しています。プライベートでは任天堂などの作品も頻繁に遊びます。
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水川悠士(編集部)
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水川悠士(編集部)
デジタル系メディアから価格.comへ。スマホ、スマートウォッチなどのガジェット周り、ゲーム関連を担当。触ってきた製品は数えきれないほど多いです。価格.comマガジンのYouTubeにも出演中。
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