筆者が1stライブから追い続けている、AR(拡張現実)技術によって作り出されたデジタルキャラクター「ARP(AR performers)」の「2nd A’LIVE」に、行ってきました! 価格.comマガジンの記事としては異色かもしれませんが、最新のデジタル技術を活用したエンターテインメントは、ここから派生してさまざまな分野に応用されていくかもしれないので押さえておきたいですからね。……というのは建前で、ARPが繰り広げるライブはめちゃくちゃ楽しいので、知っていただきたいというのが本音(笑)。今回は、ARPの生みの親である内田明理プロデューサーにARPに関するインタビューをを行ったこともある“オタクカルチャー”に詳しいライターの阿部美香さんにも観覧してもらいました。
2ndライブは2017年7月22日と23日のdaysで、1日3公演、計6公演を開催。筆者は1日目の公演を観覧しました
ライブの内容に触れる前に、ARPについて簡単に説明しておきましょう。ARPのライブの最大の特徴は、リアルタイムであること。あらかじめ用意しておいた映像を再生するだけのARコンテンツとは異なり、ARPは会場にモデリングできる機材を準備し、ダンスや動作を担当する「Aキャスト」と、歌やトークを担当する「Vキャスト」、そして服や髪の毛など細かい動きを調整する技術スタッフが3人で1組となり1キャラクターを演じています。そのため、歌っている最中のパフォーマンスも時々で変化し、観客とのやり取りも可能。普通のアーティストと同じようなライブが行えることにくわえ、ダンスも歌もそれぞれ一流の方が担当しているので、パフォーマンスのレベルが高いところも見ものです。
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このようなコンテンツであるがゆえ、“生”の彼らに会えるのは現状ライブのみ(ラジオ放送で声だけを聞くことはできます)。前回1stライブが開催されたのは2017年1月だったので、半年ぶりの再会です。
会場に足を踏み入れてまず驚いたのは、フラワースタンドの多さ。1stライブと比べると、6倍以上華やかな印象です(筆者所感)。たまたま会場でアニメ雑誌の元編集者と出会ったのですが、「女性向けコンテンツでこれだけ凝ったフラワースタンドが届くというのはめずらしい」と関心していました。しかも、フラワースタンドの先駆けでもあり、バリエーションや数が多いことで有名な「アイドルマスター」では10人ぐらいで出資して1つのフラワースタンドを贈ることが多いのに対し、ARPの場合は1人や2人で行っているものがメイン。個々のファンの熱量がすごいと、業界の方から見ても興味深いようです。きっと1stライブを見たファンからの贈り物だと思いますが、一度見た人たちがとりこになっているのは間違いないでしょう。
紙で作られたフラワースタンドは、ライブに同伴した阿部美香さんも「これはすごい」とマジマジと見入っていたほど
会場は前回と同じなのですが、報道人の後ろにも席が追加され1stライブよりも動員数は劇的に増えているようです。女性がメインではありますが、1stライブから通っている男性もいらっしゃり、「成長を見られるのが楽しみ」と語っていました
ライブは大きく、パフォーマンスの観覧とパフォーマー同士が競う「バトルソング」に分けられます。パフォーマンスについては基本的には前回と同じなのですが、CGの制御技術が向上したような印象を受けました。1stライブの時からパフォーマーの動きに違和感はなく、人間らしい動きで驚きましたが、今回は格段になめらかに! 陰影のつけ方も調整されたのか、立体感が増し、服の質感をより感じました。そして、1番変化を感じたのはVキャストの成長です。しゃべりや歌唱力が劇的にアップ。ラジオをやっているおかげで話術が鍛えられたのか、4人での会話もテンポがバツグンによくなりました。正直、1stライブの時は「うまく返答できるかな?」とハラハラするパフォーマーもいたのですが、今回は問題なし!
新衣装の披露のために1回転するARPメンバーたち。「A’LIVE」では静止画撮影OKなので、ファンが連写する連写音がいたるところから響きます
レオン(左)の衣装がもっとも新衣装感があるという話から、レイジ(右から2番目)に「夏のコンビニの前にたまっている感じでかわいいね」とポーズ付きでからかわれたり……
衣装が暑そうということで、いじられるシンジ(中央)。レオンがニオイを嗅ぎに寄ってきて、シンジに嫌がられるといったように新衣装の話題だけで大盛り上がり。ARPは仲よし過ぎてかわいくて……ツライ!
レオンが振りまわすタオルに当たらないように避けるシンジと、仰け反ってしまっているレイジとダイヤ。ものすごく自然な動き、というか、完全に生きている動きです!
このようなやり取りを見ていると自然過ぎて忘れてしまいますが、ARPの動きは“生”。AキャストとVキャストはライブ中、アイコンタクトで会話(歌)と動き(ダンス)を合わせるという神技レベルのことを行っており、その集中力はハンパではありません。アドリブにも瞬時に対応しなければなりませんからね。このような裏方のことを意識してMCやパフォーマンスを見ると、鳥肌が立つほど興奮します。こういった生の演出は、ただ与えられた設定を演じるだけでは実現できません。1人が会話も動作も担当するほうがずっとラクですが、内田プロデューサーが追求する「完璧なキャラクター」のためには、それぞれのプロが必要でした。難易度の高いことに確実に応える演者、そして技術スタッフの一流の仕事が感じられるのも「A’LIVE」の魅力です。
ダンスが一番うまいのはレオンでしょう。新曲「FANTASISTA」ではマックスもキメていました。筆者は第1公演〜第3公演まで観覧しましたが、いずれも歌い方のアレンジが異なっていたことから生なのは間違いありません。練習時は何度も転倒して失敗したと話していましたが、本番ではすべて成功。レオンは普段の甘えた話し方と、キレッキレなパフォーマンスの差がいいですよね
初めてこのライブを見たライターの阿部美香さんも「想像していたよりも、よく動き、よく喋る」と関心していました。特に動きがスムーズで、ひとりひとりをモーションキャプチャーしているだけあってダンスの細部やMCの所作にも、その人らしい個性がちゃんと表れているのはいいと高評価。いっぽう、同行したカメラマンからは、「よく動くから撮影しにくい!」といったコメントも(笑)。
観客に向けたポーズも、4人それぞれ。個性が出ていますね
なお、中央スクリーンの脇にサイドモニターが今回から設置されました。後方カメラからキャラをとらえたり、客席ナメでステージを引きで見せるのは、リアリティが感じられて◎
女性だからキャーキャー言っているように思われるかもしれませんが、パフォーマーが女キャラであったら男性が歓喜しているはずです。実際、筆者の隣りの席にいた取材にきていた男性が、ARPのパフォーマンスを見て「かっこいい」とつぶやいていましたし、同伴したカメラマン(男)も「音楽がアニソンっぽくなくて、聴かせますね」と、ダンスや歌のクオリティは“キャラクターのファンだから”という域を超えていることは間違いありません。
2ndライブでは数曲の新曲が用意されていたものの、すべてのパフォーマーに新曲が与えられたワケではないのでどうなるのかな、と心配していたのですが、カバー曲を歌うという試みが実施されました。これは、彼らがエイベックスに所属したことが影響しているのかもしれません……。筆者個人的には、ARPの楽曲が好きなのでオリジナルがよかったと少しがっかりしたのですが、実際に聴いてみるとパフォーマーの持ち歌とは異なるテイストのものもあり、それが意外とマッチしていると感じるものも。こういった系統の違うカバー曲を披露して、新たなテイストの楽曲作りにつなげていくのかな? と予想しています。
Acid Black Cherry「Black Cherry」をカバーしたレイジ。エイベックスから「ぜひ、レイジに歌ってほしい」とリクエストされたそうです。普段は、ロックな曲を歌っているので新鮮。かつ、「Black Cherry」の曲調がすごく合っています。ハンパなくエロい! ピンクの照明も似合っているので、ピンクなモノを身につけてほしいです
そして、もうひとつの見どころが、シンジとREBEL CROSSのユニット「シンジ feat CROSS BONE」。王子様キャラであるシンジがTシャツとジーンズといういでたちで、ロックな曲「TENDER BLUE」を歌うのです。しかも、スタンドマイクを振りまわしまくり、ヘッドバンギングしまくる王子! この曲を披露したあとは、シンジの性格が豹変し、ワイルド&クールになるのですが、そんなシンジもアリです。やさしいシンジもいいけど、男らしいシンジもイイ! 「シンジ feat CROSS BONE」がこのあとも続くのか、今回きりなのかはわかりませんが、衣装も含め、新しい組み合わせが見られるのは非常に楽しいので、今後の企画に期待しています。
シンジ(中央)とCROSS BONE。CROSS BONEは、シンジとダイヤ(右)がインディーズバンドで組んでいた時のバンド名です
ARPのライブはただ歌やダンスを楽しむだけでなく、観客が参戦してパフォーマーと一体となってステージを盛り上げる「バトルソング」が最高におもしろいところ。専用アプリ「ふれフレ」をダウンロードしたスマートフォンを、音ゲーの要領で振って応援し、どれだけタイミングよく応援できたかがパフォーマーの勝敗を決めるため、観客もうかうかしていられません。そんなバトル要素が2ndライブでは増え、2種類のバトルが用意されていました。通常の「バトルソング」と新企画の「バトル for カバーソング」です。「バトルソング」は最終勝者にごほうびが与えられるというもの。1stライブでは勝者のレオンがセルフプロデュース権を勝ち取り、2ndライブでそのセルフプロデュース曲「FANTASISTA」を披露。今回は1日目と2日目それぞれの勝者がユニットとなり、次回(3rdライブ)で披露……というように結果が未来につながっていくのです。そして敗者には罰ゲーム「課題」が与えられ、2日目に漫才を披露。この漫才が意外とレベルが高く、推しキャラを勝たせたいけれど、漫才しているかわいい姿も見たいという葛藤に悩まされますが、実際にバトルソングが始まると勝たせるために必死になります(笑)。
縦に流れてくる円が中央にきたタイミングでスマートフォンを振ると、ポイントをゲットできます。今回から獲得したポイント数が見えるようになりました
応援コメントも送ることが可能。このコメントが出てくると、テンションがぐんぐんアップします!
1コーラスごとにリードしているパフォーマーが発表され、その時点でリードしているパフォーマーがサビを1人で歌える権利を獲得。たとえ、現時点で負けていたとしても、次のコーラスでは推しを勝たせる! というファンの意地の見せどころでもあります
推しキャラにこうやってサビを歌わせてあげたいのですが、負けているほうのパフォーマーのしょんぼりした姿を見ると心が痛みます
第2公演のバトルソング「シンジ VS レイジ」では、レイジが勝利
いつもクールな感じにしているレイジが、勝利に歓喜し、思わず、飛び跳ねながらステージ端まで! 普段は言わない「ありがとう」まで言いかけるほど(最後の一文字を言う前に気付いて止めました)、本人が大興奮。ってか、かわい過ぎか!!!
筆者は、1stライブでは「ふれフレ」を体験することができなかったので、今回が初めての「ふれフレ」だったのですが、これは熱くなりますし、見ているだけよりも「ふれフレ」をしたほうが断然楽しい。内田プロデューサーがインタビューで、バトルソングはみんなガチで、負けた側のAキャストやVキャストが涙することもあると話されていましたが、バトルソングを歌っている時のパフォーマーの気合は観客にも伝わってきます。そして、この勝負が終わった後のパフォーマーたちのやり取りも見逃せないポイント。敗者が勝者に祝辞を述べるだけでなく、必ず勝者が敗者を称えるのです。ここがイイ! バトルソングって酷だなぁとも思うのですが、最後には両者に「ありがとうー」と声援を送りたくなるほど本当に胸が熱くなります。「ふれフレ」のシステムを導入することを考えた内田プロデューサーって、やっぱりスゴイ!
そして、もうひとつ追加された「バトル for カバーソング」は対でのバトルではなく、持ち歌を披露している時にどれだけ「ふれフレ」で応援されたか、ポイントの累計で競うというもの。1日目の場合だと、第1、2、3公演での応援ポイントの集計が多かった人が、第3公演でカバー曲を披露できます。もちろん、全員が2ndライブでカバー曲を歌えるようにプログラムは組まれていますが、推しキャラオンリーの歌声が聴ける機会が1回でも増えるなら応援してあげたいですからね。
「バトル for カバーソング」は1対1形式の「バトルソング」のようにポイントが表示されないので、「勝たせてやるぜ!」といった気合は低め(筆者所感)
と思ったら、応援ポイントが高かった観客は応援しているパフォーマーに名前を呼んでもらえるという特典がありました! しかも、カバー曲を歌える権利も獲得ですからね。筆者も必死に応援すべきでした……
筆者はすごーい! と感動しているだけなのですが(笑)、今回初体験したライターの阿部美香さんに気になったことを聞き出したところ、CGモデリングへの課題をいただきました。
激しいダンスを行った時、伸ばした手足の戻ってくる具合や上半身の動きがちょっと気になりました。肩・首・頭の連動、腰など横方向へのひねる動きがもう少しモーションキャプチャーで拾えるようになれば、より人間の動きに近くなるのではないかと思います。ただ、彼らは2次元キャラクターですし、こういうコンテンツでは、現実と非現実の間というのがいいのかもしれません。あとは、システム的に難しいのでしょうが、黒バックであることが多いので、インタビューの際に内田プロデューサーがおっしゃっていたような物理セットとの融合などが実現することを期待しています、とのことでした。
でも、想像以上に出来がよく、驚いたというのが阿部さんの第一声です。実際に見ないとわからない魅力だし、見ればハマるだろうなぁとも話されていたので、そこは「やはり!」とうれしくなりました。また、「歌終わり→暗転→出ハケをあえて見せるための薄明かり→暗転→歌」で臨場感とキャラっぽさを出す演出(出ハケの時に足音をあえて流しているのは新鮮でした。笑)は、実際のライブではないことなので、よく考えたものだと関心しましたと、プロならではの意見も。今後、ARPのライブを観覧する際には、阿部さんがコメントされたことを気にして見てみようと思います。きっと、内田プロデューサーやユークスなら、課題に応え、クオリティをもっと向上させてくることは間違いないでしょうからね!
動きでTシャツの裾がめくれて肌が見えたり、衣装の素材感がわかるなど細かい再現がされているは素敵でした。欲をいえば、ライブ後半には汗で髪が乱れるような演出ができたらいいよね、という要望を阿部さんからいただきましたが……、たしかに、それは色っぽい!
ARPはアーティストの基本である、歌とダンスが本格的なのがたまらない! かつ、パフォーマー同士のやり取りがおもしろいし、かわいいし、何度聴いても見ても飽きません。だから、公演を連続で見るのもへっちゃら、というより、連続で見たほうが楽しい! 今回は3公演を通しで観覧したのですが、毎回、違う楽しさを体験できました。1日目の場合、3公演目でシンジのテンションがおかしくなったり、最後に七夕の歌「たなばたさま」を歌ってくれたり。2公演目では、みんなでニャンニャンポーズしたり、ダイヤが誕生日の観客に「ハッピーバースデートゥーユー」をアカペラで歌ってくれたりと、それぞれの回でしか体験できないことがいっぱい。筆者は2日目には参加できませんでしたが、ファンのSNSをチェックしていると、かなり胸アツなことが起こっているようで。課題の漫才も2日目でしか見れませんしね。ARPのライブは全公演見たほうが断然おいしいのは、間違いなさそう。
第2公演で見ることができた、ニャンニャンポーズ。自然と向かい合った感じでポーズしてしまったREBEL CROSSは、仲良しですよね
なお、今回の公演ではいろいろなことが起こりました。筆者も居合わせた第3公演では、一度バトルソングを諦めるまでの流れとなりましたが、その際のパフォーマーやMCの森一丁さんの対応、そして、すべてを理解し、どんなことが起きても受け入れ、一緒に盛り上げようとしていた観客の姿が忘れられません。その裏では、スタッフたちが懸命に修復し、最終的には無事にバトルソングを開催できたのですが、一体感と盛り上がりは最高潮でした(筆者は感動して泣きました)。一般的にはトラブルと言われることかもしれませんが、筆者はこのような“生”だからこその緊張感がARPの醍醐味だと思います。
次回3rdライブではどれほどの成長を見せてくれるのか、そして内田プロデューサーがどんな仕掛けをしてくれるのか非常に楽しみ。「バトルソング」の勝者になったレイジ(1日目)とシンジ(2日目)のユニットの楽曲がどうなるかも気になりますしね。筆者としては、バックステージを取材できるまでARPを追い続けたいです。
休み時間、パフォーマーたちはお絵描きをしているようで……。第1公演では七夕の牛車にちなんで描かれた牛が披露されました。その絵が秀逸で、見ると元気が出るので載せておきます!(笑)
※彼らの名誉のために言っておくと、スマホなどで検索するのはNG。何も見ずに描いています。
@レオン1回目、Aシンジ、Bダイヤ1回目(下描きしないように言われたのに、してしまった)、Cレイジ(名前書かないでと言われたのに、書いてしまった)
シンジの絵を見て、ダイヤとレオンが描き直し。もうおわかりでしょうが、左がダイヤで右がレオン
そして、第3公演では織姫の絵が! こちらも元気出ます!!
@レイジ1回目(失敗してゴミ箱に捨てたものをレオンが拾ってきた)、Aダイヤ(音姫……トイレのやつかよと他メンバーにつっこまれる)、Bレイジ2回目(ダイヤのを見て描き直した)、Cシンジ(年に1日しか会えない悲しさを表現したそう)
そして、問題作(?)がレオン2回目(左)。1度目の失敗作は行方知れず。そして、2回目のイラストも納得できなかったようで、3回目にトライ(右)。みんなのをチラチラ見ながら描いていたようなのですが、織姫が流されていますね。笑
リアルよりも二次元男子が大好きで、20年以上“腐活動”をしている筋金入り腐女子ライター。おもしろいモノ・コトにも目がない雑食系です。