NTTドコモが2019年2月8日に発売した、折りたたみ式ボディの携帯電話「AQUOS ケータイ SH-02L」(シャープ製。以下、SH-02L)は、昨年秋に登場した超薄型の「カードケータイ」を例外とすれば、NTTドコモのケータイとしては「SH-01J」「P-01J」以来およそ2年半ぶりの新製品となる。そのレビューをお届けする。
従来型の携帯電話のニーズは今でも根強く、ひんぱんとは言えないが、モデルチェンジも着実に行われている。そんな状況でおよそ2年半ぶりにNTTドコモから登場したのが、今回取り上げる「SH-02L」だ。
本機は、折り畳み型ボディにテンキーを備えた古典的デザインの携帯電話だ。液晶ディスプレイは、540×960のqHD表示で、画面サイズは約3.4インチ。ボディは、前機種「SH-01J」同様、IPX5/8等級の防水仕様とIP5X等級の防塵仕様に加え、米国国防総省の調達基準「MIL-STD-810G」の「落下」項目をクリアした耐衝撃性能も備えている。ボディサイズは、約51(幅)×115(高さ)×17.2(厚さ)mmで、重量は約125gと、「SH-01J」よりもわずかに7gほど重くなった。
キーボードは、方向キー+テンキー+3個のファンクションキーという構成で、シャープの携帯電話としてはおなじみの配列だ。テンキー下の3個のファンクションキーは、音声通話やメールなどの発信、Webページのブックマーク、Wi-FiやBluetoothのON/OFF、アプリの起動など、短押しと長押しを分けることで合計6種類の機能を割り当てられる。
上から方向キー、テンキー、ファンクションキーというキー配列。iモード携帯電話からの流れをくむ、なじみのある配列だ
テンキーとファンクションキーには、凹凸が付けられており、操作性を高めている
左側面にはストラップホールと、同梱のクレードルと接続するための端子が配置されている
右側面にはマナーボタンが配置されている
充電やデータ転送用のmicroUSBポートを備える
本機のディスプレイのスペックとしては標準的なものだが、視認性を高める新機能「はっきりビュー」を備えている。この機能を使うと、画面全体のコントラストが上がり、マップアプリのように色味があっさりしたコンテンツでも、よりハッキリ見えるようになる。ただし、発色が全般に少し暖色系にスライドするので、クッキリさせる必要のないテキストコンテンツなどでは少しくどい印象になる。
左がノーマルモード、右が「はっきりビュー」。Webブラウザーで「Google Map」を表示させて比較。ハッキリビューのほうが断然鮮明でわかりやすい
機能面では、FeliCaポートおよびNFCポート、ワンセグチューナー、赤外線通信ポートを備える。なお、FeliCaポートはJR東日本の方針(JR東日本の方針については「徹底解説、2020年に行われる「モバイルSuica」サービス変更の中身」を参照)により「モバイルSuica」には非対応となっており、対応サービスは「モバイルdポイントカード」、「iD」、「楽天Edy」、「QUICPay」、「ゴールドポイントカード」、「ビックポイントケータイ」、「東京ドーム TDモバイル2」に限られる。
おサイフケータイで利用可能なサービスは、「モバイルdポイントカード」など合計7種類に限られる
また、通信機能では、LTEのB1とB19に加えて、新たにB3(1.7GHz帯)にも対応した。このB3 は、海外でも広く使われる周波数帯なので、ローミングの際に、従来よりも広い通話エリアになることが期待できる。加えて、Wi-Fi接続にも対応している。Wi-Fi経由なら、データ通信容量を削減でき、維持費の軽減にもつながるだろう。
音声通話では、大型スピーカー「でかレシーバー」や、周りの騒音を抑える「スムーズトーク」、音声をハッキリとさせる「くっきりトーク」といった機能を搭載している。総じて、通信機能・音声通話については、性能が上がっている。
「スムーズトーク」や「くっきりトーク」など相手の声を聞き取りやすく、自分の声も通りやすくするような音声通話機能が搭載された
バッテリーについては、ユーザーが交換可能なパック式バッテリーを採用する。バッテリーの容量は1,680mAhで、連続待ち受け時間が約500時間(VoLTE)、連続通話時間が約430分(VoLTE)となっている。実際の使用でも、待ち受け主体であれば、24時間あたりのバッテリー消費はおよそ12%程度で済んでおり、フル充電なら1週間以上バッテリーが持つ計算になる。なお、充電機能としてシャープ独自の充電管理技術「インテリジェントチャージ」を備えており、バッテリーの劣化を抑えながらの充電が行える。
充電用のクレードルが同梱される。なお、ACアダプターは別売りとなる
本機で利用できるWebサービスを見てみよう。本機はAndroidをベースにした携帯電話なので、Webコンテンツについてはスマートフォン用のものを搭載するWebブラウザーで表示できる。また、@docomo.ne.jpのメールアドレスは「ドコモメール」として利用できる。なお、ドコモメールは、クラウド化されたため、データのバックアップは不要になり、PCやスマートフォンなど携帯電話以外のデバイスからもアクセスできる。データ容量制限も緩和されているなど、iモードメールよりも格段に機能性が高められている。
なお、「Twitter」や「Instagram」、「YouTube」、「Gmail」などはアプリではなくWebブラウザーから利用可能だが、Webブラウザー版のない「LINE」については、本機では利用できない。
また、スマートフォンのアプリやiアプリのように、機能を追加することは原則としてできず、プリインストールされているアプリのみを使うことになる。主なプリインストールアプリだが、Webブラウザー、カメラ、スケジュール、時計、ドコモメールおよびPCメール、音楽再生(ハイレゾ非対応)、テレビ(ワンセグ)、地図アプリ(ドコモ地図ナビ)など実用本位なものが中心で、ゲームやSNSなどのアプリはない。
メニューはiモードケータイの頃と基本的に変わらないユーザーインターフェイスだ
アプリの追加は行えないが、Webブラウザーを使ってTwitterやYouTubeなどのサービスが利用できる
プリインストールされるアプリの一覧。数は多いが、ゲームやSNSのアプリは見当たらず、シンプルなラインアップとなっている
本機のカメラは、約800万画素のイメージセンサーを備える必要最低限のもの。スマートフォンでは近ごろ普及しているAIを使ったシーン認識はもちろん、フラッシュも非搭載で、機能面もかなりシンプルだ。あくまでメモ代わりていどのものと割り切ったほうがよさそうだ。
以下に、本機のカメラを使った作例を掲載する。なお、初期設定のままカメラ任せで撮影を行っている。
本機のカメラは約800万画素。AIのシーン認識は搭載されていない
曇天の日中を順光で撮影。空が白飛びしており、そのまわりも引きずられてぼんやりとしておりあまり鮮明ではない。日中の撮影でも、明暗差がある構図には弱いようだ
日陰の花壇を接写気味に撮影。明暗差の少ない構図では仕上がりは比較的良好だ
夜景を遠景で撮影。こちらも照明との明暗差を処理しきれなかったようで、全般に白くぼんやりとした写りだ
夜中に、築地塀を模したコンクリートの壁を撮影。被写体までの距離はおよそ4m程度。ピントを構図中央に合わせているが、ぼやけ気味だ。同じような構図で10ショット以上撮ったが、仕上がりはどれも同じような傾向で、夜景には弱い
本機はデザインやユーザーインターフェイスを含めて、見た目における新味は乏しい。だが、Wi-Fi対応や、音声通話にこだわった諸機能、バッテリー持ち、LTEのB3対応によるローミング機能の強化など、中身のブラッシュアップは多岐に及んでおり、使い勝手は総じてアップしている。
スマートフォンのようにさまざまなWebコンテンツやアプリを使えるわけではないが、一応Webブラウザーを搭載しており、ちょっとした調べ物などでは十分利用できる。SNSも地図機能も一応使えるがあくまで”一応”という印象で、これらのWebサービスをひんぱんに使うような方にはあまり向いていない。
2020年代半ばにFOMAサービスが終了する予定の3Gケータイからの買い換えとしてはもちろん、スマートフォンとの2台持ちや、バックアップ用途として適した1台と言えそうだ。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。