「JCBカード S」(上画像左)と「JCBカード W」(同右)は、いずれも年会費永年無料で発行できるJCBのプロパーカード(※)です。
※ クレジットカード会社が独自に発行しているクレカ。いっぽう、クレジットカード会社がほかの企業と提携して発行しているカードは「提携カード」
年会費永年無料のJCBカードを探す際は両カードとも候補になると思いますが、「違いは何?」、「どっちがおトク?」と迷ってしまう方もいるかもしれません。
結論から言うと、「JCBカードS」は「クレジットカードの特典重視」の方、「JCBカードW」は「ポイント還元率重視」の方におすすめです。ポイントの貯めやすさでは「JCBカードW」のほうがすぐれていますが、レジャー施設などによく行く方なら「JCBカードS」のほうが、結果的におトク感を得やすいと思います。また、最初にお断りしておくと、「JCBカードW」には加入時39歳以下という年齢制限がありますが、「JCBカードS」にはありません。
両カードの比較表。表内のポイント還元率は、「Oki Dokiポイント」を5円相当の用途で使った場合の数字です
当記事では、両カードのメリットを比較し、それぞれどのような人に向いているのかを、詳しく解説していきます。
「JCBカードS」は、2023年12月に登場した比較新しいクレカです。それまで、年会費永年無料のJCBプロパーカードといえば、2017年登場の「JCBカードW」一択でしたが(※)、「JCBカードS」の登場により、自分のライフスタイルに合った、年会費永年無料のJCBカードを選べるようになりました。両カードの基本情報は下記のとおりです。
JCBカードSとJCBカードWの比較表
※「JCBカードW」には、女性向けの「JCBカードW plus L」もあります。ポイント還元率やポイントアップ特典は「JCBカードW」と同じですが、「JCBカードW plus L」にはエステなど美容関連の特典や女性向けの保険サポートが付帯します
「JCBカードS」は、「JCBカード S 優待 クラブオフ」(※)による優待特典が充実しているのが最大の特徴です。ポイント還元率こそ、JCBカードの一般的な水準ですが、優待特典を活用すれば、ポイントとはひと味違うおトク感を得ることができそうです。
いっぽうの「JCBカードW」は、18〜39歳の人のみが申し込める若年層向けのクレカです。対象年齢内に発行しておけば、40歳以降も年会費無料で継続利用できます。常時、JCBカードの一般的なポイント還元率の2倍のポイントが貯まるのが特徴で、「ポイント還元」という目に見えやすい形でおトクを実感できます。
※「JCBカード S 優待 クラブオフ」とは?
全国の宿泊施設や飲食店を中心としたレジャー施設、日帰り温泉、スポーツジムなどの健康関連施設をはじめ、全国20万か所以上の優待サービスが受けられる付帯特典。福利厚生のアウトソーシングサービスを手がける、株式会社リロクラブが提供。JCBカードでは、「JCBカードS」のほか、「JCBゴールド」以上のランクのカードに同様の特典が提供されている(一部、上位カードのみの優待もある)。
まず、「JCBカードS」と「JCBカードW」のポイント還元に関するメリットを見ていきます。両カードの特徴をまとめると、下記のとおりとなります。
・JCBカードS → 「JCBスターメンバーズ」でポイント還元率を上げることができる。
・JCBカードW → 基本ポイント還元率が通常の2倍、さらに、パートナー店で最大21倍を目指せる。
すでに触れているとおり、ポイント還元率で比較すると、おトクさでは「JCBカードW」に軍配が上がります。まずは、「JCBカードW」のポイント還元の特徴から見ていきましょう。
「JCBカードW」は1,000円の利用で2ポイント貯まります。JCBカード(「JCBカードS」を含む)は通常1,000円の利用で1ポイント貯まるため、「JCBカードW」は2倍のポイントが貯まることになります。たとえば、年間で総額100万円をカード決済した場合、「JCBカードW」と「JCBカードS」では1,000ポイント(1ポイント5円換算で計算すると5,000円相当)も違いが出ます。
上記のポイント還元率および100万円利用時のポイント数における金額換算は、「Oki Dokiポイント」を、1ポイント5円相当のレートで交換した場合の数字です
ちなみに、「JCBカードW」、「JCBカードS」ともに、貯まるポイントは「Oki Dokiポイント」(JCBのオリジナルポイント)です(※)。「Oki Dokiポイント」は「1P=1円相当」ではなく、用途によって「3〜5円」に相当します。「JCBカードW」では1,000円利用するごとに2ポイント貯まりますが、これを「1ポイント=5円」の用途に使う場合、「2ポイント×5円相当=10円相当」となり、実質的に1%還元と計算できます。
※2026年に、「Oki Dokiポイント」は、新プログラム「J-POINT」に変更されることが発表済みです。「J-POINT」ではポイント還元のしくみやポイントアップ対象店などが変更される予定です
「Oki Dokiポイント」は、JCBカードの利用料金に充当できるほか(この場合は1ポイント3円相当)、以下のようにさまざまなポイントプログラムと提携しています。少しでもおトクに「Oki Dokiポイント」を使いたい場合は、交換レートが「1対5」のものを狙って交換するとよいでしょう。
出典:JCB「マイルや他のポイントと交換」
また、JCBのプリペイド型ギフトカード「JCBプレモカード」(※)にも、1 Oki Dokiポイント=プレモバリュー5円分と、最も高いレートでチャージが可能です。「JCBプレモカード」はコンビニや百貨店など、全国70万店以上で支払いに利用できるうえ、発行にあたり審査もありません。「Oki Dokiポイント」をおトク&便利に使いたい方は、JCBカードと一緒に持っておくのがおすすめです。
※JCBプレモカードとは?
JCBが発行しているプリペイド型ギフトカード。好きな金額をチャージすると支払いに使える。元々は好きな金額をチャージしたうえでギフトとして渡す用途を目的にした商品だが、繰り返しチャージできることもあり、自分で使うのにも便利(※2025年10月移行、チャージ機能の廃止など、商品性の改定が予定されています。詳しくは公式サイトをご確認ください)。カードはインターネット経由で購入できるほか、ローソンやファミリーマートでも購入可能。支払いに使える店舗は全国70万店以上で「JCB PREMO」マークが目印。JCBのクレカ加盟店や、JCBギフトカードが使える店舗とは異なるので注意。
「JCBカード」には、「JCB original seriesパートナー」という、通常より多くポイントが貯まる優待店があります(以下、「パートナー店」)。あらかじめ、専用サイトから「ポイントアップ登録」を済ませたうえで、「JCBカードW」や「JCBカードS」を含むJCBのプロパーカードで支払うと、店舗によって通常の2〜21倍(2025年6月時点)の「Oki Dokiポイント」が貯まります。
この「パートナー店」の中には、「JCBカードW」限定でさらにおトクになる店舗もあります。2025年6月時点では、下記3店舗が対象です。普段から以下のような対象店を利用する方は、買い物で効率よくポイントを貯められることでしょう。
・Amazon:4倍 ※そのほかのJCBプロパーカードの場合3倍
・セブン-イレブン:4倍 ※同3倍
・スターバックス(e-Gift購入時):21倍 ※同20倍
※上記の○倍は、JCBカードの標準還元率0.5%に対するものです。
また、定期的に開催される「JCBポイントアップ祭」というキャンペーンでは、一部のパートナー店でのポイント還元率がさらにアップします。期間中に対象店を積極的に活用すれば、それだけで多くポイントが貯まりますので、公式サイトなどをこまめにチェックしておきたいところです。
続いて、「JCBカードS」のポイント還元についてです。「JCBカードS」は1,000円の利用で1ポイント貯まります。ポイントを5円相当の用途に使う場合、還元率は0.5%と計算できます。このように、ポイント還元の面で「JCBカードWに」はかないませんが、獲得ポイントを増やす手段が2つあります。
ひとつめは、前出の「JCB original seriesパートナー」です。「JCBカードS」はJCBプロパーカードであることから、「JCBカードW」には見劣りするものの、「パートナー店」でポイント還元率がアップします。
「パートナー店」の1部を抜粋。括弧内のポイント還元率は、「Oki Dokiポイント」を5円相当の用途で使った場合の数字です
2つめが、「JCBスターメンバーズ」という特典です。こちらは、年間の利用額に応じて翌年の基本ポイント還元率がアップするという内容で、「JCBカードW」には付帯されていない特典です。
「JCBスターメンバーズ」でのポイント還元率アップの仕組みは次の表のとおりです。たとえば、年間で100万円以上利用した場合は、翌年の基本ポイント還元率は1.5倍になります。年間100万円は月に8万円+αで達成できる額なので、メインカードとして活用すれば十分この還元率を狙うことができるでしょう。なお、「JCBスターメンバーズ」のポイントアップの特典は自動的に適用されるため登録は不要です。
こうしたポイントアップ制度を上手に活用すれば、「JCBカードW」とのポイント還元率の差を縮めることは可能です。
カードの券種によって、ポイントアップの倍率は異なります。記載の内容は「JCBカードS」のもの。(※)の「ロイヤルαPLUS」は2025年より適用予定。なお、表内の「翌年のポイント還元率」は、「Oki Dokiポイント」を5円相当の用途で使った場合の数字です
続いてクレジットカードの付帯特典を見ていきましょう。「JCBカードW」はポイント獲得にメリットを持たせたクレカということもあり、付帯特典は必要最小限なものに限られます。いっぽう、「JCBカードS」には次の2つのメリットがあります(いずれも「JCBカードW」には付帯されていないもの)。
JCBカードSの主な付帯特典
・「JCBカード S 優待 クラブオフ」で最大80%の割引優待
・スマートフォン保険(年間最大3万円)
記事の最初のほうで少し触れましたが、「JCBカード S 優待 クラブオフ」は、会員制の割引優待サービスのこと。宿泊施設、飲食店、娯楽施設などの国内外20万か所以上が対象で、最大80%の割引優待を受けられます。以下、優待割引の一例をあげます。
●TOHOシネマズ映画鑑賞チケット 一般2,000円→1,500円
●横浜・八景島シーパラダイス(水族館4施設パス) 大人・高校生以上3,500円→3,000円
●PIZZA-LA ピザを含む4,000円以上の注文1回で500円引き
●ホテル京阪ユニバーサル・タワー 大人1名1泊(1室3名)8,800円〜
たとえば、TOHOシネマズの割引額である500円相当のポイントを得るには、「JCBカードW」をポイント還元率が1.0%になるように使用した場合、単純計算で5万円分決済しなければなりません(ポイントアップ特典などは考慮せず)。しかし、「JCBカードS」なら1回につき500円分のおトクになり、利用回数が多いほど割引額も大きくなります。また、会員が同行する場合は会員以外にもクラブオフ優待が適用されるため、家族や友人と出かけた場合、皆でおトクを共有できます。
レジャーや旅行、食事などによく出かける方は、「JCBカードS」があることでポイント還元以上のおトク感を得られることでしょう。
例であげたような優待特典が全国20万か所で利用可能。「JCBカード S 優待 クラブオフ」の優待が適用される店舗は公式サイトで確認可能です(上画像)。カカクコム本社所在地のある恵比寿駅周辺にも多くの対象店が確認できました(下画像。2024年6月時点)
「JCBカードS」には、「JCBスマートフォン保険」が付帯するのも特徴のひとつです。
「JCBスマートフォン保険」とは、スマートフォンの修理費用や再調達費用を補償する制度のこと。スマートフォンの通信料をJCBカードで決済することが条件ですが、以下のように幅広いトラブルに備えることができます。
JCBスマートフォン保険の補償内容
・ディスプレイの破損
・火災、水濡れによる修理費用
・盗難時に同等のスマートフォンを購入する費用
補償額は年間最大3万円で、火災や水濡れの場合は1万円、盗難の場合は1万5,000円が自己負担額となります。ただし、以下の3つの項目に該当しない場合は、保険の対象とはならないのでご注意ください。
JCBスマートフォン保険の補償条件
・カード本会員のスマートフォンであること
・購入後24か月以内であること
・スマートフォンの通信料を「JCBカードS」で決済していること(直近3か月以上連続でJCBカード本会員の方が支払っていること)
「JCBカード S 優待 クラブオフ」や「JCBスマートフォン保険」の特典は、JCBカードでは通常ゴールドランク以上のカードに付帯する特典です。ゴールドランク以上の特典内容と比べると、金額や優待内容などの一部が簡略化されてはいるものの、こうした手厚い特典が年会費永年無料のクレカで体験できるのは、本カードの大きなメリットと言っていいでしょう。
ここまで見てきたように、「JCBカードS」と「JCBカードW」は、ともに年会費永年無料のJCBプロパーカードではあるものの、それぞれの強みは大きく異なります。以下、あらためて、両カードの特徴と、それぞれのカードが向いている人をまとめました。
記事冒頭の表を再掲。表内のポイント還元率は、「Oki Dokiポイント」を5円相当の用途で使った場合の数字です
ちなみに筆者は、「ポイント還元率」を重視して「JCBカードW」を所有しています。個人的には、どこで使っても高還元になる点や、Amazonで4倍のポイント還元を受けられる点がおトクだと感じています。
もちろん「JCBカードS」の特典も魅力的です。「JCBカードS」は「特典用」のクレカとして保有しておき、「決済用」クレカである「JCBカードW」と区別して使っていくのもひとつのアイデアかもしれません。
両カードとも年会費永年無料のため、たとえ、さほど利用機会がなくても年会費が負担になることはありません。実際に自分のライフスタイルの中で使ってみて、より気に入ったカードをメインカードとして日常使いしていくというのもアリでしょう。
読者の皆さんも、当記事を参考に、両カードの活用方法を探ってみてください!