ゲーミングPCパワーアップ大作戦

話題の「Oculus Go」を女性ゲーマーが体験! 本格VRゲームのベストな入門機かも?


Steamのコアゲーマーこと “すちーむまにあ”辻村美奈が、ゲーミング周辺機器を紹介する本連載。これまで、PCゲーム(主にSteam)に関するアイテムを取り上げてきたが、今回はなんと、PCの出番はなし! PCやスマートフォンを使わずに楽しめるVRデバイス「Oculus Go」(Oculus)を紹介していく。さらに、Oculus Goのレビューを前に、VRについて基礎から知っておこうと、専門家に話を聞いてみることにした。

“すちーむまにあ”が今回注目したのは、VRデバイスの「Oculus Go」!

“すちーむまにあ”が今回注目したのは、VRデバイスの「Oculus Go」!

※今回、NTTデータがユーザーとして所有する「Oculus Go」をお借りして撮影したため、紛失防止用の紐やシールが付いていますが、実際の「Oculus Go」製品版とは関係ありません。

どんどん身近になってきた「VR」の世界!

「VR」という言葉をよく聞くようになったのは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント (SIE)がPlayStation 4専用バーチャルリアリティシステム「PlayStation VR(PS VR)」を発売した2016年ごろだと思う。それまでハードルがちょっと高かったVRゲームも、PS VRの登場によって、誰もが家庭で楽しめるようになったのだ。

さらに、自宅でVRを楽しむだけではなく、体験型のVR施設も続々と登場している。たとえば、バンダイナムコエンターテインメントが手がける「VR ZONE SHINJUKU」(東京・新宿)では、「ドラゴンクエスト」、「マリオカート」、「ドラゴンボール」、「新世紀エヴァンゲリオン」など、人気ゲームやアニメの世界を実際に体験できることから、連日大勢のお客さんでにぎわっているようだ。

改めて知りたい、VRの基礎知識

そもそもVRとは、どういう仕組みなの? 知っているようで、実はあまり深く知らないVRについて、Oculus Goをレビューする前に、VR専門家に話を聞いてみることにした。

今回登場していただいたのは、NTTデータ 技術開発本部 エボリューショナルITセンタ サイバーフィジカル技術担当 シニアスペシャリストの山田達司さん。VRについて造詣が深く、さらに、Oculus Goのユーザーとして、ビジネスからプライベートまでフル活用している、スペシャリストだ。

山田達司(やまだ・たつし)/株式会社NTTデータ 技術開発本部 エボリューショナルITセンタ サイバーフィジカル技術担当 シニアスペシャリスト。NTTデータでは先進ITデバイスおよびセキュリティの専門家として研究開発、製品開発に従事。現在はAR/VRの企業内導入推進に携わる。1996年米国で発表されたモバイルデバイス「Palm」をいち早く日本に紹介。「Palm OS」を日本語化する「J-OS」の開発、関連書籍の執筆、開発者コミュニティ支援を行う。自称“無認可Palmエバンジェリスト”。Palmユーザーからは”Palmの神様”と呼ばれ、ネット用語「神降臨」の元祖とも言われる

――そもそも、VRとはどういう意味なのでしょうか?

VRというのは、「バーチャルリアリティ(Virtual Reality)」の略称で、「仮想現実」を意味します。一般的には、人がヘッドセットをつけて、IT技術で作られた仮想的な世界に入ることを指して、VRと言っているケースが多いかと思います。しかし、VRにはほかにも、プロジェクターを使って部屋全体で演出するVRや、メガネのデバイスを使ったVRなど、さまざまな種類があるんですよ。

――VRと似たような言葉として、ARやMRもありますね?

「AR(Augmented Reality)」は、「拡張現実」のことです。現実がベースになっていて、そこにITの映像を付与して重ね合わせます。「MR(Mixed reality)」は「複合現実」と訳しますが、一番理解が難しい概念かもしれません。MRは現実と仮想現実を、さまざまな割合でミックスする考え方です。有名なところでは、「HoloLens」(マイクロソフト)や「Windows Immersive Headset」(デル、富士通、レノボなど)といったデバイスに、MRの名前が使われています。

VRとAR、MRは、一見違うジャンルのように見えますが、実はベースは同じ。現実とバーチャルをミックスする割合が違うだけなんです。たとえば、全部バーチャルであればVRだし、ポケモンみたいに背景が現実ならAR。このように現実と仮想現実を、さまざまな割合でミックスして、いろいろなことができます、という考え方がMRなんです。

――山田さんは、VRで主にどんなことをしているのですか。

現在は、お客さまの企業へうかがって、VRの技術を説明しながら、これをどうやって使っていくか相談して、アイデアを生み出すんです。

たとえば、電気工事をする際、どういったところに気をつければいいかをVRを使った訓練(シミュレーション)で体験するという事例がありました。火災の際の避難訓練を、VRで行ったこともあります。このほか、開発中の重機の運転訓練をVRで行ったり、お医者さんの手術シミュレーションなどに活用したりするなど、VRはエンターテイメント以外でも、さまざまな事例があります。実際には体験できないような危険な訓練でも、VRを使えば安全に行えますしね。

あとは、スポーツとの相性も非常にいいですね。プロ野球選手の実際の球筋をVRシミュレーションで再現するなど、トレーニングとしても活用できます。往年の名選手の球筋を、完全再現することもできるんですよ。

――山田さんも普段、ユーザーとして、Oculus Goを使っているようですね。どんなところが魅力ですか?

一番の魅力は、スタンドアロン(ほかの機器に依存せず単独で動作する)で使えるという点。一般的なVRデバイスの場合、スマートフォンやPCに接続して使うことが多いのですが、Oculus Goは、ほかのデバイスが一切必要ありません。最近は、もっぱら持ち運びが楽なOculus Goを愛用するようになりました。

実際に、Oculus Goを使って説明する山田さん

実際に、Oculus Goを使って説明する山田さん

――Oculus Goは、一般的にどのように使われているのでしょうか。

ゲームはもちろん、プライベートシアターとしても使われていることが多いようです。Oculus Goを使えば、自宅にいながら、大きな映画館にいるような感覚で、映画を楽しめます。新幹線で移動する際、Oculus Goをかぶって、映画を観賞するのもいいですね。ただし、人目をひくので、使うのには、ちょっと勇気がいりますが……(笑)。

本体とコントローラーだけあればOK!手軽にプレイできるVR

VRについてお話をうかがった後は、山田さんが実際に愛用しているOculus Goを使って、実際の使用感などをレビューしていきたいと思う。

先述のとおり、Oculus Goの最大の特徴と言えるのが、スマートフォンやPCに接続せず、“単体でVRを楽しめる”という点。バッテリーを内蔵し、好きな場所でVRゲームを楽しめる手軽さがいい。さらに、外出先でバッテリー残量が少なくなってきた場合、コンビニなどで調達したモバイルバッテリーを充電用のmicroUSBポートに接続して、対応できる点もポイント。緊急時用にぜひとも、覚えておきたい。

なお、初回セットアップのみ、スマートフォンが必要になるので、注意が必要。セットアップは、専用アプリ「Oculus」をスマートフォンにインストールし、指示に従って操作するだけ。これが終わればスマートフォンは必要なくなるが、専用アプリでは引き続き、「アプリの追加」や「ライブイベントでのバーチャル座席の確保」など、Oculus Goの管理機能を利用できる。

Oculus Goの正面

Oculus Goの正面

左側面には、充電用のmicroUSBポート(上)、イヤホン端子(下)を備えている

左側面には、充電用のmicroUSBポート(上)、イヤホン端子(下)を備えている

本体の内部。ディスプレイには、5.5インチのWQHD液晶パネル(2560×1440ドット)を採用する

本体の内部。ディスプレイには、5.5インチのWQHD液晶パネル(2560×1440ドット)を採用する

Oculus Goを実際に装着してみた。ゴーグルの着け心地が軽く、視界を動かしても、顔への負担は、ほとんどかからない

ストリーミングも行える! Facebookを用いた便利なシェア機能

Oculus Goでは、初回セットアップ時、あるいは設定タブでFacebookにログインすると、便利な機能が使えるようになる。ログインした状態でコントローラーのホームボタンからシェアタブを選択すると、Oculus Goで撮ったスクリーンショットを、Facebookに投稿できるのだ。さらに、Facebookアカウントに動画を投稿するという形で、ライブ配信もできるようだ。ちなみに、公開設定は自分のみに設定できるので、データをPCに送りたい際にも使える。

これが、コントローラーでホームボタンを操作した時のシェアタブの画像。左から、「キャスト」、「ライブ配信」、「録画」、「写真を撮る」、「写真をシェア」という項目が用意されている

実際にシューティングゲームで遊んでみた!

Oculus Goでは現在、SFっぽいアドベンチャーゲームや、さまざまな仕事を体験できるシミュレーションゲーム、銃を使うシューティングや、ホラーな恐怖体験を楽しめる映像コンテンツ、実際に身体を動かすスポーツシミュレーションなど、幅広いジャンルのゲームが配信されている。

ホームボタンを押してライブラリを選択すると確認できる、アプリライブラリの画像。各ゲームのサムネイルが表示されており、どのような内容なのか、ひと目でわかりやすい

今回は、Oculus Goを使って、ウエスタンFPS(First Person Shooter:1人称視点のシューティングゲーム)の「Dead and Buried」をプレイしてみた。VRでシューティングをプレイするのは初めてだが、想像していた以上に楽しい。

具体的には、液晶ディスプレイでゲームをプレイする時と比べて、没入感がまったく違う。自宅でゲームをプレイしているというよりも、ゲームセンターで遊んでいる感覚に近かった。ディスプレイは解像度2560×1440ドット/538ppi、フレームレート60/72fpsに対応し、PCゲームのグラフィックとほとんど変わらない印象だ。

また、シングルプレイなのでラグなどもなく、Wi-Fi環境でもしっかり動作した。トラッキングについては、首の振りに相当する3軸回転のみだが、違和感なくゲームが楽しめる。このほか、ゴーグルの付け心地は軽く、これなら長時間のプレイにも対応できそう。コントローラーは握りやすい形状で、手首にはめる落下防止のストラップがあるため、落とすことはなかった。

「Dead and Buried」の画面。画像右奥にいるのが、敵のゴブリン。斧を持って走って来るので、殴られる前に銃で倒さなければいけない

とてもリアルなホラー映像を楽しめるアプリ「The Dark Corner」。画像は、オフィスで残業中に、さまざまな怪奇現象が起きるところ

さまざまなミニゲームを楽しめるアプリ「Wonderglade」。画像は、魔法のステッキを使い、落ちてくる宝石にステッキを当ててスコアを稼ぐゲーム

コントローラーは、小さめで、握りやすい設計となっている。落下防止のストラップもついており、安心だ

コントローラーは、小さめで、握りやすい設計となっている。落下防止のストラップもついており、安心だ

コンパクトな見た目とは裏腹に、超優秀なデバイスだった

Oculus Goを実際に使ってみると、やはり、スタンドアロンで使えるのがとてもよかった。ケーブルによる制約がないので、VRゲームに夢中になりすぎてPCから離れてしまい、ケーブルがピーンと伸びて、「はっ」と現実に戻ることがない。ケーブルに手や足が引っかかって、転ぶ心配もなさそうだ。

また、VRゲームの種類は、ホラーからシューティングまで豊富にそろっており、グラフィックのクオリティも高い。実用性や映像を考慮しても、PCのゲームとさほど変わらないように感じた。

そのうえ、ユーザーにとって、やさしい価格設定なのだから、流行る理由もうなずける。

一例として、Amazon.co.jpでの価格は、32GBモデルが24,624円、64GBモデルが31,104円(税込。2018年12月10日時点)となっている。「Windows Mixed Reality(Windows MR)」向けヘッドセットでかなり安い部類に入る「Lenovo Explorer with Motion Controllers」(レノボ)の39,560円(価格.comでの最安価格。2018年12月4日時点)と比べても、Oculus Goのコストパフォーマンスのよさが際立つ。本格的なVRゲームを楽しむ第一歩として、これ以上ない入門機と言えるだろう。

ライター:辻村美奈(オフィスマイカ)

オフィスマイカ

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編集プロダクション。「美味しいもの」と「小さいもの」が大好物。 好奇心の赴くまま、よいモノを求めてどこまでも!(ただし、国内限定)

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