2020年4月に完全施行となる改正健康増進法で、原則的に屋内は禁煙になる。タバコを吸える場所は、さらに制限されるのだ。そこで注目を集め始めているのが、改正健康増進法の規制対象外となる「無煙たばこ(嗅ぎたばこ)」である。そんな中、加熱式タバコ「グロー」でおなじみのブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(BAT)からも、無煙たばこ「VELO(ベロ)」が登場した。先行しているJT「ゼロスタイル・スヌース」との違いも含めて、使い方、感想をレポートする。
※ご利用にあたっては、健康リスクなどをご考慮のうえ、注意・マナーを守ってご使用ください。
BATのオンラインストアにて発売中の「ベロ」。2020年2月24日からは、福岡市内のファミリーマートおよび一部たばこ取扱店で発売が予定されている。それぞれ20 個入りで、「ゼロスタイル・スヌース」よりちょっと高めの580円(税込)
<関連記事>
煙どころか蒸気も出ないタバコ「スヌース」(無煙タバコ、嗅ぎタバコ)って何だ?
より健康リスクが低減されたBATの無煙タバコ「VELO(ベロ)」が日本上陸
JTの無煙たばこ「ゼロスタイル・スヌース」の新味、抹茶ラテ/梅を味わった
「ベロ」は、タバコ葉を詰め込んだたばこパウチを歯茎と頬の間に挟んで、口腔粘膜からニコチンを吸収する"嗅ぎたばこ"である。鼻腔内に粉砕タバコ葉を塗るタイプも嗅ぎたばこと呼ばれるが、現在は口内に入れるタイプのほうが主流だ。
嗅ぎたばこは米国や、スウェーデン、ノルウェーなどの北欧などではポピュラーなタバコ製品のひとつ。北欧や米国で使用されている嗅ぎたばこの多くは刺激が強く、欧米人に比べて口内粘膜の弱い日本人には向いてない製品が多い半面、日本人向けに調整された刺激弱めの製品では物足りないという人もいる。現状では、紙巻きタバコに比べると選択の余地が少ないのが難しいところである。
「ベロ」には、日本で初めて純白パウチを採用した点が特徴。パウチだけでなく中身も純白なので、歯への着色のリスクが抑えられる。北欧を中心とした17か国でも販売されているが、日本人向けにニコチンレベルを下げ、甘いフレーバーを採用ニコチンの強度を選べるようにしているという。フレーバーは「ポーラー・ミント」と「ルビー・ベリー」2つで、それぞれ「ミディアム」「ライト」という2種類の刺激度(ニコチン含有量)で用意している。
写真上から「ベロ・ルビー・ベリー・ミディアム」「ベロ・ルビー・ベリー・ライト」「ベロ・ポーラー・ミント・ミディアム」「ベロ・ポーラー・ミント・ライト」。真っ白な小袋は清潔感がある
同梱されている小冊子に使い方が載っている。入れる場所は自由だが、歯茎に炎症や腫れのない部分でないとしみる
見た目的にはガムを口に入れているようで目立たない。誰もタバコだとは思わないだろう。口の中に置いてしばらくすると唾液と混ざり、味が出てくる
「ゼロスタイル・スヌース」と同様、「ベロ」は嗅ぎたばこの本場、スウェーデン製。中身が透けて見えるのがいい。「ゼロスタイル・スヌース」は缶だが、こちらの容器はプラスチック製で軽い
パウチの中身も白い。「ゼロスタイル・スヌース」よりもしっとりとしていて、少し固まっている
中身はタバコ葉のほか、自然由来のニコチン、水、ユーカリと松の木の繊維、厳選したアロマなどでできているという。白い袋は日本初とのことだが、清潔感はあるものの味や香りにはあまり影響していないように感じた。
それでは実際に使用してみよう。
ミント感があり、刺激も弱めな初心者の入門用に適した「ポーラー・ミント・ライト」から使ってみる。歯茎と頬の間に差し入れて、挟む。軽いスペアミントの風味がミントタブレットのようでおいしい。変なクセを感じることはまったくなかった。
歯茎へのピリピリ感はそれなりにある。しかし1分もすれば収まり、じんじんする浸透感がやってくる。これが嗅ぎタバコを"嗅いでいる"状態となる。口の中の異物感は慣れるまでは変な感じだが、数回で慣れるので気にしなくてOKだ。使用時間は1袋5〜30分が目安である。
煙や蒸気は一切出ないので、副流煙の心配はない。改正健康増進法でも規制対象外となっているのは、こうした周囲への迷惑がないことが要因だろう。周囲で子供が走り回っていたとしても、火傷の危険も健康被害を与えることもない。
ただ、タバコ葉を使用した立派なタバコ製品なので、20歳未満は使用することができないことをお忘れなく。また、周囲への被害はなくても、ニコチンが入っているので、健康にまったく無害と言えるわけではないことも忘れないでほしい。
上品なスペアミント風味
使用後は吐き出して、容器上部のフタの中へ。灰皿的に使用できるようになっている
次は同じ「ポーラー・ミント」だが、刺激の強い「ミディアム」。とはいっても、最初のピリピリ感はそんなに違わない。刺激は、ピリピリは大したことはないのだが、その後の“じんじん”が“ズンズン”に近いので、強いのだなとわかる。大方の「ゼロスタイル・スヌース」よりも、ピリピリは控えめでもじんじん感は強く感じた。
そして、煙も蒸気もないのに、およそ10分弱で一服したあとのじんわり感がやってくるのが面白い。タバコを吸いたい気持ちも同時にやわらぐので、ニコチンをしっかり吸収したということなのだろう。この吸った感のないまま一服後の気持ちになるというのは新鮮な体験なので、喫煙者ならぜひ試してみてほしい。
上品なスペアミント風味に強さをプラス
再び、軽めの「ルビー・ベリー・ライト」に挑む。ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリーを使用したふんわりアロマが素敵だ。刺激はかなり少ない。甘酸っぱい香りが好きなら、こちらのほうが初心者には向いているかもしれない。頬と歯茎の間に挟んでいても、よい香りが持続するのでフレーバー付きのミントタブレット互換という印象である。
歯茎がじんじんする感じも比較的少ないので、気軽に楽しめる。上あごの前面裏あたりに挟めば、よい香りを鼻でも感じることができる。
コスメに近いおしゃれな香りが漂う
上品な香りのまま、刺激強めに仕立てたのが「ベロ・ルビー・ベリー・ミディアム」だ。これはメンソールタイプではないので、清涼感はは少なめだが、じんじんを越えた“ズンズン”感を、ベリーのアロマとともにしっかり味わえる。
上品な香りだというのに、吐き出す時に舌に残るピリピリ(ニコチン味)もきちんとわかる。これはかなり重い嗅ぎたばこに感じた。
清涼感よりも実感を求める人に向いている、羊の皮をかぶった狼的製品という感想だ
4月に改正健康増進法が施行されると、ますます吸える場所が少なくなっていくのが紙巻きタバコである。加熱式タバコも少しゆるいにしても規制の対象だ。しかし「ベロ」のような無煙たばこならば、現状はほぼどこで使っても問題がないというのが最大の利点である。
時間を持て余すむやみに長い会議のさなか、いまどきはその場でタバコを一服すること自体不可能だが、「ベロ」及び「ゼロスタイル・スヌース」のような無煙たばこなら楽しむことができる。長時間のフライト、新幹線移動のさなかでも、席にいたままニコチン補給が可能というのは、ヘビースモーカーとしては非常にありがたい。
加熱式タバコのように特定のデバイスが不要なので、今日は「スヌース」、明日は「ベロ」ということも簡単だ
ただ、「吸った感」は少ないので、次から次へと口に放り込んでしまいがちだ。そうすると紙巻きたばこと同じように吸い過ぎ(嗅ぎ過ぎ?)のクラクラ状態もきちんと訪れるので、量には気をつけたい。
ちょこちょこタバコを吸っていないと落ち着かないという欲求の強い人なら、紙巻きたばこや加熱式タバコと併用してニコチン不足に陥らないように、うまく活用していくのがよいだろう。
※本記事は喫煙を推奨するものではありません。ご利用にあたっては、健康リスクなどをご考慮のうえ、注意・マナーを守ってご使用ください。
元「月刊歌謡曲(ゲッカヨ)」編集長。今はめおと編集ユニット「ゲッカヨ編集室」として活動。家電や雑貨など使って楽しい商品のレビューに命がけ!