アップルが「MacBook Air」の2020年モデルを発売した。シザー方式の新しいキーボードを搭載したほか、CPUにはインテルの第10世代Coreプロセッサーにアップグレードされたのが大きな強化点だ。価格は約10万円から(学生なら9万円台から!)と、Retina化される前のMacBook Airのような魅力的な価格設定となっている。そんなMacBook Airの2020モデルをレビューしていきたい。
今回はCore i3を搭載した標準モデルを試用。価格.com最安価格は111,650円(2020年3月31日時点)。税込み11万円ちょっとは安い!
MacBook Airは初代モデルが2008年に登場し、モバイル用のMacノートとして12年も続いている人気シリーズだ。「12インチMacBook」が登場し、大きなアップデートが長い間されなかった時期もあったが、2018年にRetina化されると再び人気が再熱。昨年2019年に一番売れたMacノートとなり、その人気を不動のものとした。
MacBook Airの2020年モデルの外観は、先端が細いくさび型のフォルム、質感の高いアルミニウムボディ(100%再生アルミニウムから作られている)など、Retina化された2018年モデル/2019年モデルとほとんど変わっていない。カラーバリエーションもゴールド、スペースグレイ、シルバーの3色と2018年モデル/2019年モデルと同じだ。
今回試したのはゴールドモデル。実物は見る角度でピンクゴールドにも見える。本体サイズはシザー方式のキーボードを採用した影響で、2019年モデルよりも0.5mm厚く、0.04kg重くなっている。幅と奥行きは変わっていない。本体サイズは304.1(幅)×212.4(奥行)×4.1〜16.1(高さ)mm、重量は1.29kg
先端が細いくさび型のフォルム。外部インターフェイスは右側面に3.5mmヘッドホン端子を備える
左側面にはThunderbolt 3(USB-C)ポートを2基備える。充電、データのやり取り、映像出力に利用する
ディスプレイは2560×1600の13.3型ディスプレイ。2019年モデルからスペック上の変更はなく、「True Toneテクノロジー」もサポートする。アスペクト比は16:10
外観はほとんど変わっていないが、2020年モデルで大きく変わったところは、キーボードとパフォーマンス面の2点だ。それぞれを詳しく見ていこう。
MacBook Airの2020年モデルの変更点の1番目はキーボードで、「16インチMacBook Pro」に採用される「Magic Keyboard」を採用する。シザー方式のキーボードで、1mmのストロークを実現。キー配列は、Retina化される前のMacBook Airのようにカーソルキーが逆T字型となり、左右キーは小さくなったが、手探りでキーを探しやすくなった。
シザー方式に変わったMagic Keyboard
カーソルキーは逆T字型に変更された
このMagic Keyboardは、大きなキーキャップ、ラバードーム、シザー構造の3つの要素でできている。大きなキーキャップは、指の収まりがよく、印刷された文字の視認性が高く、見た目も美しい。ラバードームは適度な反発を生み出す効果があり、テンポよくタイピングできる。シザー構造はキーの左右のブレを抑えて、タイピング時の安定感につながっている。
実際にタイピングしてみると、1mmのキーストロークが効いているのか、ラバードームの効果なのか、しっかりとしたクリック感があり、以前のバタフライ方式のキーボードのように、強くタイピングしてもすぐに底に当たる感じがしない。手元の「15インチMacBook Pro」のバタラフイキーボードと比べると、打鍵音が静かになっているようにも感じた。総合的に、気持ちよくタイピングできるキーボードで、筆者も含め、文字を多く打つ仕事をしている人にはよき相棒になってくれそうだ。
1mmのストロークがあり、底に当たる感じもしない。バタフライ方式のキーボードよりも、早く慣れそうだ
以前のバタフライ方式のキーボードも改良を重ね、人によっては使いやすいという意見も聞く。キーボードは好みが分かれるので、ぜひ試してから選んでみてほしい。
2つ目の変更点はスペックだ。Retina化された2018年モデルと2019年モデルは、CPUが「1.6GHzデュアルコアIntel Core i5(Turbo Boost使用時最大3.6GHz)、4MB L3キャッシュ」だった。BTOでもほかのCPUは選択できず、高いパフォーマンスを求めるユーザーを中心により高性能なCore i7モデルを求める声があった。
2020年モデルでは、「1.1GHzデュアルコアIntel Core i3(Turbo Boost使用時最大3.2GHz)、4MB L3キャッシュ」「1.1GHzクアッドコアIntel Core i5(Turbo Boost使用時最大3.5GHz)、6MB L3キャッシュ」が搭載され、オプションで「1.2GHzクアッドコアIntel Core i7(Turbo Boost使用時最大3.8GHz)、8MB L3キャッシュ」が選べるようになった。
オプションのCore i7はMacBook Airとして初のクアッドコアCPUで、高い処理性能を求めるユーザーの要望に応えられるモデルだろう。いっぽう、最廉価モデルにCore i3が搭載されたのは個人的には驚きだ。アップルは最大2倍のパフォーマンスをうたうが、それはオプションのCore i7を選んだ場合の話。価格を下げるためにCeleronなどいわゆる性能の低いCPUを搭載することはなかったMacノートだが、第10世代のCore i3ならばアップルが想定するパフォーマンスを発揮できると考えたのだろうか?
今回試したCore i3モデルの概要
ベンチマークアプリ「Geekbench 4」を使って、2018年モデル(1.6GHzデュアルコアCore i5、8GBメモリー、128GB SSD)と比べてみると、Core i3モデルのほうがシングルコア、マルチコアともにスコアは上だった。ComputerのスコアもCore i3モデルが上で、CPU内蔵の「Iris Plus Graphics」が効いているようだ。メモリーが2133MHz LPDDR3から3733MHz LPDDR4Xへパワーアップしているのも影響しているのだろう。今回は2018年モデルと比べているが、2019年モデルもCPUは同じなので、Core i3モデルでも2019年モデルよりも高いパフォーマンスが期待できそうだ。
もっと負荷をかけたらどうなるのか? 90日間無料で使える「Final Cut Pro X」を使って、「iPhone XS Max」で撮影した4K動画をフルHDに変換してみた。かかった時間は1分57秒。比較対象がなく何とも言えないが、簡単な編集であればこなせそうだ。ただし、作業中にほのかに底面に熱を感じた。さすがに薄型ボディなので、長時間負荷がかかるような作業には向いていないのかもしれない。
90日間無料で試用版が使える「Final Cut Pro X」。MacBook Airでも変換程度であれば問題なくこなせた。もっと踏み込んだ編集になると厳しくなるかもしれないが、ライトに楽しむ程度であれば、ぜひ新しいMacBook Airで試してみてもらいたい
MacBook Airの2020年モデルは価格も魅力的だ。今回試したCore i3モデルは、2019年モデルと比べると15,000円も安い。しかもCPUが強化され、SSDの容量は2倍に増えているので、コストパフォーマンスは非常に高いと言える。コスパは昔のMacBook Airのような感覚だ。大学生はもちろん、Webページの閲覧や文章を書く、仕事の資料を作成するといった作業がメインの人たちには非常に魅力的なMacノートになるだろう。
2020年モデル(標準モデル)
Core i3、8GB、256GB:104,800円
Core i5、8GB、512GB:134,800円
2019年モデル(標準モデル)
Core i5、8GB、128GB:119,800円
Core i5、8GB、256GB:139,800円
※価格はアップルストア価格(税別)
「13インチMacBook Pro」と悩むところだろうが、13インチMacBook Proはモデルチェンジの過渡期なので少しだけ選びにくい。パフォーマンスもアップしたMacBook Airのほうが安いとなると、MacBook Air一択かと思いきや、ディスプレイのクオリティや外部インターフェイスの数などはMacBook Proのほうが上。ボディも厚くて、高負荷な作業を長時間こなすという点でもMacBook Proほうが有利だと想像できる。パフォーマンスを重視するならMacBook Proも検討してみるといいだろう。
ガジェットとインターネットが好きでこの世界に入り、はやいもので20年。特技は言い間違いで、歯ブラシをお風呂、運動会を学芸会、スプーンを箸と言ってしまいます。お風呂とサウナが好きです!