世界的ギターブランドのFender(フェンダー)が、新作ギター「AMERICAN ACOUSTASONIC TELECASTER」(以下、ACOUSTASONIC/アコスタソニック)を発表した。その特徴は、1台で「エレキギターの音」と「アコースティックギターの音」を両方鳴らせるということ。まさに“新機軸ギター”と言えるモデルだ。
Fenderは、米カリフォルニアで2019年1月24日(現地時間)から開催される世界最大級の楽器ショー「The 2019 NAMM Show」に出展する。もちろんACOUSTASONICも、同社ブースの目玉として披露される予定だ。
ACOUSTASONICの発売は2019年春とまだ少し先になるようだが、Fenderの国内ショールームで少しだけ実物を見ることができたので、ご紹介しよう。
ポップなカラバリも特徴的なACOUSTASONIC。このほかにブラックとグレーもあり、全部で5色展開となる。メーカー希望小売価格は270,000円(税別)
ACOUSTASONICの開発コンセプトは、「これまでにない音楽を創造する」。何はともあれ、まずは演奏動画を見ていただきたい。前半はアコギの音色、後半はエレキギターの音色に切り替えて演奏している様子だ。弦はアコギ用の弦を張っている。
続いては、写真でざっと特徴を見ていこう。「テレキャスの形だけどエレアコ寄り」というルックスがユニークだ。
テレキャスターシェイプで、ボディトップはソリッドAシトカ・スプルース、ボディバックはマホガニーを採用するという設計。膝の上に乗せても立ってプレイしても、イイ感じになるデザイン
よく見るとコンターを施しているフルホローボディが特徴。フロントにはトーンホールが開いていて、さらにピックアップやMODノブが付いている
ネック部は、マホガニー材を採用したCシェイプのテレキャスターネック。エボニー指板を採用している
ハイフレットのプレイもしやすいよう、ヒールカットされていることにも注目
本体側面にアウトプットジャックを装備。そのすぐ上にはmicro USB端子を備えており、内蔵するアンプをUSB充電できるようになっている
さて、ACOUSTASONICの大きなポイントは、ボディに装備する「5段階のポジションセレクター」と「MODノブ」。この2つを組み合わせて、エレキギターとアコギの音を作り出すことができる。
エレキギター風とアコギ風のサウンドを5段階で設定できるセレクター(左)と、音色を調整できるMODノブ(右 ※2つ付いているノブのうち、ひとつはMODノブで、もうひとつはボリュームノブ)
実は、ひとえに「エレキギターとアコギの音を切り替えられる」と言っても、ACOUSTASONICは2種類の音しか出せないのではない。実は、エレキギターとアコギの“中間の音”も自由に作り出せるのだ。
使い方としては、まずサウンドのベースをエレキギター風にするかアコギ風にするかを、5段階のポジションセレクターで設定する。その状態でMODノブをひねっていくと、さらにサウンドのトーンを変化させることができる。これらを組み合わせることで、「エレキギターとアコギの音をブレンド」するようにサウンドを作ることが可能。MODノブは挙動がなめらかで、操作がアナログライクなため、細かくトーンを調整できる。
この画期的な機能を実現するため、ACOUSTASONIC の内部には、Fenderの新技術が多く搭載されている。
その要となるのは、同社がFISHMANと共同開発した新アコースティックエンジンだ。これにより、サウンドの切り替えを行ったり、サウンドをブレンドして高品位に鳴らすことができる。また、特許申請中という「STRINGED INSTRUMENT RESONANCE SYSTEM(SIRS)テクノロジー」によって、サウンド自体の品位を高めているのも特徴。これにより、迫力のあるナチュラルなヴォイシングと、豊かな倍音の表現を突き詰めた。
オーセンティックなFenderのエレキギターサウンドを鳴らす「FENDER ACOUSTASONIC NOISELESSピックアップ」を搭載。エレキギターサウンドとアコギサウンドをブレンドして、“新しい音”を作り出す
トーンホールのエッジは丸みを帯びていて、響き方への影響を計算した設計だそう
ACOUSTASONICは、コンセプトだけをパッと聞くと、エレキギターとアコギを合体させたような1台に思えるが、Fenderでは「両者の中間に位置するギター」とアピールしている。
上述の通り、エレキギターとアコギのサウンドを自由に行き来し、さらにその“中間の音”を自由に作り出せるというのが大きな特徴だ。それに、エレキギターの弦とアコギの弦を張り替えながら使ってみれば、また違った効果が得られるだろう。ギターの世界で縦横無尽なサウンドクリエイションを実現する、魅力的な1台だ。
オーディオ&ビジュアル専門サイトの記者/編集を経て価格.comマガジンへ。私生活はJ-POP好きで朝ドラウォッチャー、愛読書は月刊ムーで時計はセイコー5……と、なかなか趣味が一貫しないミーハーです。