「Leitz Phone3」は、100年以上の歴史を持つドイツの老舗カメラメーカーであるライカの世界観を凝縮した、5G対応Androidスマホ。3代目となる本機の注目ポイントは、何と言っても、ライカが監修したカメラシステムでしょう。そこで今回は、ライカを溺愛する編集部・真柄と、カメラはスマホで満足の編集部・関原が「Leitz Phone3」の実力をチェックするため、横浜で1日撮影してきました。
「Leitz Phone3」は、日本国内のソフトバンクのみで販売。メーカー販売価格は195,696円(税込)
(左)真柄利行:約30年のカメラ歴を持つ生粋のカメラガチ勢。ライカは「M10-D」(写真で構えているカメラ)や「Mモノクローム」などを所有している。ライカを含めカメラへと注ぐ愛と金は留まるところをしらない (右)関原元気:所有するカメラは、タンスの肥やし。昨今のスマホカメラの性能向上で、仕事もプライベートも撮影はスマホのみ。「写真はスマホで撮ればいいジャン(←横浜だけに)」
なぜスマホのレビューのために、わざわざ横浜まで……。近場で済ませればいいのに、と思うのですが、なぜ横浜なんですか?
オフィスの近くでは、せっかくのライカレンズもかすんじゃうかな、と。横浜は、写真愛好家の定番スポット。被写体のバリエーションも豊富なので、カメラの実力を試すのに最適なんですよ。
今日のレビューはカメラじゃなくって、スマホですけどね(笑) でも、この「Leitz Phone3」の握った感触はカメラっぽいですね。
ご名答! レザー調の背面はライカの高級コンパクトデジタルカメラ「Leica Qシリーズ」を思わせる高級感がありますね。側面の「ローレット加工」が指がかりになってくれるので、滑りにくくて撮影もしやすいです。外観デザインは、しっかりライカ感ありますよ。
背面には、ダイヤモンドパターンを施したレザー調デザインを採用。中央に、「Leitz」の赤いロゴが入っています
ベースとなるモデルはシャープのフラッグシップモデル「AQUOS R8 pro」です。スマホとして最大の大きさの1インチ(1.0型)のCMOSセンサーや、焦点距離19mm相当(35mm判換算)/絞り値F1.9の超広角レンズ「SUMMICRON 1:1.9/19 ASPH.」などのハードウェアは共通だと思います。
めちゃめちゃ詳しい(笑)。
以前にベースモデルのレビュー記事を作ってますからね〜。ベースモデルのカメラ機能は、下の記事でチェックしておくといいと思います。
「Leits」が刻印されたレンズキャップ。着脱はマグネット式
「Leits」の赤いロゴが入ったシリコンケースが同梱しています
「Leitz Phone 3」のホーム画面に、ライカのカメラで撮られた写真家の作品が表示されるウィジェットがあるんですけど、写真をわかってる感が出るし、おしゃれですね!
画面上部に写真を配置できる「The LFI(Leica Fotografie International) Widget」は、ワンタップで写真が変更可能。中央に配置された「Golden Hour Widget」では、すてきな写真が撮れる時刻を教えてくれます
このウィジェット「The LFI(Leica Fotografie International) Widget」は、世界中のフォトグラファーの写真を厳選して表示してくれるんです。さらに、幻想的な写真が撮影できるゴールデンアワー(日の出直後と日没直前)のタイミングを知らせてくれる「Golden Hour Widget」も、写真愛好家としてはかなり便利なウィジェットですね。
ふむふむ。すると、今日のロケは夜景の撮影もあるので、日没直後のタイミングを、このウィジェットで確認できるってことですね!う〜ん……、長い1日になりそうですね(笑)。
では、「Leitz Phone 3」で撮影してみましょう。今回の目玉は、通常のカメラアプリに加えて、「Leitz Phone」専用の撮影モード「Leitz Looks」が搭載されていることですね。
まさしく! カメラアプリの基本的な機能やUIは「AQUOS R8 pro」がベース……、おぉ、なぜか通常の撮影モードに、M型ライカの「ブライトフレーム」のような枠が表示されてます! レンジファインダーのそれとは違うものだけど、面白い!
表示画面の少し内側に、レンジファインダー機を思わせる、疑似ブライトフレームが表示されます。1倍選択時は「24」、2倍選択時は「50」と、焦点距離相当の表示ができるのも細かいですが、気がきいています
撮影した写真は、このフレームの画角に沿って、拡大・縮小のトリミング表示されるんですね。素人の僕でも、なんだかライカで撮っているような気がして、テンションが上がりますね!
思わず通常の撮影モードで取り乱してしまいました。気を取り直して、「Leitz Looks」モードを覗いてみましょう。
「Leitz Looks」モードの撮影画面。レンズの絞り値を変えられるようになったのも、手が込んでいます(赤い円の中に設定した絞り値が表示されます)。搭載するレンズ自体は固定絞りなので、明るい絞り値のときはボケを加える処理をしています。ライカのデジタルカメラを思わせるフォントと色(赤)を使っているのもユニークな点です
おぉ! 「SUMMILUX(ズミルックス) 28mm」「SUMMILUX 35mm」「NOCTILUX(ノクティルックス) 50mm」という、大口径のライカレンズ3本にちなんだ「バーチャルレンズ」モードが用意されています。ライカファンなら「おっ!」と思っちゃいますね〜。
でも、通常の撮影モードにあった疑似ブライトフレームが、「Leitz Looks」にないのは残念。
確かに。ただ、実際に撮った写真を見ると、どことなくライカっぽく撮れているように感じます。スマホのカメラにありがちな盛った感じがなく、全体的に素直な画質なのが好印象ですね。この感じだと、HDR機能をオフにして使うといいかも。あと、搭載する有機ELディスプレイ「Pro IGZO OLED」は、表示がめちゃくちゃきれいですね。
「NOCTILUX 50mm」、F1.2、「ENHANCED」で撮影。ピント位置から滑らかにボケていくのが大口径レンズで撮っているかのように感じます。色乗りがよく印象的な仕上がりです(撮影・コメント:真柄)
「Leitz Looks」の「バーチャルレンズ」モードは不自然なボケ方をする場合がありますが、ハマると面白いですよ。断言はできないんですけど、「バーチャルレンズ」モードは、単に画角をシミュレーションしているだけじゃなく、色味やボケ味、周辺光量なども変えてるっぽいです。使い込んでクセをつかむと面白そう。
写真の下部に、「Leitz」の赤いロゴやスマホ名、撮影情報が透かし(ウォーターマーク)で入れられますが、これがあるだけで断然ライカっぽく見えるのが不思議ですね。
このマークのおかげで仕上がり倍増ですよ(笑)。ただし、透かし(ウォーターマーク)のレンズ名は「SUMMICRON 1:1.9/19 ASPH.」で固定されているみたいですね。「バーチャルレンズ」モードを使ったときに選択したレンズ名が記録されてほしかったなぁ。
フィルター機能「Leitz Tones」には、「MONOCHROME」「CINEMA CLASSIC」「CINEMA CONTEMPORARY」「ENHANCED」「VIVID」の計5種類が用意されています
フィルター機能も、「Leitz Looks」独自の雰囲気があって、面白いですね! 「MONOCHROME」なんか、特に雰囲気たっぷり。
NOCTILUX 50mm、F1.2、「MONOCHROME」で撮影。フィルター機能を使ってモノクロで撮ってみたところ、ガラスのリフレクションがいい感じになりました。F1.2に設定したのですが、背景にボケが強く出ています(撮影・コメント:関原)
そもそも、ライカのカメラはシンプルな画質設定を徹底していて、使う側もごちゃごちゃイジらない人が多いので、ライカっぽい機能かと言われるとちょっと違う気もするのですが……。
(うわぁ、この人、完全にガチ勢だ)「Leitz Looks」以外でも、メニューのアイコンが赤色だったり、フォントがどことなくライカっぽかったりと、世界観にこだわっていることが垣間見えて、ライカを持っていない僕でも、ライカでスナップしてる気分に浸れますよ〜。
「NOCTILUX 50mm」、F4、「MONOCHROM」で撮影。シャドウの締まりがよく、撮って出しで使える画質だと思います(撮影・コメント:真柄)
確かに「MONOCHROME」はライカっぽいですね。適度にシャドウが締まっていい感じに仕上がってくれます。使い始めは「ちょっと違う」とも思ったんですが、「Leitz Tones」かなり面白いかも。「ENHANCED」もコントラスト感がよく、撮って出しで力強い画質になるのがいいですね。
「NOCTILUX 50mm」、F1.2、「CINEMA CLASSIC」で撮影。背景のボケ方が自然。ハイコントラストで少しアンバーな仕上がりなのがいいですね(撮影・コメント:真柄)
スマホのカメラは、何となくデジタル然とした、パキッとしたスマホならではの画質になりがちですけど、「Leitz Phone 3」は全体的に、いい意味でスマホっぽくない仕上がり。
そうですね。「Leitz Phone 3」は、ベースの「AQUOS R8 pro」の仕上がりとも違う独特のものになっていますね。このスマホで写真を撮るなら、やっぱり「Leitz Looks」モードを使い倒したいなぁ。
「NOCTILUX 50mm」、F4、「CINEMA CLASSIC」で撮影。窓から弱い光が入っていていい感じに見えたので撮ってみました。思ったよりも陰影が強調されていて、それっぽく撮れたと思います(撮影・コメント:関原)
最近は、もうスマホカメラで十分だと思っていたんですけど、これはちょっと格が違うというか、本来の写真の魅力を感じましたよ。
ライカファンだけでなく、スマホのカメラの画質が「ちょっと違う」と感じているカメラ好き、写真好きに使ってもらいたいですね。RAWでも記録できるので、撮影後に編集したい場合に対応できるのもポイントです。
「SUMMILUX 35mm」、F1.4で撮影。ピント面が薄く、被写界深度の浅い写真に仕上がりました。ボケ方も自然です(撮影・コメント:真柄)
「SUMMILUX 28mm」、F1.4で撮影。周辺減光があってしっとりとした画質です。アンダー目で撮ってそれっぽく仕上がるのがよく、どことなくライカっぽさを感じる1枚です(撮影・コメント:真柄)
お、「Golden Hour Widget」によると、そろそろ日没ですね。最後は「ナイト」モードの実力をチェックして、終わりにしましょう(笑)。
そんなにノリノリで帰りたがらなくってもいいジャン(←横浜だけに)。それじゃ、2人で同じ夜景を撮影して仕上がりを比べてみましょう。僕が通常撮影をするので、関原さんは「ナイト」モードをお願いできますか?
OKです! サクッと終わらしましょう!
夜景をきれいに撮影するために、最近のスマホには「ナイト」モードが搭載されていますが、写りがちょっと不自然になってしまうことがあります。何というか、無理に階調を出していてHDR感が強い仕上がりになりがち。「Leitz Phone 3」の実力だったら、おそらく通常撮影のほうが自然できれいに仕上がると思いますよ。
通常撮影での夜景(撮影:真柄)シャドウからハイライトまでつながりのよい画質で、上質な仕上がりではありますが、ちょっとインパクトに欠けるかも(コメント:真柄)
「ナイト」モードでの夜景(撮影:関原)色が適度に、かつ、いい感じに乗っていて、パッと見で美しいと感じます(コメント:真柄)
あれ、こうして見比べてみると、「Leitz Phone 3」の「ナイト」は自然な仕上がりですね。無理に画像加工してない感じがグッドです。通常写真は夜景写真としてはちょっと地味。これなら「ナイト」モードのほうがいいです(笑)。前言撤回します。夜景は「ナイト」モードで撮影しましょう!
「Leitz Phone3」を使ってみて、正直、画質のよさに驚きました。解像感や階調性がうんぬんではなく、写真としての仕上がりがとてもいいんです。さすがライカが監修しているだけのことはありますね。普段一眼カメラや高級コンデジで写真を撮っている写真愛好家にとって、「スマホのカメラはちょっとした記録用」という人も多いと思いますが、「Leitz Phone3」なら満足できる画質が得られると思います。「大きなカメラを持ち歩きたくない」という気分のときに活躍してくれることでしょう。ライカファンだけでなく、全カメラファンに使ってほしいスマホです。
昨今のスマホカメラの性能が格段に上がったことで、どのスマホでもきれいで、高解像度な写真が撮れることに満足していました。ところが「Leitz Phone3」で撮った写真を眺めていると、ほかのスマホで撮った写真が、なんだかデジタルっぽい仕上がりに見えてきました。もちろん「Leitz Phone3」はスマホなので、完全なるデジタルデバイスなのですが、何を撮ってもライカっぽく、アナログな雰囲気が漂っている気がしてきます。カメラ基準でスマホを選ぶ人にとっては、きわめて魅力的な選択肢だと思います。