Googleの「Pixel a」シリーズは同社のスマートフォン「Pixel」の廉価版シリーズ。「a」が付かない製品と比べて手ごろな価格で提供されています。しかし、Googleの「Pixel a」シリーズに対する“さじ加減”は非常に絶妙。機種名を確認しなければ下位モデルとは気づかないくらいの高い性能とすぐれた使い勝手を実現しています。
とはいえ、コストダウンのために、各種機能を削っていることも確か。そこで今回は、「Pixel 8a」と、上位モデルの「Pixel 8」を比較して、どのような人がどちらを購入すべきか、実機レビューを通じて解説いたします。
左が「Pixel 8a」(Aloe)、右が「Pixel 8」(Hazel)
まずはおさらいとして、「Pixel 8a」のスペックから解説します。「Pixel 8a」はOSに「Android 14」、プロセッサーにGoogle独自開発のSoC「Google Tensor G3」を採用。メモリーは8GB、ストレージは128GB/256GB(UFS 3.1)を搭載します。
ディスプレイは6.1インチの有機ELディスプレイ(2400×1080、430ppi、20:9、最大輝度1400nit[HDR]、2000nit[ピーク輝度]、24bitフルカラー、1,000,000:1、HDR対応、60〜120Hz、Corning Gorilla Glass 3)を搭載。サウンド機能は、ステレオスピーカー、マイク×2、ノイズキャンセレーションを装備しています。
カメラは、リアに6400万画素 Quad PD広角カメラ(F1.89、光学式手ブレ補正、画角80度、センサーサイズ1/1.73インチ)、1300万画素ウルトラワイドカメラ(F2.2、画角120度、レンズ補正)、フロントに1300万画素のカメラ(F2.2、固定フォーカス、画角96.5度、)を装備。フロントカメラはパンチホール仕様です。
通信機能は5G、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3、NFCに対応。接続端子はUSB 3.2 Type-Cポートを搭載。3.5mmイヤホンジャックは装備されていません。
本体サイズは72.7(幅)×152.1(高さ)×8.9(厚さ)mm、重量は188g。標準4492mAh、最小4404mAhのバッテリーを内蔵しており、バッテリー駆動時間は 24 時間以上、最大 72 時間使用可能と謳われています。
「Pixel 8a」と「Pixel 8」の主な差分は下記のとおり。SoCのグレード、カメラの構成・画素数などには大きな違いはありません。それでいて価格は、「Pixel 8a」が72,600円(公式サイト販売価格。税込。以下同)、「Pixel 8」が112,900円から。「Pixel 8a」のコストパフォーマンスの高さが際立っていますね。
ディスプレイは「Pixel 8a」が6.1インチの有機EL(左)、「Pixel 8」が6.2インチの有機EL(右)。画面は「Pixel 8a」のほうがわずかに小さいですが、ベゼルが太いため、幅と高さは少し大きいです
「Pixel 8a」はAloe、Bay、Porcelain、Obisidianの4色
「Pixel 8」はObisidian、Hazel、Mint、Roseの4色
背面のカメラは、「Pixel 8a」のほうが小ぶり
カメラ部の厚みは「Pixel 8a」が実測10.2mm、「Pixel 8」が実測12mm。「Pixel 8」のほうがカメラ部は大きくなっていますね
どちらのモデルも両側面は丸みを帯びており、サイズよりコンパクトに感じられます
「Pixel 8a」の公式ケースはシンプルなTPU製ですが、「Pixel 8」のケースは裏地が貼られています
「Pixel 8a」は「Pixel 8」と同様に、Googleが自社開発した最新プロセッサー「Google Tensor G3」を搭載。ベンチマーク「AnTuTu Benchmark V10.2.5」を実行したところ、総合スコアは「Pixel 8a」が1077505、Pixel 8が1081706となりました。わずかに「Pixel 8」のスコアのほうが高かったですが、その差は4201。誤差範囲と言えるでしょう。
ちなみに、記事執筆時点の「AnTuTu Benchmark」のランキング1位は「Snapdragon 8 Gen 3」を搭載する「ROG Phone 8 Pro」で、総合スコアは2120210。「Pixel 8a」のスコアはその約51%相当ということになります。もちろんベンチマークスコアがそのまま端末の体感速度として現れるわけではないので、この差はあくまでも参考に留めてください。
なお、「AnTuTu Benchmark」実行中の背面の最大温度をサーモグラフィーカメラで計測したところ、「Pixel 8a」が36.4度、Pixel 8が37.2度となりました。また最大温度となった場所も「Pixel 8a」が背面カメラ部の下、Pixel 8が背面カメラ横と異なっています。
「AnTuTu Benchmark」のスコア結果を見てみると、ベンチマーク開始時の温度は「Pixel 8」のほうが高いですが、温度の上昇は「Pixel 8」のほうが小幅です。「Pixel 8」の背面の最大温度が高いのは、効率的に内部の熱を放出できている証しと言えるかもしれません。
「AnTuTu Benchmark」の総合スコア結果。左が「Pixel 8a」、右が「Pixel 8」
「AnTuTu Benchmark」実行中の背面の最大温度は「Pixel 8a」が36.4度、「Pixel 8」が37.2度
カメラ画質を比較するため「Pixel 8a」と「Pixel 8」で同じ条件で撮影してみました。0.5倍、1倍、2倍では画角や、微妙な発色の違いはありますが、総合的な画質ではほとんど差はありません。ただ超解像ズームの8倍で撮影すると、「Pixel 8」のほうが明らかに精細感は上ですね。
もうひとつの大きな違いは最短撮影距離。「Pixel 8」はオートフォーカス機能付きのウルトラワイドカメラが搭載されており、被写体との距離が近くなると自動的にマクロフォーカスモードに切り替わります。
いっぽう、「Pixel 8a」は至近距離では「被写体から離れてください」という警告メッセージが表示されるだけ。カメラの使い勝手としてはマクロフォーカスモードの有無が最も大きな違いと言えます。
「Pixel 8a」(上)、「Pixel 8」(下)
「Pixel 8a」(上)、「Pixel 8」(下)で撮影
「Pixel 8a」(上)、「Pixel 8」(下)で撮影。2倍ズーム
「Pixel 8a」(上)、「Pixel 8」(下)。超解像8倍ズーム
「Pixel 8a」(上)、「Pixel 8」(下)で撮影
「Pixel 8a」(上)、「Pixel 8」(下)で撮影
「Pixel 8a」(上)、「Pixel 8」(下)で撮影。接写になると、「Pixel 8a」はマクロフォーカスモードがないためピントが合いません
なお広角カメラのイメージセンサーは「Pixel 8a」が1/1.73インチ、「Pixel 8」が1/1.31インチと後者のほうが大きく、感度の点でも有利です。今回夜景モードで撮影した写真を比較してみたところ、「Pixel 8a」の作例では強い光源の回りに白いモヤのようなものが発生していました。とはいえ、大きな違いとは言えなさそうです。NPUなども活用したデジタル画像処理技術「コンピュテーショナルフォトグラフィ」で両者の差は縮まっていますが、極限の環境では差が生じる可能性があります。
「Pixel 8a」(上)、「Pixel 8」(下)で撮影
冒頭で解説したとおり、「Pixel 8a」と「Pixel 8」には多くの差別化ポイントがあります。今回記事で触れた以外にも、「Pixel 8」にはほかのデバイスをワイヤレス充電できる「バッテリーシェア」機能が用意されていたり、防水防塵性能がIP68と高く設定されているなどの違いがあります。ただし、これらは運用方法で無理なくカバーできる程度の違いです。
超解像8倍ズーム時の画質、マクロフォーカス、IP68の防水防塵性能、バッテリーシェア機能のいずれかが必須なのであれば「Pixel 8」を選びましょう。しかし、これらを特に重視しないのであれば、約4万円も安価な「Pixel 8a」のほうが、コストパフォーマンスにすぐれ、価格以上の満足感を得られる1台と言えます。