省電力性能とAI処理能力の高さでノートパソコン市場に新たな選択肢をもたらした「ARM版Windows PC」。その最新モデルとして注目を集めているのが、高性能プロセッサー「Snapdragon X2 Elite」を搭載した、ASUSの14インチモバイルノートPC「Zenbook SORA 14 UX3407NA」です。パフォーマンスやバッテリー性能など実機を用いた検証を通じて、本機の完成度をレビューします。
ASUSの最新モバイルノートPC「Zenbook SORA UX3407NA」。「Snapdragon X2 Elite」搭載による処理性能の高さが大きな特徴です。カラーバリエーションは「アイスランドグレー」(本画像)と「ザブリスキーベージュ」の2色
本機のような14インチサイズのモバイルノートPCを選ぶ際に、多くの人が重視するのが携帯性でしょう。外に持ち運ぶ機会が多くなるため、より軽くてコンパクトなものを選ぶのが理想的と言えます。
その点、本機は重量約990g/最薄部13.4〜最厚部15.9mmの軽量・薄型ボディを実現しており、片手で軽々と持ち運べます。14インチサイズのなかでも軽量な部類なので、持ち運びが負担に感じることはまずありません。
ボディの質感が高いのも魅力。独自開発の「セラルミナム」素材を採用し、表面は陶器のような触り心地を実現しています
さらに、ASUSのプレミアムモデルらしく堅牢性にすぐれているのも魅力。米国国防総省が定める軍用規格のMIL規格(MIL-STD 810H)に準拠したテストを複数クリアしており、振動、衝撃、高温・低温環境などに耐えるボディに仕上がっています。軽くて薄いノートパソコンは「本体がペコペコしていて壊れやすそう」という不安が付きまといますが、本機なら安心して持ち運べることでしょう。
本機が軽量・薄型と堅牢性を両立できたのは、ボディの天板、キーボード面部分、底面部分にASUS独自開発の「セラルミナム」素材を使用していることによります。この素材は、アルミニウムとセラミックを融合させたもので耐衝撃性にすぐれています。傷や汚れにも強く、指紋などの汚れがふき取りやすいのも特徴です。
キーボード部右上に、ASUSの「A」の文字を組み合わせた幾何学的な「Aモノグラム」ロゴを配置。デザインのアクセントになっています
ハイエンドなモバイルノートPCらしく、本機は、WUXGA(1920×1200)表示の高品位な14インチ有機ELディスプレイを搭載しています。Webページや文書ファイル、写真・動画などを表示してみましたが、特に写真・動画を鮮やかな色で表示できたのが好印象でした。ただし、グレアパネルのため画面への映り込みがある点には注意が必要です。
有機ELディスプレイを採用し、風景写真も色鮮やかに表示できます。パネルのリフレッシュレートは60Hzです
また、画面の比率が一般的な横16:縦9ではなく、縦方向に広い横16:縦10になっているのも特徴です。Webサイトの閲覧や文書作成、スプレッドシートの入力時に一度に表示できる情報量が多くスクロールの回数を減らせるため、事務作業をより効率的に行えます。
ディスプレイ上部に207万画素の赤外線カメラを搭載。「Windows Hello」による顔認証をサポートしています
本機のキーボードは日本語84キー配列で、モバイルノートPCとして標準的なキーピッチを確保しています。キーストロークは短め(約1.3mm)で打鍵感はソフトです。半角/全角キーのサイズが少し小さかったり、円記号キーとBackSpaceキーなど一部でキーピッチが狭かったり(キーの間のスペースにゆとりがなかったり)と、少し窮屈なレイアウトになっている部分はあるものの、入力しにくいということはありません。モバイルノートPCの日本語配列キーボードとしては十分なクオリティーです。
タッチパッド(クリックボタンのないクリックパッドタイプ)はしっとりとした触り心地で上々の操作感。パームレストの縦ギリギリまでパッドの広さを確保しているので、カーソルなどの操作時に指の置き直しが少なく、3本指や4本指を使った操作もしやすい印象でした。タッチパッド上で画面の明るさや音量の調整などが可能な独自の「スマートジェスチャー」機能に対応しているのも便利です。
広々としたタッチパッドを採用しつつ、キーボード部は実用的なキーピッチを確保。暗い場所でキー配列の視認性を上げるバックライトも搭載しています
外部インターフェイスでは、最大40Gbpsの高速データ通信に対応するUSB4(Type-C/Power Delivery対応)が左側面に2系統用意されているのがポイント。USB 3.2 Gen2(Type-A)×1、HDMI×1、マイクロホン/ヘッドホン・コンボジャック×1も搭載しています。欲を言えば、USB4端子が左右側面に1基ずつレイアウトされていたら、本体充電時などにUSBケーブルが取り回しやすく、さらに使いやすかったのですが、サイズ感を考慮すると十分な内容です。
無線LANは最新のWi-Fi 7(IEEE802.11be)に対応。Wi-Fi 7対応ルーターを使用することで、より高速・安定した無線通信が可能です。
USB4(Type-C/Power Delivery対応)を左側面に2系統搭載。右側面にはUSB 3.2 Gen2(Type-A)が1系統備わっています
本機を選ぶ大きな理由となるのは基本スペックの高さです。
上位モデル(UX3407NA-GL32170BE)の基本性能
CPU:Snapdragon X2 Elite X2E-88-100(最大4.7GHz/18コア)
メモリー:32GB(LPDDR5X)
SSD:1TB(PCI Express 4.0 x4 NVMe M.2 SSD)
下位モデル(UX3407NA-GL16570BE)の基本性能
CPU:Snapdragon X2 Elite X2E-88-100(最大4.7GHz/18コア)
メモリー:16GB(LPDDR5X)
SSD:512GB(PCI Express 4.0 x4 NVMe M.2 SSD)
特に注目なのはプロセッサー。上位モデル・下位モデルとも、Qualcommの第3世代「Oryon CPU」を搭載した最新ハイエンド「Snapdragon X2 Elite」シリーズの「Snapdragon X2 Elite X2E-88-100」を搭載しています。これは、「X2E-96-100」などの上位モデルに次ぐ準フラッグシップに位置付けられる高性能プロセッサーです。18コア(プライムコア12基+パフォーマンスコア6基)構成で処理性能と省電力性能を両立しているうえ、「Copilot+ PC」の要件を大きく超える最大80TOPSの第2世代「Hexagon NPU」も搭載。強力なNPUによってローカル環境での高速なAI処理が可能です。
以下に、上位モデルで実際にテストしたベンチマークのスコアをご紹介します。
なお、本機のような、ARMアーキテクチャ採用プロセッサーを搭載する、いわゆるARM版Windows PCの場合、動作させるアプリにもARM対応が求められます。ARM対応アプリはネイティブ動作になるいっぽうで、インテル/AMD製のプロセッサーを搭載するx86/x64版Windows PC用のアプリ(x86/x64アプリ)は、Windows OSが搭載するエミュレーター「Prism」を介してのエミュレーション動作となります。エミュレーション動作の場合、プロセッサー本来のパフォーマンスは発揮されません。
※ベンチマークを実行する際は、Windows 11の電源プランを「最適なパフォーマンス」(システムのパフォーマンスを優先するモード)に設定しました。
「Cinebench 2026」のスコア(ネイティブ動作)
CPU(Multiple Threads):4119
CPU(Single Thread):626
「Cinebench 2024」のスコア(ネイティブ動作)
CPU(Multi Core):967
CPU(Single Core):148
「Cinebench R23」のスコア(エミュレーション動作)
CPU(Multi Core):10691
CPU(Single Core):1455
「Geekbench 6」のスコア(ネイティブ動作)
CPU
Multi-Core Score:19416
Single-Core Score:3800
GPU
OpenCL Score:40035
「Procyon AI Computer Vision 2.0」のスコア(ネイティブ動作)
NPU(Qualcomm SNPE/integer):4378
「3DMark」のスコア(ネイティブ動作)
Fire Strike:9467
Steel Nomad Light:4789
Solar Bay:21891
Time Spy:3773
Night Raid:38805
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」のスコア(エミュレーション動作)
高品質(ノートPC)、1920×1080、フルスクリーン:7487(やや快適)
標準品質(ノートPC)、1920×1080、フルスクリーン:8083(快適)
「Cinebench 2026」のマルチスレッドが「4119」、「Cinebench 2024」のマルチコアの「967」と、期待していたほどの結果ではないものの、ネイティブ動作のベンチマークアプリは全体的にハイスコア。特に「Geekbench 6」のCPUスコアは非常に高く、ここからはインテルやAMDの最新ハイエンドCPUと同等以上の性能を持っていることが読み取れます。加えて、ローカルでのAI処理能力を検証する「Procyon AI Computer Vision 2.0」の「NPU(integer)」のスコアが「4378」と非常に高いのも注目点。最大80TOPSのNPUの性能の高さが発揮されています。
そのほかのエミュレーション動作のベンチマークアプリについては、ややスコアが低く出ているようですが十分すぎる結果です。「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」では、「高品質(ノートPC)」で「7487(やや快適)」、「標準品質(ノートPC)」で「8083(快適)」となり、ポテンシャルの高さが示されています。
「Cinebench 2026」の結果
「Geekbench 6」の「CPU」の結果
「Procyon AI Computer Vision 2.0」の「NPU(integer)」の結果
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク/標準品質(ノートPC)」の結果
最後に、本機を購入する前に知っておきたい注意点として、アプリの互換性に関してまとめておきます。
先に掲載したベンチマークアプリを使ったパフォーマンスチェックでも紹介したように、本機のようなARM版Windows PCでは、x86/x64アプリはエミュレーション動作となり本来の性能が発揮されません。一般的なビジネスアプリや画像編集アプリなどはARM版にネイティブ対応するものが増えてきていますが、それでもx86/x64アプリを使う機会はあるはずです。購入前に、よく使用するアプリの対応状況を確認しておきたいところです。
ただ、本機はそもそもの処理性能が高いため、エミュレーション動作だからといってパフォーマンスが極端に落ちることはありません。パフォーマンスチェックの結果を見ても、ほとんどのx86/x64アプリが快適に動くと考えて差し支えないでしょう。
気にしておきたいのは、セキュリティアプリやVPNアプリなど、システムに深く関わる設計のアプリです。こうしたアプリは動作しないケースがあります。また、10年以上前に発売されたプリンターやスキャナなど古い周辺機器のドライバーも認識しない可能性が高いため注意が必要です。監視プログラム(アンチチート)が入ったオンラインゲームなどでも起動しないものがあります。
画像編集アプリ「Photoshop」のRAW現像ツール「Camera RAW」を使って、写真のRAWデータを編集・出力してみましたが快適に動作しました。このほか、「Photoshop」の、クラウドAIを使った生成塗りつぶし機能なども問題なく使用できました
本機はモバイルノートPCとしては大容量の70Whバッテリーを採用しているうえ、搭載するプロセッサー「Snapdragon X2 Elite X2E-88-100」は省電力性に長けています。カタログ値のバッテリー駆動時間は約33時間。超ロングバッテリーライフを達成しているから驚かされます。
今回、満充電の状態から約2時間のアクション映画(Amazonプライム・ビデオ、フルHD解像度)を2本続けてストリーミング再生して、実際のバッテリー性能を検証してみました。
動画再生時のパソコン設定
Windows 11の電源プラン:バランス(初期設定)
ディスプレイの明るさ:100%(最大輝度)
表示モード:全画面表示
音量:標準的な基準ボリューム(50%)
Wi-Fi/Bluetooth:オン
結果は、1本目の再生が終わった時点でのバッテリー残量が89%。2本目が終わった時点で78%。最大輝度の状態で2時間の映画を9本程度視聴できるレベルで、現時点でモバイルノートPCとして最高レベルのバッテリー性能を実現していると評価したいです。丸1日外出してアクティブにパソコンを使う場合だけでなく、日帰りの出張などでもACアダプターを持ち歩く必要はほぼないと言ってよいでしょう。
約2時間のアクション映画を2本連続で再生したところバッテリー残量は78%になりました
付属のACアダプターは、最大約100WのUSB PD(Power Delivery)対応ながらコンパクト。約30分で50%の急速充電が可能です
「ASUS Zenbook SORA 14 UX3407NA」は、最新プロセッサー「Snapdragon X2 Elite」を搭載し、高い処理性能とすぐれた省電力性能を、約990gの軽量ボディに詰め込んだ完成度の高い一台です。
独自素材「セラルミナム」による高い堅牢性や充実した外部インターフェイスなど基本的なクオリティーはとても優秀。そして何より、圧倒的なバッテリー性能は、日々の持ち運びにおいて「ACアダプターを持ち歩かない」という快適な運用を可能にしてくれます。
一部のセキュリティアプリや古い周辺機器用のドライバー、特定のオンラインゲームなど、ARM版Windows PC特有の互換性に関する注意点はあります。しかし、本機の処理性能の高さは、使用上の注意点を補って余りあるメリットをもたらしてくれることでしょう。
モバイルノートPCに求められる重要な要素(携帯性、処理性能、バッテリー性能)に妥協したくない人にとって、間違いなく有力な選択肢となる実力派と言えます。