特別企画
変態についてマジメに考えてみた

エフェクター界の謎ジャンル「変態系」とは? 定番&注目の7モデルをピックアップ

エフェクター界の謎ジャンル「変態系」。しかしひと口に変態系と言っても、そのサウンドはペダルごとにバラバラ。その定義は実に曖昧です。でもそれって、曖昧なまま何となくで定着してしまうほどに、「変態系」は魅力的な言葉でありジャンルである、ということですよね。

今回は、そんなヤバめの魅力を放つ「変態系エフェクター」の世界に踏み込んでみましょう。多種多様な変態系ペダルを、それを変態たらしめる特徴的な要素を抽出して分析しつつ、定番&注目のモデルを紹介していきます。変態を改めてマジメに考えてみるのも、ちょっとおもしろそうじゃありませんか?

変態系って言われて思い浮かべるサウンドは?

皆さんは、変態系って言われたら、どんなエフェクターのどんなサウンドが思い浮かびますか?

その答えは、人それぞれ全然違うのではないでしょうか?「ピギィヤアーッ!」と叫び出す発振ファズを思い浮かべた人も、「ズガガガッ!」と音をぶつ切りにするスライサーを思い浮かべた人も、「ギョワンンンンンンンアアアアアアピー!」と残響がぶっ壊れていく崩壊ディレイを思い浮かべた人もいることでしょう。もっとヤバい何かを思い浮かべた人もいることでしょう。ひどい変態さんですね。

でも自分が思い浮かべたのとは違う、ほかの人が思い浮かべたサウンドやペダルについても、「言われてみれば確かにそれも変態系だよね」って何となく納得できそうじゃありませんか? つまり我々ギタリストの中での「変態系エフェクターの共通認識」「変態系というジャンル」みたいなものは、うまくは説明できなくても確かに確立されているのです。

その「変態系」というくくりのポイントは、それがエフェクトの種類とは関係ないということ。

たとえば同じ〇〇系でも「歪(ひず)み系」や「空間系」だったら、あるいはさらに範囲を狭めて「ファズ系」や「ディレイ系」だったら、同じ系であれば別の製品でも、ある程度は共通性のあるトーンや機能を備えているものです。しかし変態系は前述のように、ある変態は「ピギャー!」かと思えば、別の変態は「ギョワンンンアピー!」ですし、前者はファズですけど後者はディレイですから、音だけではなく機能や操作の面での共通性もまったくありません。

「変態系」は、「歪み系」や「空間系」といった一般的な分類とは別の観点からのジャンル分けなのです。

変態系をその構成要素から分析してみる

そのように、何となくで確立されているのが「変態系エフェクター」という謎ジャンル。ですからその定義を明確化することは難しいでしょう。ですが、変態系と認識されている具体的なエフェクターのサウンドや機能をあれこれとチェックしていくと、「変態の構成要素」というか「変態キーワード」的なものはいくつか見えてきます。

そこで、変態系エフェクターをその構成要素の組み合わせで分析してみましょう。今回設定した変態系構成要素は↓こちらです。

●過剰:歪み回路の増幅率など何かしらが過剰
●異常:回路の異常動作などを意図的に再現
●合成:組み合わせると変な音になる複数エフェクトを一体化
●偶発:パラメーターをランダム制御

変態系エフェクターというものは、これらの要素のうち少なくともひとつを備えています。そういうことにしておかないと記事が成り立たないので、今回のところはそういうことにしておいてくださいお願いします。

ということでここからは、変態系を代表するペダルや変態系として注目してほしいペダルをピックアップ。それらには上記の要素のうち何が当てはまるかなどを考えつつ、紹介していきましょう。メーカーさん、取り扱い代理店さん、ペダルビルダーご本人の公式動画URLも合わせて貼っておくので、ぜひサウンドを確認してください。

なお、ここで紹介する各ペダルのブランドは、ピックアップした製品のほかにもさまざまな変態系をラインアップする変態系ブランドです。あなたの性癖と一致するペダルがあったら、そのブランドのほかのペダルもチェックしてみることをおすすめします。

[変態系File01]
変態系ファズの源流にして原罪「Fuzz Factory」

●モデル名:ZVEX「Effects Fuzz Factory」
●過剰:増幅&歪み回路の歪ませっぷりが過剰
●異常:発振などの異常動作の意図的発生が可能

いまや定番となっており、変態感は薄れているかもしれませんが、変態系ファズの元祖とも言えるこれを最初に紹介しないわけにはいきません。椎名林檎さん「ギブス」における、「其れすら嘘になるじゃない/Don't(ピギィー)you think?」の、「ピギィー」という発振もこのファズファクによるものです。

回路としては、古典的ファズであるFuzz Faceの回路の前段にもう一段の増幅回路を増設したような構成です。過剰増幅でより激しい歪みを得られるように魔改造されています。

でもファズファクって実は、増幅量≒歪み量こそ過剰ですが、適切なセッティングにおいては「すげえ歪んでるけど、普通に演奏できて普通にかっこいいファズ」にもなるんです。ですからファズファクをより決定的に変態たらしめているのは、その「過剰」さではなく、もうひとつの変態要素「異常」のほうと言えるかもしれません。

Fuzz FactoryってFuzz Faceと違って、コントロールノブが妙にたくさんありますよね? Fuzz Faccのノブは2個なのにファズファクのノブは5個。鍵はそこにあります。それらの増えているノブって、「Fuzz Face回路では適切な値の固定抵抗になっている部分を、可変抵抗であるポットに置き換えてノブとして外に出したもの」だったりするんです。そしてその可変幅は、「適切な値」を無視して、その上下に振り切った「不適切な値」にもセッティング可能なものとなっています。それで、本来であれば「異常」な動作である発振やブチブチを、ファズファクでは意図的に呼び出せるわけです。

最初に述べたように、Fuzz Factoryはいまや定番ペダル。もはやそれほど変態とは思っていないギタリストも少なからずいるでしょう。でも、そのサウンドと仕組みを改めて確認してみると、これどう考えてもやっぱり変態ですよね? なのにこれが定番扱いとなると、「Fuzz Factoryはもう普通→Fuzz Factoryよりヤバいことが変態ファズの条件」という危険なハードルが確立されてしまう恐れが……。罪深いファズです。

[変態系File02]
博士の異常な合成「Dr.Freakenstein Chop Fuzz」

●モデル名:Rainger FX「Dr.Freakenstein Chop Fuzz」
●過剰:ファズ部分だけでも過激過剰な歪みっぷり
●合成:モジュレーションの合成でさらに過激

変態系ファズは今や山ほどありますが、音を出す前からそのヤバさがひと目でわかってしまうルックスという意味ではこのペダルが最凶! もちろん音もヤバいです。ハイゲインファズにノイズゲート回路も搭載。その時点で発振&ブチブチがいける、十分に過剰で過激なファズですが……。

そこに、強烈なフェイザー系モジュレーションとノイズゲートとの相乗効果で、異様な切れ味を叩き出すトレモロを「合成」することで、さらなる極悪サウンドに到達。「ガギョ〜ゥオンゥオンゥオン」とうねり、「ガーガガ・ガ・ガ・ガ・ガ・ガガガ」とぶっちぎってくれます。「フランケンシュタイン」のネーミングは「合成によって生まれてしまった怪物」という意味合いなのでしょうか。納得です。

加えて筐体中央部のナイフ型スイッチ! ギターから入力される音に合わせて触れる針式メーター! それらのハードウェアも、このペダルの変態的な魅力をブーストしてくれています。

そしてそのスイッチやメーターのすばらしさは、「別にそんなのあってもなくても音や操作性には影響ない」こと。これらはほぼ雰囲気作りだけのために備えられているパーツなのです。エフェクターの役割はプレイヤーの感性を刺激すること。そして感性を刺激する手段は音だけに限定されないのかもしれません。

[変態系File03]
侘び寂びの境地へと向かうエコー「POSSESSED」

●モデル名:MASF Pedals「POSSESSED」
●偶発:ディレイの主要パラメーターをランダム制御

「崩壊系ディレイ」「ランダム系ディレイ」と言われるようなジャンルを代表するペダルのひとつがこちらです。ディレイペダルではあるのですが、そのパラメーターの大半は任意での明確な設定が不可能で、各ノブは各パラメーターのランダム具合とかを何となく大まかに設定するような役割になっています。たぶん。

●HEARING:たぶん音量ノブ。これだけは普通に効きます。
●TASTE:どれくらいの範囲でランダム制御するか、みたいな?
●TOUCH:リピート音の崩れ方の感じ、的な?
●SMELL:ディレイタイムの超ざっくり設定、かも?
●SIGHT:リピート回数のランダム範囲の設定、っぽいよね?

端的に説明するなら、「大まかにしか制御できないランダムディレイ」です。「BPMに合わせた付点8分」みたいなディレイの使い方の対極を提示するような存在と言えるでしょう。このペダルを踏むと「何らかのディレイ」が生み出されます。どんなディレイが生まれるかはそのときどき。

このペダルに限らずこういった「制御できない」「偶発的」なエフェクトって、天候だとか自然現象みたいな感じですよね。人はそれを受け入れ、その中で暮らすしかありません。エフェクトとの付き合い方や受け止め方を、見つめ直すきっかけになるかもしれない。そんなディレイです。

[変態系File04]
片腕を抱くかのごとき美しさ「AURORA」

●モデル名:BANANANA EFFECTS「AURORA」
●合成:ディレイ音をピッチシフト
●過剰:ディレイ音の制御パターンが過剰に多い

こちらは、偶発性を極めた「POSSESSED」とはまた別の変態性に向かったディレイです。逆再生などの機能も備えた多機能ディレイに、音程変化エフェクトであるピッチシフトも合成。そのコンビネーションによる各モードで、さまざまに変態的なディレイサウンドを生み出します。そのさまざまな変態モードとは以下の8種類。

●Pitch Up:リピートするたびに音程がクロマチック上昇
●Pitch Down:リピートするたびに音程がクロマチック加工
●Speed Up:ディレイ音が倍速再生
●Speed Up Trigger:演奏の隙間に直前フレーズを倍速再生
●Reverse:逆再生ディレイ
●Cascade Reverse:通常→逆再生→通常→を繰り返すディレイ
●Multi Reverse:逆再生かつ再生速度変更なディレイ
●Reverse Trigger:演奏の隙間に直前フレーズを逆回転再生

……お気付きだろうか?「普通のディレイ」というモードがない!

ですが、デモ動画からもわかるように、動作としては変態的なモードばかりでありつつ、そこから生み出されるサウンドは、セッティングによっては普通に美しいものでもあったりします。

川端康成さんの「眠れる美女」「片腕」といった短編小説はそれぞれ、「薬で眠らされている少女の身体を眺める」「若い娘がその体から取り外して渡してくれた片腕と添い寝する」といった、変態的な内容を描いています。しかし、美しい。変態系エフェクトが生み出すサウンドもまた、変態的でありながら時には美しいものなのです。それはこのペダルに限らず、変態系エフェクトの多くに通じます。

[変態系File05]
はかない美少女だったのに「Astral Destiny」

●モデル名:Earth Quaker Devices「Astral Destiny」
●合成:リバーブ音のピッチをシフトしたりベンドしたり
●合成:リバーブ音にコーラス的な揺れを付加

メーカーいわく、「オクターブモジュレーションリバーブ」であるこちらは、リバーブ音のピッチをあれこれ操作したり、コーラス的な揺れを加えたりするエフェクターです。「AURORA」ディレイと同じくモード切り替え式で、用意されているモードは以下の8種類。

●Abyss:普通に壮大なリバーブ
●Shimmer:残響音にオクターブ上を加える
●Sub:残響音にオクターブ下を加える
●Sub Shimmer:残響音にオクターブ上下を加える
●Astral:オクターブ上下の残響音にフィードバックをかける
●Ascend:残響音の音程を上にピッチベンド
●Descend:残響音の音程を下にピッチベンド
●Cosmos:残響音にフィードバックさせた五度上の音を加える

変態系なのは後半のモードですね。といってもこちらもやはり、変態でありつつの美しさが印象的なタイプ。いやむしろ、美しい音を出さないことが難しいタイプのエフェクターと言えるかもしれません。何をどうしたところで幻想的なサウンドが生まれてしまいそうです。

ですが、空間系やピッチシフト系の変態系エフェクターって、それ単体ではただひたすらに美しいサウンドなペダルでも、強烈な歪みペダルと組み合わせると、美しさはそのままに暴虐の限りも尽くし始めたりするんです。考えてみれば残響と揺れとピッチベンドが合成してあるって、もうシューゲイザーとかノイズミュージックにぴったりですよね。

組み合わせる歪みですが、Earth Quaker Devicesはファズなどのラインアップも豊富なのでそこから選んでもよし、Boss「MT-2 Metal Zone」との組み合わせもよいでしょう。「不思議ではかない」感じの美少女がヤバい男と付き合い始めたら「ぶっ飛んでてどうかしてる」感じになってしまった……みたいなサウンドを期待できそうです。

[変態系File06]
音も色も偶然の彼方から「Random Phase & Vibrato」

●モデル名:mid-fi electronics「Random Phase & Vibrato」
●偶発:フェイザー的な位相制御を徹底的にランダム化

mid-fi electronicsというブランドは、ランダム制御による「偶発」要素を取り入れたエフェクトを多数ラインアップしており、こちらもそのひとつ。名前の通りランダムなフェイザー&トレモロ効果を生み出すペダルで、位相と音量を偶発的に揺らしてくれます。

サウンド的には、極端なセッティングにすれば変態っぽくもなりますが、基本的にはすばらしく上等な揺れものサウンド。個人的には「Uni-Vibeなども含めた位相揺らし系エフェクトの中で、これがいちばん好みかも!」と思うほどの美しさです。揺らぎが豊かですし、揺れの周期がランダムなおかげで、曲のテンポと揺れの周期が妙にずれてしまったり、逆にぴたりと合ってしまったりということもなさそう。普通に欲しい!

ではこのペダル、何が変態的なのでしょう? それはその豊かでランダムな揺れを生み出している仕組み、回路の独創性です。

まず揺れを生み出す回路の、その揺れの具合を乱数発生器による制御でリアルタイムにランダム変化させますが、ここまでは普通の変態回路。このペダルの変態っぷりは、ここからです。そのランダム揺らし回路を2セット用意し、それぞれを別々にランダム制御。その2つの回路からの音声信号をミックスし、互いの信号の複雑な干渉、ランダム×ランダムで豊かなサウンドを生み出しているのです。

揺れを生み出す回路の段数も独特。一般的なフェイザーは4/6/8段といった偶数段数を採用。対してこのペダルは2セットの回路の片方を3段、もう片方を5段としています。その狙いは特に説明はされていませんが、何らかの意図があってのことでしょう。

なおこのペダル、筐体カラーは「シェフの気まぐれ」的なことになっているようで、メーカー直販ページでもその指定はできません。そこも徹底的にランダムというわけですね。

[変態系File07]
あると便利なわけではない変態系マルチツール「Ikigai」

●モデル名:Sunfish Audio「Ikigai」
●合成?:変態系マルチツール

こちらのペダルはモード切り替え式となっており、そのモードごとにまったく別のエフェクトとして機能します。その内容についてのブランドの説明は以下の通り。

「Ikigaiは特殊なエフェクトを8種類集めたエフェクターです。搭載された8種類のエフェクトは使用するプレイヤーによってはほとんど使い物にならないかもしれません」

マルチツールにたとえるなら、一般的なそれが「ナイフ/はさみ/マイナスドライバー/プラスドライバー/etc.」みたいなお役立ちセットなのに対して、こちらは「センターポンチ/目立てやすり/トルクスドライバー/etc.」みたいな感じということですね。まれに役立ちそう!

具体的には以下のようなエフェクトが用意されています。

●Tremolo / Ring Modulator トレモロ/リングモジュレーター
使える度☆☆☆
●Old vinyl レコードシミュレーター
使える度☆☆☆☆☆
●Filter sample & hold フィルターサンプル/ホールド
使える度☆☆
●Fuzz ファズ
使える度☆☆☆☆
●Organ simulator オルガンシミュレーター
使える度☆☆☆☆
●Crystal Delay クリスタルディレイ
使える度☆☆☆
●Talking filter トーキングフィルター
使える度☆☆☆
●Random sampler ランダムサンプラー
使える度☆

若干あおってくる感じの「使える度」も説明書に記載されている項目です。ランダムサンプラーよ……

たくさんのエフェクトがパッキングされていますが、「これさえあれば何とかなる」「これを持っておけば何かと便利」的な実用性はまったく感じられないところがすばらしいですよね。これってたぶん、「便利なツールボックス」ではなくて「楽しいおもちゃ箱」なんだと思います。ギタリストへのちょっとひねったクリスマスプレゼントに最適です! ……最適ですか?

あなたのギターライフに新たな扉が開かれる……かも

ということで、今回は「変態系」エフェクターペダルを紹介させていただきました。変態サウンドを出すためには変態系エフェクターが必須!というわけではありません。フレージングの変態さや演奏テクニックの変態さ、普通のエフェクターでもその組み合わせの変態さなど、変態サウンドはいかような変態さからも生み出せるものです。

ですがどんなジャンルにおいても、「変態の変態による変態のための専門アイテム」は飛び抜けて常軌を逸した仕上がり。変態ビルダーが生み出した変態ペダルを体感することで、あなたのサウンドメイキングにおける変態性はよりみがき上げられることでしょう。あなたのギターライフに新たな扉を開いてくれるかもしれない。変態系エフェクターには、そんな可能性が秘められています。

高橋敦

高橋敦

オーディオ界隈ライター。現在はポータブルやデスクトップなどのパーソナルオーディオ分野を中心に、下からグイッとパンしていくためにてさぐりで活動中。

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