レビュー

2万円台ながら“使える”高機能スマホ「Redmi 12 5G」レビュー

2023年10月下旬に登場したシャオミのスマートフォン「Redmi 12 5G」。端末価格が2万円台後半(税込、2023年11月16日時点での価格.com最安価格)という低価格ながら、最新のSoCやフルHD+対応のディスプレイを搭載するほか、おサイフケータイにも対応するなど機能性も充実している。エントリースマートフォンのレベルを引き上げる注目製品だ。

2万円台で高い基本性能を実現。エントリースマートフォンの新しい基準になりそうな「Redmi 12 5G」をレビューしよう

2万円台で高い基本性能を実現。エントリースマートフォンの新しい基準になりそうな「Redmi 12 5G」をレビューしよう

久しぶりに現れたエントリースマホの注目機

「Redmi 12 5G」は、通信事業者(auとUQ mobile)が取り扱うほか、いわゆるSIMフリーとして家電量販店やECサイトなどでも発売されているエントリースマートフォンだ。

約76(幅)×169(高さ)×8.2(厚さ)mm/重量約200gのボディに、2460×1080のフルHD+表示に対応した約6.8インチの液晶ディスプレイを組み合わせている。競合するエントリースマートフォンであるシャープ「AQUOS wish3」やソニー「Xperia Ace III」、サムスン「Galaxy A23 5G」は5インチ台のディスプレイなので、本機は格段に大きいことがわかる。

このボディは背面にガラスパネルを使用した高品質なもの。そのうえIP53の飛沫防水・防塵に対応している。さらに、FeliCa搭載でおサイフケータイも利用できるなど機能性も高い。

約6.8インチの大画面を備え重量も200gある、比較的大型の製品だ

約6.8インチの大画面を備え重量も200gある、比較的大型の製品だ

ボディ上面にヘッドホン端子を配置する

ボディ上面にヘッドホン端子を配置する

ボディ下面にはUSB Type-Cポートを配置

ボディ下面にはUSB Type-Cポートを配置

側面の電源ボタンは指紋認証センサーを内蔵している

側面の電源ボタンは指紋認証センサーを内蔵している

このディスプレイは30Hz/48Hz/60Hz/90Hzの可変リフレッシュレートと、240Hzの4倍速タッチサンプリングレートに対応する高性能なもの。そのため、画面スクロールとタッチ操作はスムーズだ。液晶の苦手とする黒の表現も良好で、筆者は最初有機ELディスプレイだと勘違いした。

ただし、HDRには対応しておらず、最大輝度が550nitと低めで、視野角も少し狭いなど、価格相応な点も見られる。サウンド機能は、ヘッドホン端子を備えるがスピーカーはモノラルで、Dolby Atmosにも対応していない。

ディスプレイは30Hz/48Hz/60Hz/90Hzの可変リフレッシュレートに対応。ユーザーは上限を90Hzと60Hzから選べる

ディスプレイは30Hz/48Hz/60Hz/90Hzの可変リフレッシュレートに対応。ユーザーは上限を90Hzと60Hzから選べる

スマートフォンのサイズは好みが分かれる。ただ、文字を読む機会や動画視聴の機会が多いなら本製品くらいの画面サイズはほしいだろう。いっぽうで、携帯性を求めるなら本機はその対極にある。

購入を検討する場合、この大きさはしっかり把握するべき点だ。そのうえで本機を見ると、質感のよいガラス背面のボディや防滴・防塵対応、おサイフケータイなど、見た目も機能もハイレベル。多くの人に受け入れられやすい製品と言えるだろう。

メインカメラは実質シングル。手ぶれが少なく明るく写るが画質はほどほど

メインカメラは約5000万画素の広角カメラ。構図を認識して背景ぼかしやオートフォーカスの補助などに使う深度センサーも搭載している。通常は感度性能を高めるためにピクセルビニングによって1250万画素として撮影を行う。

カメラの機能を見ると、AIを使ったシーン認識や光学式手ブレ補正、位相差オートフォーカスなどはなく、ごくシンプルなものだ。動画撮影機能は1920×1080/30fpsが上限で、4Kやハイフレームレートには対応していない。

背面のカメラ。一見トリプルカメラのようだが、ひとつは深度センサー、もうひとつはLEDフラッシュなので、映像を記録するのは左上の広角カメラのみだ

背面のカメラ。一見トリプルカメラのようだが、ひとつは深度センサー、もうひとつはLEDフラッシュなので、映像を記録するのは左上の広角カメラのみだ

以下に静止画の作例を掲載する。基本的に初期設定のままカメラ任せで撮影を行っているが、HDRを使用する場合などはその旨の断りを入れている。

曇天の空中庭園。えんじ色のコリウスの葉は肉眼の印象よりくすんだ印象。スマートフォンにありがちなキラキラした仕上がりではない

曇天の空中庭園。えんじ色のコリウスの葉は肉眼の印象よりくすんだ印象。スマートフォンにありがちなキラキラした仕上がりではない

明暗差の大きい構図で撮影。HDRをオンにすることで、白飛びしていた窓の外の風景を撮影できた

明暗差の大きい構図で撮影。HDRをオンにすることで、この作例のように白飛びしていた窓の外の風景を撮影できた

自然光の入らない店内で撮影。こちらも総じてくすんだ印象で、シズル感のある飯テロ写真をいつでも手軽に撮れるというわけではなさそうだ

自然光の入らない店内で撮影。こちらも総じてくすんだ印象で、シズル感のある飯テロ写真をいつでも手軽に撮れるというわけではなさそうだ

明るめの夜景を撮影。感度はISO2400に迫っており、全体的に明るくなるもののハイライトは飽和気味で、増感によるノイズも見られる。価格相応の画質だが、暗くて写らないよりはずっと使いやすい

明るめの夜景を撮影。感度はISO2400に迫っており、全体的に明るくなるもののハイライトは飽和気味で、増感によるノイズも見られる。価格相応の画質だが、暗くて写らないよりはずっと使いやすい

本機のカメラは、ホワイトバランスの精度が低く、暗所でのコントラスト低下も目立つので、いささか物足りない印象はある。ただ、夜景撮影でも手ブレは少なく安定した撮影が可能で、操作もシンプルなので使いやすい。過度な期待に応えるものではないが、メモ代わりの撮影やたまにスナップ撮影を行うのならこれで十分満足できるだろう。

5000mAhバッテリー搭載。18WのUSB PDで充電時間は約2時間半

本機の内蔵バッテリーの容量は5000mAh。連続通話時間は約2890分、連続待受時間約790時間だ(いずれもau版の値)。バッテリー持ちに定評のある「AQUOS sense8」は連続通話時間が3950分、連続待受時間約690時間で、これと比較すると見劣りはする。

また、USB PD規格あるいはQuickCharge 3.0/3.5規格を使った18Wの急速充電に対応している。フル充電にかかる時間は最短で約160分だ。製品パッケージに充電器やUSBケーブルが含まれていないが、近ごろは安価で出回っているので、本機と合わせて購入してもよいだろう。

実際のバッテリー持ちだが、初期設定のままの待ち受け状態 では24時間で約10%のペースでバッテリーが消費された。たまにSNSを確認する場合だと24時間で25%前後と消費ペースは急増し、使えば使っただけバッテリーを消費が急増する印象。「AQUOS wish3」や「Xperia Ace III」のようなバッテリー持ちは期待できないが、これは、より快適に使うことを優先し、フルHD+対応の大画面ディスプレイや後述する最新SoCの搭載を優先したことによるものではないだろうか。

最新SoC「Snapdragon 4 Gen 2」を搭載。ストレージも128GBを確保

搭載されるSoCは「Snapdragon 4 Gen 2」。2023年に登場したばかりのエントリー向けSoCだ。これに4GBのメモリーと128GBのストレージを組み合わせている。最大1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードスロットも搭載している。

128GBのストレージの容量が確保されているのでアプリの追加や電子書籍や音楽などのダウンロードを行いやすい。ストレージの一部を仮想メモリー機能に割り当てることも可能だ。OSは、Android 13をもとに操作性や独自機能を加えたMIUI 14。

定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)」のスコアは、412097だった。代表的なミドルレンジ機である「Xperia 10 V」のスコア(457518)と比べると1割ほど劣る結果だが、価格差が倍近いことを考えれば本機のコスパは非常に高いと言える。

基本的な処理性能を示す「CPU」のスコアが10万ポイントを大きく超えているので幅広い用途で性能を発揮できるだろう。そのいっぽうで、グラフィック性能を示すサブスコア「GPU」は49272とあまり高くないので、3Dを使うゲームはあまり得意でない。ゲームでは描画設定を抑えるなどの対策が必要なことが多いかもしれない。

「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)」のスコア。処理性能を示す「CPU」「MEM」「UX」のサブスコアはいずれも10万ポイント以上だが、グラフィック性能を示す「GPU」の値は伸び悩んでいる

「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)」のスコア。処理性能を示す「CPU」「MEM」「UX」のサブスコアはいずれも10万ポイント以上だが、グラフィック性能を示す「GPU」の値は伸び悩んでいる

通信機能に注目しよう。本機は「Redmi 12C」とは異なり5Gに対応している。nanoSIMスロットを1基備えるほか、eSIMにも対応しており、2個をアクティブして電話番号を併用できるデュアルSIM機として利用できる。

5Gの対応周波数帯はn3/n28/n41/n77/n78で、ドコモが運用しているn79に対応していない。そのため同社の5Gネットワークではエリアや通信速度で制約が発生しやすい。なお、4GはB8/B18(B26)/ B19/B28といったプラチナバンドに対応しているため、国内のいずれの通信事業者のネットワークでもエリアに不満を感じることはないだろう。(2023年11月17日訂正:nanoSIMスロットは1基となります。以上訂正しお詫びいたします)

カードスロットは1基のnanoSIMに対応

カードスロットは1基のnanoSIMに対応

しっかり使う人にうれしい充実のエントリースマホ

スマートフォンの値上がりは、本機の属するエントリー機にも及んでいる。価格を維持するために性能を妥協するか、性能を維持するために値上げするかの厳しい選択が求められる。そんななかで、しっかりと使える性能を備えつつ2万円台後半(税込、2023年11月16日時点での価格.com最安価格)という価格の本機は貴重な存在だ。

ゲームは行わずカメラも重視しない、その代わりに調べ物やメール、SNS、動画閲覧などを利用する機会が多いなら「Redmi 12 5G」は現状におけるベストのエントリースマートフォンと言ってよいだろう。

田中 巧(編集部)
Writer / Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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