2015年7月に登場した「Windows 10」は、今年で10年目に突入。当初、「Windowsとしては最終版で、これ以降のWindowsバージョンは登場しない」と公言されたことで大きな話題となりました。
しかし、この発言は後に撤回され、2021年には「Windows 11」が登場。この際「Windows 10 Home」および個人向け「Windows 10 Pro」のサポートを、2025年10月14日(日本時間では10月15日)まで続けることも発表されました。その期限がいよいよ半年後に迫っています。
そこで「Windows 11へ移行する前に知っておくべき基礎知識や事前準備、導入方法、データ移行のやり方などを連載でお届けします。
※本記事は2025年5月13日時点での情報を元に作成しています。システムアップデートなどによって機能が追加されている場合があります。
「Windows 10」のサポート終了となる2025年10月14日(日本時間では10月15日)が近づいてきました
初回となる今回は、知っておくべき基礎知識から再確認していきます。OSの更新は意外と手間がかかるうえ、予期せぬトラブルも発生しがちです。直前になって慌てないよう、余裕を持って準備を始めましょう。
「Windows 10」は、2022年10月にリリースされたバージョン「22H2」が最新の安定版。これ以降の大型アップデートは実施されず、「22H2」が最終バージョンになるとアナウンスされています。細かな更新や修正は続けられていますが、日本時間の2025年10月15日に「22H2」のサポートが完全に終了します。
「Windows 10」の最新版は「22H2」。このバージョンが登場した2022年10月以降、大型アップデートは実施されていませんが、細かな更新と修正は現在も引き続き行われています
サポートが終了すると、まずWindowsが一切更新されなくなります。これによってどんな不利益が生じるか、マイクロソフトはビジネス向けの公式サイトで以下のリスクを指摘しています。
・セキュリティ(深刻で潜在的に有害なセキュリティリスク)
・生産性(業務での継続利用が困難)
・ビジネスの停滞(イノベーション機会の喪失)
このうち一般のユーザーにも影響が大きいと思われるセキュリティについて詳しく解説します。
まずWindowsが更新されなくなることにより、新たな不具合が発見されても修正されなくなります。特に悪用可能な新たなセキュリティホールが見つかった場合にも対応されなくなるため、パソコンの乗っ取りや情報漏洩などのリスクが高まります。
「Windows 10」には標準でセキュリティ機能が搭載されていますが、そのウイルス定義ファイルなども更新されなくなります。これにより、新たなウイルスやマルウェアが登場しても、もうOSの標準機能では感染対策ができません。
「ならばフリーや有料のセキュリティソフトを使えばよいのでは?」と考える人もいるでしょう。しかし、それらのソフトも対応OSや動作環境が更新されていきます。当然ながら、サポートが終了したOSは順次サポート外となるでしょう。つまり、使えるパソコンソフトもどんどん減っていくことになります。
さらに、技術的な公式サポートも受けられなくなります。パソコンがクラッシュしたり、起動しなくなったりしても問い合わせができなくなるため、すべて自力で解決する必要があります。
個人用パソコンで自分のデータが喪失するだけならまだしも、アドレス帳のデータを悪用されてマルウェアの感染が知人・友人に広がる可能性もあります。業務用パソコンの場合は内部情報の漏洩により、会社全体の業務に支障をきたす可能性すらあります。
「そんな大袈裟な……」と思うかもしれませんが、可能性はゼロではありません。思いもよらぬトラブルに巻き込まれないためにも、「Windows 11」の導入は必須と言えます。
「Windows 11」を導入する方法として大きく3つの選択肢があります。
1.「Windows 11」対応パソコンに買い替える
2.現在のパソコンを「Windows 11」にアップデートする
3.現在のパソコンに「Windows 11」を新規インストールする
ここでポイントとなるのは「現在使っているパソコンがWindows 11に対応しているか」ということ。残念ながら「Windows 11」の動作要件を満たしていない場合は、もうパソコンを買い替えるしかありません。要件を満たしている場合はさらに2つの選択肢があり、自分に最適な方法を選べます。
まず「Windows 11」対応パソコンへの買い換えです。下で詳しく説明しますが、これには以下のような長所・短所があります。
○ 新しいパソコンが使える
× コストがかかる
× データ移行や設定などの手間がかかる
後ほど詳しく解説しますが、「Windows 11」は意外とシステム要件が高めです。このため、ひと昔前のパソコンの場合、「Windows 11」が動作しない可能性が高いでしょう。この場合、もう「Windows 11」に対応したパソコンに買い替えるしか手がありません。
コストがかかるしデータ移動の手間もありますが、「Windows 11」の導入に当たって実は最適な方法がこれです。たとえ現在のパソコンが「Windows 11」に対応していたとしても、やはり型落ちであることは事実。動作速度などによって受けるストレスを考えれば、新しいパソコンのほうが快適なのは明白です。なにより、新しいパソコンは気持ちがアガります。
また、実は「Microsoft Office 2016/2019」も同時にサポートが終了となります。そのため、最新バージョンの「Office 2024」が付属するパソコンを選べば同時に更新ができます。
いちばん手軽な解決方法がこちらです。特徴は以下となります。
○ ソフトや設定の引き継ぎも可能で手間が少ない
○ コストも少ない
現在のパソコンが「Windows 11」に対応している場合、最も手軽な方法が「Windows 11」へのアップデートです。ユーザーデータだけでなく、インストール済みソフトや各種設定などもそのまま引き継げるため、導入後の利用が最もスムーズです。
ただし、「Windows 11」では動作しないソフトやアクセサリーが出てくる可能性はあるので、その場合は個別対応が必要です。
また、基本的にOSを入れ替えるだけなので、ユーザーデータなどのバックアップは不要とされていますが、アップデート中にトラブルが発生する可能性はあります。万が一に備えて重要なデータだけでもバックアップを取っておくのがおすすめです。
慣れない人にはやや手間ですが新規インストールも導入方法です。大まかな特徴としては以下があります。
○ 細かな不具合などを解消できる
× 設定の手間がかかる
× バックアップの必要がある
現在のパソコンが「Windows 11」に対応していれば、アップデートではなく「Windows 11」を新規インストールするという方法も利用できます。「Windows 10」が入っていた「Cドライブ」を一度初期化して、そこに新たに「Windows 11」をインストールするという方法で、「クリーンインストール」と呼ばれます。
クリーンインストールの最大のメリットは、これまでの使用で蓄積された細かなエラーなどを一掃できること。「大問題というほどではないけれど、なんかちょっと動作がおかしい……」といったモヤモヤした状態から一気に脱却できます。ストレージをHDDからSSDに換装したい場合にも最適です。
デメリットとしては、「Windows 11」の初期設定が必要になることと、ソフトやアクセサリーのドライバーを再インストールする必要が生じること。近年ではドライバーの多くはWindows Updateで自動インストールされますが、それでも個別対応が必要なものがいくつか出てくるでしょう。
「Windows 11」を真っさらな状態から利用できるので、アップデートよりもおすすめの方法ですが、Cドライブを一度初期化するため、ユーザーデータのバックアップを確実に取っておく必要があります。
「Windows 10」と比べると、「Windows 11」のシステム要件は大きく変わっています。
特に大きく変わっているのがセキュアブートに対応したUEFIが必要なことと、バージョン2.0のTMP(トラステッド プラットフォーム モジュール)への対応が必要になったこと。この2点がネックとなり、多くのパソコンの多くが「Windows 11」を実行できない状態になってしまいました。
「Windows 10」と比べると全体的に必要なスペックが上がっていますが、最大のポイントは新しく追加された「システムファームウェア」と「TPM」の2つ。この2項目のため、「Windows 11」が動作しないパソコンが一気に増えてしまいました
必要システム要件と言われても、自分のパソコンで「Windows 11」が実行できるのかを調べるにしても、どこを見たらよいのかすら見当がつかない人も多いでしょう。でも安心してください。マイクロソフトではパソコンが「Windows 11」対応かを確認できるチェックツールを配布しています。以下ではチェックツールの使い方を紹介していきます。
チェックツールは設定のWindows Update内の通知から入手できます。まずはWindows Updateを開き、「Windows 11の準備をする」の右にあるリンクからチェックツールを入手して確認しましょう。以下で実際の手順を紹介します。
設定の「更新とセキュリティ」からWindows Updateを開き、「Windows 11の準備をする」という通知が表示されているかを確認します。通知が表示されている場合は、右にある「ハードウェア要件を確認する」をクリックします
リンクをクリックすると、ブラウザーで「Windows 11の仕様、機能、コンピューターの要件を確認する」という公式ページが開きます。ページ内の「システム要件」の文中に「PC 正常性チェック アプリ」というリンクがあるので、ここをクリック
「Windows 11」の公式ページ(https://www.microsoft.com/ja-jp/windows/windows-11)が開き、下部の「互換性の確認」部分が表示されるので、「PC 正常性チェック アプリのダウンロード」をクリックしてチェックツールを入手します。Windows Updateに通知が表示されていない場合でも、このページから直接ツールを入手できます
ダウンロードされたインストーラー(標準では「ダウンロード」フォルダー内に保存される)をダブルクリックし、使用許諾に同意してインストールを開始します
インストールが完了したら、「PC 正常性チェック アプリ」を起動。「Windows 11のご紹介」という部分に「今すぐチェック」ボタンがあるので、これをクリックします
すぐにチェック結果が表示されます。「Windows 11」の要件を満たしている場合は、「導入方法2」のアップデートや「導入方法3」のクリーンインストールが利用できますが、満たしていない場合は、残念ながら新しいパソコンに買い替える必要があります
「Windows 11」を導入後に、確実に必要となるソフトやアクセサリーがある場合は、念のため各メーカーの製品情報ページやサポートページで対応状況を確認しておくと安心です。
「Windows 11」もすでに登場から3年以上が経過しているので、ほとんどのソフトやアクセサリーが対応していると思いますが、すでに開発が終了しているソフトや、メーカーが存在していないアクセサリーは特に注意が必要です。
正式対応が公表されていないソフトやアクセサリーがある場合は、念のためクチコミや代替製品を探してみるのもよいかもしれません。なお、正式対応とされていなくても、多くのソフトやアクセサリーは問題なく使える場合がほとんどです。
継続して使う予定のプリンターやスキャナー、Wi-Fiルーター、マウスなどがある場合は、メーカーのホームページで対応状況を確認しておくと安心です
今回は、「Windows 10」のサポート終了にともなうリスクや「Windows 11」の導入方法、自分のパソコンの対応状況の確認方法などを紹介しました。サポート終了まではまだ半年ほどありますが、決して十分な時間があるとは言えません。
特に、現在使っているパソコンが「Windows 11」に対応していない場合は、代わりのパソコンを探す必要があります。直前になると駆け込み需要で価格が高騰する可能性もあるため、早めに現在のパソコンの対応状況を確認しておき、余裕を持って代わりのパソコンを探すほうがおすすめです。
春は各メーカーとも新モデルを投入するシーズン。大幅な割引キャンペーンや去年の型落ちモデルのセールなども多いので、買い替えが必要であれば今のうちから目を光らせておくとよいでしょう。
次回は、現在のパソコン内の大事なデータのバックアップ方法を紹介します。
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