クレジットカード、電子マネー、QRコード決済……。めまぐるしく変化を続けるキャッシュレス決済。その動向をコンパクトに伝える連載企画「おトクの真相! 月刊キャッシュレス展望」がスタート。過去1か月のキャッシュレス関連のニュースの中から、マネー編集部員が気になったニュースをピックアップしてお届けします。
記事の最後には、記事公開時点で参加可能なキャッシュレス関連のキャンペーン情報も掲載していますので、おトク情報の取りこぼしがないようこちらもぜひチェックを。この連載は、毎月月初の公開予定です!
今月は、SBI証券と三井住友カードの提携のニュースをはじめ、新たに誕生した「ポイント獲得に強い」プラチナカードや、おトクなクーポンで静かなブームになっているファミペイのリニューアルの話題などをお伝えします。
2020年7月28日、「SBI証券」と「三井住友カード」が、個人向けの資産運用サービスにおける業務提携を発表しました。これにより、SBI証券での投資信託の積み立て(投信積立)を、三井住友カードのクレジットカードで決済することが可能となり、決済額に応じて三井住友カード側のポイントも付与されるようになります。
もともと、両企業が所属する「SBIグループ」と「SMBCグループ」は、2020年4月に戦略的資本・業務提携に関する基本合意を発表し、各種領域での連携強化に向けた協議を進めてきました。今回の動きもその一環と見られています。
現時点で発表されている提携内容は下記の4点。いずれも、2021年2月以降に具体化される予定です。
1.SBI証券の投信積立サービスにおいて、三井住友カードのクレジットカード決済が可能に。その際、決済金額の0.5%分の「Vポイント」(※)が付与。
2.Vポイントは、1ポイント=1円として三井住友カードの決済、SBI証券の投資信託の買い付けに利用が可能に(Vポイント投資)。
3.投資信託の保有残高に応じて、Vポイントを付与。
4.三井住友カードのアプリ上で、SBI証券総合口座情報の表示。
※Vポイント:SMBCグループのポイント。2020年6月に、三井住友カードのポイント「ワールドプレゼント」と、三井住友銀行のポイント「SMBCポイント」が統合して誕生。
この中で目を引くのが「1. 投信積立のクレカ決済が可能になり、ポイントも付与される」という点です。通常、証券会社で投資信託の積み立てを行う際は、銀行振込などで証券口座に入金する必要がありました。クレジットカード決済なら、こうした手間がかからず、しかも金額によってポイントが還元されます。仮に毎月1万円を積み立てる場合は、50円分のポイントが付与される形となり、おトクさにこだわる人にとっては見逃せないサービスと言っていいでしょう。
なお、上記の4つの変更点のうち、「2.Vポイントは、1ポイント=1円として三井住友カードの決済、SBI証券の投資信託の買い付けに利用が可能に(Vポイント投資)」と「3.投資信託の保有残高に応じて、Vポイントを付与」については、三井住友カード経由でSBI証券総合口座を開設するユーザーが対象になります(「1」「4」の変更点は、既にSBI証券の口座を持っているユーザーや、三井住友カード経由以外で今後SBI証券の総合口座を開くユーザーも対象)。
「証券会社×クレジットカード」の組み合わせで新たな金融サービスが生まれる?(画像はリリースより)
こうした、「証券会社×クレジットカード」の組み合わせで先行しているのが楽天です。2018年10月から「楽天証券」の投信積立を「楽天カード」で決済することが可能となり、その際、1%の還元率で楽天ポイントが付与されるようになりました。
このほかにも、楽天ポイントで投資ができる「ポイント投資」(2019年7月スタート)や、「楽天銀行」と楽天証券の口座を提携させると金利などが優遇される「マネーブリッジ」など、「楽天経済圏」とも称される豊富なサービス展開の強みを生かした施策が功を奏し、楽天証券の口座数は、2018年12月時点の300万口座からわずか15か月間で100万口座増加しました。楽天証券によると、この口座数の伸びは同社の過去最速のペースだと言います。
今回の「SBI証券×三井住友カード」の業務提携は、ポイント還元率こそ0.5%と楽天には及ばないものの、かたや「512万口座を抱える最大のネット証券」、かたや「会員数4,754万人(2019年)を誇るクレジットカード会社のリーディングカンパニー」同士の組み合わせということもあり、業界に与える影響も少なくないでしょう。その動向には引き続き注視していきところです。
三井住友カードは、2020年9月1日より、新しいコンセプトのプラチナカード「三井住友カード プラチナプリファード」の発行を始めました。
三井住友カード プラチナプリファードはブラックとプラチナホワイトの2色展開。国際ブランドはVisaに対応。カード番号や名義がすべて裏面に集約され、スッキリした券面デザインが印象的。Visaのタッチ決済にも対応(画像はリリースより)
一般的にプラチナカードと言えば、国内外の旅行傷害保険や、有名レストランの優待サービス、空港のラウンジ利用、コンシェルジュサービスなど充実した付帯サービスがその特徴です。しかし、今回発行された三井住友カード プラチナプリファードは、付帯サービスを必要最低限にまでしぼり込み、その分、「カードで支払う際のポイント還元の魅力を高めること」をコンセプトとして打ち出しています。
三井住友カード プラチナプリファードの基本還元率は1%。プラチナカードの還元率は0.5%程度が相場なので、「高還元」と言ってさしつかえない水準になっています。また「プリファードストア」(特約店)での利用で、ポイント還元率が1〜9%上乗せされます。特約店は、コンビニ、カフェ、ファストフード、ドラッグストア、スーパーなどのほか、交通機関や宿泊予約サイトなどが用意されており、それぞれ上乗せされる還元率が異なります。
三井住友カード プラチナプリファードの特約店とポイント還元率(抜粋)
●コンビニ
・セブンイレブン 還元率3%(+2%)
・ファミリーマート 還元率3%(+2%)
・ローソン 還元率3%(+2%)
●カフェ・ファストフード
ドトールコーヒー ・エクセルシオールカフェ 還元率2%(+1%)
マクドナルド 還元率3%(+2%)
●ドラッグストア
マツモトキヨシ 還元率2%(+1%)
ココカラファイン 還元率2%(+1%)
トモズ 還元率2%(+1%)
●百貨店
大丸松坂屋 還元率3%(+2%)
阪急百貨店 還元率3%(+2%)
阪神百貨店 還元率3%(+2%)
●ライフスタイル
蔦屋書店 還元率3%(+2%)
●交通
ANA 還元率2%(+1%)
ETC 還元率3%(+2%)
JapanTaxi 還元率5%(+4%)
●宿泊予約サイト
一休.com 還元率7%(+6%)
エクスペディア 還元率10%(+9%)
Hotels.com 還元率10%(+9%)
※いずれも付与条件あり。詳細は下記の公式サイトをご参照ください。
https://www.smbc-card.com/nyukai/platinum-preferred/special-store/index.jsp
三井住友カード プラチナプリファードには、さらに2つのポイント獲得の特典があります。ひとつ目が「海外での利用」でポイント還元率が2%上乗せされる特典。2つ目が「継続利用」に対する特典で、こちらは1年間で100万円以上利用するごとに10,000ポイント(最大で40,000ポイント)がもらえるというもの。
三井住友カードは、本カードの発行に至った理由として、「『付帯サービスはシンプルで良いので、キャッシュレスを沢山使えて、具体的なメリットの見えるものがよい』というプレミアムカードへの新しいニーズにお応えする」と説明しています(リリースより。原文ママ)。海外主要空港のラウンジが使えるプライオリティ・パスやコンシェルジュサービスなど、プラチナカードでおなじみの付帯サービスがない半面、基本還元の1%に加え、「特約店」「海外での利用」「継続利用」などをうまく利用できれば、確かにポイント獲得のチャンスは大きそうです。年会費は33,000円(税込)。新しいコンセプトのプラチナカードがどの程度ユーザーに受け入れられるのか注目されます。
なお、三井住友カード プラチナプリファードの新規入会者は、入会月の3か月後末までに40万円分利用すると、40,000ポイントプレゼントされる特典も用意されています。詳細は、下記リンク先のカード情報をチェックしてみてください。
ファミリーマートが運営するモバイル決済サービスの「ファミペイ」が、2020年9月5日に全面リニューアルされました。これまでは、アプリのトップ画面から「クーポン」「キャンペーン情報」などに遷移する必要がありましたが、これらをアプリトップ画面に集約して表示できるように、インターフェイスが大幅に改修されています。
また、新たに「ファミリーマート以外で支払う」機能が追加されました。これまでファミペイは、リアル店舗ではファミリーマートでの決済にしか使えませんでしたが(いくつかのECサイトでの決済には対応)、10月以降(一部9月中旬以降の店舗も)、順次、ファミリーマート以外の店舗でのファミペイでの決済が可能になります。
改修後のファミペイアプリのイメージ(画像はリリースより)
ファミペイは、総務省が普及を進めている共通QRコード決済の仕様「JPQR」に加盟しており、これを「ファミリーマート以外の店での支払い」に活用します。
JPQRはQRコード決済各社のQRコードの統一規格です。現状、QRコード決済は複数サービスが乱立しています。そのため、MPM方式(店舗がQRコードを提示しユーザーが読み取る方式)を採用している店舗の場合、「PayPayのQRコード」「楽天ペイのQRコード」「auPAYのQRコード」……といった具合に、QRコード決済サービスごとにそれぞれのQRコードを置く必要がありました。
JPQRでは、これらのQRコードを1枚に統一することが可能です。つまり、店舗側は1枚のQRコードを設置するだけでよく、ユーザー側は、自分が使いたいQRコード決済サービスのアプリでそれを読み込んで支払うことができるようになります(その際、QRコード決済サービスがJPQRに加盟していること、および、そのQRコード決済サービスに店舗が加盟していることが条件になります)。これにより、主に店舗側の手間を軽減でき、中小店舗へのQRコード決済の一層の普及の鍵をにぎる施策と目されています。
JPQRの活用イメージ(画像はJPQR公式サイトより)
JPQRに参加している決済サービス事業者(抜粋)
・PayPay
・楽天ペイ
・d払い
・au PAY
・LINE Pay
・ファミペイ
・メルペイ
・ゆうちょPay
・Jコインペイ
ほか
※2020年9月2日時点
ファミペイは2019年7月のスタートと、QRコード決済としては後発組です。しかしながら、約1年間でダウロード数を537万人に伸ばすなど順調に推移しています。買い物額に対するポイント還元率は0.5%と決しては高くありませんが、ファミペイの人気を支える理由のひとつとしてよくあげられるのが、利用者の購買履歴を分析し、ユーザー1人ひとりにカスタマイズされて送られてくるクーポンの存在です。
SNS上では、クーポンの気前の良さや、内容の的確さを称える声をよく見かけ、実際筆者にも「350ml缶のビール」の無料クーポンなど、ほかのアプリではなかなかないようなクーポンが送られてきたことがあります。これらは「ファミリーマートで使えるクーポン」のため、「ファミリーマート以外で支払い」が可能となる秋以降は、その形を変えてくることが予想されます。現時点でそれがどんなものになるか明らかではありませんが、10月以降のファミペイのキャンペーンはチェックしておいても損はないかもしれません。
期間中、国内のセブン‐イレブンにて、三井住友カードに搭載の「Visaのタッチ決済」機能を合計500円(税込)以上利用すると、もれなく500円が還元されます。カード1枚で1回までの利用が可能。還元される500円はカードの利用代金に充当されます。
キャンペーン期間:開催中〜2020年9月30日
公式サイト:https://www.smbc-card.com/mem/cardinfo/cardinfo7222218.jsp
期間中、アメリカン・エキスプレス・カード(アメックス)を事前登録のうえ、対象店舗で使うと、利用金額の30%がキャッシュバックされます。登録したカード1枚につき、キャッシュバックは5,000円までで、複数店舗での利用も可能です。対象の店舗は全国の小規模店となっており、その数は約10万店。公式サイトでその一覧が確認できます。
キャンペーン期間:開催中〜2020年9月24日
公式サイト:https://www.americanexpress.com/jp/campaigns/shop-small/cardmember.html
期間中、全国の郵便局の窓口でゆうちょPayを利用すると、5%分のゆうちょPayポイントが還元されます。ゆうちょPayポイントは1ポイント=1円でゆうちょPayの支払いに使えます。月間1,500円相当がポイントの付与上限です。また、郵便局の窓口、あるいは郵便局のネットショップで、ゆうちょPay、mijica、JP BANKカードのいずれかを利用すると、1,000円(税込)を1口として、抽選で1,000名に5,000円分のカタログギフトが当たるキャンペーンも同時開催されています。
キャンペーン期間:開催中〜2021年3月31日
公式サイト:https://www.jp-bank.japanpost.jp/campaign/cashless/cpn_post.html
※▼主要なQRコード決済のキャンペーンについては、当サイトの下記の記事にまとめてあります。
ポイント2重取りも可能! 主要QRコード決済の使い方&開催中キャンペーンまとめ【8月版】
https://kakakumag.com/money/?id=13577
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