ファイナンシャルプランナーの中川です。前回は「マイホームを買うのに頭金は必要ない」とアドバイスしました(前回の記事:頭金なしでマイホームを購入すべき理由とは?)。今回はちょっと趣向を変え、買い物の際のコストパフォーマンス(コスパ)について考えてみます。
皆さんは買い物する際、コスパを気にすると思います。それは、とても素晴らしいことです。でも、「コスパを気にしないで買い物したほうが結果的に節約できることが多い」と聞くと、どうでしょう。実際、私がアドバイスしている多くのお客さんからも、そうした事例が多く寄せられています。なぜでしょうか。理由を説明していきます。
コスパがいい(コストパフォーマンスが高い)とは、支払う金額に対して得られる価値が高いことを指します。少ないお金で多くの"お得”を得られ、賢い買い物の仕方だと思います。あなたがいま読んでいる価格.comのサイトも、買い物のコスパを高めるためにはとても役立つサイトです。
コスパを気にして買い物するのは、世間一般の常識になっていると思います。「いいモノをより安く」と情報を集めて、実際にコスパのいい買い物ができたときの喜びは、ひとしおでしょう。
しかし、こんな経験はありませんか? 「一番コスパがいいと思って買ったのに、もっとコスパがいい商品を発見して後悔した」という失敗です。私はこの手の失敗を何度もしました。そのたびに「あっちにしておけばよかった!」「もうちょっと待ってから買えばよかった!」と、悔しい思いをしたものです。
後悔だけならいいものの、不思議なことに、買った後はそのモノに愛着を持てなくなることもしばしば。結果的に長持ちせず買い替えるということを、いろいろなモノで繰り返しました。一つ一つのコスパはいいかもしれませんが、似たような商品を何度も買い直すなら、ムダなコストがかさんでしまいます。
なぜ、こうなるのでしょう? それは「買う」と決断した理由がなくなるからです。「コスパがいいから」と買っても、それよりコスパがいいモノを見つけてしまったら、せっかく買った商品の優れた点がなくなります。そうなると、買ったことを後悔したり、「なんでこんなものを買ったんだろう」と思ってしまったりするのです。そしてまた次を探す…この繰り返しです。
たとえば「燃費がよさそうだからこのクルマを買おう」と、新車を買うとしましょう。しかし、少したてば、もっと燃費がいいクルマがマイナーチェンジ(一部改良)などで、同じような価格で発売されます。あなたは、自分のよりもコスパがいいクルマを見るたびに「あっちにしておけばよかった」と思うようになります。
クルマの燃費は毎年改善している。ガソリン乗用車の燃費平均値の推移(全体、国土交通省の資料より)
このように「コスパがいい」を理由にして買い物をすると、遅かれ早かれ後悔することになります。当然ですが、あなたが買った商品よりも性能や品質がいい商品は後から出てくるからです。
クルマだけではありません。スマートフォンやテレビ、冷蔵庫なども毎年のように性能を向上させた新製品が出ます。そして、新製品が出るとたいてい、自分の買った旧式の製品は値下がりし、自分が買った価格よりも安く出回ります。
それでは、本当にお得に買い物をするためには、どうすればいいのでしょう? それはコスパを気にしないことです。価格や性能でなく、自分が気に入るかどうかを最優先させてください。
そうすれば、あなたが買ったものよりコスパがいい商品が出てきても「私はこれが気に入っているから」と思えるようになります。気に入っているなら長く使えますよね。それが一番コスパのいい買い物です。
コスパでなく気に入ったモノを買うようにすると、自分のお気に入りに囲まれる生活になります。とても満たされた気持ちになり、物欲がだんだんなくなっていきます。その結果、不要なものを衝動買いすることもなくなります。
コスパ優先だと、もっとコスパがいいと思える別の商品を見つけた瞬間に「あっちのほうがいい!」と感じ、買いたい衝動に駆られてしまいます。どうにか「無駄遣いはよくない」という理由で買い物を抑えられても、後悔の念はつきまとうでしょう。
少し大げさかもしれませんが、何か買う際は、結婚相手を選ぶつもりでいろいろ見てみましょう。結婚相手はコスパでは選びません。年収や職業よりも「この人と一緒にいたい」という気持ちで選ぶはずです。「○○だから」という理由ありきではなく、ただ「これがほしい」「これが好き」と感じるものを選んでください。
きっと、読むだけではピンとこないでしょう。そこで、いつもどおりコスパを気にして買い物したときと、あなたが本当に「ほしい」と感じて買い物したときの満足度を比べてみてください。
これを簡単に実践する方法があります。スーパーで買い物するとき、値札を見ずに買い物することです。価格ではなく「食べたい!」と感じるものだけを買ってみましょう。食べたいものだけを買ったときの満足度が遙かに高いはずです。
もちろん、一つ一つは価格が高いものを買うかもしれません。しかし、よほどの大食漢でないかぎり、きっと買うものは少なくなるはずで、トータルで使うお金は変わらないか、むしろ減っていると思います。実際、ファイナンシャルプランナーとしてアドバイスしている多くのお客から「節約につながった」との報告をもらっています。
値段やコスパを気にする「お金」基準でなく、「あなた」基準で買い物をしてください。「そんなことをしていたらお金がなくなってしまう!」と反論したくなる気持ちはよくわかりますが、ちょっと勇気を出してやってみませんか?
※本記事は、執筆者個人または執筆者が所属する団体等の見解です。