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現役最古モデルの「iPhone 5s」は、「iOS 12」でどこまで速くなる?


2018年9月18日から配信が始まったアップルの「iOS 12」は、今年登場した「iPhone XS」「同 XS Max」をはじめ、5年前に登場した「iPhone 5s」まで、幅広い世代のiPhoneやiPadに対応しています。

iOS 12では「FaceTime」がグループ通話に対応したり、自分だけのオリジナルのアニ文字「ミー文字」が作れたりといった新機能が数多く追加されていますが、筆者がiOS 12の発表当時から気になっていたのは、旧モデルにおけるパフォーマンスの向上です。アップルのWebサイトによれば、カメラの起動は最大70%、キーボードの表示は最大50%、アプリの起動は最大2倍速くなるといいます。

とはいえ、iPhone 5sのような古いモデルでも、本当にパフォーマンスがよくなるのかが気になるところです。そこで、実際に中古品のiPhone 5sを使って、アップデート前後でどれくらいパフォーマンスが違うのかを、簡単に検証してみました。

「カメラ」「キーボード」「ポケモンGO」でチェック

パフォーマンスの検証方法はアップルがWebサイトに記載している方法を参考にしつつ、以下のように定めました。

・カメラの起動速度
標準のカメラアプリを起動して、フォーカスを合わせた場所を示す黄色い長方形が画面に表示されるまでの時間を計測。起動方法は「ロック画面を左にスワイプ」と「ホーム画面でアイコンをタップ」の2通りでチェック。

カメラアプリを起動させて、画像中央の長方形が表示されるまでの時間を計ります

カメラアプリを起動させて、画像中央の長方形が表示されるまでの時間を計ります

・キーボードの表示速度
Safariの検索フィールドをタップして、iOS標準の「日本語−かな」キーボードが表示されるまでの時間を計測。

あらかじめ起動させておいたSafariの検索フィールドをタップして、キーボードがすべて表示されるまでの時間を計ります

・アプリの起動速度
ナイアンティックの「ポケモンGO」(事前にログイン済みの状態)を起動して、遊び方の注意をうながすダイアログ(「危険が予想される地域には、立ち入らないでください」など)が表示されるまでの時間を計測。

ホーム画面でポケモンGOのアプリアイコンをタップして、画像のように遊び方の注意が表示されるまでの時間を計ります

以上、3種類の検証をiOS 12へのアップデート前後にそれぞれ5回ずつ行い、最も速かった結果と最も遅かった結果の2つを除外した3回分の数値を使って、平均値を求めました。

また、アップデートの前後で処理性能に違いが生じるのかをチェックするために、ベンチマークアプリの「Geekbench4」による計測も実施しました。

検証に用いたiPhoneは、iPhone 5s(16GBモデル)のNTTドコモ版で、検証時のiOSバージョンは「iOS 11.4.1」と「iOS 12」です。バックグラウンド動作などの負荷を最小限にしてアップデートによる効果のみを捉えるために、どちらのバージョンでもiPhone 5sを一度初期化し、ポケモンGOとGeekbench4のみをインストールした状態で検証しました。

なお、時間の計測には「iPhone 6s」標準の時計アプリに備わっているストップウォッチ機能を使用。なるべく正確な計測とするために、2台の画面をビデオカメラで同時に撮影し、検証後に録画を確認することで起動までの時間を求めました。

写真のように、検証用のiPhone 5sと時間計測用のiPhone 6sを並べて、三脚に固定したビデオカメラで2台の画面を撮影しながら時間を記録しました

カメラの起動速度はあまり変わらず

早速、カメラアプリの起動速度からチェックしてみましょう。各バージョンで計測した結果を以下の表にまとめました。平均値の計算から除外した最高値と最低値は、背景を灰色にしています(以降の検証項目についても同様)。

カメラ起動速度の計測結果

カメラ起動速度の計測結果

ロック画面を左にスワイプして起動させる方法の平均起動時間は、iOS 11.4.1が0.97秒だったのに対し、iOS 12では0.91秒。アップデート前後の平均起動時間の比率を求めると、6.23%速くなったことがわかりました。

ところが、ホーム画面からカメラアプリを起動させたときの平均起動時間は、iOS 11.4.1が1.14秒でしたが、iOS 12では1.19秒で、4%少々遅くなっています。

ただ、検証中の体感速度としては、アップデートの前後でほとんど違いは感じられませんでした。1秒前後でカメラが起動することに変わりはないので、これまで通りに「撮りたい」と思った瞬間にカメラを呼び出すことができそうです。

体感的にも速くなったキーボードの表示速度

次に、「日本語−かな」キーボードが表示されるまでの速度をチェックしてみましょう。アップデート前後での計測結果を以下の表にまとめました。

キーボード表示速度の計測結果

キーボード表示速度の計測結果

Safariの検索フィールドをタップしてからキーボードがすべて表示されるまでの平均時間は、iOS 11.4.1では0.64秒、iOS 12では0.57秒でした。

わずか0.07秒の差ですが、もともと表示されるまでの時間が短かったこともあり、比率で言えば11.7%の向上という結果に。検証中も「あ、早くなった!」と体感できるほどの違いがありました。

音声アシスタントの「Siri」が備わっているとはいえ、メッセージの作成、インターネット検索、パスワードの入力まで、iPhoneではキーボード入力が欠かせません。キーボードの表示速度が高速化されたことで、古いモデルでもストレスが軽減されることでしょう。

ポケモンGOの起動速度はわずかに速くなった

続いて、ポケモンGOの起動速度をチェックしてみましょう。アップデート前後での計測結果を以下の表にまとめました。

ポケモンGOの起動速度計測結果

ポケモンGOの起動速度計測結果

ホーム画面でアイコンをタップしてから遊び方の注意が表示されるまでの平均時間は、iOS 11.4.1では14.84秒、iOS 12では14.23秒。iOS 12にアップデートしたことで0.6秒ほど、比率にして4.26%速くなりました。

キーボードやカメラよりも起動するまでの時間が長いからか、体感できるほどの違いはありませんでした。ただし、検証ではほかに何もアプリを起動していない理想的な状況で計測したので、地図アプリやSNSアプリなども併用する実用的な環境では、この時間差がもっと広がることも考えられます。

ベンチマーク結果もほぼ同じ

最後に、Geekbench4で測定したベンチマーク結果も見ておきましょう。

Geekbench4のベンチマーク結果

Geekbench4のベンチマーク結果

iOS 11.4.1でのスコアは、シングルコアが1285、マルチコアが2211。対するiOS 12では、シングルコアが1298、マルチコアが2200でした。

ハードウェアの構成が変わらないこともあり、アップデートの前後でスコアはほぼ同じでした。iOS 12で速くなったキーボードの表示速度などは、ソフトウェア上の改善がもたらした結果であることが改めて確認できます。

最新モデルにこだわらなければ中古iPhoneもアリ!

カメラの起動速度には一長一短があるものの、iOS 12にアップデートしたiPhone 5sでは、キーボードの表示速度やアプリの起動速度が実際に向上していました。

新しいiOSではこうしたパフォーマンスの向上だけでなく、標準アプリの機能向上やセキュリティー対策といった、重要な更新も適用されます。iPhone 5sは少なくともあと1年程度、登場から6年間に渡って使い続けられる、息の長い製品なのです。

今年の新モデルであるiPhone XSや同XS Maxも魅力的ですが、端末価格は最低でも12万円以上と高額です。iPhoneなら最新のモデルではなくてもいいし、なるべくコストを抑えたいと思っている人には、中古品のiPhoneを格安SIMで使う、という選択肢もあります。

今回検証に使ったiPhone 5s(16GBモデル)の中古価格は、安いものでは7,500円から。価格はモデルの登場時期、ストレージの容量、使用にともなうキズなどのコンディションに左右されますが、非常にリーズナブルなところが中古iPhoneのメリットです。

ただし、最新のiOSが対応しているiPhoneであっても、必ずしも格安SIMで使えるとは限りません。たとえば、「IIJmioモバイルサービス」(IIJ)でauのネットワークを使う「タイプA」のプランでは、動作確認済みとされているのはSIMフリー版が「iPhone 6」「同6 Plus」以降、au版やソフトバンク版は「iPhone 6s」「同6s Plus」以降となっており、iPhone 5sは含まれていません。

このような制約を理解し、納得ができるのであれば、コストの安い中古iPhone&格安SIMの組み合わせを検討してみてはいかがでしょうか。

松村武宏

松村武宏

信州佐久からモバイル情報を発信するフリーライターであり2児の父。気になった格安SIMは自分で契約せずにはいられません。上京した日のお昼ごはんは8割くらいカレーです。

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