「iPhone」をもっと安く使いたい――。そう考えている人は、仮想移動体通信事業者(MVNO)の格安SIMカードへの乗り換えを検討してみてはどうだろうか。ただ、これまで使っていたNTTドコモやau、ソフトバンクといった大手キャリアからMVNOへ乗り換えるとなると、初心者だけでなく中上級者でも不安になるもの。毎月の利用料金が安くなるのはうれしいが、通信速度は遅くないのか? アップルの電子決済機能「Apple Pay」は使えるのか? サポートは大丈夫なのか? などなど気になる点は多い。そこで今回はMVNOへ乗り換えて、iPhoneを実際に使っている人たちに、乗り換えたきっかけやMVNOにしてよかった点、不満点などを聞いた。
※格安SIMでiPhoneを使っている人を3人追加しました(2017年11月15日)
「iPhone 8/8Plus」と「iPhone X」の発売に合わせて、新たにMVNOのSIMカードでiPhoneを利用している3人(Fさん、Gさん、Hさん)のよかった点と悪かった点を追加しました。
MVNOのSIMカードを使ってiPhoneを利用している人たちに、MVNOに乗り換えたきっかけや、実際に使ってみてよかった点、悪かった点を聞いた
auからNTTコミュニケーションズの「OCNモバイルONE」へMNP(番号持ち運び制度)で乗り換えたAさん。au時代は、「スーパーカケホ」と「データ定額5」(5GB)に加入していたが、月末にはいつも通信速度に制限がかけられて困っていた。auの大容量プラン「データ定額20」(20GB、月額6,000円)へのプラン変更を検討していたが、MVNOならもっと安く済むのではと考えて、思い切ってOCNモバイルONEの10GBプランに加入。基本料金込みで月額3,000円(税別)の安さに満足している。10GBを使い切ることはほとんどなく、月額2,150円(税別)の6GBプランへのプラン変更を検討しているという。iPhoneはau時代に、アップルストア経由で「iPhone 7 Plus」のSIMフリーモデルを一括で購入していた。
家族とよく電話をするというAさんだが、かけ放題サービスへの加入はいまのところ見送っている。10円/30秒(通常は20円/30秒)の「OCNでんわ」を使うことで、電話代を節約しており、いまのところ多くても1か月1,000円程度に電話代は抑えられているという。MVNOに乗り換える際に一番心配していたという通信速度やエリアに関しては、お昼や帰宅時に、遅く感じることはあるが、それほど困ってはいないとのこと。OCNモバイルONEに大きな不満はないというが、MNP時に困ったのが、MNPには乗り換え期間があり、その残り期間が少ないとインターネット経由で契約できないということ。乗り換え期間がギリギリだったため、お昼休みに店頭まで行ってMNPを済ませたという。
OCNモバイルONEの10GBプラン(音声対応SIM)に加入しているAさん
auからLINEの「LINEモバイル」にMNPをしたBさん。乗り換え前の利用料金は端末代込みで毎月1万円弱だったという。LINEモバイルを選んだ理由は、LINEの各種サービスをよく利用しているから。通信速度に不満はなく、MVNOへの乗り換えで利用できなくなるキャリアメールも、ほとんど使っていなかったため困ってはいないという。Bさんは、「LINE」「Twitter」「Facebook」「Instagram」を使う場合にデータ通信量がカウントされない「コミュニケーションフリープラン」(音声通話SIM)の5GBに加入しており、月額料金は2,220円(税別)。端末代金は「Apple Care+」(税別14,800円)込みの24回払いで毎月4,500円ほど。合計すると月々6,900円ほどとなり、au時代よりも3,000円以上安くなったという。カウントフリーのLINEの利用頻度が高く、5GBのデータ容量を使い切ることはほとんどなく、3GBプランに変更しようと考えているとのこと。不満点は、支払いがクレジットカードか「LINE pay」のみで、紙の支払い用紙がもらえないこと。サポートの電話がつながりにくかったのも不満だったという。
Bさんも乗り換え時に少し苦労したという。LINEモバイルとの契約を済ませ、アップルストアで「iPhone 7」のSIMフリーモデルを購入し、セットアップしてもらおうと思ったが、「iTunes」のバックアップデータの暗号化を解除するためのパスワードを失念し、お店では設定してもらえず。帰宅後に、連絡先などの各種情報を「iCloud」にアップロードし、そこからデータを復元して、この問題をクリアした。LINEに関してもトーク履歴をiCloudにバックアップして、問題なくデータ移行できたという。
LINEモバイルのコミュニケーションフリープラン(音声対応SIM、5GB)に加入しているBさん
Cさんは、ガラケーユーザーだったが、友達からすすめられて2台持ちを選択。以前はガラケーだけで月額6,400円程度払っていたが、いまはガラケーの料金プランを見直し、1,600円〜最大2,600円のプランに加入。iPhoneは、価格を重視して「iPhone SE」の64GBモデルを購入。イオンリテールの「イオンモバイル」のデータ専用1GBプラン(月額480円)で利用している。iPhone SEの端末代金は一括で支払い、現在はデータ通信量の620円(SMS利用料込み)のみ毎月支払っている。ガラケーの料金を含めても月額2,500円程度で済んでいるという。
イオンモバイルを選んだ理由は、はじめてスマートフォンを持つので、購入時にいろいろと相談ができる対面式がよかったため。最近は対面販売に力を入れているMVNOが増えているが、イオンモバイルは店舗数が多く安心感がある。困ったのは、はじめてのスマートフォンだったので、初期設定に苦労したこと。詳しい人に聞いて、やっと使い始められたという。イオンモバイルの不満点は、インターネット上でプラン変更ができず、電話か店頭でしか変更できないこと。通信速度に関しては、不満は感じていないが、新宿や渋谷など人が多い場所では、通信速度が遅くなることがあるという。
イオンモバイルのデータ専用プラン(1GB)に加入しているCさん
auから楽天の「楽天モバイル」にMNPで乗り換えたDさん。MVNOに乗り換えるのは決めていたが、どこにするかというこだわりはなく、選んだ理由は「安そうだったから」。音声SIMの3.1GBプランに加入しており、月額料金は1,600円(税別)。iPhoneはiPhone 7のSIMフリーモデルをアップルストアで購入して利用している。Dさんは、長年iPhoneを利用してきており、これまで大きな故障がなかったことからApple Care+には加入していないという。MVNOのSIMカード+SIMフリーモデルへ乗り換える前は、少し不安があったが、実際に使ってみると大きな不満はなく使えているという。DさんはApple Payを使って、iPhoneを定期として利用。MVNOのSIMカードを使っていても、Apple Payは問題なく使えているという。電話はほとんどしないが、10円/30秒の「楽天でんわ」を使って電話代を節約している。
困ったことは、一度通信障害があり、通信できなくなったこと。それ以降は、楽天モバイルの「メンテナンス・障害情報」をよく見るようになったという。キャリアメールに関しては、両親がガラケーのため、連絡を取るのに少しだけ苦労しているという。
楽天モバイルの3.1GBプラン(音声対応SIM)に加入しているDさん
ソフトバンクからOCNモバイルONEへMNPで乗り換えたEさん。OCNモバイルONEを選んだのは、速度制限なしの通信(最大262.5Mbps)と速度制限ありの通信(最大200kbps)を自由に切り替えられる「ターボ機能」を使えるから。このターボ機能を使って、Eさんは常時速度制限ありの通信で利用しており、速度制限なしの通信はほとんど利用していないという。駅では無料Wi-Fiにつなげて上手にやりくりしているというが、店頭でアプリを使ったポイントカードの画面を表示するときは時間がかかって困っているという。電話は、友達や家族に電話をするときはOCNでんわ、宅配便やお店の予約には「050Plus」を、という具合に上手に使い分けている。大きな不満点はなく、6か月(最低利用期間)でほかのMVNOなどに乗り換えられるのも安心感があるという。
海外旅行によく行くEさんにとって、OCNモバイルONEに乗り換えるのと同時にアップルストアで購入したSIMフリーのiPhoneが役立っているという。SIMフリーのiPhoneなら、旅行先の空港でプリペイドカードを買って、自分でSIMカードを挿せば、ローミングするよりも安く済むからだ。ただし、前回旅行に行った際は、SIMカードを抜き差しするためのピンを忘れて困ったという。
OCNモバイルONEの3GBプラン(音声対応SIM)に加入しているEさん
3年ほど前にNTTドコモから「BIC SIM by IIJ」に乗り換えたFさん。BIC SIM by IIJを選んだのは、当時としては珍しい店頭受付カウンターがあったことと、公衆無線LANがオマケで付いていたから。しかし、公衆無線LANは満足できるほど使えるものではなく、今はほとんど使っていないという。契約しているのは、音声通話機能付きの「ミニマムスタートプラン」で月額料金は2,000円ほど。NTTドコモ時代は7,000円〜8,000円だったので、今は1/3以下で済んでいる。
移動中にネット動画などは視聴せず、もっぱら「Kindle」で電子書籍を読んでいるというFさんにとって、データ量が3GB〜5GB(クーポンや繰越を含む)のプランでも不足はないという。満足度は高く、家族のスマートフォンもIIJに乗り換えた。不満点としては、よく利用している地下鉄の一部区間で、ネットにつながらないときがあること。速度もNTTドコモを利用していたときよりも遅く感じるときがあるが、割り切って使っているという。
「iPhone 8 Plus」はアップルストアで256GBモデルを購入。容量は迷ったが、手放すときの買取価格が高い256GBモデルをチョイス。以前は「Nexus 6」を利用しており、久しぶりのiPhoneだが、「やっぱり使いやすい」と満足している。「iPhone X」を待とうかと思ったが、顔認証機能の「Face ID」よりも指紋認証機能「Touch ID」のほうが便利だと思ってiPhone 8 Plusを選んだという。
BIC SIM by IIJのミニマムスタートプラン(音声対応SIM)に加入しているFさん
「Twitter」の確認やLINE用に「iPhone SE」(SIMフリー、16GBモデル)を昨年購入したGさん。SIMはフリーテルのデータ専用(1GB)を利用しており、月額料金は1,00円以下。加入当時は回線増強などで、格安SIMながら通信速度を売りにしていたフリーテルだが、Gさんは速度面で速いと実感したことはなかったという。それでも、テキストベースのTwitterやLINEは不満なく使えている。気になるのは2017年11月1日に楽天に買収された影響だが、「今のところ何も変わっていません」とのこと。将来的な不安はあるというが、料金やAPN設定も変わっておらず、買収による影響は今のところ感じていないようだ。
Gさんはメインのスマートフォン「Xperia Z Ultra」でも格安SIMを利用している。契約しているのは、マイネオの「auプラン(Aプラン)」。音声通話付きの「デュアルタイプ」(3GB)に加入しており、月額利用料は約2,000円。iPhone SEと合わせても1か月の利用料金は約3,000円に収まっている。マイネオはフリーテルよりも、速度が出ており、つながりやすいという。満足度はマイネオのほうが高いと感じている。
フリーテル(現楽天)のデータ専用(1GB)に加入しているGさん
iPhone Xを発売日の11月3日に入手したHさん。スマホにもMVNOにも詳しく、現在3台のスマホを使っているHさんが選んだのは「DMM mobile」だ。複数枚のSIMでデータ容量をシェアできるシェアプランを安く使いたいということから、業界最安をうたうDMM mobileを選んだという。現在は「データ通信SIM3枚プラン」の10GBに契約。3枚分のSMSオプションを含めて、月額料金は2,700円ほど。SIMカードの発行手数料が、1枚分で済む点も決め手になった。使い道は、Hさんの自分用のスマホ2台と、家族用のスマホ1台(自分用のNTTドコモのスマートフォンも利用中)。通信速度にはついては、平日の昼は少し遅いと感じるが、概ね不満なく使えている。帰宅中に「Amazonプライムビデオ」を見ることがあり、そのときも問題なく再生できるという。利用料金に応じてDMMポイントが付与されるのも使っていて気づいたメリット。貯まったポイントで電子書籍を3か月に2冊ペースで購入しているという。
iPhone Xは256GBモデルをアップルストアで購入。購入してすぐに使えなかったのが不便だったという。SIMフリーのAndroidスマホはAPNがあらかじめ設定されており、すぐに利用できるが、iPhoneの場合はAPN設定のために無線LANに接続する必要がある。そのため自宅に帰ってから設定したという。また、よく音楽ゲームをするHさんにとって、iPhone Xにイヤホン端子がないのも不満点。Bluetoothイヤホンでは音の遅延が発生し、ゲームにならないのだという。顔認証機能のFace IDについては、「便利ですが、これからの季節、マスクをする機会が増えるので、少し面倒になるかも」と少しだけ心配していた。
DMM mobileのシェアコース、データ通信SIM(最大)3枚プランに加入しているHさん
以上、iPhoneをMVNOのSIMカードで利用している人に話を聞いてみた。MVNOで懸念されている、通信速度やつながりやすさに関しては、意外にも全員大きな不満は持っていなかった。対面販売を重視したり、カウントフリーなどの機能面を重視したり、MVNO選びも人それぞれで興味深かった。端末は全員がアップルストアでSIMフリーモデルを購入していたが、Apple Care+に加入するかどうかは人それぞれ考え方があっておもしろい。端末に関しては、今使っているiPhoneをそのまま使うこともできる(利用できるMVNOが異なるので注意)ほか、中古のiPhoneを購入するという手もある。
MVNOへの乗り換えで利用できなくなるキャリアメールは、GmailやLINEなどを上手に代用している人が多かった。電話に関しては、かけ放題サービスに加入するかどうか悩みつつ、通話料金が安くなるプレフィックス方式の電話アプリを使って電話代を節約していた。家族割などを考えると大手キャリアのほうがトータルで安いケースもあるので、一概にMVNOへの乗り換えをすすめることはできないが、少しでもiPhoneを安く使いたいと考えているなら、MVNOを検討してみる価値は十分あると言えるのではないだろうか。
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