シャープといえばIoT対応オーブンなどの「高機能な生活家電」というイメージがありますが、なんと今年は理美容家電の新シリーズを「beauté A(ボーテアー)」として展開することを発表しました。シャープは従来もドライヤーなどの美容家電を発売していましたが、「ボーテアー」は独自技術を搭載し、より付加価値の高い製品のみをシリーズ化したプレミアム美容製品のシリーズとなります。そんなボーテアーブランドの製品第1弾として発表されたのが、「プラズマクラスタードレープフロードライヤー IB-WX1」(以下、ドレープフロードライヤー)です。2019年9月下旬発売予定で価格はオープン、市場推定価格は33,000円前後(税別)となります。新製品発表会では、実際に製品を体験することができたので詳細をレポートします。
ドレープフロードライヤー。ダイソン「Dyson Supersonic」を彷彿とさせる送風筒部が短い独特の形。カラーはホワイトとピンクの2色です
ドレープフロードライヤーの特徴は3つ。ひとつは独自のノズル形状による速乾性。ふたつ目が、距離センサー搭載による髪ダメージの軽減。そして最後に、プラズマクラスターによる静電気抑制や髪の保湿効果です。
本体の大きさは233(高さ)×88(幅)×132(奥行き)mm。重量は610gで、重さはドライヤーとして軽量とはいえません。ただし、本体が打出の小槌のような独特の形状をしているため、一般的なドライヤーのように「風の吹き出し口側だけが長くて重い」ということがありません。ドライヤーは髪の1か所だけが加熱されないように「左右にドライヤーを振りながら乾燥させる」ことが多いですが、ドレープフロードライヤーはハンドルを持った時に重心バランスがよく本体を左右に揺らしながら使用してもドライヤーに振り回されることがありません。実際に使ってみるとスペック上の重さより軽い印象で、疲れにくいと感じました。
一般的なドライヤーと違って、送風部が長く伸びていない独特の形状。手で持った時のバランスがよく、見た目ほど重いと感じません。最大消費電力は1,200Wでホット/ドライ運転時の温風温度は最高95℃、風量は1.1m3/分です
操作部はハンドル手元部分に集中しています。送風口部分にインジゲーターが集中しており、風を髪に当てながら運転モードや風量、送風温度設定がひと目でわかります。この操作性のよさも本製品の魅力です
送風温度は送風部側のLEDリングの色でわかります。温度が低いと青系、温度が高くなると赤系の色に変化します
風量は3段階で設定可能。現在の風量はハンドル下の棒状LEDの光り方でチェックできます
運転モードは、高温の風で素早く髪を乾かす「スピーディードライモード」、距離に応じて温度を自動切り換えする「センシングドライモード」、温風と冷風を交互に送風し、髪にツヤを与える「ビューティーモード」、地肌に最適といわれる約50℃での送風でスカルプケアにも最適な「地肌ドライモード」の4つのモードを搭載しています。
冒頭で、本製品には3つの特徴があると書きましたが、その最初の特徴が速乾性です。ドライヤーといえば丸い筒形の送風口から風を送風するのが一般的ですが、ドレープフロードライヤーはなんと送風口が2つのスリット状になっています。
送風側の左右にあるC字型のスリットが送風口。2つの送風口から独立した風を送れるのがドレープフロードライヤーの特徴です
美容院などでは、髪を早く乾燥させるためにドライヤーを2本使いすることがあります。シャープによると、ドレープフロードライヤーは2つの独立した風を同時に髪に当てることで、この複数ドライヤーによる速乾効果を1台でまかなえるそうです。
具体的には、髪に左右から風を当てることで髪を2つに分け、ドレープのように髪をなびかせながら風を当てることが可能。この髪をドレープさせる(波立たせる)効果により風が一度に当たる面積をアップし、速乾性が上がっているそうです。実は本製品は風量が1.1m3/分と、最近のプレミアムドライヤーとしてはそこまで大風量ではありません。ですが、実はより風量の高い従来製品(※)と比較しても、速乾性は25%アップしているといいます。
※:最大風量約1.7m³/分のIB-LP9と比較
風を当てると頭の2か所にスリットが入ったように髪が分かれます。髪に凹凸をつけて乾かすことで、風があたる髪の表面面積が増えて速乾性が高まるといいます
標準状態では2つの風で髪をかき分けるように乾かすので、ブラシで髪をブローする場合は、付属のセット用ノズルを使用。風がひとつにまとまりブローしやすくなります
ドライヤーとしては初めて距離センサーを搭載したのも本製品の特徴です。センサーを活用するのは、センシングドライモードでの運転時。センシングドライモード時はつねに送風口と髪との距離をチェックし、髪が遠い時は温度を高くして乾燥性能をアップ。反対に髪が近づくと送風温度を下げて髪が高温にならないようにケアします。髪は55℃以上になるとケラチン(タンパク質の1種)がダメージを受けると言われていますが、センシングモード時はつねに55℃以下に温度を保ち高熱による髪ダメージを抑制可能です。
センシングドライモードでの運転時。赤外線で障害物までの距離をセンシングし、距離にあわせて送風温度をコントロールします
動画では、手を近づけると低い温度(LEDリングが青系)、手を遠ざけると熱風(LEDリングが赤系)になるのが確認できます。
最後の特徴が、プラズマクラスター機能です。プラズマクラスターというと空気清浄機に搭載された除菌や消臭などの機能が知られていますが、実は静電気を抑制する機能もあります。髪をブラシなどでとかすと摩擦により静電気が発生し、髪が広がるなどの問題が起こります。これはブラシ側にマイナス、髪側にプラス帯電がおきるために発生する現象。ところが、プラズマクラスターを吹き付けると髪にマイナスイオン、ブラシにプラスイオンを付着させて中和させ、静電気を抑制できるのです。
ちなみに、髪に静電気が発生すると「髪が広がってスタイリングしにくい」以外にキューティクルがはがれやすくなるというデメリットがあります。このため、髪のケアに静電気は大敵だと言われています。
また、プラズマクラスターは「イオンの周りに水の分子が集まった」形状の超微粒子。このため、髪の保湿にも効果があるといいます。
下は、会場で行われた人工頭髪による静電気抑制のデモンストレーションの動画。プラズマクラスターを吹き付けながらブラッシングをすると、ブラシ後も髪の毛が静電気で広がることがありませんでした。
プラズマクラスターを出さないドライヤーで同じようにブラッシングしたところ。ブラシ後に静電気で髪の毛がブラシにくっついてしまいました
最近の高価格プレミアムドライヤーは、「大風量で素早く髪を乾燥させることで髪ダメージを最小限に抑える」タイプと、「ドライヤーに美髪機能を搭載して髪をケアする」タイプに二極化しています。今回シャープが発表したドレープフロードライヤーは、後者の髪ケアタイプの製品。髪へのダメージを最小限に抑える機能だけではなく、プラズマクラスターを髪に送ることで保湿などの髪ケアが可能に。シャープが行った試験では、プラズマクラスター機能によりカラーリングした髪の退色を抑えるほか、枝毛や切れ毛を抑制効果、髪にツヤを出す効果などもあったそうです。これまで「使うほど美髪ケアができるドライヤー」というとパナソニックのナノケアシリーズが筆頭にあげられましたが、今回の新製品でシャープも「美髪ケアドライヤー」の選択肢として有力になってきました。今後、選択肢が広がるのは髪ケアが気になるユーザーとしてはうれしいところです。
パソコン雑誌編集者からドッグカフェオーナーという、異色の経歴を経た家電ライター。家電を活用することで、いかに家事の手を抜くかに日々頭を悩ませている。