レビュー
「Apple Pencil」や「Smart Keyboard」に対応した新型iPadが登場

「9.7インチiPad Pro」レビュー 手ごろな価格の「iPad Air 2」とどちらにするべきか悩ましい

アップルからタブレット端末の新モデル「9.7インチiPad Pro」が登場した。発表前からさまざまな噂があったが、蓋を開けてみたら、昨年登場した「12.9インチ iPad Pro」を小型化したモデルだった。9.7インチiPad Proは、別売りの「Apple Pencil」を使ったペン入力に対応するほか、純正キーボードを使って文字入力もできる。コンテンツを見るだけではなく、よりパソコン的な使い方ができるiPadと言えるだろう。9.7インチiPad Proの購入を検討している人にとって、気になるのは次の2点ではないだろうか。1点目は、併売されている同じ画面サイズの「iPad Air 2」とどちらがいいのか? 2点目はノートPC代わりに仕事で使えるのか? ということ。この2つの点を意識しながら、レビューしていきたい。

9.7インチiPad Pro。別売りの純正キーボード兼カバーの「Smart Keyboard」を装着すれば、2in1デバイス的な使い方ができる。価格.com最安価格は一番安価な32GBのWi-Fiモデルが72,133円(2016年4月8日時点)

原点回帰の9.7インチは絶妙なサイズ

9.7インチiPad Proは、昨年登場した12.9インチiPad Proを、オリジナルのiPadと同じ画面サイズまで小型化したモデルと言っていいだろう。12.9インチiPad Proは、タブレット端末としては最大クラスの大画面が特徴で、ペン入力がしやすく、写真のレタッチやイラストの作成など、クリエイティブな用途に向けたモデルだった。実物を目にした人ならわかると思うが、クリエイターや写真家ではない普通のユーザーにとって、12.9インチiPad Proは大きすぎて、タブレット端末ならではの機動性に欠ける部分があった。

それに対して、9.7インチiPad Proは、小さすぎず、大きすぎない実に絶妙なサイズだ。手に持って使えるサイズ感で、持ち歩きも苦にならない。写真や動画はスマートフォン(スマホ)で見るよりも迫力があり、Webサイトの文字も読みやすい。キーボードと組み合わせたノートPCスタイルでも使いやすい。9.7インチiPad Proを使ってみて、初代iPadのサイズがいかに考え抜かれたものだったかを改めて思い知らされた。

本体サイズと重量は、iPad Air 2と同じだ。ディスプレイの解像度も2048×1536で変わらない。デザインもほとんど同じで、大きく違うのはWi-Fi+Cellularモデルのアンテナ部分のデザインとスピーカー部分。iPad Proシリーズは、四隅にスピーカーがあるため、iPad Air 2にはないスピーカー用の穴が上部に設けられている。

9.7インチのRetinaディスプレイを備える9.7インチiPad Pro。本体サイズは169.5(幅)×240(高さ)×6.1(厚さ)mm、重量はWi-Fiモデルが437g、Wi-Fi+Cellularモデルが444g

四隅にスピーカーを搭載しており、縦向きでも横向きでも高音質なサウンドで音楽や動画を楽しめる。サウンド面はiPad Air 2よりも充実している

デザインはiPad Air 2とほとんど同じだが、Wi-Fi+Cellularモデルのアンテナ部分のデザインが異なる

デザインはiPad Air 2とほとんど同じだが、Wi-Fi+Cellularモデルのアンテナ部分のデザインが異なる

12.9インチiPad Proにもない「True Toneディスプレイ」を搭載

iPad Air 2と比べて、一番変わったのがディスプレイだ。画面サイズと解像度は同じだが、反射率が40%低減され、25%も明るくなった。色域も25%アップし、青や緑などの色再現性が高まっている。iPad Air 2も十分きれいなディスプレイなので、驚きはないが、視認性や色の再現性が底上げされたと言える。ここまでは強化点だが、「True Toneディスプレイ」という新しい機能も搭載されている。4つのセンサーを使って、周囲の光(環境光)に合わせて画面の色と明度を自動的に調整する機能だ。

同機能をオン・オフすると、ずいぶんと色味が変わる。オフの状態は全体的に青っぽく見えて、オンにすると青味が抑えられる。白い紙の見え方が光の色によって変わるのと同じように、環境光によって自然に見える色味に変わるというものだ。オンにした直後は違和感があるが、すぐに目が慣れてくる。背景が白のWebサイトや電子書籍を読むときには、同機能をオンにしたほうが見やすく感じた。ただし、写真や動画の色を調整する場合は、どれが正しい色か分からなくなるので注意したい。

ディスプレイの見やすさを調整する機能としては、iOSの新機能である「Night Shift」もある。日の入り後にディスプレイの色を自動的に暖色系の色域に切り替える機能で、ブルーライトをカットして、心地よい眠りに役立つ効果があるというものだ。

反射率を40%も低減し、屋外での視認性がさらに高まった

反射率を40%も低減し、屋外での視認性がさらに高まった

True Toneディスプレイをオフにした状態

True Toneディスプレイをオフにした状態

True Toneディスプレイをオンにした状態。写真ではわかりにくいが、青味が抑えられて、全体的に暖色系の色味に変わる

True Toneディスプレイのオン・オフは、「画面表示と明るさ」でオン・オフできる

True Toneディスプレイのオン・オフは、「画面表示と明るさ」でオン・オフできる

Night Shiftは色温度の調整が可能。画面下からスワイプして表示されるメニューからでもオン・オフできるほか、時間指定もできる

ハイスペックな9.7インチiPad Proのほうが将来性は高い

続いてスペックをチェックしていきたい。CPUには12.9インチiPad Proと同じ「A9Xチップ」を採用する。メモリーの容量は非公表だが、ベンチマークアプリで確認したところ2GBだった。12.9インチiPad Proは4GBだが、9.7インチiPad Proは半分となっている。iPad Air 2と比べると、CPUは1.8倍、グラフィックスは最大2倍のパフォーマンスを持っている。ただし、コンテンツを楽しむために、ソファの上やベッドサイドが主な利用場所であれば、iPad Air 2を選んでも後悔することは少ないだろう。同じストレージ容量のモデルがないので単純には比較しにくいが、16GBモデルが4万円台、64GBモデルが5万円台のiPad Air 2のほうがお財布にもやさしい。

ただし、2012年発売の第3世代iPadが家にあるが、さすがに動作が重くて使うのが厳しくなってきている。コンテンツを見ることを重視したとしても、タブレット端末はスマホより長く使われるケースが多いので、予算に余裕があるなら、ハイスペックな9.7インチiPad Proを選んでおいたほうがいいだろう。

カメラ機能は、背面の「iSightカメラ」の画素数がiPad Air 2の800万画素から1200万画素にアップ。4K動画を撮影できるようになり、iPadで初めてフラッシュも備えた。iPadで写真を撮影する機会は、それほど多くないかもしれないが、仕事で必要な資料を撮影したり、名刺を撮影したり、いろいろな活用方法があるので、高画素化は素直に歓迎したい。前面の「FaceTime HDカメラ」が500万画素になったのも見逃せない。カメラ機能は、iPadシリーズの中で一番充実している。

高画素化されたiSightカメラのレンズが出っ張っており、テーブルの上に置くとわずかに浮いて、少しだけグラつく

"Pro”ならではのApple PencilとSmart Keyboardに対応

9.7インチiPad Proは、Apple Pencilを使ったペン入力が可能だ。鉛筆の書き味を忠実に再現し、2本指を使って定規を表示し直線も簡単に引ける。書き味は、12.9インチiPad Proと変わらない印象を受けた。本格的なイラストを描く人にとっては、画面の狭さが気になるかもしれないが、仕事のメモやアイデアを手書きするといった使い方には十分なサイズだ。Office文書に手書きで修正を加えるといった作業も問題なくこなせる。iPad Air 2はApple Pencilに対応していないので、ペン入力したい場合は9.7インチiPad Proを選びたい。

Apple Pencilの書き味は、12.9インチiPad Proと変わらない。9.7インチでも画面が狭すぎる印象を受けなかった

Smart Keyboardを使って、マイクロソフトの「Surface」のように2in1デバイスとしても使える。12.9インチiPad Pro向けのキーボードよりもキーが小さく、打ちにくいと思いきや、案外普通にタイピングできてしまう。英語配列のキーボードで、iOSならでは、かなと英語の切り替え操作には慣れが必要だが、このような原稿を書くのには十分だ。アプリによってはマウスやタッチパッドがあったほうがよかったと感じることもあるが、テキストベースの作業なら、問題なくこなせるだろう。

2つのアプリを並べて作業できる「Split View」も使えるので、Webサイトを参照しながら、Wordで資料を作成するといった使い方も可能だ。ただし、2つの画面を使った“ながら作業”は、大画面の12.9インチiPad Proのほうがやりやすい。

12.9インチiPad Pro用のSmart Keyboardと同じ配列のキーボードだが、本体サイズと同じく、小さめに作りなおされている。それでも意外とタイピングはしやすく、クリック感も思ったよりある。見た目以上に使いやすいキーボードだ

やや頭打ち状態にあるタブレット端末。同市場をリードしてきたアップルの「iPad」にも一時の勢いが見られなくなっている。その理由は、AndroidタブレットやWindowsタブレットなど競合他社の攻勢や、スマホのように2年間という明確な買い替え時期がないことなど、いろいろな要因が考えられる。また、電子書籍を読んだり、Webサイトをチェックしたりといった、ライトな用途であれば、それほどパフォーマンスが必要ないというのも大きいだろう。画面が劇的にきれいになったり、バッテリー駆動時間が大幅に伸びたりしないと買い換えの動機にならない。

そんな中で、iPad Proは、パフォーマンスが重要になるクリエイティブな用途に力点を置いて、新しいユーザー層の獲得を狙ったモデルだ。12.9インチiPad Proは、完全にクリエイター向けだったが、新型の9.7インチiPad Proは普通のユーザーでも使いやすいモデルに仕上がっている。仕事に使えるかと言えば、職種にもよると思うが、iPad Proだけで済むという人もいるはずだし、パソコンと組み合わせることで、仕事がよりスムーズにこなせるケースも多いだろう。ホームボタンに内蔵された「Touch ID」によるセキュリティや、どこでもインターネットにつながるWi-Fi+Cellularモデルなど、ノートPCよりも便利な機能もある。

Wi-Fi+CellularモデルはApple SIMを内蔵し、携帯電話会社に行かずとも契約して通信できる。海外旅行や出張の際に、飛行機から降りてすぐに契約できるのがメリットだ

iPad Air 2とどちらにすべきかだが、予算に余裕があるなら、9.7インチiPad Proを選んだほうがいいだろう。前述の通り、頻繁に買い替えないのであれば、ハイスペックな9.7インチiPad Proを選んだほうが長く快適に利用できるためだ。また、Apple Pencilを後から書い足したくなっても、iPad Air 2では使えない。32GBのWi-Fiモデルが7万円台からと、ハッキリ言って、高い買い物だが、4年、5年と長く使えば、十分にもとは取れるのではないだろうか。

三浦善弘(編集部)

三浦善弘(編集部)

パソコン関連を担当する双子の兄。守備範囲の広さ(浅いけど)が長所。最近、鉄道の魅力にハマりつつあります。

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