PCパーツ探訪記

拡張も見据えた高コスパな自作PCを10万円台で構成してみた

ひと昔前ならいざ知らず、PCパーツの高性能化が目まぐるしく進む近年は、ハイスペックなノートPCが1台あれば、ビジネスからエンターテインメントまで十分事足りてしまうと言っても過言ではない。それでも、ゲーミングブームに火がつき、写真や動画の編集ニーズが高まる昨今、より本格的な作業をこなせるデスクトップPCや自作PCが、再び熾火のように存在感を増しつつあるのもまた事実。そのような中、かつて秋葉原や大須の裏通りで目を皿にしてPCパーツを物色していた自作PCユーザーが、改めて自作PCの世界に舞い戻ったり、これまで既製PCにしか縁のなかった初心者が、入門書を片手に自作PCに挑戦したりするケースも、徐々に増えてきたように感じる。そこで、そのような愛すべき自作PC仲間の頼りとなるべく、PCパーツにまつわる連載「PCパーツ探訪記」をスタートさせたい。

記念すべき第1回は、今後活用していく検証機として構成した自作PCの紹介としたい。今回のマシンを構成するにあたって掲げたテーマは、「コストパフォーマンス」と「拡張性」だ。そもそも自作PCの大きなメリットのひとつは、自分にとって必要なパーツを必要なだけチョイスし、最小限の予算で最大限の満足感を得られること。今回は、20万円未満という予算の中で極力高性能なパーツを厳選し、クリエイティブ作業も快適にこなせるハイスペックマシンを組むことを目標とし、削るべきは削り、こだわるべきはこだわる、メリハリのあるパーツ選定を心がけた。同時に、予算や必要に応じてパーツを交換したり拡張したりして、末長く愛用していけることも自作PCの魅力。財布に余裕が出てきたころに高性能パーツを追加できるよう、パーツ規格のバーションや電源の余力なども重視している。それではさっそく、仕上がったマシンから見てみよう。

今回構成した自作PC。拡張性を考慮してフルタワー型ケースを採用した

今回構成した自作PC。拡張性を考慮してフルタワー型ケースを採用した

構成した自作PCの内部。グラフィックボードを削るなど最小限のパーツに絞ったことですっきりとしており、十分なエアフローも確保されている

構成した自作PCの内部。グラフィックボードを削るなど最小限のパーツに絞ったことですっきりとしており、十分なエアフローも確保されている

今回チョイスしたパーツの詳細。最新規格の高性能パーツを中心に選びつつも、シンプルな構成で18万円台に収めた

今回チョイスしたパーツの詳細。最新規格の高性能パーツを中心に選びつつも、シンプルな構成で18万円台に収めた

全体を10万円台に収めるうえで欠かせなかったのは、最もコストのかかるグラフィックボードの割愛だ。仮想通貨のマイニングブームの余波が長く尾を引いているところに半導体不足が重なり、グラフィックボード市場はここ数年高騰を続けてきた。1年前の2021年に比べればある程度落ち着いてきたが、まだ相場には割高感が残る。加えて今回のマシンではゲーミングを目的としないこともあり、いったん採用を見送ることとした。そのぶんの予算を、ハイクラスCPUを中心とした最新パーツに回した格好だ。ただし、今後ハイエンドグラフィックボードを追加することも見据えて、マザーボードの規格や電源の容量、ケースのサイズには余裕を持たせてある。

各パーツの詳細とその選定ポイント

今回組んだマシンで採用した各パーツを、それぞれ詳しく確認していこう。自作PCの初心者や、最前線からしばらく離脱していた自作PC復帰組にもわかりやすいよう、パーツの種類ごとに考慮すべきポイントや、パーツに関する基本的な最新事情などについても、簡潔に触れておきたい。

CPU

自作PCを組む際、マザーボードやメモリーなど各パーツの規格と密接に関係してくるCPUを、まず決めたい。今回のテーマのひとつはコストパフォーマンスであるため、まず検討したいのはAMD製CPU。かつては「割安だが処理性能も控え目」という印象が強かったAMD製CPUだが、2017年に「Ryzen」が登場してからというもの、手ごろな価格はそのままに、インテル製CPUに処理性能で肩を並べるようになったからだ。そして2020年に市場投入された「Ryzen 5000」シリーズに至っては、処理性能でインテル製CPUを凌駕し、そのすぐれたコストパフォーマンスをより強く印象づけている。

しかし、その後インテルが立て続けにCPUの世代交代を繰り出し、「第12世代Core」シリーズでは、処理性能で「Ryzen 5000」シリーズを圧倒。AMDは最新の「Ryzen 7000」シリーズも発表しているが、本記事を執筆している2022年9月24日時点ではまだ発売されておらず、性能も未知数であること、プラットフォームの世代交代と昨今の円安進行、初物のご祝儀価格で価格がこなれるまで時間がかかるということで選択肢から外させてもらった。

もうひとつ、今回はコストパフォーマンス重視でグラフィックボードを割愛することにしたため、GPU内蔵モデルを選択する必要があったのだが、AMDの「Ryzen」では「Ryzen 5000」シリーズの下位モデルにしかGPUが内蔵されていない。加えて、「Ryzen 5000」シリーズは最新のDDR5メモリーに対応していないが、「第12世代Core」シリーズはこれに対応。これらの点を考慮して今回は「Ryzen 5000」シリーズを見送り、「第12世代Core」シリーズの採用を決めた。

ただし、ハイエンドの「Core i9」シリーズは高価格でコストパフォーマンスに欠ける。そこで、とりわけ価格と処理性能のバランスにすぐれる、「Core i7 12700Kプロセッサー」(最大5GHz)をチョイスすることにした。ここで注目したいのは、型番の末尾に「K」が付いているモデルであること。末尾が無印の標準モデルよりもクロック周波数が引き上げられているうえ、さらなるオーバークロックも楽しめる。なお、型番の末尾が「KF」や「F」になっているモデルはGPUが内蔵されていないため、注意が必要だ。

今回採用した「Core i7 12700Kプロセッサー」は、本来1クラス上位にあたる「Ryzen 9 5900Xデスクトップ・プロセッサー」をも凌駕する処理性能を誇るハイクラスCPUだ

今回採用した「Core i7 12700Kプロセッサー」は、本来1クラス上位にあたる「Ryzen 9 5900Xデスクトップ・プロセッサー」をも凌駕する処理性能を誇るハイクラスCPUだ

「CPU-Z」でCPU情報を確認すると、高性能コア(Pコア)が8、高効率コア(Eコア)が4、スレッドが20であることが確認できる。シングルスレッド性能だけでなく、マルチスレッド性能にもすぐれた万能CPUだが、そのぶん最大消費電力(MTP)は190Wと大きい

「CPU-Z」でCPU情報を確認すると、高性能コア(Pコア)が8、高効率コア(Eコア)が4、スレッドが20であることが確認できる。シングルスレッド性能だけでなく、マルチスレッド性能にもすぐれた万能CPUだが、そのぶん最大消費電力(MTP)は190Wと大きい

CPUクーラー

CPUが決まったら、その発熱量にふさわしいCPUクーラーを選びたい。そのうえでまずチェックしたいのは、発熱量に直結するCPUの電力指標だ。従来のインテル製CPUでは、ベースクロック動作時の熱設計電力「TDP(Thermal Design Power)」が電力指標になっていたが、今回採用した「第12世代Core」シリーズからは、ベースクロック動作時の消費電力「PBP(Processor Base Power)」と、ブースト時の消費電力「MTP(Maximum Turbo Power)」が電力指標とされている。このPBPはTDPに近い指標と考えてよい。

しかし、このPBPを基準に冷却を考えるべきではないだろう。「第11世代Core」シリーズまではブーストに短い制限時間(Tau)が設けられていたので、ベースクロック動作時の発熱を中心に冷却を考えてもよかったが、「第12世代Core」シリーズでは電力や冷却に余裕がある限り、基本的にはブースト状態が持続する仕様になっており、ブースト時の発熱を中心に冷却を考える必要があるからだ。そのため今回はPBPとMTPの両方をチェックして、CPUクーラーを選ぶことにした。

「Core i7 12700Kプロセッサー」のMTPは190W。150W未満なら空冷でも対応できるだろうが、150W以上となると、より強力な簡易水冷クーラーを選択したい。それも200W前後になる場合、240mm以上のラジエーターを備えたものがよいだろう。そこで今回は280mmのラジエーターを装備したARCTIC「Liquid Freezer II 280」をチョイスした。

このクーラーで注目したいのは、一般的な27mm厚のラジエーターではなく、38mm厚のラジエーターを採用していること。広大なフィン面積を確保したことにより、通常の280mmラジエーターよりも高い冷却性能が期待できるのだ。ただし、このように大きなラジエーターを設置するには、内部空間が広いケースが必要になることに注意したい。

280mmの大型ラジエーターを備える簡易水冷クーラー「Liquid Freezer II 280」。2基の140mmファンで最大風量72.8CFMを実現している

280mmの大型ラジエーターを備える簡易水冷クーラー「Liquid Freezer II 280」。2基の140mmファンで最大風量72.8CFMを実現している

熱伝導率が高い銅製ベースプレートを採用しているうえ、CPUウォーターブロックの先端には40mmのVRM冷却ファンが搭載されており、効率的な冷却が可能だ

熱伝導率が高い銅製ベースプレートを採用しているうえ、CPUウォーターブロックの先端には40mmのVRM冷却ファンが搭載されており、効率的な冷却が可能だ

厚みのある大型ラジエーターのため、特にケース上面に設置する場合は、マザーボードやメモリーなどと干渉しないか注意したい

厚みのある大型ラジエーターのため、特にケース上面に設置する場合は、マザーボードやメモリーなどと干渉しないか注意したい

PCケース

CPUクーラーが決まれば、次はそれを体よく収められるPCケースを選ぼう。今回は280mmのラジエーターを装着する必要があるため、ケース前面、もしくはケース上面に280mm以上の設置スペースがあるPCケースを選べばよい。また、PCケースを選ぶうえではグラフィックボードの搭載可能サイズも要チェック。今回はグラフィックボードを割愛するものの、今後拡張していくことを視野に入れているため、ハイエンドグラフィックボードが搭載できるよう、350mm以上の設置スペースがあることも条件とした。

こうしたサイズ上の都合を優先し、フルタワー型ケースのFractal Design「Pop XL Silent Solid FD-C-POS1X-01」を選定。230(幅)×520(高さ)×522(奥行)mmと存在感のあるサイズではあるが、上面に最大280mm、前面に最大360mmのラジエーターが搭載できるうえ、最大430mmのグラフィックボードやExtended ATXサイズのマザーボードにも対応している。これだけ多くのファンが取り付けられると騒音も気になるところだが、このケースは吸音フォーム付きの分厚いサイドパネルを採用。密閉構造が適度に追求されていることも相まって、静音性がすこぶる高い。ただし、密閉性が高すぎると吸排気に支障をきたすため、そのあたりのさじ加減はしっかり見極めよう。

全体的にほぼ平面で構成された美しい「Pop XL Silent Solid FD-C-POS1X-01」。全面の左サイドに設けられた吸気口も控え目で、シンプリシティが徹底追及されている

全体的にほぼ平面で構成された美しい「Pop XL Silent Solid FD-C-POS1X-01」。全面の左サイドに設けられた吸気口も控え目で、シンプリシティが徹底追及されている

前面には3基の120mmファンが、背面には120mmファンが標準装備されている。電源搭載部を部屋で区切ったデュアルチャンバー構造により、エアフローも良好に保たれやすい

前面には3基の120mmファンが、背面には120mmファンが標準装備されている。電源搭載部を部屋で区切ったデュアルチャンバー構造により、エアフローも良好に保たれやすい

上面手前には、電源ボタンのほか、USB3.0 Type-Aポート×2、マイク端子、ヘッドホン端子を装備。USB Type-Cポートがあればさらによかった

上面手前には、電源ボタンのほか、USB3.0 Type-Aポート×2、マイク端子、ヘッドホン端子を装備。USB Type-Cポートがあればさらによかった

マザーボード

マザーボードは、CPUに対応するソケットとチップセットを備えるものから選ぼう。今回採用した「第12世代Core」シリーズに適合するソケットは「LGA1700」だ。チップセットは「Z690」「H670」「B660」「H610」が対応しているが、「Core i7 12700Kプロセッサー」のオーバークロック機能を活用するため、オーバークロックが可能な「Z690」を選択した。また、今回はDDR5メモリーを使用したいため、DDR5メモリーへの対応も必須。これらの条件を満たすマザーボードの中で、比較的割安ながらもサーマル設計がしっかりしており、オーバークロック耐性も期待できるということで、ATXサイズのマザーボード、GIGABYTE「Z690 UD [Rev.1.0]」をチョイスした。

マザーボードはあらゆるパーツの集積所となるため、CPU以外の対応規格もしっかりと確認しておきたい。本マザーボードは、DDR5-6000(オーバークロック)に対応するほか、PCIe 5.0x16スロット、PCIe 4.0x4対応M.2スロット×3を備えるなど、最新規格をひと通りカバー。ただちに使用しないものも多いだろうが、今後拡張していける余地を確保しておくことは重要だ。

ダイレクト駆動の16+1+2デジタル電源フェーズ設計や大型ヒートシンクを採用しており、ハイエンドパーツへの耐性が強い

ダイレクト駆動の16+1+2デジタル電源フェーズ設計や大型ヒートシンクを採用しており、ハイエンドパーツへの耐性が強い

PCIe 5.0x16スロット、PCIe 3.0x4スロット(x16形状)、PCIe 3.0x1スロット(x16形状)、PCIe 3.0x1スロット×2、PCIe 4.0x4対応M.2スロット×3などの拡張スロットを装備

PCIe 5.0x16スロット、PCIe 3.0x4スロット(x16形状)、PCIe 3.0x1スロット(x16形状)、PCIe 3.0x1スロット×2、PCIe 4.0x4対応M.2スロット×3などの拡張スロットを装備

外部インターフェイスとしては、2.5ギガビットLANポート、DisplayPort 1.4ポート、HDMI 2.1出力ポート、USB3.2 Gen2×2 Type-Cポート、USB3.1 Gen2 Type-Aポート、USB3.2 Gen1 Type-Aポート×4、USB2.0ポート×4などを装備

外部インターフェイスとしては、2.5ギガビットLANポート、DisplayPort 1.4ポート、HDMI 2.1出力ポート、USB3.2 Gen2×2 Type-Cポート、USB3.1 Gen2 Type-Aポート、USB3.2 Gen1 Type-Aポート×4、USB2.0ポート×4などを装備

メモリー

メモリーは最新のDDR5を採用することに。とはいえ、DDR5が従来のDDR4よりもデータ転送速度にすぐれているから、というわけではない。メモリークロックと帯域幅が大幅に向上したことは確かなのだが、それによって実際の処理が、必ずしも大幅に高速になるわけではないのだ。さらにDDR5は、メモリコントローラーの要求にメモリーが応答するまでに必要な時間(レイテンシ)が遅い傾向がある。多くの実際の処理ではDDR4とそこまで大きな差がつかないし、処理によってはDDR4よりもパフォーマンスが落ちることさえある。にもかかわらず、DDR5はDDR4の倍近い価格帯だ。コストパフォーマンスを考えるなら、今の時点ではDDR4を選択するべきかもしれない。それでも、今回の自作PCは今後活用していく検証機。将来性や拡張性を考慮し、最新規格であることを優先した。

採用したのは、キングストン「KF556C40BBK2-32 [DDR5 PC5-44800 16GB 2枚組]」。DDR5としては控え目な2万円台という価格ながら、オーバークロック規格のXMPに対応したメモリーで、最大でDDR5-5600まで引き上げることが可能だ。少しでもデータ転送速度を伸ばしたい場合は、このようなXMP対応メモリーを選択するとよいだろう。

放熱性にすぐれたヒートシンクを装備する「KF556C40BBK2-32 [DDR5 PC5-44800 16GB 2枚組]」。システムレベルでのエラー修正の負荷を低減するオンダイECCを採用している

放熱性にすぐれたヒートシンクを装備する「KF556C40BBK2-32 [DDR5 PC5-44800 16GB 2枚組]」。システムレベルでのエラー修正の負荷を低減するオンダイECCを採用している

XMPでDDR5-5600に設定したうえで「CPU-Z」で確認。レイテンシを表すメモリタイミングは、DDR5-5600動作時でCL40-40-40-80と、DDR5では標準的

XMPでDDR5-5600に設定したうえで「CPU-Z」で確認。レイテンシを表すメモリタイミングは、DDR5-5600動作時でCL40-40-40-80と、DDR5では標準的

SSD

SSDにはPCIe(NVMe)接続SSDとSATA接続SSDがあるが、OS用として使うなら、圧倒的に高速なPCIe接続SSDを採用しよう。ここで確認したいのは、読み書き速度に直結するPCIeのバージョンだ。最新のPCIe 4.0に対応したSSDは、従来のPCIe 3.0対応SSDの2倍〜3倍ほども高速であるため、予算が許すならぜひPCIe 4.0対応SSDをチョイスしたいところ。そこで今回は、PCIe 4.0対応の製品から、比較的求めやすいCrucial「P5 Plus CT1000P5PSSD8JP」を選定。容量は1TBとそれなりに余裕を持たせ、そのほかのストレージを割愛してコストカットした。

M.2 Type2280の「P5 Plus CT1000P5PSSD8JP」。読み込み速度6600MB/s、書き込み速度5000MB/sを誇る高速SSDだ

M.2 Type2280の「P5 Plus CT1000P5PSSD8JP」。読み込み速度6600MB/s、書き込み速度5000MB/sを誇る高速SSDだ

今回のマザーボード「Z690 UD [Rev.1.0]」はM.2 SSD用のヒートシンクを装備。高性能SSDは発熱量も大きいため、こうしたヒートシンクがあると安心だ

今回のマザーボード「Z690 UD [Rev.1.0]」はM.2 SSD用のヒートシンクを装備。高性能SSDは発熱量も大きいため、こうしたヒートシンクがあると安心だ

電源ユニット

電源ユニットを選ぶうえでまず気にしたいのは、やはり定格容量だ。スタンダードなPCなら500Wもあれば事足りるが、ハイエンド構成となると800Wでも心もとなくなる。高性能なCPUやグラフィックボードを搭載するなら、1000W以上の定格容量は確保したい。基本的には、使用電力の約2倍が定格容量の目安となる。定格容量が使用電力に近すぎてしまうと、電解コンデンサーに高負荷がかかり、動作が不安定になったり、寿命が短くなったりしてしまうからだ。また、使用電力が定格容量の50%程度のときに電力変換効率がピークになりやすいということも、その理由としてあげておきたい。

今回はグラフィックボードを割愛しているが、将来ハイエンドなグラフィックボードを追加しても耐えられるよう、定格容量1200WのThermaltake「TOUGHPOWER GF1 GOLD 1200W PS-TPD-1200FNFAGJ-1 [Black]」を選択。日本製の高品位電解コンデンサーを採用しており、安定性に定評があることもポイントとなる製品だ。ただし、電力変換効率認証の80 PLUSをGOLDに抑えることでコストを抑えた。

今回採用した「TOUGHPOWER GF1 GOLD 1200W PS-TPD-1200FNFAGJ-1 [Black]」。低負荷時にファンの回転を停止する静音仕様の140mmファンを搭載していることも魅力だ

今回採用した「TOUGHPOWER GF1 GOLD 1200W PS-TPD-1200FNFAGJ-1 [Black]」。低負荷時にファンの回転を停止する静音仕様の140mmファンを搭載していることも魅力だ

ケーブルはすべてプラグイン式。必要なぶんだけ接続すればよいので、配線がすっきりとし、エアフローも向上する

ケーブルはすべてプラグイン式。必要なぶんだけ接続すればよいので、配線がすっきりとし、エアフローも向上する

クリエイティブ作業まで十分にこなせるハイパフォーマンスを確認

最後に、仕上がったマシンの処理性能を確認すべく、主要なベンチマークプログラムをテスト。なお、CPUのベースクロックや倍率、電圧などは、すべてUEFIデフォルトのAutoとし、メモリーのみXMPでDDR5-5600に設定した状態で検証した。

突出していたのは、やはり「Core i7 12700Kプロセッサー」の処理性能だ。「CINEBENCH R23」を試してみたところ、シングルコア、マルチコアともにハイスコアをマーク。メモリーとSSDも予算内で手に入る最大スペックのものをチョイスしたので総合力も高く、「PCMark 10」ではハイクラスPCの目安となる6000を越えてきた。クリエイティブ作業のパフォーマンスを確認するべく、「Photoshop」の動作速度を検証する「PugetBench for Photoshop」や、H.264形式のフルHD動画のエンコード速度を測る「x264 FHD Benchmark」もテストしたが、いずれも申し分なし。タフな画像編集はもちろん、動画編集まで十分快適にこなせるレベルであることが確認できた。

ただし、ゲームとなるとやはり話は違ってくる。「Core i7 12700Kプロセッサー」の内蔵GPU「UHDグラフィックス770」では、「3DMark Time Spy」で1000を切ってしまった。カジュアルゲーム程度ならそこそこ遊べるだろうが、本格的にゲームを楽しみたいならグラフィックボードの追加は欠かせない。また、4Kなどの高画質動画を快適に編集するうえでも、やはりグラフィックボードは必須だろう。

「CINEBENCH R23」では、シングルコアで1943、マルチコアで23021をマークし、ハイクラスCPUの実力を見せつけた

「CINEBENCH R23」では、シングルコアで1943、マルチコアで23021をマークし、ハイクラスCPUの実力を見せつけた

「PCMark 10」では、6246というハイスコアをマーク。ただし、「Rendering and Visualization Score」と「Video Editing Score」は伸び悩んでおり、過度なグラフィックタスクはそこまで得意としないことが読み取れる

「PCMark 10」では、6246というハイスコアをマーク。ただし、「Rendering and Visualization Score」と「Video Editing Score」は伸び悩んでおり、過度なグラフィックタスクはそこまで得意としないことが読み取れる

「PugetBench for Photoshop」では1186をマークし、重い画像編集まで対応できることを示した

「PugetBench for Photoshop」では1186をマークし、重い画像編集まで対応できることを示した

「x264 FHD Benchmark」では、95fps、26秒で処理

「x264 FHD Benchmark」では、95fps、26秒で処理

「3DMark Time Spy」では933に留まった。やはりゲームを楽しむにはグラフィックボードが必要だ

「3DMark Time Spy」では933に留まった。やはりゲームを楽しむにはグラフィックボードが必要だ

【まとめ】20万円未満でもパーツの選び方次第でハイクラスPCは構成できる

今回は20万円未満という限られた予算だったため、ゲームまでこなせるハイエンドPCまでは構成できなかった。しかし、ゲーム用途を前提とせず、高価なグラフィックボードなどを割愛したおかげで、基本的なパーツにかえって十分な予算を回すことができ、充実感が得られる高コスパマシンに仕上がったと感じる。

とりわけ、ハイクラスCPU「Core i7 12700Kプロセッサー」と、そのポテンシャルを最大限に引き出す強力な簡易水冷クーラーの採用が功を奏し、全体のパフォーマンスが整った印象が強い。XMP対応のDDR5メモリーや、PCIe 4.0対応SSDなど、総じて最新規格にこだわれたこともポイントだろう。定格出力1200Wの電源や大型ケース、ポテンシャルの高いマザーボードをチョイスするなどして拡張性も追求できたので、追い追いハイクラスのグラフィックボードを搭載し、ゲーミング関連テストなども行っていきたい。

限られた予算でも、メリハリのあるパーツ選びで満足度の高いマシンを構成できるのが、自作PCの大きな魅力。本記事を参考に、各パーツの要となる部分にこだわりつつも、不要な部分はときに思いきって切り捨てるなどして、自分に最適なマシンをぜひ組み上げてみてほしい。

冨増寛和

冨増寛和

ライター、編集者、画家。学習院大学文学部哲学科卒業。制作会社で経験を積んだのち、コンテンツ制作会社の株式会社理感堂を設立。PC、ICT、芸術文化など、幅広い分野で書籍や記事の執筆・編集を手がける。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
プレゼント
価格.comマガジン プレゼントマンデー
SPECIAL
パソコンパーツのその他のカテゴリー
ページトップへ戻る