スマホとおカネの気になるハナシ

通信料金値上げの予兆!? ドコモホームルーター「home 5G」の価格改定を徹底分析

スマートフォンやモバイル通信とお金にまつわる話題を解説していく「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回は、ドコモのホームルーター「home 5G」の値上げを取り上げよう。長く値下げ基調が続いているスマホの通信料金も、ついに値上げのときが来たのだろうか?

※本記事中の日本円の価格は断りのない場合税込で統一している。

NTTドコモは、ホームルーター「home 5G」の月額料金を2025年7月より、4,950円から月額5,280円に値上げすると発表した。この値上げはスマホに及ぶのか迫った

NTTドコモは、ホームルーター「home 5G」の月額料金を2025年7月より、4,950円から月額5,280円に値上げすると発表した。この値上げはスマホに及ぶのか迫った

「home 5G」の月額料金が値上げ。スマホの通信料も続く?

さまざまなモノの価格が上がり続ける昨今、スマートフォンの端末代も大幅に値上がりしている。しかし、携帯・スマートフォンの通信料金は値下げ・実質値下げが進行している。

それは、菅義偉元首相の政権下で携帯電話料金の引き下げが進められて以降、行政が携帯電話会社同士の競争をよりうながして料金引き下げを求めていることが影響している。NTTドコモがオンライン専用プラン「ahamo」の通信量を10GB増やして月額料金を据え置いた、2024年の「ahamoショック」が象徴するように、競争が激しい中価格帯を中心として最近でも実質的な値下げが進んでいる状況にある。

だがここ最近、その料金を値上げする動きも起きている。それは先の「ahamoショック」を起こしたNTTドコモの「home 5G」である。「home 5G」は、固定回線の代わりにモバイル回線を用いて自宅などのWi-Fi環境を整備する、いわゆる「ホームルーター」サービスの一種である。

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そして、NTTドコモは2025年3月31日に、その「home 5G」の料金プラン「home 5Gプラン」の月額料金を7月1日より値上げすることを発表。現在の月額料金は4,950円なのだが、7月からは300円値上げされ、月額5,280円での提供になる。

月額4,950円で利用できるNTTドコモの「home 5G」だが、2025年7月には月額5,280円と、300円値上げされることとなった

月額4,950円で利用できるNTTドコモの「home 5G」だが、2025年7月には月額5,280円と、300円値上げされることとなった

最安ではなくなっても価格の優位はまだあると判断した

NTTドコモは報道発表で、値上げの理由について「サービスを安定的に提供するために必要な運用コストが高騰しており、今後のサービス品質維持のために料金改定が必要と判断」と説明している。昨今の物価高でその運用に必要なコストは上がり続けているのが実情であり、そのコストを通信料金に反映させざるをえなくなったのが現実のようだ。

月額300円だが、1年にすれば3,600円支払う必要がある。利用者にかかる金銭的負担が大きくなることは間違いない。それゆえ気になるのが、「値上げした料金が競合のサービスと比べどの程度の水準にあるのか?」である。

競合3社のホームルーターやそれに類するサービスの料金を確認してみると、KDDI(au)の「ホームルータープラン5G」は月額5,170円、ソフトバンクの「Air 4G/5G共通プラン」は5,368円、楽天モバイルの「Rakuten Turbo」は月額4,840円。なおKDDI傘下のUQコミュニケーションが提供する「UQ WiMAX」の「WiMAX +5G ギガ放題プラスS」は月額4,950円となっている。

通信事業者各社の料金比較(2025年7月時点のもの)

それらと比べた場合、「home 5G」プランは値上げしたことで安価な水準ではなくなったものの、競合プランと大きな差があるわけでも、最も高いわけでもないことがわかるだろう。そして実は、ホームルーターはスマートフォンと違って月額料金よりむしろ、新規契約時に適用される割引のほうが大きな競争軸となっていることも知っておくべきだ。

スマホで禁止の回線セット割引が認められている

実はホームルーターは、端末にGPSを搭載するなどして位置を確認し、自宅から移動して使うことを禁止することにより、固定ブロードバンド回線と同じ扱いがなされている。これによってホームルーターは、スマートフォンでは禁止されている「月々サポート」「毎月割」「月月割」など、端末と回線のセット契約・購入を前提に毎月の料金を割り引く施策を適用できるのだ。

ドコモオンラインショップのWebサイトより。画像は同サイトで「HR01」を36回の分割払いでセット購入した場合の料金事例だが、スマートフォン向けでは禁止されている「月々サポート」を適用し、36か月間の値引きがなされていることがわかる

ドコモオンラインショップのWebサイトより。画像は同サイトで「HR01」を36回の分割払いでセット購入した場合の料金事例だが、スマートフォン向けでは禁止されている「月々サポート」を適用し、36か月間の値引きがなされていることがわかる

そこで携帯各社はセット契約による割引を積極活用し、契約から数年間は割安で利用できることを訴求して新規契約の獲得に力を入れる傾向だ。月額料金が最も高い5,368円のソフトバンクを例にすると、「Air 4G/5G共通プラン」の契約と同時に最も新しい「Airターミナル6」を48回払いで購入した場合、「Airターミナル6デビュー割」(月額418円引き)が48か月間適用され4年間は月額4,950円で利用できる。

さらに「Airターミナル6 ハッピースタート!キャンペーン」の適用で15,000円分のキャッシュバックが受けられる。それを3か月で割って月額料金から差し引くことで、3か月間は実質0円で利用可能とソフトバンクはアピールしているようだ。

ソフトバンクのWebサイトより。最新の「Airターミナル6」と「Air 4G/5G共通プラン」をセットで購入・契約した場合、48か月間は月額418円の割引が受けられるうえに15,000円のキャッシュバックも提供される

ソフトバンクのWebサイトより。最新の「Airターミナル6」と「Air 4G/5G共通プラン」をセットで購入・契約した場合、48か月間は月額418円の割引が受けられるうえに15,000円のキャッシュバックも提供される

セット割引後の料金が価格競争になっているホームルーターの特殊事情

そうしたことから、NTTドコモも競合と大きな差がないのであれば、割引施策などの強化で契約には大きな影響が出ないと判断し、「home 5G」プランの価格改定を実行したと考えられる。月額料金を巡る競争が激しいスマートフォン向けの通信サービスとは事情が異なるだけに、ある意味で値上げがしやすいところから値上げをしたのではないだろうか。

それゆえ「home 5G」プランの価格改定が、NTTドコモのスマートフォンの料金値上げにつながる可能性は、現状は高くはないと思われる。とはいえ、ほかのさまざまなモノやサービスの値上がりが続く状況で、携帯電話料金だけが下がり続けることは、考えにくいのが正直なところである。

料金プラン維持が難しくなってきていることも確か

実際、携帯各社のトップからは、現状の料金水準でサービスを提供し続けるのが厳しくなっているとの声が少なからず聞かれるようになってきた。KDDIの代表取締役会長である高橋誠氏は、社長だった2025年2月5日の決算説明会において、「パートナー企業に適切な対価を支払い、安定した品質のネットワークと高付加価値のサービスを提供するためには価値に伴う対価を得て経済を好循環させることが非常に重要だ」と訴えていた。

KDDIは2025年2月の決算会見で、安定した高い品質のサービスを提供し続けるには、価値にともなう対価を得ることが非常に重要だと説明。値下げが続く携帯料金を値上げしたい様子を示したと見られている

KDDIは2025年2月の決算会見で、安定した高い品質のサービスを提供し続けるには、価値にともなう対価を得ることが非常に重要だと説明。値下げが続く携帯料金を値上げしたい様子を示したと見られている

ソフトバンクの代表取締役社長執行役員兼CEOである宮川潤一氏も、2025年2月10日の決算説明会で、電気代や従業員の給料などが上がり続けるなか、企業努力でコストを吸収するのが限界に来ていると説明。「健全な形で、モノの値上がりに合わせたくらいの値上げは、どこかでやらないといけない」と話していた。

“値上げはしたいが顧客流出は避けたい”我慢比べの状態

しかし、1社だけが料金を値上げすると、他社に顧客を奪われるなど競争上大きな悪影響が出る可能性もあることから、なかなか値上げに踏み出しづらいのが正直なところのようだ。それゆえ、スマートフォンの通信料金がすぐ値上げするとは考えにくい。しかし、現状のまま物価が上がり続けたとなれば、従業員だけでなくネットワークの工事を担う会社や、ショップを運営する会社などに適正な対価が支払えなくなり、それが各社のネットワークや、サービスの質を大きく落とすことにつながってくる。

それだけに現在の物価高が続く限り、携帯各社がどこかで限界を迎えてスマートフォンの通信料も値上げに踏み切る可能性は十分ありえる。値上げが続き家計が苦しい状況ではあるが、消費者の側も携帯料金の値上げをしっかり覚悟しておく必要があるだろう。

佐野正弘
Writer
佐野正弘
福島県出身。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。
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田中 巧(編集部)
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田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよび、モバイルバッテリーを含む周辺機器には特に注力している。
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