オッポの5G対応フラッグシップスマートフォン「OPPO Find X3 Pro」(以下、Find X3 Pro)のSIMフリーモデルが7月16日に発売された。「OPPO Reno5 A」や「OPPO A54」など高コスパ機が人気のオッポだが、本機は、オッポのこだわりが詰まったハイエンドモデルとなっている。
オッポの技術力を詰め込んだハイエンドモデル「OPPO Find X3 Pro」。先行発売のau版に続いて7月16日からDSDV対応のSIMフリーモデルが発売された
オッポのスマートフォンは、ハイエンド向けの「Find」シリーズ、ミドルレンジの「Reno」シリーズ、エントリー向けの「A」シリーズで構成されている。今回取り上げる「Find X3 Pro」は、Findシリーズの3世代目として2021年6月30日にau版が、7月16日にSIMフリー版がそれぞれ発売された。
au版もSIMフリー版も基本的な機能は同じだが、カラーバリエーションが、au版はグロスブラック1色なのに対して、SIMフリー版はホワイトも用意されている。通信機能も異なり、au版はnanoSIMカードスロットを1基備えるだけだが、SIMフリー版は、2基のnanoSIMカードスロットとeSIMに対応したDSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)対応機だ。5G通信機能はいずれもSub-6のみでミリ波には非対応。au版の5G対応バンドはn28/77/78/79、SIMフリー版はn1/3/5/7/8/20/28/38/40/41/77/78/79となる。両モデルの5G対応バンドは一見すると大きな違いがあるように見えるが、いずれも、NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルの各社がサービス中のSub-6周波数帯にはすべて対応しているので、5Gの通信機能という点では違いがない。注目のeSIMだが、先頃ソフトバンクがeSIM対応を果たしており、今夏以降にau・UQ mobileでも対応の予定で、徐々に環境が整ってきている。なお、手元に楽天モバイルのeSIMがあったので試してみたところ、問題なく接続できた。
「Find X3 Pro」の外見は独特だ。背面をおおうガラスパネルはカメラ部分まで一体で形成されているため非常になめらかな見た目だ。 質感も高く、個性と高級感を両立したデザインと言える。なお、サイズは、約74(幅)×163.6(高さ)×8.26(厚さ)mm、重量約193g。IPX8等級の防水仕様と、IP6X等級の防塵仕様をクリア。Qi規格のワイヤレス充電にも対応する。FeliCaポートは非搭載だ。
カメラのレンズ周辺まで一体で形成された曲面ガラスでおおわれた背面は、ほかのどのスマートフォンとも似ていない
写真は電源ボタンの備わる右側面、反対側の左側面にボリュームボタンが配置されている
ボディ下面にUSB Type-Cポートを配置。ヘッドホン端子は非搭載
同梱されるカバーは、薄く、本機の背面シルエットをジャマしないものとなっている
3,216×1,440 のQHD+表示に対応した約6.7インチの有機ELディスプレイは、側面が湾曲したいわゆるエッジディスプレイだ。ただし、曲面部分がとても小さいため、使用感は平面ディスプレイに近い。前モデル「Find X2 Pro」と同じく10bit表示対応で、リフレッシュレートは1Hz〜120Hzの可変式、240Hzのタッチサンプリングレートにも対応している。輝度は8,192段階で調整できる。
10bit表示に対応するディスプレイ。なお、保護フィルムが装着された状態で出荷されている
パンチホールはかなり小さい。長辺の曲面部分もごく小さく、ほとんど平面ディスプレイのようだ
ディスプレイ指紋認証。認証精度と速度ともに良好
動画の画質を向上させる「O1 ウルトラビジョンエンジン」を搭載。「動画の鮮明化」と「ビデオカラーエンハンサー」はどちらかを選ぶ必要がある
サウンド機能を見てみよう。ステレオスピーカーを備えるほか、サウンドエンハンサーの「Dolby Atoms」に対応している。ヘッドホン端子は非搭載で、USB Type-C接続のイヤホンが同梱されるが、USB Type-C→ヘッドホン端子の変換アダプターは同梱されない。手元のヘッドホン・イヤホンを使うために、変換アダプターは同梱してほしかった。
基本性能を見てみよう。SoCは、クアルコムの「Snapdragon 888」で、12GBのメモリーと256GBのストレージを組み合わせる。OSは、Android 11をベースにした「ColorOS 11」が使われる。microSDメモリーカードスロットは非搭載だ。定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」を使い実際の処理性能を計測したところ、736,431(内訳、CPU:187,248、GPU:309,320、MEM:119,465、UX:120,398)となった。「Snapdragon 888」搭載機としては標準的なスコアと言える。
処理性能の高さに加えて高速駆動ディスプレイの効果もあり、体感速度はさすがに速い。グラフィック性能が高いためゲームにも適している。なお、「リーグオブレジェンド」、「Call of Duty」、「PUBG」といった一部のタイトルでは、タッチ操作の応答速度を30〜40ミリ秒から5〜10ミリ秒程度に短縮する機能「O-Syncディスプレイ ハイパーレスポンスエンジン」が動作し、素早くかつ思った通り操作できる。
「AnTuTuベンチマーク」の結果。左が本機、右はスペックの類似するサムスン「Galaxy S21 Ultra」のもの。本機はGPUのスコアが30万以上を記録するなど 、多少の違いはあるが、総合スコアで見るとほぼ同レベルに収まった
本機のメインカメラは、約5,000万画素の超広角カメラ(35mm換算の焦点距離で15mm。以下統一 )と、同じく約5,000万画素の広角カメラ(24mm)、約1,300万画素の望遠カメラ(48mm)、約300万画素の顕微鏡カメラというクアッドカメラだ。なお、超広角カメラと広角カメラはいずれもセンサーサイズ1/1.56インチのソニー製「IMX766」で、10bit階調表示に対応する。注目の顕微鏡カメラは光学30倍、デジタル60倍の倍率に対応するほか、フルHDまでの動画撮影も可能だ。フロントカメラは約3,200万画素という高画素となっている。
超広角、広角、望遠、顕微鏡カメラという4基のカメラを搭載する
以下に、本機のメインカメラを使った静止画の作例を掲載する。いずれも初期設定のまま、カメラ任せで撮影を行っている。
冨士塚を撮影。さすがに5,000万画素の高画素でとても緻密だ。15mmの超広角のため塚の全体像が構図に収まった。周辺まで画質は均一かつ、ゆがみが補正されているので、とても扱いやすい。なお、青空の印象は肉眼の印象よりも濃く鮮やかだった
上と同じ構図を広角カメラに切り替えて撮影。広角カメラだが、焦点距離は24mmで、どんな被写体も撮影しやすい画角と言える。超広角カメラとは画角だけ変わり、解像感や色調の変化はほとんどない
48mmの望遠カメラで撮影。頂上にある石碑の文字がしっかり見える。約1,300万画素と解像感はあまり高くないが、必要十分な画質
夜の美術館を撮影。遠くの街灯に照らされるだけのとても暗いシーンだが、コンクリート壁にぴたりとピントが合っている。下の広角カメラとトーンがほとんど変わらないあたりに、高いポテンシャルを感じる
上と同じ構図を広角カメラに切り替えて撮影。こちらもノイズは少なくかなり鮮明だ。高感度撮影機能は超広角と広角でほとんど同レベルに保たれている
10bitモードは繊細な色の表現にすぐれる。写真のような複雑な階調の花など撮影で威力を発揮するだろう(注意:写真は10bitで撮影後8bitのJPEGに変換済みのものなので、あくまで参考として)
逆光でハスを撮影。全般にフレアが現われている。超広角カメラでもフレアは現われており、逆光性能はあまり高いほうではないようだ
下草でおおわれた野原。鮮やかな場所に見えるが、肉眼の印象はもう少しくすんでいた。総じて、樹木や空を明るく鮮やかに写そうとする傾向がある
顕微鏡カメラで星の砂を撮影。リングライトが備わっているので。光量の不足は心配ない。ただし、被写界深度が浅く画角も狭いので標本はしっかり固定したほうが撮影は容易だ
動かない岩であれば、屋外での撮影も比較的容易。鉱物の撮影も可能だろう
本機のカメラは、鮮やかな写りが特徴で、現実をなるべくそのまま写すソニー「Xperia 1」シリーズや、シャープ「AQUOS R6」とは方向性が異なる。
特筆すべきは、超広角カメラの画質だ。通常、超広角カメラは、広角カメラ(標準カメラ)よりも画質で見劣りするものだが、本機の場合、ゆがみは少なく、周辺まで画質が保たれているし、オートフォーカスの性能も同じだ。スマートフォンでは超広角が重視されることが多いこともあり、本機の超広角カメラは魅力的な存在と言える。いっぽう、望遠側は、ハイブリッドズームは5倍まで、デジタルズームは20倍までと、前モデル「Find X2 Pro」の10倍までのハイブリッドズームと、60倍までのデジタルズームと比較すると、ダウンしている。
顕微鏡カメラは、顕微鏡の性質として、視野角が狭く手ブレや被写体ブレにもとてもシビアになる。そのため、屋外での撮影はかなり難しく、標本を採取して家などでじっくり撮影するのが現実的だ。ただ、写真はもちろん動画撮影も可能なので、これから始まる夏休みで子どもの自由研究などで活用できそうだ。
10bit撮影は、より繊細な色の表現が可能で、夕焼けや花などの細部の表現で差が現われる。ただし、PCやスマートフォンで10bit対応のディスプレイを搭載するものはまだ少ないため、データ共有に難がある。通常モードとの使い分けが重要だろう。
本機は4,500mAhのバッテリーを内蔵する。au版のスペックを見ると連続待ち受け時間が約660時間、連続通話時間が約1,540分となっている。本機も含めて「Snapdragon 888」搭載機は、あまり電池持ちがよくない。しかし、その中でも連続待ち受け時間はソニー「Xperia 1 III」の約420時間や、サムスン「Galaxy S21」の約430時間よりはよいほうではある。
実際に使ってみた印象だが、「Snapdragon 888」搭載機に見られる、処理性能も高いが待ち受けでもバッテリーの消費は進むという傾向は共通している。1日に3時間程度のペースだと2日以内でバッテリーはほぼなくなる、高負荷なゲームをぶっ通しで続ければ半日足らずでバッテリーがなくなるだろう。
そうした燃費の悪さのいっぽうで、同梱の充電器を使うことで約40分という短時間でフル充電が可能だ。これだけ充電時間が短いとバッテリーの残量をあまり気にする必要もなくなる。なお、USB PD(最大18W、USB PD PPS対応充電器なら最大30W)と、QuickCharge規格(最大18W)にも対応している。
同梱の充電器を使うことで約40分という短時間でフル充電が可能。スマートフォンの利用スタイルを変えるほどのインパクトがある
個性的なデザインと機能を備えた「Find X3 Pro」は、オッポ渾身のフラッグシップモデルだ。
今期のハイエンドスマートフォンは豊作でライバルは多い。カメラ重視のものをピックアップしても、ソニー「Xperia 1 III」やシャープ「AQUOS R6」、ライカ「Leitz Phone 1」、サムスン「Galaxy S21」シリーズなどの名前があがる。本機のカメラは、10bit撮影や顕微鏡カメラなどが注目されるが、焦点距離が15mmと広く、画素数も高い超広角カメラの完成度はとても高い。超広角を重視するなら、本機は今夏のベストモデルだろう。
FeliCa非搭載、ヘッドホン端子がない点でユーザーを選ぶ部分はあるが、それを補えるだけの魅力を備えた製品だ。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。