2025年夏、加熱式タバコは新たな局面を迎えました!
なぜなら、2025年5月27日にJTが「Ploom AURA(プルーム・オーラ)」を、6月9日(宮城県限定)にブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(以下、BAT)が「glo Hilo(グロー・ヒーロ)」をそれぞれ発売し、ともにかつてないユーザー体験で市場シェアを伸ばそうと意気込んでいるからです。
左がJT「プルーム・オーラ」(色は「ジェットブラック」)とBAT「グロー・ヒーロ」(色は「アンバー」)。ちなみに、「グロー・ヒーロ」と、分離型の新モデル「グロー・ヒーロ・プラス」は2025年9月1日に全国発売されました
そこに立ちはだかっているのが、王者に君臨するフィリップ モリス ジャパン(以下、PMJ)の「アイコス」ブランド。現行モデルは、2024年3月に登場した「IQOS ILUMA i(アイコス イルマ アイ)」シリーズですが、デバイスは3種類、専用タバコスティックは40種類(「テリア」と「センティア」の合計)と、ラインアップも充実しており、安定した人気を得ています。なかでも人気なのが、ホルダーとバッテリーの一体型「アイコス イルマ アイ ワン」です。
「アイコス イルマ アイ」シリーズの、2025年春の限定デザイン「アイコス イルマ アイ ミネラ モデル」シリーズ。左が「アイコス イルマ アイ ワン」
いっぽう、新作の「プルーム・オーラ」と「グロー・ヒーロ」は「アイコス イルマ アイ」シリーズにはない独自機能が搭載されており、その差別化ポイントはユーザーも気になるところでしょう。そこで今回は、各デバイスを使い比べ、それぞれの特徴や違いなどを浮き彫りにします。
まずは、「アイコス イルマ アイ ワン」「プルーム・オーラ」「グロー・ヒーロ」の概要から紹介。
左から、「アイコス イルマ アイ ワン」「プルーム・オーラ」「グロー・ヒーロ」
「アイコス イルマ アイ ワン」「プルーム・オーラ」「グロー・ヒーロ」のスペック比較表
フィリップ モリス ジャパンが手掛ける加熱式タバコデバイスシリーズ「アイコス イルマ アイ」の一体型コンパクトモデル。連続使用が可能なうえ、価格が比較的安いのでシリーズの中でも人気の機種です。パフの回数を調整する機能「フレックスパフ」も搭載されています。
ちなみに、シリーズにはほかに、ホルダーとチャージャー分離型のプレミアムモデル「アイコス イルマ アイ プライム」と、分離型スタンダードモデル「アイコス イルマ アイ」がラインアップされています。
JTから2025年5月に発売された加熱式タバコシリーズ「プルーム」の最新モデル。従来モデル「プルームX アドバンスド」から形状や加熱技術を刷新しており、それに合わせて専用タバコスティック「evo(エボ)」まで同時発売した同社の力作です。もちろん、従来スティック「メビウス」「キャメル」も吸えます。
BATが2025年6月に宮城県先行販売し、9月1日から全国発売される、まったく新しい加熱式タバコデバイス。最大のポイントは、初代「アイコス」の加熱ブレードと同じように、タバコ葉にピン型クオーツを直挿しして、「グロー」史上最高の約370度の超高温加熱を行う「ターボスタート・テクノロジー」を採用し、喫味を大幅に向上させている点です。また、加熱式タバコ史上最高速の「わずか5秒」で吸い始められるのも魅力。なお、従来スティック「ネオ」「ラッキー・ストライク」「ケント」は非対応で、同モデル専用タバコスティック「virto(ヴァルト)」のみ使用できます。
まずは3ブランドを並べて、サイズやデザインなどを比べてみます。パッと見た感じで、最もコンパクトなのは「プルーム・オーラ」。「アイコス イルマ アイ ワン」と「グロー・ヒーロ」は平べったいですが、「プルーム・オーラ」は細長い直方体と言える形状で、スリムなデザインです。
ただし、重さは微々たる違い。「アイコス イルマ アイ ワン」は73g、「プルーム・オーラ」は75.5g、「グロー・ヒーロ」は75gで大差ありません
また、「プルーム・オーラ」は少しだけ全長(高さ)が短く、タバコスティック挿入口のスライド式カバーが出っぱらずに本体内に収まっている点も独自ポイント。デザインは好みによる部分もありますが、それでもコンパクト性は「プルーム・オーラ」に軍配が上がると言えそうです。
タバコスティック挿入口のスライド式カバーに注目。「プルーム・オーラ」だけカバーが飛び出ていない
充電用の端子は、全モデルがUSB Type-Cに対応。ただ、満充電までの時間には違いがあり、「アイコス イルマ アイ ワン」は約90分、「プルーム・オーラ」は約180分、「グロー・ヒーロ」は約90分です。「プルーム・オーラ」が長いのは、コンパクトである分、バッテリーも小さいということかもしれません。
それぞれの端子。なお、満充電の状態で最大利用できる本数は、「アイコス イルマ アイ ワン」が20本、「プルーム・オーラ」が約27本、「グロー・ヒーロ」が約30本です
今回比べている3モデルは、すべて高温加熱式の電子タバコデバイスであり、高温ならではのパワフルな味わいが特徴。
最高加熱温度である約320度は前モデル「プルームX アドバンスド」と同じですが、温度制御のテクノロジーが向上しています
ただ、最高温度や加熱構造などはデバイスごとで異なり、その差が使用感にも違いを生み出しています。特にこの点で強みを持つのが、約370度という超高温加熱を行う「Turbostart(ターボスタート)テクノロジー」を採用した「グロー・ヒーロ」。
「グロー・ヒーロ」の「ターボスタート・テクノロジー」のイメージ
「アイコス イルマ アイ ワン」は約350度、「プルーム・オーラ」は約320度ですから、「グロー・ヒーロ」の約370度は、なかなかダイナミック。しかも「グロー・ヒーロ」は、スティックを周囲から加熱する従来式の手法に加え、タバコ葉にピン型クオーツを直挿しする二重加熱を採用したこともあり、挿入から約5秒という超スピード喫煙を実現しました。
「グロー・ヒーロ」(右)の加熱部にはピン型クオーツが内蔵。ただ、新構造のため従来のタバコスティックは使用できず、専用スティックは同時発売された「virto(ヴァルト)」のみです
BATでは、味わい強弱の選択は、2019年12月に発売された「グロー・プロ」から採用。本体に搭載されたボタンで「スタンダード」と「ブースト」からシーンに合わせて選べました。
ただ、意外にもほかの高温加熱式タバコではデバイス側で味の強弱を選べるモデルが少なかったと言えるでしょう。
BATでは、デバイス本体で味わいの強弱を選べる仕様が採用され続けています。「グロー・ヒーロ」では、ボタン上部が「ブーストモード」、下部が「スタンダードモード」
いっぽう「プルーム・オーラ」は、味の強弱などを選べるように進化しています(厳密には「プルームX アドバンスド」も晩年に実装)。加えて、満充電からの最大使用可能本数や、タバコスティック1本あたりの使用時間などを含めた4種類のモードから、好みで選べるようになりました。
「プルーム・オーラ」をBluetooth接続でスマホとつなぎ、設定変更する画面
「アイコス イルマ アイ」シリーズは、パフ(吸引)の回数を増やしたり、加熱を一時停止できたりする機能はあっても、味わいは一定。強弱という概念がなく、変更もできません。また、そういった多様なモード変更は「アイコス イルマ アイ ワン」は対応できず、上位機種の「アイコス イルマ アイ」「アイコス イルマ アイ プライム」のみ対応しています。
「アイコス イルマ アイ」シリーズの「フレックスパフ」は、「アイコス イルマ アイ ワン」にも搭載(ただしディスプレイ表記はなし)。吸うペースを内蔵システムが分析し、最大4回までパフの回数が増加する機能です
もっとも、「アイコス イルマ アイ」シリーズのタバコスティックは「テリア」と「センティア」で全40種類とフレーバーが多彩ですし、味の強弱を選べなくても問題ないという人は少なくないはず。
「アイコスアプリ」(公式サイトから接続)と本体をBluetoothかUSBケーブルで連携させることで、アプリ上で「パフォーマンスモード」か「エコモード」かを選んで設定できます。ただし「アイコス イルマ アイ ワン」は非対応
なお、パフの回数について触れましたが、そもそも「プルーム」と「グロー」のシリーズには当初から回数という概念がほぼなく、加熱(喫煙)時間内であれば無制限で吸えます。この点も、「アイコス イルマ アイ」シリーズにはない魅力と言えるでしょう。
それぞれのデバイス本体には、ステータスなどを示すディスプレイやLEDが搭載されていますが、この点で最も優位なのは「グロー・ヒーロ」です。「グロー」シリーズでは、2023年12月に発売した「グロー・ハイパー・プロ」から「EASYVIEW(イージービュー)スクリーン」というカラーディスプレイが搭載され、電池残量やトラブルシューティングなどの状況が視覚的に確認できるようになりました。
「グロー・ヒーロ」にも「イージービュースクリーン」は健在
「プルーム」シリーズは、新作の「プルーム・オーラ」を含めディスプレイを搭載していません(同社の低温加熱式「ウィズ2」には搭載)。とはいえ、「プルーム・オーラ」にはLEDが付いており、発色などでシンプルにステータスを通知する仕様です。
「プルーム・オーラ」の公式サイトより
「アイコス イルマ アイ」シリーズは、上位機種の「アイコス イルマ アイ」「アイコス イルマ アイ プライム」にはディスプレイが付いているものの、「アイコス イルマ アイ ワン」にはステータスライトのみでディスプレイは不採用。とはいえ、電池残量などはライトの状況で識別できるので、シンプルに吸う分には十分でしょう。
「アイコス イルマ アイ ワン」は、ステータスライトで確認。すぐ下のボタンは電源のオン/オフや電池残量確認などに使います。写真では2つ点灯しているので電池残量50%
なお、「アイコス イルマ アイ」「アイコス イルマ アイ プライム」のディスプレイは簡易的であり、カラフルなグラフィックでもありません。しかしながら、タッチスクリーンとなっており、スワイプにより一時停止やその再開などができる独自の機能を実装しています。
タッチスクリーンが、より直感的でフレキシブルな喫煙体験を実現
3モデルを使って吸った際の、タバコスティックの味わいも比べてみました。
味わいは各銘柄に採用されているタバコ葉やブレンドによっても変わりますし、味の好みもあるので、あくまでも参考までに。ここでは、デバイスがどのように喫味や香りに寄与しているかにフォーカスしてレビューします。
それぞれ、レギュラータイプの最も味が濃い銘柄でチェック。「アイコス イルマ アイ ワン」は「テリア」、「プルーム・オーラ」は「エボ」ブランドです
まずは「アイコス イルマ アイ ワン」で「テリア リッチ レギュラー」をテイスティング。最初のキックから、吸引で広がるスモークまでコク深く、パワフル。ラストのパフまで安定感のある吸い心地で、完成度の高さを再認識しました。
「テリア リッチ レギュラー」をはじめ、「テリア」シリーズは税込580円。廉価版の「センティア」シリーズは税込530円
次は「プルーム・オーラ」で、「エボ・ディープ・レギュラー」をテイスティング。モードは、同デバイス最高加熱温度の約320度を発揮するであろう「ストロングモード」で吸いました。
「アイコス イルマ アイ ワン」と比較すると、吸引するスモークが高温に感じましたが、喫味などのボリュームは同程度。キックは強く、味や香りも堂々たるふくよかさで、満足度の高いおいしさです。そしてこちらも、ラストまでパワーダウンを感じさせない安定の吸い応えです。
「エボ」シリーズは550円、「メビウス」シリーズは500円(2025年9月以降は520円になる予定)、「キャメル」シリーズは500円。専用銘柄は全22種類のラインアップです
次は「グロー・ヒーロ」で「ヴァルト・ダーク・タバコ」を、「ブーストモード」で吸いました。こうして比べると、待ち時間5秒というスピードは実にクイックだと実感。立ち上る煙の量も多く、一気に高温加熱していることをうかがわせます。
味も強烈で、鋭いキックと、そこからたたみかけてくるタバコのコクがどっしり。ほかのデバイスよりも時間経過にともなうパワーダウンは少し感じましたが、力強い喫味は随一かもしれません。
「グロー・ヒーロ」対応のタバコスティックは「ヴァルト」シリーズのみで、全8銘柄。各580円(税込)
JTの新作となる「プルーム・オーラ」は、利便性や価格面で優位性があり。BATの新作「グロー・ヒーロ」は、加熱温度や待ち時間の短さで他製品を凌駕していますが、対応銘柄は少なく、今後の市場動向が気になるところです。「アイコス イルマ アイ ワン」は先行モデルということもあり、スティックのラインアップが豊富です。
「グロー・ヒーロ」が2025年9月1日に満を持して全国発売され、ついに一体型の最新モデルが出揃いました。シェアNo.1の「アイコス イルマ アイ」シリーズを有するPMJも、この状況をいつまでも静観してはいないはずであり、ますます加熱式タバコシーンには注目です!