レビュー
電子ペーパー採用で、5.3mmの薄さと4日間のバッテリー駆動を実現

NTTドコモ「カードケータイ KY-01L」の魅力を探る

2018年11月22日に発売されたNTTドコモの「カードケータイ KY-01L」。薄く軽いボディを実現した、これまでにないコンセプトのケータイだ。本機を実際に使ってみた印象をレポートするとともに、開発者へのインタビューもお届けする。

名前通りのカードサイズ。電子ペーパーを使った操作感覚が新鮮

「カードケータイ」は、音声通話、SMS、Web閲覧、Wi-Fiテザリングといったベーシックな機能のみを備えた携帯電話。その名前からわかるように、ボディサイズは約55(幅)×91(高さ)×5.3(厚さ)mmで、重量はわずか47g。ディスプレイは電子ペーパーを使ったモノクロ表示。いわゆるガラスマ・ガラホとは一線を画する、非常に機能が絞られたケータイだ。

実機を手にすると、改めてその薄さと軽さが印象的に感じた。スマートフォンはもちろん、一般的な携帯電話とも違うシルエットがユニークだ。注目の電子ペーパーは、Amazonの電子書籍リーダー「Kindle Paperwhite」などでも使われているが、携帯電話に使われるのはかなり異色だ。電子ペーパーは一般的な液晶パネルや有機ELパネルとはまったく構造が異なっており、画面表示をするのにほとんど電力を消費しない代わりに、ひんぱんな画面書き換えには向かない。そのため、アニメーションや動画再生などを行うケータイやスマートフォンには不向きなのだが、本機は機能をシンプルに絞り込むことで、電子ペーパーを採用することにしたのだろう。パネル自体が光を発しないので輝度的にも暗めだが、活字が読める明るさがあれば特段の支障はない。

背面はNTTドコモのロゴがあるだけ。カメラは搭載されていない

背面はNTTドコモのロゴがあるだけ。カメラは搭載されていない

厚さはわずか5.3mm。装飾を抑えシルエットを生かしたデザインだ

厚さはわずか5.3mm。装飾を抑えシルエットを生かしたデザインだ

ホーム画面に並ぶアイコン。カレンダー、時計、電卓機能を備えている。アプリの追加は行えない

ホーム画面に並ぶアイコン。カレンダー、時計、電卓機能を備えている。アプリの追加は行えない

ボディ下面に充電やデータ転送用のmicroUSBポートを備える

ボディ下面に充電やデータ転送用のmicroUSBポートを備える

nanoSIMカードスロットを使用。microSDカードには対応していない

nanoSIMカードスロットを使用。microSDカードには対応していない

電子ペーパーはモノクロ表示。水墨画のような雰囲気の落ち着いた画質だ

電子ペーパーはモノクロ表示。水墨画のような雰囲気の落ち着いた画質だ

視野角も広く、パネル自体は発光しないが紙に印刷された活字が読める明るさがあれば視認性は十分

視野角も広く、パネル自体は発光しないが紙に印刷された活字が読める明るさがあれば視認性は十分

製品のパッケージも、電子ペーパーの質感とそろえられたマットな質感だ

製品のパッケージも、電子ペーパーの質感とそろえられたマットな質感だ

Webページを実際に表示させてみた。スクロールもゆっくりならば書き換え速度は追いつく。下部に表示されているような画像はワンテンポ遅れて精細なものに書き換えられる

電話帳データのインポートはSIMカードまたは、Bluetoothを使って行う。クラウド連携はできない

電話帳データのインポートはSIMカードまたは、Bluetoothを使って行う。クラウド連携はできない

本機の音声通話はVoLTE対応となっており、NTTドコモのVoLTE対応端末との間であれば高音質な音声通話が可能だ。実際に試してみたが、この小さなボディからクリアな音声が聞こえてくる意外性が、なかなか楽しい。

また、Wi-Fiにも対応しているほか、Wi-Fiテザリング機能も備えており、小型軽量のモバイルWi-Fiルーターとしても利用できる。なお、本機のLTEの通信速度は下り最大100Mbpsだが、Wi-Fiテザリングを使う場合、2.4GHz帯を使ったIEEE802.11 b/g/n の対応となるので72.2Mbpsが最大通信速度となる。もちろん専用のWi-Fiルーターには及ばないが、機能としては十分だろう。

テザリングを使った場合の電池持ちだが、フルHDのストリーミング動画をWindowsタブレットで60分ほど視聴し続けた際に、フル充電から大体半分まで消費された(本機は詳細なバッテリー残量が表示されない)。本機を音声通話およびモバイルWi-Fiルーターとして、安価なWi-Fiタブレットと組み合わせて使うというのはなかなか魅力的だ。

SMSの送受信に対応する

SMSの送受信に対応する

ユニークなコンセプトを持つ「カードケータイ」だが、スマホとの2台持ち、あるいはWi-Fiタブレットとの組み合わせなどで重宝しそうだ。最低限の機能しか備えない携帯電話ではあるが今となっては逆に新鮮さがある。いっぽう、バックライトのない電子ペーパーを使用するため表示や操作感には独特なものがある。購入する場合はその点をあらかじめ理解しておきたい。

「どうせ作るのならとことん小さいものを作ろう!」そんな狙いを徹底追求した「カードケータイ」

NTTドコモで「カードケータイ」の開発を主導したプロダクト部の村上智彦氏と只松明洋氏にインタビューを行った。先鋭的な製品が登場した背景と、込められた思いに迫ろう。

NTTドコモのプロダクト企画を担当している村上智彦氏(写真左)と、只松明洋氏にお話をうかがった。

NTTドコモのプロダクト企画を担当している村上智彦氏(写真左)と、只松明洋氏にお話をうかがった。

価格.com:本日は、お時間いただきありがとうございます。はじめに、「カードケータイ」登場の背景を教えてください。

村上:昨今スマートフォンが大画面化・高機能化して、ゲームやWebページの閲覧などで広く受け入れられており、そうした主流の使い方に変わりはないと思います。そのいっぽうで、かなり多くのお客様から、「軽くて持ち運びやすい端末が欲しい」というご意見も頂戴していました。そうした要望に対して「どうせ作るのならとことん小さいものを作ろう」という話になり、音声通話+SMS、あと必要と思われる機能を積んで、小さく、薄く、軽く作るというチャレンジとなりました。

価格.com:「スマホに飽きたからケータイが注目されている」という意見もありますが。その傾向はありますか?

村上:弊社はスマートフォンも取り扱っているので、「飽きている」とは言いたくないですが、確かに(ユーザーの志向が)二極化している部分はあります。スマートフォンでSNS、ゲーム、動画などをずっと使っているようなユーザーもかなりのボリュームで存在していますが、いっぽうで、「いざというときに音声通話ができればいい。通信手段をまったく持たないで外出するのはイヤだが、大きなスマートフォンを持ち歩きたくはない」といった声もあります。「カードケータイ」は、後者のようなユーザー向けでもありますが、スマートフォンはスマートフォン、こうした小型軽量の音声通話端末はそれとして使い分けていただけるのではないかと考えております。

価格.com:ケータイとスマホの2台持ちをしているユーザーを想定していたということですか?

村上:2台持ちユーザー層は、常に想定していましたね。

価格.com:2台持ちをする理由のひとつにスマホの音声通話の使いにくさもあると思いますが、その点いかがでしょうか?

村上:スマホの音声通話が使いにくいとは言いませんが、「VoLTEによる高音質の音声通話を維持しながらここまで小さくできる」という点には、こだわりを持って開発しました。

どんなに小さく作っても電池寿命が1日では実用的ではない。設計は、本体の大きさとバッテリー容量とのトレードオフという面があり、充電は1週間に1回、多くても2回で待ち受け時間をカバーしつつ、通話は2時間程度というのが開発時の目標でした。その目標の答えが、バッテリー容量380mAh。最近のスマホと比べて容量は大体1/10ですが、ボディに占めるバッテリーの割合は大きく、厚みのかなりを占めています。このバッテリーでVoLTEの待ち受けなら4日以上、音声通話が110分は使えます。スマートフォンのバッテリーが減って、このままでは音声通話もできなくなる、そういう場合の備えとして使えます。

380mAhのバッテリーは、実用的な性能と小型化を両立させたぎりぎりの容量と言える

380mAhのバッテリーは、実用的な性能と小型化を両立させたぎりぎりの容量と言える

価格.com:ほぼ同時期に登場した「ワンナンバーフォン」との違いは何でしょうか?

村上:「ワンナンバーフォン」も音声通話に特化した小型軽量端末という点では「カードケータイ」と似たところがありますが、「ワンナンバーフォン」は親機のスマートフォンと同じ電話番号をシェアする子機的、付属品的な位置づけです。いっぽうで「カードケータイ」はnanoSIMカードを挿入して1台の独立した携帯電話として使えるようになっているのでその点が大きく違います。

価格.com:「カードケータイ」と「ワンナンバーフォン」をひとまとめのプロジェクトにするようなことは考えましたか?

村上:社内の担当部門が違い、それぞれ別で動いていましたし、先に述べたようにワンナンバーフォンとカードケータイは、コンセプト的に明確に棲み分けができているので、同一のプロジェクトにまとめようという動きはありませんでした。

価格.com:「カードケータイ」で、携帯電話としては異例の電子ペーパーを採用した理由をお聞かせください

村上:先ほど申したように、電池寿命という課題がありました。液晶ではバックライトが必要だし、厚みも増す。有機ELはパネル自体にかなりの電力がいる。この厚みを実現するなら電子ペーパーを採用するのが合理的。電子ペーパーでもAmazon「Kindle Paperwhite」などのようにフロントライトを取り付けると、厚みが増え電力消費も増える。「じゃあいっそライトは止めてしまいましょう」となった。真っ暗闇では当然見えませんが活字が読める程度の明るさなら見えますし操作もできる。そういう割り切りはありますね。電子ペーパーは(ほかのパネルより)書き換えに時間がかかるので、スクロールの際にちらつくことはありますけれど、表示するだけなら電気を消費しない。「今どき白黒か?」と思われるかもしれませんが、カメラなど特にカラーが必要となる機能も搭載していないので、そういう面でも割り切りはあります。むしろ、そうした点を理解していただける方をターゲットにしていると言えます。

価格.com:それでもWebページの表示機能を落とさなかった。落とせなかった理由があったのでしょうか?

村上:音声通話に加えて、そのほかに何らかの外界からの最低限の連絡情報取得手段は必要だろうと考えました。例えば天気やニュースを調べたり、株価を調べたり。

只松:使い勝手には、ご意見をいただく部分があるかもしれませんが、すでにドコモメールアカウントをお持ちのお客様なら、ドコモメールアプリは入っていないもののWebメールとして確認できます。

村上:テザリングもできますから、料金プランによっては、動画のストリーミングのようなヘビーな用途には向かない場合もあるもののPCでメールをチェックするような使い方は可能です。Wi-Fiルーターとしては、世界最薄かはわかりませんが、利用時間も十分実用に耐えるレベルに仕上がっています。

価格.com:ドコモ参入が20年ぶりの京セラ製という点でも注目を集めています

村上:「カードケータイ」は、ドコモが企画を立てて、そのまま商用に近いレベルの試作機を作りました。ただ実際のドコモの商用品質基準をパスするにはどうしてもメーカーさんの協力が必要になります。発売後の保守や流通などでもメーカーさんの協力は不可欠です。

ご協力いただけるメーカーさんを募って、フィーチャーフォンのシェアや品質での高い実績をお持ちの京セラさんをパートナーに選びました。なによりも強い熱意を感じたのが選定のポイントでした。

只松:私も今回初めて京セラさんと仕事をさせていただいたのですが、すごい技術力をお持ちだと感じました。また、下まわりの作り込みもしっかりされていて、開発力の高さを感じました。

価格.com:「カードケータイ」の将来についてお考えはありますか?

村上:厚みの制限で載せられなかったNFCやFeliCa、GPSがあれば機能が広がります。それらを載せて厚みや重量が増したら本末転倒ですが、厚みを維持しながら機能を載せた第2弾、第3弾が出せればいいなと考えます。

価格.com:ありがとうございました。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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