アウトドアでの着用を想定したタフネスボディに、Googleのスマートウォッチ用OSの「Wear OS」を採用したスマートウォッチ「TicWatch Pro 5 Enduro」。さまざまなGoogle系アプリが使えるうえ、同OSの弱点であるバッテリー駆動時間が大幅に改善されているとあって、便利そうなにおいがプンプンします。知的な高級感を放つマットブラックなニューモデルの実力をチェックしてみましょう。
なお、「Wear OS」はAndroid搭載端末にのみ対応するため、「iPhone」などのiOS端末との接続ができない点は注意しておきましょう。
「TicWatch Pro 5 Enduro」、公式サイト販売価格:49,999円(税込)、2024年5月9日発売
「TicWatch」とは、mobvoi(モブポイ)という自然言語や音声認識の技術開発メーカーのスマートウォッチ。今回紹介する「TicWatch Pro 5 Enduro」は、アウトドアスポーツを楽しむ人向けのタフネスウォッチとして2023年5月に発売された前モデル「TicWatch Pro 5」のアップデート版にあたります。製品名にある「Enduro(エンデューロ)」は、山道や林道でのオフロードバイクレースのことであり、前モデル以上にタフなアウトドア環境での使用を想定したモデルと考えてよいでしょう。
前モデルである「TicWatch Pro 5」からの主な変更点は、以下の3点。Google系アプリが使えることや精度の高いGPS(GNSS)を搭載していることなど、スマートウォッチとして搭載する機能は同じなので、よりハードな環境での安定動作に向けて堅実な強化がなされた印象です。
(1)バッテリー駆動時間の向上
(2)強度の高いサファイアクリスタルの採用
(3)フルオロエラストマーベルトによる着用感の向上
シンプルなデザインとマットな質感が、上品な高級感を放っています
「TicWatch Pro 5 Enduro」は、Google製のスマートウォッチ用OSである「Wear OS」を搭載することで、「Gメール」や「YouTube Music」といったGoogle系アプリをスマートウォッチに入れ、カスタマイズできるのが魅力。ただし、この「Wear OS」を搭載したスマートウォッチは、バッテリーの稼働時間が極端に短いモデルが主流です。
ところが「TicWatch Pro 5 Enduro」は、その弱点を克服。メーカー公称値によると、通常使用で最大90時間、省電力の「エッセンシャルモード」で最大45日間稼働が可能とのこと。「Wear OS」を搭載するスマートウォッチのなかでは、圧倒的に稼働時間の長いモデルと言えるでしょう。実際に、使用してみた結果は記事の後半でお伝えします。
大きくて見やすい1.43インチのディスプレイを採用
そんなバッテリー改善の要であり、「TicWatch Pro 5 Enduro」の大きな特徴となっているのが、有機EL とFSTN液晶との2層構造ディスプレイです。アプリなどのコンテンツ表示の際には有機EL、待機時はFSTN液晶といったように、表示する内容によって消費電力の異なるディスプレイを切り替えることで、バッテリーの稼働時間を大幅に改善しています。
有機ELとFSTN液晶の2層構造ディスプレイ
有機ELディスプレイで常時表示していると、バッテリー消費は大きいですが、消費電力を抑えるために画面をブラックアウト(FSTN液晶表示)していると、必要最低限の情報しか表示されなくなります。つまり、「TicWatch Pro 5 Enduro」は必要な時以外は消費電力を抑えつつも、必要な情報はいつでも見られるように常時表示させておく。この2層構造は、とても理にかなった機能と言えるでしょう。
FSTN液晶を使った常時表示の状態。モノクロですが、数値はしっかりと確認できます
省電力の「エッセンシャルモード」では、18色から好みの色のバックライトを設定できます
いっぽう、有機ELディスプレイは、解像度が466×466で、画素密度が326dpi。「Wear OS」搭載モデルということで、いろいろなアプリを表示することが多いはずですが、有機ELディスプレイの鮮やかでシャープな画面で見やすいです。
常時表示の「エッセンシャルモード」から、有機ELディスプレイへの切り替えはラグもなくスムーズ
ボディ素材には、強度と軽さのバランスをとるために、アルミニウムとステンレスを採用。ディスプレイガラスには、傷が付きにくく強固なサファイアクリスタルが採用され、アウトドア環境でも安心です。さらに、アメリカ国防総省制定のMIL規格「MIL-STD-810H」に準拠し、過酷なアウトドア環境下での安定動作を実証済み。5ATM防水にも対応しており、水場でのアクティビティもフォーカス内です。
操作はタッチパネルのほか、物理ボタンと回転式のデジタルクラウンを使用します。リスト状に並んだアプリをスクロールする際は、タッチパネルで操作するよりも、クラウンを回したほうがスムーズでした。
ケースの右側上部に物理ボタン、中央にデジタルクラウンが配置されています
「TicWatch Pro 5 Enduro」は「Wear OS」を搭載したうえで、CPUにクアルコムのスマートウォッチ向けSoC「Snapdragon W5+ Gen 1」を採用しており、動作が遅れることもなくスムーズに操作ができます。さらに、「Google Playストア」から、いろいろなアプリが入れられるので、スマートウォッチから「LINE」のメッセージを返信したり、「Googleウォレット」による決済サービスが利用できたり、とアプリを選んでカスタマイズできるのは、ほかのOSを積んだスマートウォッチにはない魅力でしょう。
ストレージは32GBと容量も十分なので、「YouTube Music」や「Spotify」から、スマートウォッチに音楽データをダウンロードしても余裕があります。 ただし、「モバイルSuica」に対応していない点は、個人的に残念でした。
スマホと連携せずとも、スマートウォッチのみで、さまざまなアプリが使用できます
睡眠の質、心拍数、ストレスレベル、血中酸素濃度など、一般的なスマートウォッチに搭載されている健康モニタリング機能は、ほぼ網羅されています。特に睡眠モニタリングは機能が充実しており、睡眠時間はもちろん、深い睡眠とレム睡眠など、眠りの深さごとの時間を計測。さらに、睡眠中の皮膚温度の変化も計測できるので、体調のチェックにも役立ちます。また、スマホと連動すれば、いびき音を録音してくれます。
睡眠をモニタリングするだけでなく、よりよい睡眠のためのアドバイスもしてくれます
アプリ「Mobvoi Health」を使えば,スマホで詳細な睡眠データが確認できます
睡眠時に、スマホを枕元に置いておけば、今まで聞くことができなかった自分のいびき音のチェックが可能
「TicWatch Pro 5 Enduro」では、100種類以上のスポーツアクティビティのログがとれます。ランニングや自転車はもちろん、インラインスケートやラケットボール(スカッシュのようなもの)などにも対応。5つの衛星測位に対応するGPSと、気圧計を内蔵しているので、ビルの多い市街地や山の中でもかなり正確な位置を補足してくれるとのことです。そこで、GPSや心拍数データの正確さを確認するために、屋外でのランニングを行ってみました。
搭載されているアプリ「TicExercise」でさまざまなスポーツのモニタリングが可能
一般的なスマートウォッチは、運動中の心拍数を数値で確認しますが、「TicWatch Pro 5 Enduro」は、心拍数を数値だけでなく、バックライトの色で表現します。運動前は緑だったディスプレイカラーが、心拍数が上がっていくにつれオレンジに、さらに走ると、ディスプレイは真っ赤に変化。数値で確認することに比べると、ざっくりした表示になりますが、直感的でわかりやすいユニークな機能でした。
データの配置を変えるなどのカスタムはできませんが、シンプルでわかりやすい表示内容
日課となっているランニングルートを、普段と同様のペースで走ってみたところ、距離も心拍数も普段どおりの数値を取得できたので、正確な数値を記録してくれると思ってよいでしょう。着用していて印象的だったのは、フルオロエラストマーベルトのフィット感です。走行中のズレを防ぐためにキツめにバンドを締めたのですが、ズレも違和感もなく、快適にランニングができました。
グラフの表示はざっくりしていますが、心拍数もしっかりと計測。1kmごとのタイムも表示されます
さて、実際に使用した際のバッテリーの使用量はどうだったでしょうか。24時間の間にGPSを使用した運動を約1時間行ったところ、バッテリーの減少は約34%でした。大体3日に1回充電すれば大丈夫な計算になります。やはり「Wear OS」のスマートウォッチのなかでは、優秀な稼働時間と言ってよいでしょう。
それ以上に、充電時間の短さが抜群でした。同梱品の充電ケーブルで充電すると、バッテリー残量40%の状態から約25分でフル充電が完了。これはかなりスピーディーな結果となりました。入浴中で外した際に充電しておく、といった習慣もよいかもしれませんね。
低価格のスマートウォッチが次々とリリースされるなか、約5万円という価格は高く感じてしまいます。ですが、アウトドアで使用できる耐久性とOS、CPUの組み合わせは、値段相応の価値があると感じました。妥協のないスマートウォッチを求めるAndroidユーザーにとって、有力な選択肢になるでしょう。