レビュー

カラーEInk搭載「BOOX Note Air4 C」レビュー。電子書籍愛好家のためのタブレット

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ONYXのAndroidタブレット「BOOX Note Air4 C 」は、10.3インチのカラーEInk(イー・インク)を備えたユニークな製品です。電子書籍リーダーではよく見かけるEInkですが、タブレットとしての使い勝手はどのようなものなのでしょうか?前モデルからの進化点や、どんな風に使えるデバイスなのかをチェックしました。

ONYX「BOOX Note Air4 C」。2024年11月7日発売。市場想定価格は87,800円前後

ONYX「BOOX Note Air4 C」。2024年11月7日発売。市場想定価格は87,800円前後

読む、書くが両方できる、自由度の高いEInkタブレット

本機の特徴であるEInkを簡単に説明しましょう。EInkは電子ペーパーとも呼ばれ、紙と同じ反射光を使った表示を行います。ディスプレイ自体が光を発する液晶や有機ELとは仕組みが大きく異なります。なお、EInkをディスプレイに採用するデバイスには、アマゾン「Kindle」のような電子書籍リーダーや、富士通「クアデルノ」のような電子ノート端末が知られています。

いっぽう、「BOOX Note Air4 C」はOSにAndroid 13を搭載し、Google Playを通じて複数の電子書籍リーダーアプリをインストールできることが特徴です。Androidタブレットの一種と見なしてよいでしょう。なおタブレットとして見ると、専用のノートアプリやペンも付属するなど、読む、書く、両方の機能を兼ね備えた、なかなか高機能な製品となります。

「BOOX Note Air4 C」には、専用スタイラスペンとペンキャップ、ケーブルが付属。ただしACアダプターは同梱されていません

「BOOX Note Air4 C」には、専用スタイラスペンとペンキャップ、ケーブルが付属。ただしACアダプターは同梱されていません

背面から側面にかけての赤いラインがアクセントになっています。一般的なタブレットと異なりカメラは非搭載です

背面から側面にかけての赤いラインがアクセントになっています。一般的なタブレットと異なりカメラは非搭載です

画面保護のほか、縦、横でスタンドにもなる別売りの「BOOX Magnetic Case Cover for Note Air 4C」は「SKT NET SHOP」にて7,800円(税込) で販売中

画面保護のほか、縦、横でスタンドにもなる別売りの「BOOX Magnetic Case Cover for Note Air 4C」は「SKT NET SHOP」にて7,800円(税込) で販売中

「BOOX Note Air4 C」に搭載されるEInkは4096色をサポートする「Kaleido 3 Color Screen」。明るさのほか、寒色、暖色の調整もできるCTMフロントライトを搭載しており、暗い場所でも利用できます。タッチディスプレイは静電容量方式で、解像度はモノクロ表示時が2480×1860(300ppi)、カラー表示時が1240×930(150ppi)。このほか通信はWi-Fi(802.11b/g/n/ac)とBluetooth 5.1に対応。電源ボタンにセンサーが搭載されていて、指紋認証をサポートしています。

電源ボタンには指紋認証センサーを搭載。ロック解除が簡単にできます

電源ボタンには指紋認証センサーを搭載。ロック解除が簡単にできます

気になる画質ですが、フロントライト搭載で明るい太陽光下でも文字がくっきりと見やすく、ライトがまぶしく感じる夜間には暖色に調整できるなど機能性も良好です。

明るさ約半分の設定でも、まぶしい太陽光下で十分な視認性が確保できていました

明るさ約半分の設定でも、まぶしい太陽光下で十分な視認性が確保できていました

本体サイズは226(高さ)×193(幅)×5.8(厚さ)mmとスリムで、重さは420g。前モデル「BOOX Note Air3 C」より、10gほど軽量です。このほか前モデルとの差分は、4GBから6GBに増えたメモリーや、前モデル比で処理性能が最大50%アップしているクアルコム製オクタコアCPUの性能、Android OSのバージョンなど。ストレージは64GBで、最大2TBまで対応のmicroSDXCメモリーカードスロットも搭載しています。価格に対して64GBのストレージは少なめです。ただ、電子書籍データはメモリーカードに逃がすことができますし、ディスプレイの性質を考えるとストレージの消費が多くなりやすいゲームには不向きなところがあり、一般的なタブレットと同じ基準で評価しにくい部分があります。

左側面にはUSB type-C端子とデュアルスピーカー、microSDXCカードスロットが配置されています

左側面にはUSB type-C端子とデュアルスピーカー、microSDXCカードスロットが配置されています

CPUの詳細が公開されていないため、やや無理矢理ではありますが、ベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」を走らせてみました。総合スコアは300768ですが描画性能を示すサブスコア「GPU」は測定できませんでした。「CPU」のスコアはスマートフォンだとエントリークラス相当ですが、電子書籍など2D表示がおもな用途なら、必要十分かもしれません。

AnTuTu ベンチマーク結果。何度かトライしましたが結果は大きく変わりませんでした

AnTuTu ベンチマーク結果。何度かトライしましたが結果は大きく変わりませんでした

基本スペックだけを見ると前モデルから大きく変わっていないように見えますが、ホーム画面のUIなどは、より一般的なAndroidタブレットに近いものに変更されています。画面下によく使うアイコンが常時表示される仕様や、ウィジェットやアイコンの配置がカスタムできるホーム画面、画面右上からスワイプで表示できるコントロールセンター、2ペインの設定画面など、スマートフォンやタブレットの操作に慣れていれば、直感的に使えるでしょう。

動画再生も実用レベル、カラーEInkの恩恵は思った以上に大きい

筆者はEInkの電子書籍リーダーをいくつか所有していますが、カラーEInkを採用するデバイスを本格的に使用するのは今回が初めて。実際に触ってみるまでは正直、「EInkにカラーって必要?」と思っていました。スマートフォンやタブレットのディスプレイとEInkでは、見え方がまったく違うからです。たとえばEInkには文字がくっきりと見やすく、長時間読んでも目が疲れにくいメリットがあります。いっぽうで最近の有機ELや液晶ディスプレイに比べると、特にカラーは解像度が低く、発色も淡泊です。文字を読むのには最適ですが、写真や動画を見るといったタブレットの一般的な用途には向いていないのでは? という、印象を持っていました。

しかし、実際に使ってみて考えが変わりました。情報の検索や閲覧において、カラーであることのメリットは少なくないと気づいたからです。たとえば本機はAndroid 13を搭載し、Google Playからいろいろなアプリを追加できます。この際にアイコンがカラーだと、それだけで目当てのアプリがぐっと探しやすくなります。Chromeなど使い慣れたWebブラウザーをインストールして、ブックマークを連携することももちろんできます。WebページやSNSをチェックする場合も、やはりカラーのほうが見やすいですし、情報が頭に入ってきやすい。

さらに今回、写真や動画の視聴も試してみたのですが、初期のカラーEinkに比べて色の表現が豊かになっていると感じました。向上した基本性能の下支えもあって、YouTubeなどの動画がストレスなく再生できたのにも驚きました。スピーカーも搭載されていますし、アニメーションなどであれば動画も案外楽しめそうです。

なお、本機では画面の残像をリフレッシュするモードを、アプリ別に細かく設定できます。テキストかイラストか、あるいは写真か動画かなど、楽しみたいコンテンツに応じて、画質、バランス、スピードを選んでおくと、さらに快適に利用できるでしょう。

手持ちの写真からできるだけカラフルなものを選んで、ギャラリーに表示しました。有機ELや液晶よりも淡泊ですが、これはこれでアリに感じました

手持ちの写真からできるだけカラフルなものを選んで、ギャラリーに表示しました。有機ELや液晶よりも淡泊ですが、これはこれでアリに感じました

カラーモードやリフレッシュモードをコンテンツにあわせて、調整できるようになっています。設定画面は画面下からスワイプすると表示されます

カラーモードやリフレッシュモードをコンテンツにあわせて、調整できるようになっています。設定画面は画面下からスワイプすると表示されます

カラーEInkでは、コミックや雑誌のカラーページを、そのまま表示できるのも大きな魅力のひとつです。コミックではより臨場感が増し、雑誌では記事だけでなく写真やイラストもしっかり楽しめます。実際にいろいろな雑誌を読んでみて、10.3インチはA4程度の雑誌を読むのにも、ストレスのないサイズだと感じました。

コミックのカラーページが楽しめるのは、カラーEInkデバイスの大きなメリットです(なお、写真中のコンテンツは、著作権者が条件付きで2次利用をフリー化している「ブラックジャックによろしく」となります)

コミックのカラーページが楽しめるのは、カラーEInkデバイスの大きなメリットです(なお、写真中のコンテンツは、著作権者が条件付きで2次利用をフリー化している「ブラックジャックによろしく」となります)

実際に紙の雑誌と並べてみました。文字は拡大したほうが読みやすいですが、10.3インチはA4サイズの雑誌もそのまま読めるサイズ感

実際に紙の雑誌と並べてみました。文字は拡大したほうが読みやすいですが、10.3インチはA4サイズの雑誌もそのまま読めるサイズ感

複数の電子書籍リーダーをインストールできる利点は大きい

本機の強みはGoogle Playから、いろいろなアプリを追加できることです。特定のサービスの専用デバイスだったり、独自OSだったりと、制限の多いEinkデバイスが多い中、この自由度の高さは大きな魅力です。いくつかの電子書籍サービスを使い分けているような人には、特に使いやすいでしょう。

このほかインストールされている汎用電子書籍リーダー「Neo Reader」では、ローカルファイルだけでなく、「OneDrive」「Google Drive」「DropBox」などのクラウドストレージと連携することで、クラウド上のドキュメントをダウンロードして読めます。pdf、docx、epub、txt、pptといった幅広いファイル形式をサポートしているので、長文の資料に目を通すビジネスシーンでも役立ちそうです。ほかにも同一LAN内で、PCやスマートフォンとブラウザー経由でファイルを共有できる「BOOXDrop」が利用できます。

Google Playから複数の書籍リーダーをインストールして使用できます

Google Playから複数の書籍リーダーをインストールして使用できます

アカウントを設定して、さまざまなクラウドストレージと連携できるようになっています

アカウントを設定して、さまざまなクラウドストレージと連携できるようになっています

手書き→テキスト変換も快適な手書きノート機能

見たり読んだりするだけでなく、「BOOX Note Air4 C」は書くほうでも、魅力的な機能を備えています。付属する専用スタイラスペンは、4096段階の筆圧をサポート。EInkはディスプレイの表面が紙のようなザラッとした質感になっているのが特徴で、この質感がペン先を適度に受け止めるため、書き心地がとても良好です。今回試してみて、絵や字を書く際に手を付いても、誤作動しにくい点も気に入りました。スタイラスペンは充電が不要なのも美点です。

ペンはマグネットで本体右側にくっつけられます

ペンはマグネットで本体右側にくっつけられます

標準の「ノート」アプリには「手書きノート」と「テキストノート」があり、後者の「テキストノート」は文字入力ができるノートですが、表示されるキーボードを使用するほか、ペンで手書き入力してテキスト化する文字パットも利用できます。

前者では、気軽にスケッチが楽しめる白地から、5W1H解析法やSWOT分析などのビジネスフレームワーク、デイリースケジュール、ToDoリストまで豊富なテンプレートが利用可能。ペン、ブラシ、ボールペン、鉛筆、マーカーなどの手書きのタッチや太さ、色が選べるほか、一筆書きで図形を描いて少し待つと自動整形される機能も備わっています。作成したノートを、専用クラウドにバックアップできるのも安心です。

手書きの図形を自動整形してくれる機能や、手書き文字を自動テキスト化できる機能が備わっています

手書きの図形を自動整形してくれる機能や、手書き文字を自動テキスト化できる機能が備わっています

なお、読むほうのアプリである「Neo Reader」にも、手書きでメモができる機能が備わっています。「OneDrive」「Google Drive」「DropBox」などのクラウドからダウンロードしたドキュメントのうち、PDFファイルには手書き情報を保持したまま再アップロードができることを確認しました。別途アプリを追加する方法もありますが、ちょっとした資料のチェックや校正に十分に使えそうです。

EInkの魅力バッテリー持ちの良さは今ひとつ

使ってみて少し気になる点もありました。ひとつは電源ボタンの位置。本機のディスプレイは右よりに配置されていて、左にややスペースが設けられています。つまり、左手で持って右手で操作する前提だと思うのですが、そうすると左上にある指紋認証付き電源ボタンの位置はやや不自然です。ロゴの向きにならって横画面がデフォルトなのかもしれませんし、実際コミックは横画面の見開き表示が読みやすかったのですが、最初、どの指で指紋認証を登録すべきかをちょっと迷いました。

縦で持つと電源ボタンが左上に。横で持つとちょうど左手の当たる位置に電源ボタンが来て、コミックの見開きも読みやすいです

縦で持つと電源ボタンが左上に。横で持つとちょうど左手の当たる位置に電源ボタンが来て、コミックの見開きも読みやすいです

もうひとつはバッテリーです。フロントライトをオンにしていると、3700mAhのバッテリーの消費が速く感じられます。実際に2日間持たないこともありました。省電力で電池持ちのよさがEinkデバイスの大きな強みですが、カラーEinkと本機のパフォーマンスを考えると仕方がないのかも。短期でも旅行時には充電器かモバイルバッテリーを持参したほうが安心です。

【まとめ】カラーEInkは想像以上に快適。タブレットを兼用できるのも魅力

複数の電子書籍サービスを利用している筆者には、Androidタブレットの側面もある「BOOX Note Air4 C」は魅力的です。本を読む用途に限るならモノクロ表示でも十分ですが、コミックや雑誌、ニュース記事やSNSの投稿もじっくり読むなら、大画面のカラーEinkはなかなか便利。ペン入力の書き味が良好で、色分けもできるノートアプリにも惹かれるものがあります。カラーEInkデバイスの良さに開眼してしまいました。

太田百合子
Writer
太田百合子
インターネット黎明期よりWebディレクションやインターネット関連のフリーペーパー、情報誌の立ち上げに携わる。以降パソコン、携帯電話、スマートフォンからウェアラブルデバイス、IoT機器まで、身近なデジタルガジェットと、それら通じて利用できる様々なサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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