値上げが続く社会状況の中で、一貫して高コスパ路線を崩さないシャオミ。今回レビューする「Xiaomi Watch S3」は、2万円を切る18,980円(税込。2024年5月14日時点の価格.com最安価格)という価格ながらも、スマートウォッチの基本機能をしっかりと抑えつつ、独自要素の着せ替えベゼルを盛り込んだモデルです。
2万円以下の製品には見えないラグジュアリーな雰囲気の「Xiaomi Watch S3」
「Xiaomi Watch S3」は、2万円を切る価格ながらも、同社のスマートウォッチではハイグレードな部類に入ります。
この価格帯のスマートウォッチは、スクエア型で樹脂製のケースが多いのですが、本機は丸形の腕時計タイプで、アルミ合金製のケース、ステンレススチール製のベゼルを採用。メタルによる高級感と頑丈さをあわせ持っています。
「Xiaomi Watch S3」は同価格帯で珍しい腕時計タイプのスマートウォッチ
ディスプレイは1.43インチの有機ELディスプレイで、鮮やかな画面表示と見やすい大きな画面を両立。その反面、重量が44gあるため、軽い着け心地とはいきません。これはメタル製ボディとのトレードオフになります。
「Xiaomi Watch S3」の面白いのは、ベゼルとストラップが交換式になっている点。一般的なスマートウォッチでもストラップは交換可能なものがほとんどですが、ベゼルまで交換できるのは珍しいです。
標準で同梱されているのは、ケース(試用したのはブラック)に合わせたカラーのベゼルと、フッ素ゴム製のストラップです。それとは別に、深みのある青色の「オーシャンブルー」、ブラックとグリーンのコントラストが映える「デュアルトーンセラミック」、ビビッドな黄色がオシャレな「クロムイエロー」、雲の模様に虹のようなカラフルな数字があしらわれた「レインボー」の4種類の組み合わせが別売りで用意されています。
左から「オーシャンブルー」「デュアルトーンセラミック」「デュアルトーンセラミック」「クロムイエロー」「レインボー」。一番右は「シルバー」です
ベゼル&ストラップの価格はカラーによって異なり、「オーシャンブルー」が7,960円(税込。シャオミ公式サイト販売価格。以下同)、「デュアルトーンセラミック」「クロムイエロー」「レインボー」が12,960円。ただし、記事執筆時(2024年5月14日)は、シャオミ公式サイトにて50%オフで販売されていました。
今回のレビューでは「レインボー」に着せ替え。まず、フッ素ゴムストラップからレザーバンドに付け替えるだけでも、本体の雰囲気がガラッと変わります。フォーマルなビジネスシーンでも対応できそうな感じです。
「レインボー」のストラップとベゼル。ストラップはレザーで上質な手触り
ストラップを交換するだけでも雰囲気がまったく違うものに
ここにベゼルを合わせると、レインボーの数字がアクセントとなって、ぐっとオシャレ感が増しますね。
ベゼルまで付け替えると、同じ製品には見えません
本体カラーに合わせたウォッチフェイスが多数用意されているので、組み合わせは無限大と言えます。そもそものデザインがシンプルなので、そこをベースに交換用ベゼル&ストラップで気分を変えられる感じです。これを駆使すれば、長い間使っても飽きが来にくいと思われます。
シャオミは本製品との発表と同時に、新しいOS「HyperOS」をリリース。スマートフォン、タブレットだけではなく、スマートウォッチなどのIoT製品にも「HyperOS」を搭載することで、同社製の製品での連携などがスムーズに行えることが期待されています。
今回はシャオミ製のスマートフォンやタブレットと一緒に試していないためわかりませんが、「HyperOS」自体の操作性は良好です。チップが何なのかはわからないものの、スワイプ時の操作はヌルヌルで非常にスムーズ。タッチ操作に加えて、本体右側にある2個の物理ボタンでも操作可能です。
本体右側には楕円形の物理ボタンを搭載
2個のボタンは、ひとつがアプリ一覧の表示と戻るボタンを兼ね、もうひとつがよく使うアプリを登録しておけば一発で起動できるクイックアクセスボタンになっています。タッチ操作と2個の物理ボタンのおかげで、操作感も良好です。
また、好みのウィジェットを配置させる機能も使いやすい。よく確認するデータや機能などをウィジェットで配置させれば、画面を左右にスワイプするだけですぐにアクセス可能です。このあたりも「HyperOS」の使い勝手の高さを表すポイントでしょう。
画面を左右にスワイプすると設定したガジェットを表示。よく使う機能などに素早くアクセスできます
また、激しい衝撃をともなう転倒をした際に、あらかじめ登録した電話番号に発信してくれる「SOS機能」を搭載しているのも、この価格帯では割と珍しい部類だと思います。スマートウォッチ本体でBluetooth通話が使えるので、「SOS機能」と合わせれば、電話発信から通話までスマートフォンを取り出さずとも行えます。
後ほど触れますが、本機はスキーやスノーボードなどウィンタースポーツのアクティビティにも対応しているため、危険をともなうスポーツを行う人には便利な機能でしょう。
睡眠モニタリングは一般的なスマートウォッチと変わらないレベルですが、7日間連続してログを取ると、そのパターンから分析した睡眠タイプを教えてくれる機能が面白いですね。ほとんど眠らない「サメ」、健康的な睡眠の「ヒグマ」など全部で6種類の動物で示してくれます。
睡眠モニタリングの結果
バッテリー持続時間は標準使用で約15日間。レビューでは、心拍数計測を常時オンにして24時間使用。その間に、約1時間の屋外ランニング(GPSオン)を行いました。その結果、24時間でバッテリーは約20%減少。めちゃくちゃ電池持ちがいいわけではありません。
ただし、5分で15%充電できる急速充電に対応しているため、これを組み合わせればバッテリーの心配はそこまでしなくてよさそう。1点残念だったのは、ワイヤレス充電に対応していない点です。ここは購入時に気をつけてください。
ワイヤレス充電に対応していない点には注意
「Xiaomi Watch S3」は、BeiDou、GPS、GLONASS、Galileo、QZSSの5つの主要な衛星から位置情報を取得します。加えて、L1周波数帯とL5周波数帯のデュアルバンドに対応しており、高精度で高速の位置情報取得が行えます。
今回は屋外ランニングで位置情報、ランニングデータの種類を確認してみました。なお、「Xiaomi Watch S3」は、前述のウィンタースポーツを含めた150種類のワークアウトに対応しています。
屋外ランニングの計測を開始してから数秒で位置情報が取得されました。このスピード感は、3万円以上する他社製のスマートウォッチと同レベルです。位置情報の精度に関してもまったく問題はありません。ランニングのデータに関しても、心拍数や1kmごとのペース、ケイデンスなどの基本データに加えて、ルートの高低差まで示してくれます。
約1時間のランニングの計測データ
スポーツをするのに約44gのボディは重いかなと思っていましたが、実際には思っていたほど手首がしんどいといったことは感じなかったです。むしろ、大きな画面により数値が見やすいことのほうがメリットだと思います。
日中でも画面は明るく、データも大きく表示されているので見やすいです
「Xiaomi Watch S3」は、他社製の3万円越えモデルと同等の機能を搭載しつつも、2万円を切る価格がすばらしく、不満はほぼない完成度の高さです。
ただし、個人的にはトレードオフの点として受け入れられた、重量の部分は気になる人もいるはず。そこは実際に着用して確認してください。
スマートウォッチは、多くの製品で同様の機能を採用するなど、機能性において頭打ち感がぬぐえません。そんな中でベゼルの着せ替えで差異化する本製品は面白いモデルです。
デザインに飽きたら、新しい製品を買うのではなく、ベゼルやストラップを付け替えてみる。そんな使い方でも楽しめるはずです。