レビュー
2つにたためるキーボードで使いやすさと携帯性を両立

キングジム「ポータブック」は万能ではないが“使える”ノートパソコン

「ポメラ」や「マウス型スキャナ」、「ショットノート」など、独創的なアイテムを次々と生み出してきたキングジム。そんな同社がフルサイズのキーボードを備えながら、本体の大きさをA5サイズに抑えたノートパソコン「ポータブック XMC10」(以下、ポータブック)を2016年2月12日に発売する。文具メーカーのキングジムが手がけるパソコンとはどんなものなのか。発売前の試作機を使って、くわしくチェックしていきたい。

独創的な電子文具で有名なキングジムのポータブック。同社がパソコンを発売するのは今回が初めて。A5サイズのコンパクトなボディに、2つにたためるフルサイズキーボードを搭載し、キーボードの打ちやすさと携帯性を両立した。発売は2016年2月12日。価格.com最安価格は89,799円(2016年1月6日時点)

パカッと開く変形キーボードで、“フルサイズ”とコンパクトを両立

キングジムは、ラベルライターの「テプラ」やデジタルメモ端末のポメラなど、電子文具を手がける文具メーカーだ。同社がパソコンを手がけるのは今回が初めて。パソコンといえば、何でもできる万能なデバイスだが、ポータブックはキングジムらしい“取捨選択”により、“使いやすさ”と“携帯性”の2点に特化したモデルに仕上がっている。 ターゲットは出張や外出が多く、どこでも文章を作成をしたいビジネスパーソン。メモに特化したポメラのパソコン版とも言える。

まず、“使いやすさ”では、小さなボディに横18mmピッチ、縦15.5mmピッチのフルサイズキーボードを搭載するのがポイントだ。「スライドアークキーボード」と名付けられたこのキーボードは、左右に分かれ、弧を描きながらスライドして2つにたためる。フルサイズキーボードを小さく収納することで、キーボードの打ちやすさとコンパクトなボディを両立しているのだ。変形するキーボードは、ポメラの「DM10」や「DM20」を彷彿とさせる。キーボードを開くと本体から左右に飛び出るため、両サイドのキーをタイプするときのグラつきが心配だったが、強めにタイプしてもグラつくことはなかった。キートップがくぼんでおり、指の収まりがよく、快適にタイピングできる。ポメラの最新機種である「DM100」と比べると、ストロークが深く、柔らかなキータッチだ。個人的にはDM100よりもポータブックのキーボードのほうが打ち心地がよいと感じた。

ポータブックの一番の特徴は、2つにたためるスライドアーク キーボード。フルサイズキーボードを2つにわけて、さらにたたむことでコンパクトなサイズを実現している

12型クラスのノートパソコンと同じ18mmピッチのキーボード。キーストロークも1.5mmを確保している。Fnキーには、スマートフォンのような無線機能をオフにする機内モード(F12)や、プレゼン時にディスプレイだけをオフにできるボタン(F2)を搭載する

柔らかいキータッチだが、しっかりした打鍵感もあり、気持ちよくタイピングできる

柔らかいキータッチだが、しっかりした打鍵感もあり、気持ちよくタイピングできる

また、タイピング時の静音性にこだわっており、静かな会議室やカフェでも、周囲の人の目を気にせずにタイピングできるのもありがたい。このあたりは、ポメラで培ったノウハウが活かされている。かな表記をしないなど、見た目にもこだわっている。

ちょっと気になったのがポインティングデバイス。マウスカーソルは、キーボードのGキー、Hキー、Bキーの間にある光学式フィンガーマウスで動かすのだが、クリックボタンが本体にあり、少し距離が離れていて使いにくく感じた。また、マウスカーソルを思い通りに動かすのも難しい。光学式フィンガーマウスから少しでも指を離すとカーソルが移動してしまうためだ。使っているうちに、光学式フィンガーマウスから指を離さずに、クリックボタンを押すとカーソルが飛ぶのを防げるのがわかったが、マウスがあったほうが使いやすいだろう。

マウスカーソルは光学式フィンガーマウスで動かす。指を離すとカーソルが動いてしまうので、指を離さずにクリックボタンを押すといいだろう

ポメラの「DM100」との比較。DM100は17mmピッチなので、ポータブックのほうが、わずかにキーピッチが広い。一番の違いは静音性で、ポータブックのほうが静だ

厚みはあるが、A5サイズの手帳と同等の大きさ

ポータブックのもう1つの売りが携帯性だ。2つにたためるスライドアークキーボードにより、ディスプレイを閉じた状態ではA5サイズの手帳と同等のサイズを実現している。本体サイズは、折りたたみ時が約204(幅)×153(奥行)×34(高さ)mm、使用時が約266(幅)×153(奥行)mm。重量は約830g。ディスプレイを閉じた状態だと、厚みはあるものの、フットプリントが小さいので、カバンへの収まりがいい。重さも1kgを切っており、持ち歩きには苦労しないだろう。膝の上でも使えないことはないが、横長のノートパソコンよりも安定感は劣る。

バッテリー駆動時間はカタログ値で約5時間。最新のモバイルノートやタブレット端末に比べると短いが、タブレット端末用のモバイルバッテリー(5V/2A)が使えるのがポイントだ。いざとなったらモバイルバッテリーが使えるのは、出張や外出の多いユーザーにとって心強い。また、同梱のACアダプターはスマートフォンも充電できるので、出張や外出でACアダプターが1つで済むのはありがたい。

A5サイズの手帳とほぼ同じ大きさのポータブック。重量は約830g。驚くほど軽いわけではないが、苦労せずに持ち歩けるサイズと重さだ

天板はDM100と同じレザーのような手ざわり。革のカバーをつけた手帳のような見た目だ。サイドは、キーボードのアルミフレームがキラリと光る

厚みは34mmと厚めだ

厚みは34mmと厚めだ

タブレット端末用のモバイルバッテリー(5V/2A)で充電可能。なお、5V/1Aの手持ちのモバイルバッテリーでも充電できた

同梱のACアダプターはUSBタイプで、スマートフォンやタブレット端末も充電できる。外出や出張時にACアダプターが1つの済むのは助かる

メモには十分だが、複数作業を同時にこなすには8型は小さい

ディスプレイは8型(1280×768)で、価格.comの「ノートパソコン」カテゴリーに分類されるモデルとしては最小だ(2016年1月6日時点)。外出先や移動中でも見やすいノングレアタイプで映り込みはないが、他社の最新モデルに比べると暗くて、コントラストも低い。少し昔のパソコンのようなイメージだ。Webページの閲覧やメモの作成には困らないが、写真や動画を視聴するのには向いていない。試作機なので、この点は製品版でどうなるのか注目したい。試用していて気になったのは、やはり画面サイズが小さいこと。テキストだけを書くには困らないサイズだが、Webブラウザーを開いて調べ物をしながら作業するような、複数の作業を同時にこなすのには小さすぎる。

1280×768の8型液晶ディスプレイを搭載。映り込みの少ないノングレアタイプだ

1280×768の8型液晶ディスプレイを搭載。映り込みの少ないノングレアタイプだ

ディスプレイは最高輝度にしても暗めで、コントラストも低めだ。メモやWebページのチェックには十分な画質だが、写真や動画を見るのには向いていない

5.7型のDM100に比べると大画面だが、複数のウインドウを同時に表示して作業するのは難しいサイズだ

5.7型のDM100に比べると大画面だが、複数のウインドウを同時に表示して作業するのは難しいサイズだ

基本スペックはタブレット端末に近い仕様だ。CPUはクアッドコアの「Atom x7-Z8700」(1.6GHz-最大2.4GHz)、メモリーは2GB、ストレージ(eMMC)は32GB。CPUは開発コード名「Cherry Trail」と呼ばれる最新のもので、3万円前後の低価格モデルよりも性能は期待できる。外出先で行う文章作成やデータのチェックといったライトな用途には十分なスペックと言える。ただし、ストレージが32GB(初期状態の空き容量は15.5GB)で、写真や動画を保存すると、すぐにストレージがいっぱいになりそうだ。SDメモリーカードスロットを搭載するが、挿しこむとカードが飛び出る仕様で挿しっぱなしで利用するのは難しい。クラウドストレージを上手に活用しながら使うといいだろう。

外部インターフェイスにフルサイズの端子を搭載することで、使いやすさにも配慮している。映像出力にはHDMI出力とアナログRGB(VGA)出力端子を搭載。アナログRGBは、プロジェクターとの接続性を考慮しての搭載だ。USBもSDメモリーカードスロットもフルサイズだ。タブレット端末や薄型のノートパソコンは、本体を薄くするためにmicroUSBやmicroSDカードスロットを採用するモデルが多いが、microやminiの端子は変換アダプターやケーブルが必要になるため使い勝手はフルサイズの端子に劣る。その点、フルサイズの端子にこだわったポータブックは、ユーザーに親切なモデルと言えそうだ。

外部インターフェイスには、USB2.0×1、HDMI出力、アナログRGB出力、SDメモリーカードスロット、ヘッドホン出力などを備える

特定のユーザーの心を鷲づかみにしそうなキングジムらしいパソコンが誕生

ポータブックは、ポメラのパソコン版と言えるが、パソコン化によるメリットとデメリットがある。メリットは、単体でインターネットにつながり、汎用性が高まったことに尽きる。インターネットで調べ物ができるし、メールのチェックもできる。ポメラは直接インターネットにつながらず、作成したメモなどをパソコンに送る場合はメモリーカードを使うかスマホを経由しなければならなかった。人によっては、使い慣れたメモソフトやOfficeソフトが使えるのも魅力だろう。ポータブックには「Office Mobile プラス Office 365 サービス」が付属する。

一方、デメリットは、バッテリー駆動時間が短くなってしまったこと。ポメラは乾電池で動作し、モデルによっては30時間以上使える。電源を入れるとすぐに使えるフットワークの軽さもなくなってしまった。価格も約9万円とDM100より4倍高い。値付けに対しては、発表直後からいろいろな意見が出ている。確かにスペックだけを見ると割高に見えるが、ここまで小型で打ちやすいキーボードを備えたモデルは他には見当たらず、「こういうパソコンを待っていた」という人なら買って損することはないだろう。ポータブックは、キングジムらしく、特定のユーザーの心を鷲づかみにしそうなノートパソコンと言える。

三浦善弘(編集部)

三浦善弘(編集部)

パソコン関連を担当する双子の兄。守備範囲の広さ(浅いけど)が長所。最近、鉄道の魅力にハマりつつあります。

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