タブレットの代名詞とも言えるiPadシリーズから、2025年3月12日に「iPad(A16)」と「iPad Air(M3)」の2モデルが発売されました。プライベート、ビジネスシーンの両方に活躍するデバイスの最新モデルということもあり、注目している人もいるはずです。
公式サイトでの販売価格は、「iPad(A16)」が58,800円〜(税込。以下同)、「iPad Air(M3)」が98,800円〜と、4万円の価格差があります。名前のとおり、搭載チップセットに違いがあるのはもちろんですが、本記事では、ほかにもどのような違いがあるのかについてチェックしていきます。
まずは無印とも呼ばれる、スタンダードモデルの「iPad(A16)」についてです。搭載チップセットは「iPhone 15」シリーズに採用されるA16 Bionic。ストレージは128GB、256GB、512GBの3モデル。通例どおり、Wi-Fiモデルと、Wi-Fi+Cellularモデルが用意されています。
iPadシリーズの中ではエントリーモデルというポジションながら、動作は非常に安定しており、Web会議や、軽いアプリゲームであれば快適です。コアな使い方でなければ、多くの人がストレスを感じないレベルでしょう。
本体重量はWi-Fiモデルが477g、Wi-Fi+Cellularモデルが481gで、11インチディスプレイのデバイスと考えると、比較的軽量な印象を受けます。特に、7mmという薄さが心地よく、カバンに入れてもあまりかさばらないのが魅力です。今回はピンクモデルを使用していますが、パキっとした鮮やかな色合いで、いい意味でガジェット感≠ェあまりありません。
鮮やかな色合いが特徴。本体カラーはピンクのほか、ブルー、イエロー、シルバーから選択できます
ディスプレイはLiquid Retinaディスプレイを採用。解像度は2360×1640、最大輝度は500nitsで、11インチの「iPad Air(M3)」と共通です。ただし、「iPad Air(M3)」はフルラミネーション、反射防止コーティング、広色域(P3)対応などを備えていることから、発色には違いが見られます。「iPad(A16)」の場合、直射日光下で使うと、若干暗く感じるシーンもありますが、普段使いにおいて、極端にストレスが溜まるほどではないという感想です。
ディスプレイは11インチのLiquid RetinaディスプレイでsRGBカラー、True Toneに対応
アウトカメラは1200万画素広角で、4K動画の撮影に対応。フロントカメラは1200万画素センターフレームカメラを搭載しています。タブレットの場合、Web会議などでフロントカメラを使う機会が多くなるので、こちらの性能が重要。「iPad(A16)」の場合、「iPad Air(M3)」と同等の解像度を持つカメラを搭載しており、使用感も上々です。
本体を横向きにした際に、カメラが上部中央に来るようにデザインされており、被写体を中心に映し出すセンターフレーム機能も利用できるので、Web会議用デバイスとしての活用もありです。
アウトカメラは1200万画素広角のシングルカメラ
フロントカメラはセンターフレーム機能で画角の中央に被写体を調整して映し出してくれます
生体認証はトップボタンの指紋認証(Touch ID)のみなのが少々残念なポイント。バッテリーはWi-Fiでのインターネット利用時のビデオ再生が最大10時間、携帯電話ネットワークでのインターネット利用が最大9時間で、こちらも「iPad Air(M3)」と同様のスペック。1日の外出であれば、ギリギリ耐えられる感覚です。Cellularモデルの場合は、5G通信、eSIMの登録にも対応します。
トップボタンではTouch ID(指紋認証)機能に対応
周辺機器としては、「Magic Keyboard Folio」に対応しています。タッチペンは、「Apple Pencil(UBS-C)」と「Apple Pencil(第1世代)」が利用できます。純正キーボードが利用できるように、Officeソフトなどを編集するのにも便利です。
いっぽう、「Apple Pencil Pro」には対応していないので、ホバー機能などは利用できず。「Apple Pencil Pro」を用いたクリエイティブな使い方をしたい人には、上位モデルが推奨されます。なお、「Apple Pencil」シリーズのペアリングに、ケーブルが必要なのも、少々面倒なポイントです。
「Apple Pencil(UBS-C)」と「Apple Pencil(第1世代)」に対応
押さえておきたいのが、4月より日本語にも対応したApple Intelligenceの機能が利用できない点です。通知の要約機能や進化したSiri、作文ツールなど、iPadでも便利な機能が豊富なだけに、非対応は残念なポイントですが、エントリーモデルとして、価格とのバランスをとるためだと飲み込むべきポイントでしょう。
続いて「iPad Air(M3)」を見ていきましょう。搭載チップセットはM3チップで、ストレージは128GB、256GB、512GB、1TBの4サイズ。こちらも、Wi-FiモデルとWi-Fi+Cellularモデルが用意されています。
ディスプレイは11インチと13インチの2モデルが展開されており、今回は13インチモデルを試しています。重量はWi-Fiモデルが616g、Wi-Fi+Cellularモデルが617gと、ディスプレイサイズの関係から多少重くなっていますが、厚みが6.1mmに抑えられているのは、さすがAir≠ニいったところでしょう。
検証は13インチモデルを使用
厚さ7mmの「iPad(A16)」(上)と厚さ6.1mmの「iPad Air(M3)」(下)
13インチモデルの場合、解像度は2732×2048ピクセル(264ppi)、最大輝度は600nitsに上がります。「iPad(A16)」や、「iPad Air(M3)」の11インチモデルよりも100nits明るいスペックになります。ノートPCクラスの大画面タブレットは、活用の幅が広く、マルチウィンドウも快適なので、1台あると便利だなと感じています。
「iPad Air(M3)」(左)と「iPad(A16)」(右)。「iPad Air(M3)」のほうが、色鮮やかに見える
「iPad Air(M3)」だけではありませんが、Apple Intelligenceに対応しているのは、大きな特徴のひとつでしょう。作文ツールで、テキストの校正や要約、作文ができて、メールの返信文を自分で書かなくていいのがとても便利です。ChatGPTに接続できるSiriも、日本語の認識力がかなり向上しており、これまでの検索方法から大きく飛躍する可能性を感じられます。
作文ツールを起動すると利用できる編集項目が表示される
「iPad Air(M3)」で使うApple Intelligenceの機能として紹介しておきたいのが、画像マジックワンドという機能。メモアプリにて、自分で書いたイラストに、追加したい要素をテキストで指示することで、AIが新しいイラストを作成してくれます。書き心地がよく、ワイヤレスでペアリングができる「Apple Pencil Pro」との相性もよく、使っていて楽しい機能です。
メモアプリにてイラストを描いてみました。これくらい簡単な絵でも、AIが編集してくれます
イラストにテキストで要素を加えて、新しいイラストを生成可能
デザインのスタイルもすぐに変更できます
純正キーボードとしては「iPad Air用Magic Keyboard」に対応。フローティングデザインで、パススルー充電対応のUSB-Cコネクタを備えるタイプカバーキーボードとなります。個人的には、タブレットのカバーキーボードとしては、ほかに類を見ない打鍵感のよさだと感じていますが、特に13インチモデルの場合、装着するとかなり重く、厚くなるため、軽さや薄さが特徴の「iPad Air(M3)」なのに、魅力が半減してしまいます。便利なだけに、もう少し軽くなってほしいというのが、個人的な感想です。
「iPad Air用Magic Keyboard」を装着した様子
キーボードの重量が気になりはしますが、全体のスペックとしてはかなり高水準で、Proモデルに匹敵する要素も多彩。動画編集、3Dグラフィックスをともなうアプリゲームなど、ヘビーな作業も快適にこなせます。これらの動作をさらに♂適にしたいのであれば、最新チップを搭載したProモデルが視野に入りますが、ほとんどの人は、「iPad Air(M3)」で、十分ハイスペックに感じるはずです。
「iPad(A16)」は、スタンダードモデルながら、バランスよく整った性能を備えており、上位モデルとそん色ないバッテリー性能が魅力のタブレット。今回は詳細に触れていませんが、アップル製品は、複数のデバイスを同時に使った際のシームレスな連携も大きな特徴なので、iPhoneやMacシリーズを使っており、一緒にタブレットを使ってみようと検討している人にもおすすめできます。
上位モデルとは違うものですが、キーボードカバーやApple Pencilも利用できるため、ビジネスシーンにも非常に使いやすいデバイスです。もちろん、動画視聴や軽いゲーム用に購入してもいいでしょう。何より、現行のiPadシリーズで最安の価格設定も、無視できないポイントです。
いっぽう、「iPad Air(M3)」は、高性能チップセットのパワーを生かし、クリエイティブな作業までこなす、ハイパフォーマンスタブレットです。ゲームアプリはもちろん、ビジネスシーンで活用するのであれば、動画編集といった高度な作業まで行えるので、Proを買うまででもないが、高性能なタブレットが欲しい≠ニいう人に向いています。「iPad(A16)」と違い、13インチモデルが選択できるのもポイントでしょう。
また、今回比較した2機種で言えば、Apple Intelligenceに対応しているのも、「iPad Air(M3)」の特徴となります。現時点でも、タブレットの使い方を大きく飛躍させる機能として、非常に便利に感じていますが、AI機能はこれからさらに洗練されていき、日本語への最適化もどんどん進んでいくと考えられるため、最新のAI機能を今から試していきたいという人には、「iPad Air(M3)」がおすすめとなります。