NTTドコモは、シニア向けスマートフォンの新モデル「あんしんスマホ KY-51B」(京セラ製)を2022年2月24日に発売した。シニア向けスマートフォンは、3Gケータイからの移行などで近ごろ注目を集めているが、本機は、シニアのユーザーがより本格的にスマートフォンを利用するための足がかりにもなり得るという面もあわせ持っていた。
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NTTドコモのシニア向けスマートフォン「あんしんスマホ KY-51B」(京セラ製。以下、あんしんスマホ)は、「らくらくスマートフォン F-52B」(FCNT製)と同時に発売されたシニア向けスマートフォンの新モデルだ。
「あんしんスマホ」は、約71(幅)×161(高さ)×8.9(厚さ)mm、重量約171gのボディに、2,400×1,080のフルHD+表示に対応した約6.1インチの液晶ディスプレイを搭載する。ディスプレイは、同時発売の「らくらくスマートフォン F-52B」の約5.0インチよりもだいぶ広いうえに、縦横比が縦長なので、WebページやTwitter、LINEのトーク画面のように、画面を縦方向にスクロールさせるアプリがより使いやすい。なお、「らくらくスマートフォン」シリーズのような、押し込むことで操作を確定させる独特のタッチ操作は備えておらず、普通のタッチ操作を行う。
最近のスマートフォンとしては一般的な、縦長の約6.1型液晶ディスプレイを採用する
背面に指紋センサーを搭載。カラーバリエーションは、今回の検証機のピンクゴールドのほかにネイビーが選べる
「あんしんスマホ」の特徴は、豊富に備わるボタン類だ。ディスプレイの下部には、最近のスマートフォンでは見かけなくなった「通話」、「ホーム」、「メール」の物理ボタンが備わる。このうち、通話とメールの両ボタンにはLEDが備わり、着信や受信があった場合に点滅して知らせてくれる。また、これらのボタンのちょうど上に当たるディスプレイ下部には、「戻る」「画面メモ」「アプリ履歴」のタッチボタンが常時表示され、合計6個のボタンが利用できる。
画面下部に、戻る、画面メモ、アプリ履歴のタッチボタン、その下に電話、ホーム、メールの物理ボタンを備える。このうち、電話とメールの各ボタンにはLEDが備わっており、着信や受信があった場合に点滅して知らせてくれる
ボディの右側面には、ボリュームボタンと、音声検索機能などをすぐに呼び出すことのできる「ダイレクトボタン」を備える
画面メモボタンは、画面のスクリーンショットと動画の記録に対応。Webブラウザーや地図などの情報を簡単にスクリーンショットで保存できるので、後で見返すのに便利だ
電源ボタンはボディ上側面に配置される
ボディ下面にはUSB Type-Cポートとストラップホールを配置される。なお、ヘッドホン端子は備えておらず、有線イヤホンなどを使う場合は、同梱の変換アダプターをUSB Type-Cポートに挿して使用する
本機のボディは、タフネス設計となっており、IPX5/8等級の防水仕様、IP6X等級の防塵仕様、米国国防総省の調達基準「MIL-STD-810H」をクリアした耐衝撃性能を備えている。その耐久性は高く、水没しても拾い上げればそのまま利用できるほか、泡タイプのハンドソープやボディソープでボディを丸洗いしたり、アルコールを含んだ布で拭いても目立った退色を起こさないため、衛生的に使うこともできる。
ボディは洗剤で丸洗いできるので、衛生面もさることながら、皮脂や指紋汚れを洗い流し、新品のような手触りになるのがうれしい
機能面では、FeliCaポートを備えているので、各種のタッチ決済や、「モバイルSuica」や「モバイルPASMO」も利用できる。また、指紋認証センサーを背面に備えるほか、フロントカメラを使った顔認証にも対応している。
ワンセグチューナーは搭載していないが、FMラジオチューナーを備えているので、インターネットがつながらない場所でもラジオ放送は聴くことができる。なお、プリインストールされるラジオアプリ「radiko(ラジコ)」は、ワイドFM放送とインターネットラジオの両方に対応しているほか、タイムフリー聴取や、他地域の局を聴取できるエリアフリー聴取といった、インターネットラジオならではの機能も備えている。
ラジオアプリ「radiko」は、タイムフリー視聴やエリアフリー視聴といった機能を備える
次に基本スペックを見てみよう。搭載されるSoCは「Snapdragon 480」で、4GBのメモリーと64GBのストレージ、最大1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットを組み合わせる。OSは最新のAndroid 11だが、次期バージョンのAndroid 12へのバージョンアップが予告されている。5G通信機能は、下り最大1.9Gbps、上り最大218Mbpsに対応する。なお、「らくらくスマートフォン F-52B」も、基本スペックは「あんしんスマホ」と全く同じだ。
本機の処理性能やグラフィック性能は、2年ほど前のミドルハイスマートフォンに近く、一般的なスマートフォンの利用用途なら十分な性能と言える。メモリーが4GBと必要最小限だが、シニアが主に利用する用途を考えれば十分だろう。
なお本機は、シニア向けスマートフォンということもあって、文字を大きく表示したり、物理ボタンを備えるといった配慮はなされているが、初期設定の「かんたんホーム」の基本的な操作はAndroidスマートフォンの標準に準じている。ホーム画面としてNTTドコモの「docomo LIVE UX」を選べば、さらに普通のAndroidスマートフォンのように使うこともできる。
ベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」の結果。総合スコアは286,858で、「Snapdragon 480」搭載機としては標準的な性能と言える
「かんたんホーム」(左画面)と「docomo LIVE UX」(右画面)を搭載。「docomo LIVE UX」に切り替えれば、Androidの標準的操作に近い操作性になる
本機は、豊富なセキュリティ機能を搭載するのも特徴だ。通話が終わった後に、その内容を最大60分間録音できる「通話後録音」や、電話帳に登録のない番号からの着信に注意喚起を行う「迷惑電話対策」機能を備えるほか、着信拒否設定機能も備えており、シニアをターゲットにした詐欺電話などへの対策にも配慮されている。このほかにも「迷惑電話ストップサービス」や「SMS拒否設定」といった、NTTドコモが用意する迷惑電話、迷惑SMS対策サービスも利用できる。
通話終了後に、さかのぼって内容を録音できる「通話後録音」を搭載。通話内容のメモとしてや、迷惑電話の記録などに利用できる
NTTドコモのセキュリティアプリ「あんしんセキュリティ」もプリインストールされている。同アプリは月額220円の有償サービスだが、無償でウイルスのスキャンは行える
ユーザーへのサポートも豊富に用意されている。製品パッケージ内には本機専用のガイドブックが同梱されており、基本的な操作などをしっかり学べる。また、自己診断アプリがインストールされており、スマートフォンに問題が起こった場合には自動的に感知して自己解決のサポートをしてくれる。このほかにも、メーカーの京セラのWebサイトでは、本機をさらに使いこなせるように、解説動画を9種類用意している。
自己診断アプリを備えており、ユーザーの困った状況を感知して解決方法を提案したり、自己解決のサポートをしてくれる
京セラの製品ページでは、LINEの始め方など実践的な内容の解説動画を用意している(リンク先参照)
本機のメインカメラは、約4,800万画素のイメージセンサーを備えたシングルカメラとなっている。また、AIを使ったシーン認識機能なども備えていない。ディスプレイ側に備わるフロントカメラは約800万画素だ。近ごろのスマートフォンでは、エントリーモデルでも複数のカメラを搭載したり、シーン認識機能などを搭載することがほとんどなので、本機のカメラについてはかなり割り切ったシンプルな仕様と言える。しかし、カメラアプリはQRコードを自動で認識できるほか、画像検索アプリ「GoogleLenz」を備えているので、日常的な調べ物などには困らない。また、本体右側面に備わる「ダイレクトボタン」を長押しすることでカメラを起動することもできるので、カメラだけを使いたい時にも物理ボタンのみで素早く始められる。
以下に本機メインカメラを使って撮影した静止画と動画の作例を掲載する。いずれも、初期設定のままカメラ任せで撮影を行っている。
室内でライティングされた巨大な生け花。ホワイトバランスも正確で雰囲気を損なわずに撮影できている。ただし、等倍まで拡大した葉の解像感はさほど高くない
夕方の空を撮影。こちらも、雰囲気はよく再現されているが、空の階調をよく見るとグラデーションにムラが見える。作例下部に写る木々の暗部も黒くつぶれかかっている
明るめな夜景を撮影。手持ち撮影だが手ブレは抑えられており、明るく鮮明で、そこそこキレイに仕上がった
「あんしんスマホ」は4,500mAhのバッテリーを搭載する。カタログスペックを見ると、連続待ち受け時間は約320時間、連続通話時間は約320時間、連続通話時間は約1,500分となっている。なお「らくらくスマートフォン F-52B」の連続待ち受け時間は約510時間、連続通話時間は約1,310分だ。両機の傾向を見ると、待ち受けが多く利用頻度が少ない場合は「らくらくスマートフォン F-52B」が、逆に、利用頻度が高い場合は「あんしんスマホ」のほうが長くバッテリーが持つようだ。
実際の電池持ちだが、ほとんど使用しない待ち受け状態では24時間のバッテリー消費は5〜7%程度で、単純計算で2〜3週間ほどはバッテリーが持つ計算となる。いっぽう、1日に、SNSやWebページの閲覧などで1日に3時間程度使用した場合のバッテリー消費は20〜30%程度で、3〜4日はバッテリーが持つペースだ。なお、カメラ撮影やベンチマークテスト、大量のデータ通信などで、かなりの負荷をかけた日でもバッテリー消費は12時間で40%程度の消費だった。本機のバッテリー持ちは、特別に優秀とまでは言えないが、数日に1回程度の充電で済むレベルで、1泊2日の旅行程度なら充電器なしで済ませられそうだ。
いっぽうの充電性能だが、本機はUSB PD規格の急速充電に対応しているので、同規格に対応した充電器なら最短約130分でフル充電できる。なお、本機のパッケージには充電器が同梱されていない。USB PDに対応したNTTドコモ純正の「ACアダプタ 07」や「ACアダプタ 08」、あるいは同規格に対応した汎用のACアダプターを用意したい。
NTTドコモとしては第2のシニア向けスマートフォンシリーズとなる本機は、6インチ超の大画面や物理ボタンなどの使いやすさを追求するいっぽうで、シニア向けゆえの過剰な機能制限などは課されていない。一般的なAndroidスマートフォンとしても十分利用できるので、本機を手始めに別のスマートフォンに買い換えた場合でもスムーズになじめるはずだ。端末価格も41,976円と安く、36回の分割払いなら月々の支払いは1,166円に抑えられる。
同時に発売された「らくらくスマートフォン F-52B」は、どちらかと言うとケータイからの乗り換えユーザーにとって違和感のない方向性を採っているのに対し、本機は、より一般的なスマートフォンに近い操作性を採用しており、今後のステップアップも含めて考える人には、より向いた製品と言えそうだ。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。