NTTドコモから2017年6月16日に発売されたAndroidスマートフォン「Xperia XZ Premium SO-04J」(ソニーモバイル製)。その概要は発売日に速報としてすでにお届けしているが、価格.comのユーザーレビューに寄せられたユーザー満足度が5点満点の4.94と非常に高く、絶賛する意見がとても多い。実機を1週間使ってその理由に迫った。
価格.comのユーザーレビューでも評価が高い「Xperia XZ Premium」。1週間通して使い、細部まで検証した
まずは「Xperia XZ Premium」の概要に、簡単に触れておこう。2160×3840の4K表示に対応した約5.5インチの液晶ディスプレイ「トリルミナス ディスプレイ for mobile」を搭載し、ボディサイズは、約77(幅)×156(高さ)×7.9(厚さ)mmで、重量は約191gという比較的大型のAndroidスマートフォンだ。国内ではNTTドコモのみの取り扱いで、同社の夏モデルでは、サムスン「Galaxy S8」シリーズ、シャープ「AQUOS R」とともに、高性能モデルの一翼を担う製品となっている。
microSDメモリーカードが装着された状態で計測した重量は192g。金属とガラスのボディなので重量感がある
本機最大の特徴である、4K表示対応の液晶ディスプレイは、インターネット上の4Kストリーミング動画をドットバイドットで視聴できるほか、搭載されるカメラで撮影した4K動画などもドットバイドットで表示できる。ただし、4K表示が行えるのは、プリインストールされるメディアプレーヤー系アプリの一部のみで、基本となるホーム画面の表示や、ほとんどのアプリは、1080×1920のフルHDで表示される。
本機のOSは、4K表示サポートのAndroid 7.1.1なので、すべての画面を4K表示にすることは技術的に不可能ではない。しかし、そもそも4K表示に対応していないアプリなどをわざわざ4K画質にアップコンバートするのは、あまり意味がないうえに、CPUなどに高い負荷がかかり、電力消費の面でもマイナスに作用する。そのため、あえてフルHD表示にとどめているというわけだ。
ユーザーレビューに寄せられた「画面表示」のスコアは4.93で、カテゴリ別順位で1位だ。その詳細を見ても「綺麗の一言」や「マスターモニターとしても使えるほどのクオリティ」など発色の忠実さを指摘する意見も目立つ。
肝心の画質だが、高解像度化による開口率の低下が原因で、同サイズのフルHD液晶ディスプレイ搭載スマホよりも画面はやや暗く感じた。ただ、初夏の日差しが直接差し込むような状況に負けない程度の最高輝度が確保されているので、実用上の問題は少なそうだ。また、視野角で、斜め方向から見ると発色や輝度の低下がやや見られたが、画面を正面から見れば問題はない。高解像度による情報量はさすがで、動画コンテンツの解像度をフルHDから4Kに切り替えた瞬間に、画面からもやが晴れたような、情報量の向上を感じ取れた。スマホサイズに4Kはオーバースペックに感じられるが、ユーザーが絶賛するように画質の満足度は確かに高い。
表示できる色域が広がったため、鮮烈な印象を与える4Kディスプレイ。4Kや高解像度のデジカメ画像を表示させた場合の情報量などでメリットがある
電子書籍アプリなどはフルHDで表示される。5.5インチというサイズの制限があるので、活字の表示に粗さは感じられず、十分な表示能力がある
視野角はやや狭く、斜め方向から見ると、画面が暗くなり発色の変化も目立つ。何人かでディスプレイをのぞき見るような使い方は苦手だ
この液晶ディスプレイは発色が改善され、HDR映像の表示にも対応した。その違いを4K表示対応の2015年冬モデル「Xperia Z5 Premium」と比較すると、違いが実感できる。本機で現在視聴できる4K HDRの映像コンテンツとしては、NTTドコモの「dTV」から、「アメイジング・スパイダーマン」など5タイトルの映画のほか、ミュージックビデオなどが有料で配信されている。このほか、「Amazonプライム・ビデオ」でも4K HDRコンテンツが配信中だ。なお、プリインストールされる「YouTube」アプリも、4K対応である。
4K HDRコンテンツはNTTドコモの「dTVで」や「Amazonプライム・ビデオ」で配信中だ
Xperia XZ Premium(写真上)で4K HDRを、Xperia Z5 Premium(写真下)で、同じコンテンツのSDR版を表示させている。丘を茂る樹木の陰影や、右下に見える家の黄色い壁などの表現力が増しているのがわかるだろうか
なお、オーディオ性能も改良されており、アナログ回路部分に手が加えられ、S/N比が向上している。また、フロントに備わる2個のスピーカーを使うことでステレオ再生も可能なうえに、バーチャルサラウンド技術「S-Force フロントサラウンド」も搭載されているので、スマートフォンとしてはかなり迫力のあるサウンドを再生できる。
本機の前身となる4KスマホのXperia Z5 Premiumは、野心的な製品だったものの、価格.comのユーザーレビューのスコアは4.05(2017年6月20日時点)と、さほど高くはない。そのレビューの内容をよく見ると、発熱の激しさとバッテリー持ちの悪さが、必ずと言っていいほどネガティブ評価の理由にあげられている。Xperia XZ Premiumでは、この点がどれだけ進歩したのか気になるところ。本機のCPUはオクタコアの「Snapdragon 835 MSM8998(2.45GHz×4+1.9GHz×4)」で、Xperia Z5 Premiumが採用していた「Snapdragon 810 MSM8994(2GHz×4+1.5GHz×4)」と比べると、かなり省電力になっているが、はたして発熱も抑えられているのだろうか。
以下に示したグラフは、Xperia XZ PremiumとXperia Z5 Premiumそれぞれの、5日間のCPUの温度推移を示したものだ。Xperia XZ Premiumの最高温度は41.7℃で、カメラのARエフェクトを30分ほど使ったときのもの。また、後述するメインカメラの超高速動画撮影を断続的に30分ほど行ったときも、40℃を超えるCPU温度を記録した。だが、こうした負荷の大きい処理を行わなければ、おおむね35℃以下で推移した。表面に現れる熱も抑えられているし、ボディの一部が極端に熱くなることもない。いっぽう、以前価格.comマガジンで計測したXperia Z5 Premiumの発熱データでは、最高温度が44.7℃と飛びぬけて高いうえに、使用中の温度域が全体的に高い。こうしたデータからも、Xperia XZ Premiumは、発熱がXperia Z5 Premiumと比べて大幅に改善されていることがわかる。
検証中5日間のXperia XZ PremiumのCPU温度推移。最高で41.7℃を記録したが、40℃を超えたのは2回だけ
こちらはXperia Z5 PremiumのCPU温度の推移。ARエフェクトを使用した際の最高温度44.7℃が目を引くが、全般的な温度域が高い
次は、処理性能および体感速度だ。先日の速報でお届けした通り、ベンチマークアプリ「Antutuベンチマーク」の総合スコアは、166,307(内訳、3D:69005、UX:53388、CPU:34281、RAM:9633)だった。このスコアは、同じCPUを持つ「Galaxy S8+」より少しだが高速なもので、現状のキャリア製スマホでは国内最速の値だ(価格.comマガジン調べ)。ユーザーレビューのサブ項目「レスポンス」は5.00の満点で、もちろんカテゴリ別で1位である。CPUとRAM容量が同じライバル機「Galaxy S8+ SCV35」も5.00点で同じく1位、「Galaxy S8 SC-02J」が4.76で14位、「Galaxy S8+ SC-03J」が4.71で19位となっている(なお、Galaxy S8シリーズはCPUの動作クロックが2.35GHzと少し低い)。
この両機の体感速度は、いずれも非常にスムーズで、筆者では有意な違いを感じ取ることができず、体感速度レベルではほとんど互角である。なお、1世代前のCPU「Snapdragon 820 MSM8996(2.2GHz×2+1.6GHz×2)」を採用する「Xperia XZs」と比較すると、やはり本機のほうが動作はスムーズで、名前どおりプレミアムな性能差がある。処理性能や体感速度にこだわるのであれば、本機は国内で正規販売されるスマートフォンの中では現時点で最良の選択肢と言えそうだ。
次はバッテリー消費を見てみよう。本機は3,230mAhのバッテリーを搭載するが、7日間の検証期間で行った充電は4回。フル充電からバッテリーがゼロになるまでおおむね1日半くらいのペースである。これは、高性能機としてみれば悪い結果ではない。なお、本機と競合する「Galaxy S8+」は、同じような利用ペースで、7日間で3回、Xperia Z5 Premiumは7日で6回充電を行っていた。なお、カタログスペック値を見ると、本機の「電池持ち時間」は約105時間で、Galaxy S8+の約135時間よりも劣っているが、今回の検証と傾向が一致している。なお、価格.comのユーザーレビュー「バッテリー」は、4.52の8位となっている。
7日間の検証期間中、直近5日間のバッテリー消費のペースを記録したもの。7日間の使用で充電は4回行った。待ち受けが多い場合バッテリーの消費はかなりゆるやか。筆者の利用ペースなら普通に使っても、1〜2日は持続する
バッテリーがなくなる時間を予想して通知する「スマートSTAMINA通知」。利用パターンなどを随時考慮して、予想時間は細かく修正される
本機はUSB Type-Cポートを搭載しており、急速充電の規格である「QuickCharge 3.0」にも対応している。また、バッテリーの劣化を抑えながら充電を行う「いたわり充電」や、米国Qnovo社の充電最適化技術を搭載しており、充電に関する機能はかなり豊富。なお、スペック表を見ると、充電にかかる時間は、QuickCharge 3.0に対応するNTTドコモのACアダプター「ACアダプタ 06」を使用した場合で約185分。いっぽうのGalaxy S8+では約110分で、1時間以上の差がある。この点は、ライバル機であるGalaxy S8+のほうがすぐれている。
QuickCharge 3.0対応の充電器を使って、残量1%からフル充電までかかった時間は約3時間。容量3,230mAhのバッテリーとしては時間がかかる印象
カメラ機能は、基本的にXperia XZsと共通。メインカメラは約1,920万画素、レンズはF値2.0のGレンズ。いずれも新設計のもので、イメージセンサーとキャッシュメモリーを一体化した「Motion Eye」カメラシステムを採用する。「Motion Eye」カメラシステムは、データ転送速度が大幅に高速化されており、960FPSの超高速動画撮影や、静止画撮影時の先読み撮影といった新機能を実現している。
メインカメラには、新開発の「Motion Eye」カメラシステムとGレンズを搭載。RGBC-IRセンサーや、レーザーAFセンサーは引き続き搭載されている
サブカメラは、画素数約1320万。一般的なスマートフォンのメインカメラ並みの画素数だ
目玉機能のひとつである超高速動画撮影は、動画撮影の際にスーパースロー専用モードに切り替えて、画面の中のボタンをタッチすることで、任意のタイミングで約0.2秒間960FPSの超高速撮影を行うというもの。撮影したデータは通常の30FPSの動画として再生され、動画の中に約6秒間のスーパースロー動画が差し込まれることになる。なお、超高速動画撮影は、数秒の間隔をあければ繰り返し行うことができるので、特に動き回る被写体をすばやくとらえるのに有利だ。ただし、フォーカスとズームが固定になるので、小さな被写体を接写するような使い方には向いていない。
また、メインカメラには、的確な色情報を読み取れるRGBC-IRセンサーや、高速なオートフォーカスを実現するレーザーAFセンサーも搭載されている。同じシーンを、メインカメラとサブカメラで撮り比べてみたが、メインカメラの色の再現性はやはり高い。また、暗い場所でのオートフォーカスでも迷いが少なく、扱いやすいカメラと言えるだろう。
シャッターを押す直前に3枚の先読み撮影を行う。この機能は被写体の動きを感知してカメラが自動で行う
メインカメラのレンズ25mmの広角レンズだ。こうした風景を撮影する場合にもより広い空間を構図に収めやすい
データ転送速度が向上したため、今まで苦手にしていた高速で動く被写体を撮影した場合に生じる映像のゆがみも抑えられている
RGBC-IRセンサーの効果を確かめるため、同じ条件でメインカメラとサブカメラの両方で撮影を行った。こちらはメインカメラ。手前のオレンジの発色を見ると顕著だが、より実物に近い色が出ている
こちらはIRBC-IRセンサーのないサブカメラで撮影したもの。実物と比べると発色が全般的に眠い印象だ
以上、Xperia XZ Premiumを1週間使ったレビューをお届けした。本機は4K表示が行える高精細なディスプレイが特徴だが、むしろトータルバランスの高さのほうが印象に残った。高性能ながらバッテリーの持続性も高いし、不快な熱はほとんど気にならない。処理性能全般に余裕があるうえに、64GBのストレージ容量は、4Kコンテンツの保存にも十分だ。価格.comのユーザーレビューを見ると、2017年6月23日時点で34名もの書き込みがありながら総合スコアが4.94と非常に高いが、今期最高の高性能機ながら、欠点らしい欠点が見当たらないことがこの高評価につながっている。今回の検証もそんなユーザーレビューの結果を裏付けるものとなった。
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