Googleが、「Google Pixel Fold」(以下、「Pixel Fold」)で満を持して折りたたみスマートフォン市場に参入しました。Google Storeでの販売価格は253,000円(税込)と、スマートフォンとしては非常に高価な端末です。この価格に見合う価値があるのか、レビューして検証します。
Google初の折りたたみスマホ「Pixel Fold」の実力をチェック!
「Pixel Fold」は、折りたたむと5.8インチの有機ELディスプレイを備えるスマートフォン、開くと7.6インチの有機ELディスプレイを備える小さなタブレットとして使えるスマートフォンです。
閉じたときは、少し厚めのコンパクトスマートフォンという印象です。折りたたみスマートフォンとしては薄い部類で、ズボンのポケットにも入ります。片手でも操作できるものの、重量が283gあることと、価格が約25万円であることを考えると、なかなか気軽に片手操作はできません(笑)。
写真を見るとコンパクトなサイズのスマートフォンに見えますが、薄型スマートフォン2台分の厚みがあるので持ちにくいです。片手操作をするには、スマホリングが必須でしょう
横から見ると、その厚さがわかるでしょうか。ちなみに、右側のボタンは電源ボタンと指紋認証センサーを兼ねています
背面はカメラ部分の主張が強めです
外側のディスプレイが耐久性の高い「Gorilla Glass Victus」でカバーされているとはいえ、個人的にケースやスマホリングは必須だと思います。レビューではスマホリングを付けてみたところ、閉じた状態でも開いた状態でも持ちやすくなりました。
外側のディスプレイは、フルHD+(2092×1080)、HDR対応、ピーク輝度1550nitと、ハイエンドスマートフォンらしいハイスペックです。画面表示がきれいですし、画面サイズの小ささを除けば、使い勝手も普段使用している「Pixel 7 Pro」と変わりません。
付け加えるならば、顔認証に加えて電源ボタンでの指紋認証に対応しているのがイイですね。認証スピードも速く、指を添えるだけで端末を解除できるのは、めちゃくちゃ楽です。
さあ、次はいよいよ端末を開いてみましょう。ここからが「Pixel Fold」の腕の見せどころですね。他社製のスマートフォンと同様に、ヒンジ機構を採用しており、結構がっしりと閉じられているため、片手では開くのが難しいです。片手で開こうとすると、端末を落としそうになりますし、両手で開くのがベターだと思います。
「Pixel Fold」のヒンジ部
ヒンジは動きが結構固いので、片手で開くのは難しいです
端末を開くと、7.6インチの有機ELディスプレイがお目見え。曲がる材質のため傷には弱いとのことで、砂や粉末の付着に気をつける必要があります。みなさんが気になる折り目は、若干ですがあります。ただし、他社製スマートフォンと比べて目立つというわけではありません。正直なところ、使っていて折り目が気になったことはありませんでした。
端末を開くと、UIが大画面仕様に切り替わります
この写真だと折り目の見え方が伝わるでしょうか。折り目に光が反射したりすると、より目立つ感じです
端末を開いたことで、閉じたときよりも薄くなるため、持ちやすさは良好。これなら片手で持っていても問題なし。7.6インチの有機ELディスプレイは、解像度が2208×1840、リフレッシュレート最大120Hz駆動、HDR対応、ピーク輝度1450nitと、こちらもハイエンドスマートフォンらしいスペックですね。
7.6インチの大きな画面では、アプリの操作などが圧倒的に行いやすいです。「Google Chrome」や「YouTube」、「Microsoft Word」など、Googleやマイクロソフトが提供するアプリは大画面に最適化されているのでタブレットライクな使い方ができますし、サードパーティー製のアプリも「Netflix」「TikTok」「Spotify」など著名なものは、最適化されており、閉じたときと比べて使い勝手はめちゃくちゃ高いです。
「Gメール」は左に一覧、右に選んだメールの本文が表示されて見やすいです
「Google Chrome」は、基本的にPC版のWebページが表示されますが、Webサイトによってはスマホ版が表示されたりしました
「Googleマップ」
「TikTok」は左に動画、右にコメントを表示
「YouTube」など最適化されているアプリはめちゃくちゃ見やすいです
最適化されていないアプリ、たとえば「Twitter」は画面中央に表示されて、左右に結構太めの黒帯が表示されます。こういったところは、早く対応してほしいところです。
最適化されていないアプリは左右になかなか幅広い黒帯が表示されます。ちょっともったいないですね
個人的には、「YouTube」と「Netflix」のヘビーユーザーなので、タブレットがなくとも動画を大きな画面で見られるのはうれしかったです。ただ、アスペクト比の問題ですごく大きな黒帯が表示されるのが気になりました。特に、シネスコサイズの映画を見ると、「大画面とは?」と思っちゃいました。
「YouTube」の動画を全画面表示したところ
シネスコサイズの映画を表示すると、画面の半分くらいが黒帯になっちゃいます。仕方ないんですが、大画面のよさを感じるのは難しいです
「Googleフォト」も写真が大きく見やすいです
ゲームに関しては、「原神」しか試せませんでしたが、こちらは最適化されているようで、ディスプレイいっぱいにゲーム画面が表示されます。普通のスマートフォンと比べると、左右の表示が少し狭いものの黒帯が表示されないため、没入感は高いですね。
「原神」は全画面表示に対応。本体が薄くて持ちやすいため、操作しやすかったです
大画面を2分割してマルチタスクが行えるのも、折りたたみスマートフォンの特徴です。個人的には、これが思った以上に快適でした。これは、折りたたみスマートフォンでしか味わえない利便性と効率性ですね。
個人的に気に入ったマルチタスクを何点かあげると、「LINE」&「Gメール」と「Googleフォト」の組み合わせはめちゃくちゃいいです。左側に「LINE」を開いて、右側の「Googleフォト」から写真をドラッグ&ドロップするだけで「LINE」で写真を共有できます。同じことが「Gメール」でも可能です。
右の「Googleフォト」から左の「LINE」のトーク画面に写真をドラッグ&ドロップするだけで写真が共有されるのが本当に便利でした
あとは、「Google Chrome」で調べモノをしつつ、もうひとつの画面で調べたことを実行するような使い方も便利。たとえば、「Google Chrome」でスマホの設定方法を調べつつ、もうひとつの画面で設定を開いておき、やり方を確認しながらそのまま設定していくといった使い方です。コピペをしたいときとかも、アプリを切り替えないでいいので楽ちんです。
「Google Chrome」を見ながら設定画面を操作するのも便利。いろんな使い方ができますね
普通のスマートフォンでもマルチタスクはできますが、表示領域が小さいため、あんまりやる気が起きなかったんですよね。それが「Pixel Fold」だと画面が大きいため、ガンガンやれちゃいます。むちゃくちゃ便利ですし、作業効率も劇的にアップします。
また、折りたたみ機構を生かして、普通のスマートフォンではありえない使い方ができるのも「Pixel Fold」の特徴です。本体を開いた状態でアウトカメラを使ってセルフィーを撮ると、外側のディスプレイでプレビューを確認できるうえに、メインカメラを使った高画質な写真が撮れます。
プレビューを見ながらメインカメラでセルフィーが撮影可能
左が外側のディスプレイに搭載されているフロントカメラ、右が背面の広角カメラで撮影したセルフィー。やっぱり右の写真のほうがキレイです
写真撮影では、本体を少しだけ閉じた状態で卓上に設置して、三脚いらずのセルフィーも撮影可能です。動画鑑賞もこの状態で行えるため、わざわざスタンドを用意する必要がありません。
わざわざ手で持ったり、三脚を使ったりしなくてもセルフィーが撮れます
背面のカメラで撮影するときも、折りたたみ機構を生かしてしっかりと固定できます
こんな感じで「YouTube」を見るのも快適です
最後は「Pixel Fold」のカメラをレビューして終わりましょう。本機は、背面に4800万画素の広角カメラ、1080万画素の広角カメラと望遠カメラ(光学5倍ズーム対応)、前面に950万画素のフロントカメラを搭載します。
左から超広角、広角、望遠カメラと並びます
折りたたみスマートフォンのカメラは、構造上の理由から一般的なハイエンドスマートフォンよりもスペックが低くなりがちなのですが、「Pixel Fold」も同様です。広角カメラを見ると、「Pixel Fold」と「Pixel 7 Pro」では有効画素数こそ変わらないものの、センサーサイズが異なります。「Pixel Fold」は1/2インチ、「Pixel 7 Pro」は1/1.31インチで、スペック上では「Pixel 7 Pro」のほうが高画質な写真が撮れます。
「Pixel Fold」の広角カメラ作例
「Pixel Fold」と「Pixel 7 Pro」の2機種で撮り比べをしてみましたが、両者で圧倒的な差が出たということはありませんでした。ただし、写真をズームしたり、大きなディスプレイなどで見たりすると、「Pixel Fold」のほうが画質が若干粗いです。
また、屋外ではあまり感じませんでしたが、室内だと「Pixel 7 Pro」のほうが明るく、色味なども自然です。「Pixel Fold」はAIの処理が若干ですが強く出ているように見えます。ハイエンドスマートフォンとしてはいいものの、写真がキレイで有名な「Pixel」シリーズで最も高価なスマートフォンとして見ると、物足りないと感じる人もいるでしょう。
「Pixel Fold」
「Pixel 7 Pro」
「Pixel Fold」
「Pixel 7 Pro」
「Pixel Fold」
「Pixel 7 Pro」
「Pixel Fold」
「Pixel 7 Pro」
「Pixel Fold」
「Pixel 7 Pro」
「Pixel Fold」のカメラでよかったのは望遠カメラですね。ペリスコープ方式のカメラユニットを搭載しているため、光学5倍ズームが利用可能。5倍ズームまでなら、かなりキレイに撮れます。
等倍(広角カメラ)
光学3倍ズーム(望遠カメラ)
光学5倍ズーム(望遠カメラ)
「Pixel Fold」は約25万円と、Androidスマートフォンのなかでもかなり高額なスマートフォンです。ただし、普通のスマートフォンでは絶対に体験できない新しい使い方や、作業効率が劇的にアップすることに魅力を見いだせるなら、買って後悔することはないと思います。
特に、マルチタスクの行いやすさは、一度体験してしまうと元に戻るのは難しいでしょう。筆者は、普通のスマートフォンに戻ると「これが折りたたみスマートフォンだったらもっとサクサク使えるのに」と思っちゃいました。普通のスマートフォンだと物足りなさを感じてしまうんですよね。ああ、何てものをレビューしてしまったんだ。
ただし、カメラにこだわる人はじっくりと考えたほうがいいです。約25万円も出すのだからカメラも他社製スマートフォンの追随を許さない圧倒的性能を求めたい。こういった人は実際に量販店などで実機を触って試してください。「これくらいならいいか」と感じるか、それとも「これは自分の求めるものじゃない」と感じるかは人によって違うと思います。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。