ここからは、各種ベンチマークプログラムを使用し、そのパフォーマンスをみていこう。使用した製品は、「960 PRO」1TBモデルと、「960 EVO」500GBモデル。また、前モデルとの比較のため「950 PRO」512GBモデルも用意した。いずれも「Samsung NVMe Driver 2.0」を利用している。くわしい検証環境のスペックは以下の通り。
CPU インテル「Core i5-6600」
メモリー Crucial「CT2K8G4DFD8213」
マザーボード ASUS「H170 PRO GAMING」
システムドライブ サムスン「SSD 750 EVO」
OS マイクロソフト「Windows 10 64bit」
まずは、定番のベンチマークプログラム「Crystal DiskMark v5.1.2」を使い、ストレージの転送速度を計測してみた。
「960 PRO」1TBモデル(左)と「960 EVO」500GBモデル(右)のスコア
「950 PRO」512GBモデルのスコア
結果の通り、「960 PRO」1TBモデルが、ほかの2モデルを圧倒している。
「960 PRO」1TBモデルのシーケンシャル転送速度(Seq Q32T1)は、リード3,506MB/秒、ライト2,146MB/秒と、公称値通りのスピードを記録。「950 PRO」512GBモデルと比べてみても、その性能差は歴然だ。シングルキュー&スレッドのシーケンシャル速度(Seq)においても伸びている。ただ、ランダム速度(4KQ32T1と4K)は、ライトのみ向上しているが、リードは「950 PRO」と同等だ。
いっぽう「960 EVO」500GBモデルでは、シーケンシャルリード(Seq Q32T1)が3,410MB/秒と「960 PRO」1TBモデルに迫るスコアをマークしているものの、ほかのシングルキュー&スレッドのシーケンシャルリード(Seq)とランダムリード(4K Q32T1と4K)では、従来モデルの「950 PRO」512GBモデルのスコアに負けている。しかしライト性能はよくなっている。シーケンシャル時(Seq Q32T1)は公称値より低い1,672MB/秒となったが、それも含めてすべて「950 PRO」512GBモデルより高いスコアを叩き出している。中でもマルチキューのランダムライト(4K Q32T1)は1.5倍も高くなっていた。
続いて転送サイズ別のシーケンシャル転送速度を調べられる、「ATTO Disk Benchmark」の結果も見てみよう。グラフは、縦軸が転送サイズ、横軸が転送速度となっている。2色の横棒は、緑がリード速度、赤がライト速度。
ピーク性能は、「960 PRO」1TBモデルは、リード3400MB/秒、ライト2100MB/秒。「960 EVO」500GBモデルがリード3,200MB/秒、ライト1,700MB/秒と、いずれも公称値に近い速度となった。特にライトのピークは、「960 PRO」が32KB、「960 EVO」が16KBと、それぞれ低い転送サイズで到達している。リードはどちらも4MB付近となり、以降トップスピードを維持している。なお、「950 PRO」は全体的にグラフが整っているのに対し、「960 PRO」と「960 EVO」は若干バラつきもあるが、今後ドライバーの成熟が進めばより安定してくるのかもしれない。
ATTO Disk Benchmarkのベンチマーク結果。「960 PRO」1TBモデル(左)、「960 EVO」500GBモデル(右)
「950 PRO」512GBモデルのATTO Disk Benchmarkの結果
続いて、Futuremarkの総合ベンチマークソフト「PCMark 8」に用意されている、ストレージ性能を計測する「Storage Test 2.0」を実行した。このテストでは各種アプリケーションの読み書きパターンを再現しており、実使用に近いパフォーマンスを計測できる。
Storage Test 2.0の総合指標となる「Storage 2.0 Score」は、差が出にくい指標のひとつとなっている。テスト結果を見てもほぼ横並びだ。だがここでも、「960 PRO」1TBモデルが5110ポイント、「960 EVO」500GBモデルが5074ポイント、「950 PRO」512GBモデルが5106ポイントと、「960 EVO」が低くなっている。
PCMark8 Storage 2.0 Test
いっぽう、Storage 2.0 Scoreとともに表示されるデータ転送速度の指標「Storage 2.0 bandwidth」では、大きな差がでている。このStorage 2.0 bandwidthでは、「960 PRO」1TBモデルが791.26MB/秒であるのに対し、「960 EVO」500GBモデルが515.11MB/秒とかなり低い数値をだした。そして従来のフラッグシップ「950 PRO」512GBモデルが755.01MB/秒と、ここでも「960 EVO」は「950 PRO」に負けている。とはいえ、各アプリケーションのテスト結果をくわしく見ていくと、どれも僅差になっており、おそらく体感できないレベルと言えるだろう。
なお、発熱については、「HWiNFO64」を利用して温度データを読み取った。従来モデルは60〜70℃を超えることも多かったが、「960シリーズ」では50〜60℃台をキープし、温度上昇も緩やかだった。およそ5〜8℃前後の違いが見られたが、ピーク時には70℃まで上がることもある高速なM.2 SSDでは、この差は大きい。
以上、ベンチマーク結果を見てきた。新フラッグシップモデルの「960 PRO」は、高速かつ耐久性もあるSSDに仕上がっている。各種ベンチマークのスコアを見る限り、シーケンシャルとランダムどちらのリードライトも高速だ。このスピードなら高精細な写真の現像や4K動画の編集などがさらに快適に行えるだろう。また耐久性も従来モデル「950 PRO」と同等を実現。特に「950 PRO」を所有しているユーザーなら、より高速になった「960 PRO」は、アップグレードにも最適なはずだ。気になる価格は2017年1月4日時点で、価格.com最安価格は、512GBモデルが39,800円(税込)、1TBモデルが75,799円(税込)、2TBモデルが159,800円(税込)と、いずれもかなり高価だ。お金と余裕があれば選ぶのもよいが、この性能の高さが生きてくるのは、クリエイティブな作業など高負荷な用途のみになりそうだ。
もし、読み書き性能にそれほど神経質にならないのであれば、価格重視な「960 EVO」のほうが狙い目だ。下位モデルの「960 EVO」はリード速度の一部が「950 PRO」に負けているケースがみられるものの、その差はごくわずかとなっている。NANDフラッシュにTLCを採用するため耐久性は上位モデルに比べて低くはなるが、普段使いで不足はないだろう。価格も、2017年1月4日時点での価格.com最安価格で、250GBモデルが15,800円(税込)、500GBモデルが29,800円(税込)、1TBモデルが59,800円(税込)と、同容量帯の「960 PRO」に比べて1万円から2万円ほど安く購入できる。2.5インチSATA SSDに比べれば倍の価格だが、それに見合った性能は確実に得られる。SATA SSDからのアップグレードには特にピッタリな製品だろう。