何となく知ってはいるものの、実はよくわかっていない家電の機能はありませんか? この連載では家電ライター歴10年以上の筆者が実際に体験して「これはいい!」と思った、または興味を引かれた機能や構造を超簡単に説明。その機能や構造を搭載している製品も紹介するので、家電選びに役立つはずです。
今回は、パワフルな除湿と省エネを実現する三菱電機のコンプレッサー式除湿機の特殊な構造を紹介します。
コンプレッサー式の除湿機は、部屋のじめじめとした空気を冷却器で冷やして結露させ、水滴を水タンクに溜めることで除湿。そして、冷却器で水分を取り除いた乾いた冷たい空気は放熱器で温められ、乾燥した温かい空気になって部屋に放出されます。
コンプレッサーで冷媒を膨張/圧縮させ、冷却器を冷たくし、放熱器を温めます
一般的なコンプレッサー式の除湿機は、冷却器と放熱器が1つずつありますが、三菱電機は一部のコンプレッサー式除湿機に2つの放熱器を搭載しているのです!
基本構造は一般的なコンプレッサー式除湿機と同じですが、三菱電機の一部のコンプレッサー式は放熱器の数が1つ多い!
三菱電機では、この構造を「三列熱交換器」と称しています。熱交換器とは、温度が高いほうから低いほうに移動する熱の性質を利用し、熱を移動させる装置のこと。冷却器は冷たい金属プレートの間に空気を通すことで空気中の熱が金属プレートに移動する、放熱器は温めた金属プレートの間に空気を通すことで金属プレートの熱が空気に移動するというように、「金属プレートと空気の間で熱を交換」しているので、冷却器1つ、放熱器2つからなる構造を「三列熱交換器」と呼んでいるのです。
三菱電機では冷却器を「蒸発器」、放熱器を「コンデンサー」と呼んでいますが、本記事では一般的に使われる「冷却器」「放熱器」で説明を進めます
空気に含まれる水分を結露させ、水滴にして除湿するのは冷却器なので、放熱器を増やす理由は何なんでしょうか。それは、省エネと除湿量の向上です。
夏にエアコンの冷房を使っているとき、室外機が太陽の日が当たる場所にあるより、日陰の涼しい場所にあるほうが冷房の利きがよくなり、さらに、電気代も抑えられます。これは、冷房時のエアコンは、室内機に冷却器、室外機に放熱器がある状態だから。つまり、消費電力を抑えながら冷却器を冷やすには、まず放熱器からしっかりと熱を奪うことが重要なのです。
エアコンの冷房運転と同じような仕組みで除湿しています
除湿機では、放熱器に風を当てることで熱を奪います。冷却器を通った冷たい乾いた風が放熱器を通過し、温かい乾いた風となって部屋に出ますが、冷たい空気を温めた熱は熱交換器のもの。つまり、熱交換器の熱を奪っているのです。「三列熱交換器」は、それ以上に熱を奪うための仕組み。一般的なコンプレッサー式除湿機よりも放熱器の表面積を広げることで、熱交換器の中を通過する風量を増やし、放熱量を上げる方法です。
銅管を流れる冷媒により、金属プレート(冷却器/放熱器)が冷たく(熱く)なり、このプレートの間に空気を通して熱交換します
とはいえ、単純に、冷却器→放熱器と進む風量を増やせばいいわけではありません。冷却器に当たる風量が増えすぎると、冷却器の温度が上がり、除湿能力が低下します。そのため、「三列熱交換器」ではバイパス風路を設け、奥にある放熱器(サブコンデンサー)に部屋の空気を直接当てる仕組みを採用。メインの放熱器には冷却器を通過した冷たい空気を当てつつ、サブの放熱器にバイパス風路からの空気を当てることで放熱量が上がるのです。
2つの熱交換器は銅管でつながっているので、奥にある放熱器(サブコンデンサー)の放熱量が上がれば、放熱器全体の放熱量が上がります
この仕組みにより、コンプレッサーの負荷が減るため、消費電力が抑えられます。さらに、放熱器の熱がしっかり落ちることで、冷却器をよりパワフルに冷やせるので、一般的なコンプレッサー式除湿機よりも除湿量がアップ。同社の調べによると、冷却器1つ、放熱器1つの「二列熱交換器」に比べ、「三列熱交換器」は除湿能力が約5%アップ、消費電力が約16%低減するそう。
ところで「放熱器の表面積が大きいほうがパワフルかつ省エネ」なら、一般的なコンプレッサー式除湿機よりエアコンの除湿運転を使ったほうがいいのでは? と思う方もいるのではないでしょうか。
エアコンは確かに、一般的に考えられる除湿専用機よりも大きな放熱器を備えています。しかし、エアコンの除湿運転時、放熱器は室外機に、冷却器は室内機にある状態。つまり、冷却器を通過したキンキンに冷えた風が出るため、部屋の温度がどんどん下がってしまいます。
エアコンの室外機のカットモデル。内側を囲んでいるのが熱交換器(除湿運転時は放熱器)です
このため、エアコンの除湿運転では、部屋の温度が一定以上下がると、それ以上部屋の温度を下げないために一度運転を停止。「除湿運転をしているのに部屋がずっとじめじめしている」という問題が発生するのは、ほとんどの場合はこれが原因です。
それならば、除湿専用機はどうでしょうか? コンプレッサー式除湿機は、本体内に冷却器と放熱器を同時に搭載しているため、冷却器でキンキン冷えた空気が放熱器に通され、ほぼ室温まで温めた後に部屋に放出されます。室温が下がることはないので、湿度が高い間は、室温が理由で運転が止まることはありません。
ちなみに、エアコンの中には、部屋を冷やさず除湿ができる「再熱除湿」方式を搭載した製品もあります。この方式のエアコンなら肌寒い時期でもしっかり部屋を除湿し続けることが可能。ただし、再熱除湿は室内機の仕組みがかなり複雑で、高価格なプレミアムモデルに搭載されることがほとんどです(再熱除湿については、本連載で紹介する予定)。
「三列熱交換器」を採用した三菱電機の除湿機には、ほかにも独自のこだわり機能が搭載されています。
コンプレッサー式除湿機はよく「冬に弱い」と言われますが、その理由は2つあります。1つ目は、冷却器と室温の温度差が作りにくくなるため。空気と冷却器の温度差があるほど湿気を水に変えられるので、冷却器と室温の温度差が少なくなる冬は除湿性能が下がってしまいます。
そして、2つ目は「霜取り」で除湿運転が停止するため。コンプレッサー式除湿機は、室温が低すぎると冷却器が凍って風が通らない状態になる場合があります。一般的な除湿機では、一時的に除湿運転を停止したり、送風運転に切り替えたりして冷却器の温度が下げるのをストップ。霜が溶けたら除湿運転を再開します。
室温が低く、湿度が高いときには冷却器に霜がびっしり付くことも。写真は、室温5度、湿度70%の試験条件で霜が付いたもの
いっぽう、三菱電機の一部の除湿機は「おまかせ霜取り」という機能で、自動で冷却器に付いた霜を溶かします。方法は、冷却器側に温かい冷媒を流すというもの。冷却器を「温めて」霜取りをするため、一般的な霜取りより素早く霜取りが完了。除湿運転を止める時間が短くて済むと除湿できる時間が増えるので、低温時でもしっかり除湿できます。
パイプに配置された「ホットフロンバルブ」(電磁弁)で冷媒の経路を切り替え、冷却器の霜を溶かします
そして、「三列熱交換器」を採用した三菱電機の除湿機は「インバーター制御」に対応しているのもポイント。一般的な除湿機は運転のオン(100%)かオフ(0%)かしかないので、「ちょっとだけ除湿したい」といったシチュエーションで必要以上の電力を使うことに。インバーター制御できれば、湿度に応じて運転の強さを細かく調整できるので、微妙な湿度の部屋でもむだのない省エネな運転ができるのです。
コンプレッサー除湿機で使用される電力のほとんどは、冷媒を循環させるコンプレッサー(圧縮機)を動かすために使われます。必要に応じてコンプレッサーの回転数を制御できるということは、消費電力を抑えられるということ。効率のよい除湿運転ができます
三菱電機は、コンプレッサー式の除湿機を4機種ラインアップ(2024年発売モデル)しています。
このうち、今回紹介した「三列熱交換器」「おまかせ霜取り」「インバーター」を搭載しているのは「MJ-PV250WX」と「美空感 MJ-PHDV24WX」の2機種です。除湿機は除湿能力が12L/日でもパワフルだと言われるなか、2機種ともに24L/日以上の除湿能力を実現。室内干しの衣類乾燥はもちろん、部屋中の湿度コントロールも任せられるパワフルさです。
定格除湿能力は「MJ-PV250WX」が24.5L/日、「美空感 MJ-PHDV24W」が24L/日
ちなみに、「美空感 MJ-PHDV24WX」は高性能HEPAフィルターと活性炭フィルターを搭載しているので、空気の汚れやニオイをきれいできます。「除湿だけ」「空気清浄・脱臭だけ」「除湿+空気清浄・脱臭」と、部屋の状態に合わせて運転を切り替え可能。除湿と同時に空気を浄化でき、除湿が必要ないときは空気清浄機として使えるので、一年中活躍してくれます。