トレイルランニング、サイクリング、ダイビングと、アウトドアスポーツを楽しむ人に支持されるスントから、スポーツトレーニングに適したスマートウォッチ「RACE S」がリリースされました。一見するとおしゃれな北欧フェイスながらも、充実したスポーツサポート機能を搭載した最新モデルをチェックしましょう。
スント「RACE S」、メーカー公式価格64,900円、2024年7月3日発売
今回紹介する「RACE S」は、昨年10月に発売されたランナー向けスマートウォッチ「RACE」の機能を受け継ぎながら、一回り小さく、軽量化したスマート版です。前モデルと比べると、レンズ素材がサファイアクリスタルからゴリラガラスに変更、バッテリー駆動時間が短くなり、耐水設計が100mから50mへ減少と、スペックダウンしています。ただし、搭載されている機能に変更はなく、価格が約17,000円安くなっています。
時計本体は、ガラス繊維強化ポリアミドで作られた強固なもの。直径45mmと少し小さめのサイズですが、大きな1.32インチ有機ELディスプレイを採用しているので、運動しながらでも数値が確認しやすいです。また重量は約60gと、「RACE」に比べて23gの軽量化を実現。厚みも11.4mmに抑えることで、運動中でもじゃまにならず快適な着け心地です。
ベゼルにステンレススチール、ディスプレイにゴリラガラスを採用した高耐久性がポイント
薄手でやわらかいシリコンバンドも快適なフィット感を生んでいる要因でしょう。一般的なバンドよりも細かく調整できるので、手首に絶妙にフィットしてくれます。
先端をピン止めするタイプは、素早い着脱が可能です
スントはフィンランドの時計メーカーで、北欧らしいスタイリッシュなデザインに定評があります。「RACE S」も多分に漏れず、ステンレススチールの高耐久性ベゼルと3つの物理ボタンを採用しながら、さすがスントと言えるスマートなフォルムに仕上がっています。
タッチディスプレイでの操作が主ですが、運動中でも操作がしやすいように物理ボタンが採用されています。冬にはグローブを着用してランニングするユーザーも多いので、ランナーの使い勝手が考慮されているのでしょう。
本体の右サイドに物理ボタンが3つ。中央のリューズボタンは回転式ダイヤル
スポーツをするうえで気になるバッテリー駆動時間とGPS精度を確認してみましょう。
メーカー公称値によるバッテリー駆動時間は、1日に1時間のトレーニングを行う日常的な用途で最大9日間、GPSを利用するトレーニングモードで最大30時間の使用が可能とのこと。日常的な使用で週に約1回 の充電を行うと考えれば、十分長い駆動時間と言えるでしょう。
「RACE S」に内蔵されたGPSは、5つの衛星(GPS、GLONASS、GALILEO、QZSS、BEIDOU)を利用した精度の高いものです。
スマホと接続しなくても位置情報を確認できるオフラインマップに対応しているのも大きなポイントです。一般的なマップアプリのように目的地とルートを設定し、ウォッチ本体にマップをダウンロードしておけば、ルートに沿ったコースをガイドしてくれます。
長年アウトドアユーザーと向き合ってきたスントならではの機能が、ルートに目的地までの高低差を表示できることです。単なるルートナビとしてだけでなく、なだらかなルートを選択したり、あえて起伏の激しいルートを検討したりと、高低図をうまく利用することで、ルート設定の楽しみが広がります。
「Suunto」アプリから地図をダウンロードしておけば、ウォッチ上でマップが確認できます
「Suunto」アプリのルート設定画面には、高低差が表示されるので、ルート作成の指標になります
トレーニングモードが充実しているのも特徴のひとつ。ランニング、サイクリングといった一般的なものから、トレッキングやサーフィンといった幅広いアクティビティにも対応します。上で紹介したナビ機能と組み合わせることで、高低差を考慮したトレーニングルートが検討できます。
95種類以上のスポーツのトラッキングに対応
「RACE S」はトレーニング機能が豊富ですが、身体のコンディションを把握する機能も充実しています。
「リソース」機能は、自分の体力の残量を可視化してくれます。日常生活やトレーニングをすることで数値が減少し、睡眠や休憩によって体力が回復すると数値が上昇。実際に使用してみたところ、自分の感覚では元気だと思っていたのに、低い数値が表示されていました。自覚のない疲れを視覚的に認識できることで、運動と休息の指標となってくれます。
「リソース」機能の表示画面。身体 のコンディションをバッテリーのようにパーセント表示で数値化
もうひとつの注目機能は「TSB (トレーニングストレスバランス) 値」です。名前だけ見ると難しく感じますが、簡単に言えば、運動能力が向上しやすいように、適切なトレーニング量に導いてくれる機能です。トレーニングが足りなければ「もっと運動しよう」、やりすぎであれば「今日は休みましょう」とメッセージが出るので、ケガを防ぎながら適切なトレーニング強度を知らせてくれます。
身体が疲労状態にあるとマイナス側に針が振れて、休息をうながしてくれます
ここまでに紹介した内容だけでは、スポーツに関する専門的な機能が多いように感じますが、睡眠の質、心拍数、歩数といった一般的なスマートウォッチに搭載されている健康トラッキング機能も搭載されています。特に睡眠の質に関しては、深い睡眠、レム睡眠の計測のほか、上で紹介した「リソース」の増加量、睡眠時の心拍数など、詳細なデータのトラッキングができるので、健康管理に役立ちます。
位置情報の精度を確認するために、「RACE S」を着用してランニングを行いました。ランニングの計測モードには「ベーシック」と「パワー」の2種類があり、「ベーシック」は一般的なランニングデータの計測、「パワー」は走力を数値化した「ランニングパワー」を測定できます。スポーツ特化型モデルならではのマニアックな機能と、可視化される自分の「ランニングパワー」にモチベーションも高まります。
気になる心拍モニターやGPSの精度は問題なし。日々のランニング時と変わらない数値が取得できました。
有機ELディスプレイは、屋外でもくっきりと見やすいです
「Suunto」アプリの計測画面では、記録された最低値が紫、最高値が赤で表示されます。数値がズラリと並んだ画面に色があることで、見やすさが向上していました。
アプリには走ったルートや1kmごとのペース、消費カロリーも見やすく表示されます
「Suunto」アプリでは、トレーニング、睡眠、「リソース」の変化がまとめて確認でき、体調管理が行いやすかったです。これらの数値が1週間単位でまとまっているのも、「長いスパンでコンディションを整えていきましょう」というスントからのメッセージに感じられました。
分析結果として、トレーニングと回復のアドバイスを「Suunto Coach」が届けてくれます
GPSを使用して1時間ほど走った日のバッテリー減少量は、24時間で7%でした。このペースで使っていけば、10日は十分に駆動できるはずなので、日々バッテリー残量を気にする必要はなく、ロングバッテリーと言えるでしょう。
「RACE S」は、アクティビティのトラッキングとサポート機能が充実した「硬派」なスポーツモデルです。もちろん睡眠トラッキングや歩数計といった一般的な健康管理機能も搭載されていますが、取得できるスポーツデータが専門的なため、日常使いでは少しオーバースペックな印象です。ただ、スマートなフィンランドデザインは、スポーツをしない人でも惹きつけられてしまう魅力があります。硬派なスポーツ機能とスマートなデザイン性のどちらも手に入る貴重な選択肢となるでしょう。