レビュー
「Core i7-4770HQ」や広色域ディスプレイを搭載! 価格もスペックもモンスターな1台

クリエイター向けの高性能タブレット「VAIO Z Canvas」はどれだけスゴイ?

VAIOの「VAIO Z Canvas」は、イラストレーターや漫画家、デザイナー、カメラマンなどのクリエイター向けのタブレットだ。試作機を昨年2014年10月に一般公開し、ユーザーの声を聞きながら商品化した、ソニー時代では考えられなかったプロセスを経て誕生したモデルである。VAIOが強みとする高密度実装技術と放熱設計技術により、アップルの「MacBook Pro 15インチRetinaディスプレイモデル」と同等のCPUを採用するなど、タブレットでありながら非常にハイスペックなのが特徴だ。

クリエイター向けというだけあって、一番手ごろなモデルでも価格.com最安価格は269,784円もする(2015年6月26日時点)。なかなか手の出しにくい価格だが、どれだけスゴイのかは気になるところだ。今回は、16GBのメモリーと512GBのSSDを搭載したモデルを使って、VAIO Z Canvasをチェックしていきたい。

VAIO Z Canvasはクリエイター向けの高性能なタブレットだ。2560×1704の高解像度で広色域の12.3型液晶ディスプレイを備える。性能を左右するCPUは、第4世代の「Core i7-4770HQ」(2.20GHz-最大3.40GHz)。TDP(熱設計電力)が47Wの4コア/8スレッドのCPUで、グラフィックスには「Iris Proグラフィックス5200」を備える。価格.com最安価格は269,784円から

手で支えなくても倒したり、起こしたりできる「フリースタイルスタンド」が便利

まずは外観から見ていこう。アルミニウム合金の塊から削り出したというボディは、クリエイターの道具として、ふさわしい高級感のある仕上がりだ。試作機のときは色がブラックだったが、「黒だと汚れが目立つ」というユーザーの声を反映して、製品版ではシルバーに変更されている。ディスプレイ面のガラスには、6面強化ガラスを使用。一般的な強化ガラスは上下の2面を強化しているのに対して、6面強化ガラスはすべての面を強化したもので、横からの衝撃にも強いという。

本体サイズは、約301.0(幅)×213.0(奥行)×13.6(高さ)mm、重量は約1.21kg。紙のA4ノートとほぼ同じサイズなので、一般的なブリーフケースやカバンに入れて持ち歩けるサイズだ。重量はタブレットとしては重い部類に入るが、後述するスペックを詰め込んでいることを考えれば、よくこの重さに収めたとも言える。

「フリースタイルスタンド」というスタンド機構を備えており、タブレット単体で自立するのも特徴だ。ペン入力時に本体を好きな角度に調節できて、筆圧をかけても簡単に傾かない独自のスタンド機構だ。大きなスプリングとオイルダンパー、それにカムの機構を搭載したもので、実に不思議な動きをする。通常、スタンドの角度を調節するときは手でスタンドを抑えなければならないが、本モデルは手で補助することなく、本体を倒したり、起こしたりできる。強さも絶妙で、強めにペンで入力しても、安定した入力が可能だ。使い終わってスタンドを閉じるときに少し力を必要とするが、作業中に簡単に角度を調節できるのは、ペン入力を多用するイラストレーターや漫画家にとっては、ありがたいのではないのだろうか。

アルミニウム合金の塊から削り出すことで、剛性と軽量を両立したボディ。カラーは小さな傷や汚れが目立ちにくいシルバー。1枚の頑丈な板という印象で、手にしたときの高級感や質感は抜群だ

一般的な強化ガラスは上下2面を強化しているが、本モデルはすべての面を強化した6面強化ガラスを採用する。2面の強化ガラスの弱点である、横からの衝撃に強い

フリースタイルスタンドにより、タブレット単体で自立する。スタンドが細いので、膝の上では使いにくい

フリースタイルスタンドにより、タブレット単体で自立する。スタンドが細いので、膝の上では使いにくい

フリースタイルスタンドは、大きなスプリングとオイルダンパー、カムの機構により、好きな角度でしっかりと固定される。倒すときも、起こすときもスタンドを手で支える必要がないのは便利だ

VAIO Z Canvasには、2.4GHz帯の無線で接続するワイヤレスキーボードが付属する。本体と離れた場所で使えるので、タブレットの横に置いたり、後ろに置いたり、好みの場所に置いて作業ができるのだ。イラストを描く際や写真のレタッチ作業は、ショートカットを多用することから、設置の自由度が高いワイヤレスキーボードを採用したという。

ワイヤレスキーボードは薄型だが使い勝手は良好だ。19mmのキーピッチと1.35mmのキーストロークを確保しており、キー入力はしやすい。キーボードの裏に6つのゴム足があり、滑って動いてしまうこともなかった。本体と重ねると自動で充電される仕組みで、充電忘れも防げる。フル充電すれば、約2週間の利用が可能。USBケーブルを使って有線接続することもできる。

キーボードは、設置場所を自由に決められるワイヤレスタイプ。ペンを使いながらのショートカットキーの操作もしやすい。Bluetoothではなく2.4GHz帯で接続されている

キーボードは19mmピッチのフルサイズ。薄型だが1.35mmのストロークを確保しており、見た目よりも断然打ちやすかった。タッチパッドも広めに取られており、キーボードの操作性は高い。英語配列のキーボードも選べる

右上部に電源のオン/オフスイッチを搭載。タッチパッドを無効化することもできる

右上部に電源のオン/オフスイッチを搭載。タッチパッドを無効化することもできる

ワイヤレスキーボードにはmicroUSB端子があり、本体と接続してUSBキーボードとしても利用できる

ワイヤレスキーボードにはmicroUSB端子があり、本体と接続してUSBキーボードとしても利用できる

ワイヤレスキーボードの裏は本体と同じシルバーで、6つのゴム足が付いている

ワイヤレスキーボードの裏は本体と同じシルバーで、6つのゴム足が付いている

本体と重ねるとワイヤレスキーボードのバッテリーが自動で充電される仕組み。フル充電2週間利用できる

本体と重ねるとワイヤレスキーボードのバッテリーが自動で充電される仕組み。フル充電2週間利用できる

高解像度で広色域の12.3型液晶ディスプレイを搭載

ディスプレイはサイズが12.3型で解像度が2560×1704。精細さを表すdpiは250で非常に美しい。ただし、光沢液晶なので、光の反射は少し気になるところだ。画面比率は3:2で、アドビの「Photoshop」など、クリエイティブ系のアプリケーション(アプリ)を表示しても、広い作業エリアを確保できる。Adobe RGBカバー率95%の広色域ディスプレイで、実物に近い色を表示できるのもポイント。正確な色再現性を求めるクリエイター向けというだけあって、出荷時には1台ごとにガンマ補正を行う力の入れようだ。さらに、カラーマネージメントにも対応しており、エックスライト社の「ColorMunki Photo」を使ってのキャリブレーションも可能だ。専用のカラーマネージメントモードもあり、出版や印刷の分野で標準の色温度であるD50(5000K)も選べる。

デジタイザースタイラス(ペン)の最大分解能は1024段階で、「VAIO Z」と同じものが付属する。摩擦係数の違う2つのペン先が付属するのも同じだ。筆圧カーブ調整機能を備え、強さと太さを調節できる。VAIO Zとの違いは、ペングリップが付属すること。ペングリップを装着すると、ペンを持つ部分を太くできるので、太めが好みの人にとってはありがたい。

ディスプレイのサイズは12.3型で解像度は2560×1704。プロのクリエイターが普段使っているモニターと同等のAdobe RGBカバー率95%の広色域のディスプレイだ。光沢タイプで映り込みや反射が少し気になる。専用の遮光フードなどがあると、クリエイターにはうれしいかもしれない

カラーモードに出版や印刷でよく利用されるD50モードを搭載

カラーモードに出版や印刷でよく利用されるD50モードを搭載

タッチパネルは視差の少ないダイレクトボンディングタイプ。ペン先の触れた位置と、実際に線が描画される位置の誤差が少なく、思い通りに書ける

付属のデジタイザースタイラス。ペングリップが付属しており、太めのペンが好みの人は付けて利用するといいだろう

筆圧カーブ調整機能で線の太さと筆圧の強さを調節できる

筆圧カーブ調整機能で線の太さと筆圧の強さを調節できる

本体にデジタイザースタイラスを内蔵することはできないが、右側面のスリットに付属のペンホルダーを装着して固定できる(左)。ペンホルダーを使わなくても、スリットには磁石が埋め込まれており、デジタイザースタイラスのクリップをつけて簡易的に固定することも可能だ。外出する際は、しっかりと固定できるペンホルダーを使ったほうが紛失を防げるだろう

クリエイターとの対話から生まれたL/Rボタン

VAIO Z Canvasには、ほかのタブレットにはない、クリエイター向けの機能がある。それが本体上部のL/Rボタンだ。Rボタンにはタッチパネル無効機能が割り当てられており、すばやくタッチパネルを無効にできる。ペンでの操作中に手のひらを自動検知して誤動作を防ぐ機能はあるが、100%誤動作を防ぐことはできない。同機能は、ペンでの作業に集中したい仕上げ処理時の利用を想定した機能だ。

Lボタンにはアプリごとにショートカットキーメニューが割り当てられている。戻る、コピー、貼り付け、再選択など、クリエイティブ系のアプリでよく利用するショートカットキーが画面の横に表示される仕組みだ(表示する場所は上下左右にカスタマイズ可能)。アプリごとに表示するショートカットキーの中身をカスタマイズすることもできる。細かい点だが、Rボタンでタッチパネルを無効にしても、ショートカットキーメニューだけはタッチで操作できるほか、ショートカットキーメニューを表示しても、アプリと重ならないようにする工夫も盛り込まれている。

本体上部の両サイドに配置されるL/Rボタン

本体上部の両サイドに配置されるL/Rボタン

Rボタンを押すと、タッチパネルが無効になり、デジタイザースタイラスだけが使えるようになる

Rボタンを押すと、タッチパネルが無効になり、デジタイザースタイラスだけが使えるようになる

Lボタンを押すと、ショートカットキーメニューが表示される。よく使う機能を割り当てておけば、作業効率が高まるはずだ。メニュー表示はアプリと重ならいように自動で調節される

外部インターフェイスは、ノートパソコン並みの充実度だ。USBはフルサイズのUSB3.0を2基備える。SDメモリーカードスロットはUHS-II対応で、大容量のデータを短時間で取り込める。外部映像出力にはHDMI出力端子(最大4096×2160/24Hzまたは3840×2160/30Hz)とMini DisplayPort出力端子(最大4096×2160/30Hzまたは3840×2160/60Hz)を搭載。同時に4K出力が可能なので、デスクトップパソコンのようにマルチディスプレイ環境での作業ができる。有線LANコネクターも備える。

外部インターフェイスは左側面に集中して配置されている

外部インターフェイスは左側面に集中して配置されている

左側面には電源ボタンとボリュームボタンを搭載する

左側面には電源ボタンとボリュームボタンを搭載する

タブレットでありながらノートパソコン以上のパフォーマンスを実現

VAIO Z Canvasは基本スペックも非常に高い。CPUには第4世代の「Core i7-4770HQ」(2.20GHz-最大3.40GHz)を搭載する。多くのクリエイターが使っているアップルのMacBook Pro 15インチRetinaモデルに採用されている4コア/8スレッドの高性能なCPUである。TDP(熱設計電力)が47Wの高性能CPUを同社の放熱設計技術を駆使することで、コンパクトな本体に収めているのだ。ベンチマークテスト中はファンの回転音はしたが、心地の悪い耳障りな音ではなかった。上部に放熱される仕組みで、操作中に不快に感じることもない。ただし、ディスプレイ面は少し温かく感じられた。同社によると、そのパフォーマンスは同世代のUプロセッサー(TDPは15W)の6倍、第5世代のUプロセッサー(TDPは28W)よりも2倍弱高速だという。CPUのパフォーマンスを測定するベンチマークソフト「CINEBENCH R15」のスコアは457。タブレットとしてはトップクラスのスコアを記録した。

グラフィックス機能は、CPU内蔵タイプとしては最高クラスの「Iris Pro グラフィックス5200」を搭載。外付けのグラフィックスカードにも匹敵するパフォーマンスを持っており、画像処理などを短時間で処理できるという。データの読み書きやレスポンスに影響するストレージには、「第ニ世代High Speed SSD」を搭載。PCI Express x4に接続されているので、SATA接続のSSDに比べて、約3.7倍の高速化を実現しているという。容量は256GB、512GB、1TBの3種類から選べるが、PCI Express x4接続なのは512GB/1TBで、256GBを選んだ場合はSATA接続となる。メモリーは最大16GBまで搭載可能だ。

パソコンの総合的なパフォーマンスを測定できるベンチマークソフト「PCMark 8」のスコアは3011だった(Home accelerated)。タブレットやノートパソコンではなかなか見られないスコアだ。ちなみに、CPUに「Core i7-5500U」(2.40GHz-最大3.0GHz)、8GBのメモリー、128GBのSSD(SATA接続)を搭載した「VAIO Pro 13|mk2」のスコアが2758だったので、最新CPUを搭載したノートパソコンよりもパフォーマンスは上という結果となった。

PCMark 8のホームユースで想定される使い方をした場合のパフォーマンスを測定するHome acceleratedのスコア

PCMark 8のホームユースで想定される使い方をした場合のパフォーマンスを測定するHome acceleratedのスコア

CPUのパフォーマンスを測定するCINEBNCH R15の結果

CPUのパフォーマンスを測定するCINEBNCH R15の結果

「CrystalDiskMark v3.0.4」(ひよひよ氏作)でSSDの速度を測定。Seq(順次)読み書きで1.6G〜1.5GB/秒という驚異的な速度を記録した

VAIO Z Canvasの内部。3基の大型冷却ファンと2本のヒートパイプにより、TDPが47WのCPUから出る熱を排熱して、レスポンスの低下を防いでいる。新開発のファンは、低回転で個別に周波数制御することで、動作音を抑えている

バッテリー駆動時間は、さすがに高性能なCPUを採用していることもあり、約6.8〜7.6時間と短めだ(JEITA2.0)。どこでも作業はできるが、作業に熱中すると、知らずにバッテリー切れとなるかもしれない。カフェなどで作業する場合は、電源を確保できるお店で使うようにしたい。

クリエイターの制作環境を外に持ち出せるモンスタータブレット

クリエイターが使うような高性能なパソコンは、大きくて重いのが当たり前だった。知り合いのカメラマンも、ロケ先で確認作業が必要な撮影にはMacBook Pro 15インチRetinaディスプレイモデルを持参していた。もっと負荷のかかる作業をするようなクリエイターなら、据え置きのデスクトップパソコンを使うだろう。VAIO Z Canvasは、そのような制作環境を気軽に外に持ち出して、どこでも作業できる画期的なタブレットと言える。基本性能は、同社が「モンスタータブレットPC」と言う通り、タブレットとしては間違いなくトップクラスだ。特にペン入力を多用するイラストレーターや漫画家といったクリエイターにとって、本モデルは試してみたくなるモデルなのではないだろうか。

普通のユーザーからすると、プロ向けのニッチなモデルではあるが、VAIO Z Canvasで採用された、いくつかの技術や機能が、一般ユーザー向けのモデルに下りてくる可能性がある。フリースタイルスタンドなどは、一般ユーザー向けのモデルで採用されても便利そうだ。

三浦善弘(編集部)

三浦善弘(編集部)

パソコン関連を担当する双子の兄。守備範囲の広さ(浅いけど)が長所。最近、鉄道の魅力にハマりつつあります。

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