レビュー
ロジクール初「MX」ブランドのトラックボールの使い心地は?

「M570」ユーザーが使って感じた「MX ERGO」のいい点、気になる点

トラックボーラーにとっての悩みは、新製品がここのところほぼ出ていないことだ。

2017年9月25日時点、価格.comの「マウス」カテゴリーに登録されているトラックボールは、621製品中32製品しかなく、この中で2017年発売のモデルはたったの4製品しかない。そんな閑散としたトラックボール界に注目の新製品が登場した。老舗ロジクールが7年ぶりに送りだす「MX ERGO」だ。

ロジクールのプレミアムブランド「MX」シリーズに属し、細部のパーツからこだわることで、質感や機能を向上させたハイエンドモデルに仕上がっている。ロジクールファンだけでなく、すべてのトラックボーラーが気になる製品なのだ。今回は、その使い心地をくわしくチェック。ロジクール製トラックボール「M570」の愛用者でもある筆者が、従来製品と比べながらレポートしたい。

ワイヤレストラックボールのフラッグシップモデル

そもそもトラックボールとは、本体に搭載されたボールを指先でころころ回してポインターを移動させるというポインティングデバイスだ。マウスと違って、手を動かす必要がなく、動かすデスクトップスペースも取らないので、一部のユーザーからは根強い人気がある。「MX ERGO」は、右手親指でボールを操作するタイプのトラックボール。ワイヤレスモデルで、ロジクール製品で使われる2.4GHz帯の「Unifying」接続と、Bluetooth接続の両方に対応する。

「MX ERGO」の本体。向かって左側にあるのがボールで、これを親指でころころ転がして操作する。右左のクリックボタンや中央のホイールなどは、一般的なマウスと同じだ

意外かもしれないが、本機はロジクール製のトラックボールとしては、初の「MX」ブランドの製品となる。2017年9月25日時点の価格.com最安価格は12,644円(税込)で、1万円を超える高級機となっている(付属レシーバーの単品価格は税込1,130円)。ニッチなジャンルにも関わらず、高級機を投入してくれたロジクールには感謝をささげたい。

製品ポジションとしては、基本的には従来モデル「M570」の上位に位置する。今後は、スタンダードモデルの「M570」と、ハイエンドモデルの「MX ERGO」の2モデルで展開されていく。

最大の特徴は、人にやさしいデザイン

本機の最大の特徴は、人にやさしいデザインを目指したことだ。

これは最近の寝具にたとえると、わかりやすいかもしれない。体のラインにピッタリフィットさせる素材を使うことで、快適な睡眠が得られるというものだ。「MX ERGO」もこのコンセプトに近い。毎日、仕事やレポートでパソコンを多く使う社会人や学生は、マウスの操作による疲れも少なからずある。その疲れを軽減する手にやさしいフォルムが「MX ERGO」のデザインコンセプトになっているというわけだ。ロジクールによれば一般的なマウスと比べても20%筋緊張を軽減できるとしており、マウス使用よりも手や腕の負担を減らせるという。

本体の形状は、従来モデル「M570」と似ているが、一段と丸みを帯びた形になった。なだらかな表面を触ってみると、よくフィットすることがわかる。特に、親指の付け根に当たるふくらんだ部分が、「M570」に比べてよりフィットしやすくなっているのだ。

親指の付け根に当たる、ふくらんだ部分のフィット感がかなりよくなっている

親指の付け根に当たる、ふくらんだ部分のフィット感がかなりよくなっている

本体表面は2種類のコーティングを施すことでグリップがよくなっている。親指にあたる濃いグレー面がマット加工のABS樹脂。手のひらにあたる薄いグレー面がラバーとのことで、これには、使っていくうちにベトベトになりやすい従来のソフトタッチ塗装に比べ耐久性の高いものが採用されている

ボールのサイズは「M570」と同じ。そのため入れ替えることもできる

ボールのサイズは「M570」と同じ。そのため入れ替えることもできる

そのうえ、握りやすくするために、本体左右の傾斜角度を2段階で選べるギミックを搭載するのも新しい。角度調整は底面に着脱できるメタルプレート(マグネット固定式)により行い、傾斜角度は0°と20°の2パターンから選べる。

テーブルと接触する面にはラバー風の素材が使われている

テーブルと接触する面にはラバー風の素材が使われている

メタルプレートはマグネットによりくっついており、取り外しできる

メタルプレートはマグネットによりくっついており、取り外しできる

傾斜角0°ではボディ全体で手を支えるため、普通のマウスを使っているのと同じような感覚がある。初めてトラックボールを使う人には、使いやすい角度と言えるだろう。逆に傾斜角20°は、従来モデル「M570」に慣れているユーザー向けといった感じで、「M570」と同様、小指下側にも重心がくる。使い心地は「M570」に似ているが、20°の傾斜が付いたことで、握り心地はさらによくなった印象だ。

角度0°のとき ボディ全体で手を支える。普通のマウスを使っているのと同じ感覚だ
角度20°のとき 手が外側に傾斜するため小指下側にも重心がかかるが、これが結構使いやすく、疲れにくい

質のよいボタンやホイールを搭載。専用アプリで各種カスタマイズも可能

「MX ERGO」では、搭載されるボタンや、スクロールホイールも大幅に改良されている。

特にスクロールホイールは格段によくなった。「M570」のホイールは見た目も質感も安っぽい感じがしたが、「MX ERGO」ではラバーに滑り止め加工を施したうえ、ホイール自体も丈夫なアルミ製に変更されている。見た目もチープな感じは一切しない。また、ホイールを横に倒して水平スクロールが行えるチルトに対応するなど、機能性もアップした。

ただし、同じ価格帯の同社製ハイエンドマウス「MX MASTER 2S」に備わっている、「フリースピンモード」(ホイールを速く回したときに自動で高速回転に切り替わる)はなく、その点はやや残念な気もする。

滑り止め加工が施された「プレシジョンホイール」は、チルト(水平)にも対応した。ちなみに、その後ろに「1」「2」と書かれているボタンは「Easy-Switch」で、「MX ERGO」の接続先をワンタッチで切り替えられる

そのほかの搭載ボタンでは、「プレジションモード」ボタンが側面に装備され、カーソルの速度と精度をボタンひとつで即座に切り替えられるようになっている。こうしたボタンも「M570」にはなかったものだ。

ボール上側に搭載されたのが、カーソル速度と精度をボタン一発で切り替えられる「プレジションモード」ボタン

ちなみに、「M570」ユーザーなら気になるのが左右クリックボタンの耐久性だろう。左右クリックボタンが壊れやすいと指摘する声が、価格.comのクチコミ掲示板にも多数寄せられているが、「MX ERGO」では、「M570」で搭載されていたスイッチ(耐久性300万回)の3倍強にあたる耐久性1000万回のものを採用し、より壊れにくくなっている。これなら安心できそうだ。

なお、これらの搭載ボタンやホイールは、専用アプリ「Logicool Options」により、任意のアクションを割り当て可能。使用するアプリケーションに応じて設定を切り替えることもできる。

「Logicool Options」を使うことで、各ボタンに任意のアクションを割り当てることが可能

「Logicool Options」を使うことで、各ボタンに任意のアクションを割り当てることが可能

持ち運ぶには少し不向き

ここまで、「MX ERGO」のいいところを主に紹介してきたが、気になるところもある。それが携帯性だ。

公称の本体サイズと重量は、「M570」が45(幅)×95(高さ)×145(奥行)mmで142gなのに対し、「MX ERGO」は51.4(幅)×99.8(高さ)×132.5(奥行)mmで262gと、ひと回り大きくなっており、重量はほぼ2倍になっている。

左が「MX ERGO」、右が「M570」 「MX ERGO」の傾斜角度0°のときの側面 「MX ERGO」の傾斜角度0°のときの正面

「M570」は、トラックボールの中でも比較的小型・軽量だったため、出先でノートPCに接続して使う人も多かったと思う。筆者もそのひとりだが、「MX ERGO」はそうした使い方にはやや大きすぎるように思う。

本体重量は262g(内メタルプレートは95g)で、「M570」の142gの約2倍となっている

本体重量は262g(内メタルプレートは95g)で、「M570」の142gの約2倍となっている

また、「M570」の本体内にあったUnifyingレシーバー収納スペースが、「MX ERGO」ではなくなっている。モバイルで使うときはBluetooth接続にすればいいだけのことだが、Bluetoothは接続が不安定になることもある。そうしたときは、Unifyingが役立つが、小さいレシーバーなので単独で持ち運ぶのはなくしてしまいそうだった。

まとめ 現状、右手親指用の据え置きトラックボールの決定版

「M570」は7年前に発売された製品だけあって、今でこそ時代遅れなスペックとなっていた。これに対して「MX ERGO」は、すべてがブラッシュアップされ、かつMXブランドらしい機能と質感も備えたハイエンドモデルに仕上がっている。特にボディデザインや肌触りにかかわる表面加工、スイッチやホイールには、「M570」よりもワングレード高いものを採用しており、MXシリーズならではの使い心地と操作感を感じられるだろう。また、2段階で選べる傾斜角度によって、ベテランのトラックボーラーだけでなく、初心者にも扱いやすくなっている。

ただ、機能や質感を重視したため、本体サイズが大きくなっており、基本的には据え置き機という面が強くなっている。携帯性を重視して「M570」を選んでいたユーザーにとっては、「MX ERGO」はその代替機にならない可能性が高い。そうしたユーザーは2台持ちで使い分けたほうがいいかもしれない。

銭袋秀明(編集部)

銭袋秀明(編集部)

編集部の平均体重を底上げしている下っ端部員。アキバをフィールドワークにする30代。2015年4月、某編集部から異動して価格.comマガジン編集部へ。今年こそ、結果にコミット!

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