事前にお金を入金(チャージ)して支払いに使う「プリペイドカード」。皆さんはどのようなものを思い浮かべるでしょうか? 「資金決済に関する法律(資金決済法)」では、プリペイドカードは百貨店の商品券、ビール券などのギフト券とともに、「前払式支払手段」のひとつとされています。その種類は多く、たとえばコンビニなどで使えるQUOカードや携帯電話が普及する以前に広く使われていたテレフォンカードなどに加え、最近ではAmazonギフトなどインターネット上で使うタイプのものも普及しています。
プリペイドカードの中で、近年存在感を高めつつあるのが「国際ブランド付きプリペイドカード」と呼ばれる存在です。「ブランドプリペイド」、「ブランドプリカ」などとも呼ばれているもので、VISA、Mastercard、JCBなどクレジットカードでおなじみの「国際ブランド」と提携し、ブランドの加盟店でクレジットカードとほぼ同じ感覚で使うことができます(以下、本記事ではブランドプリペイドで統一します)。本記事ではこのブランドプリペイドの特徴を解説し、代表的な10枚も紹介します。
「カードで支払う」と聞くと、多くの人が頭に思い浮かべるのはクレジットカードではないでしょうか? しかし、クレジットカードはポストペイ方式(後払い方式)ということもあり、「使いすぎるのが不安」という懸念を抱く人も少なくないようです。2016年に内閣府が行った世論調査(※)では、「クレジットカードを積極的に利用したいと思うか?」という質問に対し、約58%が「そう思わない」もしくは「どちらかといえばそう思わない」と回答しており、その理由として約3分の1の人が「予算以上の買い物をしてしまうから」をあげています。
※クレジットカード取引の安心・安全に関する世論調査(内閣府 2016)
「使い過ぎへの懸念」はクレジットカードの”弱点”とも言えるわけですが、それを補う存在がブランドプリペイドです。ブランドプリペイドは、VISA、Mastercard、JCBの各加盟店で支払いに使える点はクレジットカードと同じですが、自分の信用で商品の代金を「後払い」するクレジットカードに対し、あらかじめお金をカードに「先払い(チャージ)」する点が大きく異なります。これには、出費を管理しやすく「使い過ぎ」を防ぐメリットがあると言えるでしょう。たとえるなら、クレジットカードの利用限度額を自分自身で決めるカードと言えるかもしれません。また、似たようなメリットを持つ存在に、銀行口座から利用代金が即時に引き落としになる「デビットカード」(※)もあります。
※参考:後払いのクレカを敬遠する方に! お得な高還元デビットカード5枚を紹介(価格.comマガジン)
https://kakakumag.com/money/?id=14665
「クレジットカード同様に幅広く使える」「先払い」以外にも、ブランドプリペイドには下記のような特徴があります。
年齢やそのほかの理由でクレジットカードを作れない人でも、ブランドプリペイドなら持てる可能性があります。それは、多くのブランドプリペイドが審査不要で発行が可能なため(一部審査があるカードも存在します)。未成年でも保護者の同意があれば作れるケースがほとんどです。
クレジットカードでおなじみのポイントサービスが付帯するブランドプリペイドも登場しています。提携している店舗などではポイント還元率がアップするカードもあり、「お得」の観点からも魅力が高まっています。
ここから具体的にブランドプリペイドを紹介していきます。内訳は、Visaブランドのカードが5枚。Mastercardブランドのカードが3枚。JCBブランドのカードが2枚です。なお、特に明記していない場合、発行手数料や年会費は無料です。
画像はV-プリカ公式サイトより
2011年にライフカード株式会社が発行した、日本で初めて登場したブランドプリペイドです。リアルカードはなく、ネットショッピング専用で使えるバーチャルカードのみを発行しており、ユーザーはショッピングサイト上のVisa加盟店で支払いに使うことができます。申し込みできるのは日本国内に在住している18歳以上の人と、ほかのブランドプリペイドに比べると対象年齢がやや高く設定されています。V-プリカを使うには、まずネット上でアカウントを開設(無料)する必要があり、アカウント開設後コンビニの端末やネットで「自分が使いたい金額」分を購入します。購入後に発行されるコードをアカウントに登録することで、買い物に利用できるようになります。
V-プリカ
発行会社:ライフカード株式会社
選べる国際ブランド:Visa
還元率:なし
貯まるポイント:なし
公式サイト:http://vpc.lifecard.co.jp/
画像はGAICA公式サイトより
ICチップを搭載し、非接触で決済ができる「Visaタッチ決済」に対応したブランドプリペイドです。新生銀行グループの株式会社アプラスから発行されています。リアルカードが発行されるタイプで、リアル、ネットを問わず国内外のVisa加盟店で利用できます。このカードは海外での利用に強みがあり、事前に日本円でチャージをしておくと、世界200以上の国と地域にある「Visa」「PLUS」マーク表示のあるATMから現地通貨が引き出せます(現在世界で約260万台が対応)。なおこの機能を利用するには事前にマイナンバーの提出が必要で、利用する際は為替手数料4%と、ATM利用手数料200円がかかります。前述の「Visaタッチ決済」は海外での普及が進んでおり、ロンドンの地下鉄などでは改札でそのまま利用できます。新生銀行の総合口座「パワーフレックス」を持っている人は、オートチャージや毎月定額のチャージなども可能です。
画像はバンドルカード公式サイトより
株式会社カンムから発行されている、審査・年齢制限なしで作れるブランドプリペイドです。アプリをダウンロードし、生年月日や電話番号を登録するとネットショッピング専用のバーチャルカードがすぐに発行されます。街中で使えるリアルカードも2種類が用意されており、本人確認不要で作れるのが「バンドルカード リアル」。こちらはリアル店舗での利用は国内店舗のみとなっています(海外のネットショッピングでは利用可能です)。海外のリアル店舗でも使えるのが「バンドルカード リアル+(プラス)」。こちらは発行時に本人確認が必要になります。また、リアルカードの2種はいずれも発行手数料がかかります(300〜700円で券種によって異なります)。
バンドルカード
株式会社カンム
選べる国際ブランド:Visa
還元率:なし
貯まるポイント:なし
公式サイト:https://vandle.jp/
画像はソフトバンクカード公式サイトより
SBペイメントサービス株式会社から発行されているブランドプリペイド。ソフトバンクユーザーであれば、12歳から作ることが可能です。このカードにはポイントサービスが付帯しています。Tカード一体型で、利用金額に応じてTポイントが貯まる仕組みです。還元率は0.5%(200円ごとにTポイントが1ポイント付与)ですが、ファミリーマートやYahoo!など、買い物金額に応じて店舗側がTポイントを付与する場所では、カードで貯まる分とあわせてTポイントが二重で貯まります。カードへのチャージはアプリやウェブ、ATMから可能です。
ソフトバンクカード
発行会社:SBペイメントサービス株式会社
選べる国際ブランド:Visa
還元率:0.5%〜
貯まるポイント:Tポイント
公式サイト:https://www.softbank.jp/card/
画像はKyash公式サイトより
株式会社Kyashが発行するブランドプリペイドです。特徴は還元率の高さ。ネットショッピングだけで使えるバーチャルカードの場合は0.5%ですが、街中の店舗で使えるリアルカードの場合は1%が還元されます。還元されるのはKyashポイントというオリジナルのポイントで、カードにチャージすることで買い物に使うことができます。また、クレジットカードによるチャージにも対応。最大5枚のクレジットカードを1枚のKyashカードに登録することができ、支払いに応じてアプリ上で利用したいクレジットカードを切り替えられます。Kyashアカウント同士なら手数料無料で送金も可能です。
Kyash
発行会社:株式会社Kyash
選べる国際ブランド:Visa
還元率:0.5〜1%
貯まるポイント:Kyashポイント
公式サイト:https://kyash.co/
画像はWebMoneyプリペイドカード公式サイトより
ここからはMastercardブランドのプリペイドカードの紹介です。まずは、株式会社ウェブマネーが発行する「WebMoneyプリペイドカード」。アプリをインストールしてSMS認証すれば、アマゾンなどのオンラインショッピングですぐに利用が可能です。さらにリアルカードを申し込めば街中のMastercard加盟店でも使えます。リアルカードには「無記名カード」と、本人確認が必要な「本人限定カード」の2種類があり、前者は利用上限が月10万円までに制限されてます。ポイント還元も行っており、通常時は利用金額の0.5%がWebMoneyポイントで還元されます(1ポイント1円で利用が可能)。現在、国のキャッシュレス・ポイント還元制度に合わせて独自のポイント還元アッププログラムを実施しており、利用金額の5%がポイント還元されます(2020年6月まで)。
WebMoneyプリペイドカード
発行会社:株式会社ウェブマネー
選べる国際ブランド:マスターカード
還元率:0.5%〜
貯まるポイント:WebMoneyポイント
公式サイト:https://www.webmoney.jp/masterwm/index.html
画像はdカード プリペイドの公式サイトより
dアカウントを持っている12歳以上の人が作ることができるブランドプリペイドです。発行は三井住友カード株式会社。国内外のMastercard加盟店で使えるほか、全国のid加盟店ではカードをかざすだけで決済することもできます。またApple Payへの登録にも対応しています。ポイント還元もあり、通常は200円の利用ごとにdポイントが1ポイント貯まる0.5%の還元率ですが、dポイント加盟店なら還元率はさらにアップします(店舗によって還元率は異なります)。なかでもローソンの買い物では3%が還元されてお得です。
dカード プリペイド
発行会社:三井住友カード株式会社
選べる国際ブランド:マスターカード
還元率:0.5%〜
貯まるポイント:dポイント
公式サイト:https://d-card.jp/prepaid/
画像はau WALLLETプリペイドカード公式サイトより
KDDI株式会社が発行するauユーザーが申し込めるMastercardブランドのプリペイドカード。通常は200円ごとに1ポイント還元と0.5%の還元率ですが「au WALLLETポイントアップ店」で利用すると還元率が1%にアップします。au WALLLETポイントアップ店はセブン-イレブンなどのコンビニエンスストアやドラッグストアなど幅広い店舗が対象となっており、公式サイトから確認することができます。このカードの利用で貯まるのはau WALLETポイントで、1ポイント1円でプリペイドカードにチャージして買い物に使えます。
au WALLETプリペイドカード
発行会社:KDDI株式会社
選べる国際ブランド:マスターカード
還元率:0.5〜
貯まるポイント:au WALLET ポイント
公式サイト:https://www.au.com/payment/auwallet/prepaid/
画像はLINE Payカード公式サイトより
最後はJCBブランドのプリペイドカードの紹介です。まずはLINE株式会社が発行している国内外のJCB加盟店で使えるプリペイドカードから。こちらはオンライン専用のバーチャルカードとリアル店舗向けのリアルカードがあります。銀行口座やセブン銀行ATM、ローソンの店頭などでチャージができ、銀行口座を登録しておくことでオートチャージも可能です。毎月のLINE内の支払実績によって、ホワイトからグリーンまでのバッジカラーが決まり、これによりポイント還元率が0.5〜2%に変動する「マイカラープログラム」という仕組みが採用されています。頻繁に使う人にとってはお得なカードになります。
LINE Payカード
発行会社:LINE株式会社
選べる国際ブランド:JCB
還元率:0.5〜2%
貯まるポイント:LINEポイント
公式サイト:https://pay.line.me/portal/jp/main
画像はANA JCBプリペイドカード公式サイトより
15歳から申し込めるJCBブランドのプリペイドカード。発行は株式会社ジェーシービーで、初回チャージ時に手数料として550円(税込)がかかります。入会時に、利用・チャージに応じてマイルがたまる「マイルコース」と、「キャッシュバックコース」の2種類から還元方法を選択できます。前者の場合1,000円(税込)の利用につき5マイルが付与されるのに加え、半年間のチャージ合計額に応じて、12万円以上なら180マイル、24万円以上なら360マイルのボーナスマイルが付与されます。後者は200円(税込)の利用につき1円のキャッシュバックと、半年間のチャージ合計額に応じて、12万円以上なら180円、24万円以上なら360円のボーナスキャッシュバックという仕組みです。1マイルの価値は時期などによって変動するものの、2〜7円程度になることが多いため、マイルで還元を受けるほうがお得と言えそうです。ちなみに、ANAのプリペイドカードにはほかにも三井住友カード株式会社が発行する「ANA VISAプリペイドカード」があり、ショッピングで貯まるマイル数は変わらないものの、ボーナスマイルがあるのはANA JCBプリペイドのみになります。
ANA JCBプリペイドカード
発行会社:株式会社ジェーシービー
選べる国際ブランド:JCB
還元率:0.5%〜
貯まるポイント:ANAマイル/キャッシュバック
公式サイト:https://www.jcb.co.jp/prepaid/ana_prepaid.html
最後に、ブランドプリペイドを使ううえで注意すべき点にも触れておきましょう。ブランドプリペイドは、クレジットカード感覚で使えると説明してきましたが、下記のとおり3つの注意点があります。利用される際はご注意ください。
クレジットカードと同様、幅広く使えるブランドプリペイドですが、一部に例外もあります。具体的には、公共料金や電話料金、インタネットプロバイダーの利用料など、月額で継続契約の支払いには対応していません。このほか、ガソリンスタンドでの支払いや高速道路料金の支払いにも使えないケースが多いようです。各社によって使える範囲は微妙に異なっているケースもあるので(たとえば、【8】au WALLETプリペイドカードでは出光サービスステーションで、金額もしくは給油量を指定した給油のみ利用可、など)、各社のルールをよくチェックしましょう。
クレジットカードの場合、「1回払い」のほか、「分割払い」「リボ払い」「ボーナス払い」などの支払い方法が用意されています。しかし、ブランドプリペイドの特性上、これらの支払い方法は使えず、「1回払い」が原則です。
クレジットカードの場合、盗難・紛失などで不正に利用された場合、カード会社に被害を報告した60日前までさかのぼって被害額が補償されます。また、日数はクレジットカードよりも短いものの、銀行口座から利用金額が即時に引き落とされるデビットカードにも同様の補償があります。しかし、ブランドプリペイドには基本的にそのような補償制度は期待できないと考えたほうがよいでしょう。今回紹介した10枚の中で補償制度があるものは下記の5枚。これ以外の5枚には補償制度がないので、利用する際はご注意ください。
【1】V-プリカ……セキュリティロックをかけた状態での不正利用に対しては補償。
【4】ソフトバンクカード……紛失盗難デスクに連絡した時点の残高は補償。さかのぼっての補償はなし。
【5】Kyash……不正利用と認められるものに関しては対応。
【8】au WALLETプリペイドカード……不正利用と認められるものに関しては補償。
【9】LINE Payカード……10万円を上限として補償。
【10】ANA JCBプリペイドカード……クレジットカード同様の60日補償。
下記は、今回紹介した10枚のブランドプリペイドを比較した表です。使いたい国際ブランドや、ポイント還元率など、ご自身が重視する指標で選んでいただければと思います。
※1 Tカードを表示するとTポイントが貯まる店舗の場合、本カード利用分と合わせて二重でTポイントが貯まります。※2 2020年6月まで、ポイント還元率が5%になるキャンペーンを実施中。※3 クレジットカードでのチャージに対応しているのは「WebMoneyプリペイドカードLite」のみ。※4 dポイントの加盟店では還元率が上がります。還元率は各加盟店によって異なります。※5 au WALLLETポイントアップ店で利用すると還元率は1%になります。※6 LINEマイカラープログラムのランクによって還元率が変動します。※7 このほか、半年分のチャージ金額に応じてボーナスマイルがもらえる場合があります
また、表の右端の2列で「クレジットカードでのチャージの可否」と「ポイントサービスとクレカチャージのポイント二重取りの可否」の2つを示しています。ブランドプリペイドの大きな利点は「使い過ぎを防ぐ」という点にありますので、この記事では大きく取り上げなかったテーマですが、よりお得を目指したい方はこの2つの指標も参考になさってください。なお、ブランドプリペイドによっては特定のブランドのクレジットカードでのチャージではポイントが付かないなどのケースもあるようです。ポイント付与の条件を含め、ご利用の際は各社公式サイトでのご確認をお願いします。
※本記事は、執筆者の見解です。また、各サービスをご利⽤の際は公式サイトなどで最新の情報をご確認ください。