昨年のCEATECで話題を集めた「卓球ロボット」が進化して今年も登場! 産業用の制御機器や電気機器、ヘルスケア製品などを手がけるオムロンは、IT・エレクトロニクス関連の総合展示会「CEATEC JAPAN 2015」において、「ラリー継続卓球ロボット」(以下、卓球ロボット)の技術展示を行っている。センシングとコントロールのコア技術が集結した、同社の展示物の中ではシンボル的なロボットだ。
卓球ロボットとプレイヤー(人間)とのラリーの様子を動画で撮影してきたので掲載しよう。プレイヤーがボールを打ち返すとすぐに反応し、細かい動きで正確な返球をするのがすごい! 打ちやすいところに返してくれるやさしいロボットだ。
オムロンブースで行われた、卓球ロボットとプレイヤー(人間)のラリーの様子
今年の卓球ロボットは、卓球台の上に返球予測が光って表示されるようになった!
卓球ロボットは、センシング技術やコントロール技術といったオムロンのコア技術が集結したロボットだ。製品として販売されるものではないが、昨年のCEATECでは、米国のIT・家電関係のジャーナリストがCEATECに出展された技術や製品、サービスを現場で取材して、すぐれたものにアワードを授与する「米国メディアパネル・イノベーションアワード」のグランプリを受賞している。
同社の技術力の高さを示す展示となっているが、技術的なポイントは、単にボール打ち返すのではなく、カメラや人感センサーを使って、ボールの速度やプレイヤー(人間)の位置を瞬時に計測し、1/1000秒単位という細かい制御を用いて、ロボットが相手の打ち返しやすいところにボールを打ち返して、ラリーを長く続けてくれることだ。
上部に装備した2台のカメラでボールの速度や位置などを計測する
ロボットのコントローラー部
特にキーとなっているのが、ボールの軌道を高精度、かつ高速に予想することだ。相手がボールを打った瞬間から毎秒80回の計算を行い、ロボットにボールが到達する瞬間の計算値と、実際の理想値との誤差は数cm程度にまで抑えられているという。具体的には、ボールの3次元位置や速度の計測を行い、その曲がり方や減速度合いなども考慮してボールの回転速度を計測。その際に、空気抵抗やボールに揚力が働く現象・マグヌス効果も考慮した分析を瞬時に行っているという。そうした膨大なデータ処理をもちいて、ボールがどのように動くのかを予測しているのだ。
さらに、プレイヤーが打ったボールの軌道を記憶し、そこから相手の打ちやすい位置と、ロボット自身にとっても打ちやすい位置を考えたうえで、ラケットの角度や中心点が通過するポイント、タイミングなどを決定し、5つの軸を持つモーターを制御して、ロボットハンドがボールを正確に打ち返すようになっている。その制御はミリ単位で行われ、返球の精度は誤差10cm以内だ。
今年の卓球ロボットは、そうした基本的な制御のアルゴリズムが進化したうえで、ボールの返球方向や着地点を光って表示する機能が加わったのが大きな進化点。どういった返球が来るのかがビジュアルでわかるようになっているため、ラリーがしやすく(続きやすく)なっているのだ。
返球の予測を事前に表示するようになった
状態予測も進化しているとのこと
オムロンによると、この進化は「機械が人の能力を引き出す」ことを狙ったものとのこと。打ちやすさをサポートすることで、初心者のやる気や能力が向上するというのだ。卓球ロボットは、同社の技術力をアピールする側面もあるが、「人と機械の融和」というテーマに、同社が考えるロボットの未来像を具現化したものでもある。人の行動をサポートすることで、人と機械が最適に調和した豊かな社会作りを実現することをイメージしたものであるとのこと。ちなみに、卓球ロボットには、返球を左右にゆさぶるモードも用意されており、さらなる上達をうながすことも可能となっている。
「人と機械の融和」をテーマに、機械が人の能力を引き出すことを狙いの1つとしている