スポーツ、ビジネス、ヘルスなど、ライフスタイルに合わせたモデルが用意されているガーミンのスマートウォッチ。その中でもランナー向け機能を充実させた「Forerunner」シリーズより、これからランニングを始めたいというエントリーランナー向けのモデル「Forerunner 165」が登場しました。
ガーミン「Forerunner 165」。公式サイトの販売価格は39,800円(税込。以下同)、カラーバリエーションは4色展開。音楽再生可能な「Forerunner 165 Music」は44,800円、2色展開
「Forerunner」シリーズには、競技ランナー向けのトップモデル「Forerunner 965」と、大会参加を目指すようなミドルユーザー向けの「Forerunner 265」の2モデルがラインアップされており、今回レビューする「Forerunner 165」は、待望の初心者ランナー向けモデル。ランニングを楽しむための充実した機能を備えながら、音楽再生非対応モデルの価格は4万円を下回り、シリーズ中で最も価格を抑えた、スマートウォッチデビューに最適な1台となっています。
また、本機は「Forerunner」登場前の初心者向けモデルである「ForeAthlete 55」の機能を継承したアップデート版とも言えます。「ForeAthlete 55」が発売された2021年6月から、約3年が経過しているので、既存ユーザーの買い換え先としても検討したいところです。
「Forerunner 165」には、1.2インチの有機ELディスプレイが採用されています。日中と夜間の屋外で使用しましたが、どちらの場合もディスプレイは表示が高精細で、視認性はまったく問題ありません。
屋外の太陽光の下でも、細かな文字までくっきり視認できます
さらに操作面では、運動しながらの操作でもスムーズに扱えるように、タッチスクリーンと物理ボタンを併用しての操作が可能。運動中のタッチ操作は、誤操作してしまうことがありますし、スマホ操作に慣れた昨今では、ボタンだけではちょっと扱いにくい。タッチとボタン操作の併用ならではの、絶妙な操作性のよさがありますね。
有機ELディスプレイは、中級ランナー向けモデルの「Forerunner 265」に比べて0.1インチだけ小さい1.2インチ。重量も39g(ベルトを含む)とかなり軽量な設計です。個人的には、大きいサイズが好みではありますが、有機ELディスプレイが鮮やかなので、数値も見やすく、サイズの小ささを補って勝る操作性が魅力的です。
1.2インチのディスプレイは、少し小さめですが、タッチ操作によって扱いやすさは優秀です
ディスプレイの解像度は390×390。細かな漢字もくっきりと表示
一般的に、スマートウォッチのサイズが小さくなると、バッテリー駆動時間も短くなる傾向にありますが、スペックシートの両機種の駆動時間(公称値)は以下のとおり。サイズがひと回りほど大きい「Forerunner 265」と比べてもほぼ遜色ない駆動時間となっています。
・「Forerunner 165」
GPSモード:約19時間、スマートウォッチモード:約11日間
・「Forerunner 265」
GPSモード:約20時間、スマートウォッチモード:約13日間
ご覧のとおり、位置情報を起動するGPSモードで1時間の差、GPSを使用しないスマートウォッチモードで2日間程度の差にとどまっており、一般的な使用においては、気にならないレベルでしょう。
テストとして、心拍数の計測などのデータ取得を約24時間行いつつ、その間に1時間程度のランニングをしてみたところ、バッテリーは約90%残っている状態でした。もしフルマラソンに出場したとしても、一般的に6時間程度の計測時間があればよいので、レース参加を視野にいれても問題なく使用できるでしょう。
ランナー向けモデルということで、やはり気になるのは運動をサポートする機能の充実度です。そこで、中級ランナー向けモデル「Forerunner 265」と比較しながら、「Forerunner 165」に搭載されていない主要な2つの機能をチェックしてみましょう。
1つ目は、通常のGPSよりも高精度な位置情報の測定が可能となる「GNSSマルチバンド」に対応していない点です。ビルに囲まれた場所や山間部などでは、位置情報の精度や測位の速度は落ちます。とは言っても、GPS/GLONASS/Galileo/みちびきという4つの衛星から受信できる「マルチGNSS」に対応しており、頻繁にGPSの入りにくい場所で走らない限り、大きな問題ではないでしょう。レビューでは、開けた場所でランニングを測定しましたが、GPSの測位はスムーズで精度も上々でした。
2つ目は、体の状態を測定し、トレーニングを行える準備が整っているかを、0〜100のスコアで表示する「トレーニングレディネス」です。合わせて、運動後のパフォーマンスの変化が反映される「トレーニングステータス」や、適切なトレーニング負荷の範囲から運動メニューの改善を計画できる「トレーニング負荷」など、アスリート向けの専門的なデータは取得できません。しかし、正直なところ、初心者ランナーにとっては、必ずしも必要な機能ではないと思います。
上記の機能がなくても、「Forerunner 165」には、心拍数やリカバリーに必要な時間を確認できるなど、初心者ランナーをサポートするには十分な機能が備わっています。
ここからは毎日の運動を日課としている筆者が、「Forerunner 165」に搭載された、毎日のランニングがもっと楽しくなる魅力的な機能をピックアップして紹介します。
ガーミンのスマートウォッチと言えば、トレーニング同様に「休養」に関しての機能が、充実している点も大きな特徴です。睡眠の質、運動からの回復時間、身体の状態を充電にたとえて数値化した「ボディバッテリー」など、休養に関しての機能がたっぷり搭載されています。
自分の身体をバッテリーに見立てて数値化する機能「ボディバッテリー」は、ガーミンのスマートウォッチで特に注目したいくらい便利な機能。それが「Forerunner 165」にも搭載されているのは、実にうれしいポイントです。起床時に数値が最も高く、日中の運動やストレスが加わることで数値が減っていきます。睡眠の質の改善や日中のストレスの軽減など、自分の健康状態をまとめて管理するには、最適な指標です。
「ボディバッテリー」をアプリ「Garmin Connect」で確認すると、そのときの身体の状態に関する詳細なデータが取得できます
そして、「ボディバッテリー」など健康管理の数値をまとめて起床時に通知してくれるのが「モーニングレポート」です。睡眠の質や「ボディバッテリー」、回復までの時間などに加えて、これらの数値から導き出された「おすすめのワークアウト」などが毎朝表示されることで、1日の行動の指針となってくれます。これら機能は、運動を継続するためのモチベーションづくりにも一役買ってくれるでしょう。
上位モデルの「Forerunner 265」に比べると、対応するスポーツが少なくなっているものの、ランニングだけでも、屋外ラン、トラックラン、トレッドミル、トレイルランなど7種類ものスタイルに対応。さらに、筋トレやヨガといった屋内アクティビティも含む多くのスポーツのログが計測できます。
走ったルートが記録されるほか、上下動やランニングパワーの計測といった、詳細なランニングデータを収集できる
「Forerunner 165」は、トップモデルに比べると使える機能は制限されているものの、日々のランニングや、マラソン大会に出場するといった使用には十分な機能が搭載されています。価格が抑えられている点と、39gという軽さは、初めてランニング用のスマートウォッチを導入したい初心者ランナーはもちろんですが、「軽くて最低限の機能があればよい」というベテランランナーにとっても、最適なモデルとしておすすめできます。