スマホとおカネの気になるハナシ

規制緩和でスマホは安くなるのか? メモリー高騰の直撃は必至、2026年の「買い時」を分析

スマートフォンやモバイル通信、そしてお金にまつわる話題を解説する「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回は、2026年におけるスマートフォンの値下げ要因と値上げ要因を解説しよう。携帯大手に課せられていた割引き規制が緩和される可能性があるが、メモリー高騰などもあり情勢は混沌としている。

携帯大手に課されたスマホの割引き規制が緩和されるかもしれない。しかし事情はそう簡単でもないようだ

携帯大手に課されたスマホの割引き規制が緩和されるかもしれない。しかし事情はそう簡単でもないようだ

人気・注目スマホの値上げに泣いた2025年

2025年も止まることがなかったスマートフォンの価格高騰。とりわけそれを象徴していたのが、アップルの「iPhone 16e」やグーグルの「Pixel 9a」といった低価格モデルだろう。いずれも人気ブランドのスマートフォンだけに、低価格での販売が期待されたのだが、iPhone 16eは限りなく10万円に近い価格、「Pixel 9a」も前機種「Pixel 8a」より値上げされほぼ8万円と、いずれも期待外れの値段の高さに消費者から落胆の声が上がった。趣味性を求められにくい低価格モデルでの値上げは受け入れにくいのが現実ではないだろうか。

2025年の「Pixel」シリーズ低価格モデル「Pixel 9a」だが、前機種からさらに値上げがなされ、ほぼ8万円という直販価格は、かつての高コスパなイメージからは遠い

2025年の「Pixel」シリーズ低価格モデル「Pixel 9a」だが、前機種からさらに値上げがなされ、ほぼ8万円という直販価格は、かつての高コスパなイメージからは遠い

では2026年、スマートフォンはもっと値上がりしてしまうのか。現在の価格高騰を招いている要因は大きく2つある。1つは円安、そしてもう1つは、政府によるスマートフォンの値引き規制により、高額になったスマートフォンを大幅に値引いて販売できなくなったことだ。実はここ最近、後者の値引き規制に見直しの動きが出てきている。

総務省が「値引き規制」緩和の議論を開始

それを示すのが、総務省が2025年12月12日から実施している新しい有識者会議「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」である。これは現在のスマートフォン値引き規制のベースとなっている、2019年に改正された電気通信事業法のあり方を見直すべく実施されたものだ。

現在の規制がなされた背景には、大手3社が築いた商習慣が、競争を停滞させ大手3社の寡占と通信料金の高止まりを生み、MVNOや楽天モバイルなど新興の携帯電話会社に不利な状況をもたらす元凶であると総務省が問題視したことにある。具体的には、スマートフォンと通信のセット販売・契約を前提に、実質1円などの過度な値引きをして顧客を獲得する手法や、長期間の契約を結んで通信料を割り引く代わりに、途中解約すると高額な違約金が請求される「2年縛り」などだ。

総務省「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」第1回会合資料より。総務省は携帯大手が築いたスマートフォンの大幅値引きや、契約の縛りといった商習慣を問題視し、2019年の電気通信事業法改正以降厳しく規制してきた

総務省「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」第1回会合資料より。総務省は携帯大手が築いたスマートフォンの大幅値引きや、契約の縛りといった商習慣を問題視し、2019年の電気通信事業法改正以降厳しく規制してきた

そこで、先の法改正でそれらの手法に規制を加えた訳だが、それからすでにおよそ6年が経過しており、携帯電話市場も大きく変化している。具体的には、2020年から2021年にかけて菅義偉元首相による政治主導での料金引き下げや、2022年以降の円安によるスマートフォンの価格高騰、そして最近では、2025年末に楽天モバイルの全契約数が1000万を突破したことなどがあげられるだろう。

法改正以降競争環境は大きく変化しており、2025年末には楽天モバイルが全契約数1000万を突破し大手3社による寡占にやや変化も出てきている

法改正以降競争環境は大きく変化しており、2025年末には楽天モバイルが全契約数1000万を突破し大手3社による寡占にやや変化も出てきている

そこで先の有識者会議では、年数の経過によって改正電気通信事業法が目指してきた「事業者間の適正な競争環境の実現」「利用者が自らのニーズに沿った通信サービスを合理的に選択」「利用者間の不公平」「通信料高止まりの解消」といった目的が解消できているのであれば、規制を必要最小限に抑えるべき、という方針の下で議論が始まっている

総務省「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」第1回会合資料より(以下同様)。改正電気通信事業法が目指していた4つの目的を達成しているかを検証し、規制を最小限にすべきかどうかを検討するのが、この会議の目的となっている

総務省「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」第1回会合資料より(以下同様)。改正電気通信事業法が目指していた4つの目的を達成しているかを検証し、規制を最小限にすべきかどうかを検討するのが、この会議の目的となっている

政策で先行する韓国は「規制廃止」でも値引きは復活せず

しかしなぜ、これまでスマートフォンの値引きを厳しく規制することに全力を注いできた総務省が、現在のタイミングでそれを見直そうとしているのだろうか? それはやはりスマートフォンの価格が非常に高騰していることが大きいだろう。それを示しているのが、韓国の動向である。

実は韓国でも日本と似たような市場環境にあり、かつてはスマートフォンの値引き競争が激化していた。しかし、国がそれを問題視して2014年に法律で値引きを規制している。だが法律の制定後、本来の目的だった違法な補助金の排除という目的が達成できなかった。いっぽう、スマートフォンの高機能化による価格高騰でスマートフォンの価格が高止まりし、消費者に与えるデメリットのほうが大きくなった。そうしたいきさつで25年にはその法律を廃止しているのだ。

日本より先にスマートフォンの値引き規制をしていた韓国だが、補助金規制という目的を達成できないいっぽうで、スマートフォンの価格が高止まりするなどデメリットが目立ってきたことを受け、法の廃止へといたっている

日本より先にスマートフォンの値引き規制をしていた韓国だが、補助金規制という目的を達成できないいっぽうで、スマートフォンの価格が高止まりするなどデメリットが目立ってきたことを受け、法の廃止へといたっている

日本でも、昨今の円安によるスマートフォンの価格高騰が、買い替え需要の停滞など消費者に不利益をもたらすようになってきたことが、法律の見直し議論に大きく影響したのではないかと考えられる。結果として、議論の内容次第で、スマートフォンの大幅値引きが復活する、あるいは現在より緩和される可能性が出てきたことは確かだ。

焦点は解約のしやすさを逆手に取った「ホッピング」対策

ただ日本の場合、先の電気通信事業法改正によってスマートフォンの値引きだけでなく、顧客の契約を縛ることも規制されたことで解約が非常にしやすくなり、「ホッピング」行為が横行するという別の問題も生み出している。これは携帯電話会社が、他社から契約を乗り換えるユーザーに対して提供している、スマートフォンの値引きやキャッシュバックなどの獲得を目的として、携帯電話会社の乗り換えを短期間で繰り返す行為のことを指す。

契約の縛りを規制したことでホッピング行為が横行しており、値引き規制緩和とホッピングの防止を両立できるかが議論の大きなテーマのひとつとなりそうだ

契約の縛りを規制したことでホッピング行為が横行しており、値引き規制緩和とホッピングの防止を両立できるかが議論の大きなテーマのひとつとなりそうだ

そして解約がしやすい環境が残ったままで、スマートフォンの値引き規制を緩和すればホッピング行為をより助長することになりかねない。それだけに、規制緩和と並行してホッピング対策をいかに進めるかが、今後の議論でも大きな課題となってくるだろう。

携帯大手に大幅割引きの余裕はない?

では、値引き規制の緩和で消費者がスマートフォンを再び安く購入できるようになるのかというと、必ずしも楽観はできない。実際韓国でも、法律の廃止でスマートフォン値引きの規制がなくなったものの、携帯電話会社の側に多額の補助金を出す余裕がなくなってしまったため、値引きは激化していないという。

端末購入補助の法規制がなくなった韓国だが、投資戦略の変化やトラブルなどによって携帯電話会社のゆとりがなくなり、規制解除後も値引き競争は加速していないとのこと

端末購入補助の法規制がなくなった韓国だが、投資戦略の変化やトラブルなどによって携帯電話会社のゆとりがなくなり、規制解除後も値引き競争は加速していないとのこと

日本でも携帯電話市場がすでに飽和していることを受け、投資をAIや金融など成長が見込める分野にシフトする動きが強まっている。それゆえ仮に規制が緩和されたとしても、スマートフォンの値引きはかつてより小さい額に留まるかもしれない。

2026年は「メモリー高騰」がスマホ価格を直撃する

いっぽうで、ここ最近スマートフォンの価格をさらに上昇させる可能性のある出来事が起きている。それがメモリーの価格高騰だ。AI需要の高まりによってデータセンターに用いるメモリーの需要が急拡大、その数が不足したことで価格が急上昇しており、その影響を受けてかストレージ価格も高騰している。

すでにパソコンではその影響が大きく出てきており、いくつかのメーカーがメモリーやストレージの不足によって2026年にパソコンの価格が大幅に高騰すると宣言する事態となっている。そこで値上げを避けるべく、2025年年末になってパソコンを購入する動きが急拡大しており、一部のメーカーでは注文ができない状況も生じている。

そしてスマートフォンもメモリーやストレージを搭載するコンピューターであり、一連の影響から逃れることはできない。2026年に販売されるスマートフォンの価格は、2025年より高騰する可能性が出てきているのだ。その影響はメーカー全般に及ぶだろう。なかでも影響を受けやすいのが、調達数が少なく価格競争で不利な国内メーカーであり、メモリーなどの価格高騰に限界を迎え、再び撤退の動きが出てくる可能性もある。

また海外メーカーであっても、とりわけ価格が重視される低価格モデルは影響を大きく受けやすいと考えられる。価格維持のため従来よりメモリーやストレージを減らした機種も出てくる可能性がありそうだ。

それに加えて円安が進むようであれば、価格がよりいっそう高騰する可能性もあるだろう。2026年、値引き規制の緩和で今後スマートフォンの割引が増える可能性は出てきたものの、さらなる価格高騰がそれを帳消しにする可能性も十分あり得る。値上げを見越して早めに買ってしまうか、規制緩和の行方を見守るか、消費者はスマートフォンの購入タイミングに頭を悩ませることになりそうだ。

佐野正弘
Writer
佐野正弘
福島県出身。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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